乃心 仁 さん プロフィール

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乃心 仁さん: ホラー小説 ショートショート 書庫
ハンドル名乃心 仁 さん
ブログタイトルホラー小説 ショートショート 書庫
ブログURLhttp://horrornoveljn2.blogspot.com/
サイト紹介文思いついた怖い話を短編小説にし保管していきます。保管庫(百編投稿済みブログ)に続く第二弾です。
参加カテゴリー
更新頻度(1年)情報提供100回 / 127日(平均5.5回/週) - 参加 2016/06/05 22:22

乃心 仁 さんのブログ記事

  • 第百話 案内
  •  山へやって来た。当然行先は山頂だが、近くの滝へ行くのが主目的だった。 もうすぐ冬になろうという秋のことで、紅葉をみるには遅いが、涼しい季節だ。暑がりのわたしにとって山を歩くには最適の時期といえた。ただ、落ち葉が積もり、穴ぼこに覆いかぶさっているところや、小さな道を隠してしまって踏み跡が見えないところがある。そんなところは慎重に歩く必要があった。 昼近くになって山頂に着き、食事を摂った。 小春日和 [続きを読む]
  • 第九十九話 バーベキュー
  •  キャンプするのにちょうど良い感じの河原にやって来た。川の中には人工の石積みのようなものがあり、その上流は小さな淵になっている。時刻は午後三時を過ぎたところで、これ以上進むのは止めて、今晩はここでキャンプをすることに決めた。 ワンタッチのテントを張り、荷物を投げ込めば、寝床はもう完成だった。夕食の支度を前に、川魚を釣ってやろうと思い、釣り竿を取り出した。エサは川辺の石ころを退けるといくらでも虫が採 [続きを読む]
  • 第九十八話 祭り
  •  駅、球場、競馬場、イベント会場などなど、ぼくは混雑する場所が嫌いだった。そういったところには、決まって幽霊が紛れ込んでいるからだ。 祭りもそのひとつなのだが、これだけは子供が連れて行けとうるさく言ってくるので、仕方なく連れて行く。そんなときは幽霊が見えていても、見えていないふりをしていた。 それにしても堂々と神輿の一部を担いでいる幽霊までいるのだから気分が悪い。なぜ幽霊が祭りに参加できるのかが不 [続きを読む]
  • 第九十七話 山菜
  •  また夫が妙なことを言い出した。老後には田舎で暮らしたいなんて一体どういうつもりなのだろうか。 わたしは田舎なんてお断りだった。何でもすぐそばにある、都会の方が便利でいいに決まっている。マンションの高層階にでも住めば虫もそうそう寄ってはこない。田舎なんかに行ったら、毎日毎日、来る日も来る日も、一日中虫と格闘することになるに違いない。そんなことをきっと夫は分かっていないのだろう。明日は田舎にある山へ [続きを読む]
  • 第九十六話 百度石
  •  百度石というのを散歩の途中に見つけた。毎日通うことにした。いつも同じ願いを言い続ける。家内安全だ。 ある日、いつもと同じようにお参りし、百度目に手を合わせたところで、声が聞こえてきた。「ちょうど百度目だな。何が願いだ?」「えっ。誰だ」「願いは何だと聞いてるんだ」 百度石を回る間ずっと、『家内安全』を心の中で呟いてきたはずだ。神様なら分かっているはずだろう。それなのに分かっていないとは、偽物が出た [続きを読む]
  • 第九十五話 呪われた家
  •  そろそろこの家は処分してしまった方がいいかと思い始めていた。叔父から遺された家だった。 叔父には妻も子供もいなかった。遺産相続は兄弟になる予定だった。叔父の兄にあたるわたしの父はすでに他界していたので、わたしにも代襲相続の権利があった。 叔父は亡くなる前に、わたしにこの家を相続させると決めていた。わたしは文句を言うつもりも、断るつもりもなかった。この家の古風なところが気に入っていたのだ。 ところ [続きを読む]
  • 第九十四話 呼び掛け
  •  朝、出勤のため駅に向かう途中のことだった。向かい側から歩いて来る人に声を掛けられた。「ああ。ちょっと、あなた」 突然呼び止められ、道でも尋ねられるのかと思った。「何でしょうか」「この先は真っ直ぐ行かない方がいい。そこは左へ曲がってください」「はあ。何でですか」 どっちへ進んでも同じで、進んだ先で合流するはずの道だった。左へ曲がると、ただ単に遠回りになるだけだ。「真っ直ぐ行くと、交通事故に遭います [続きを読む]
  • 第九十三話 起き上がれない
  •  出張先のホテルでのことだった。仕事はうまくいった。ホテルに一泊し、翌朝に帰る予定だった。部屋に入ってから寝るまで特に何事もなかった。 ところが、翌朝、目が覚めると体の自由が利かなくなっていた。金縛りではない。腕は動くし、目も動く。言葉も話せた。上半身を起こすことはできても、腰から下がまったく動かなかった。 仕事の疲れのせいか、それとも寝ている間にどこかに打ちつけたのか、原因は分からない。半身不随 [続きを読む]
  • 第九十二話 壁のシミ
  •  引っ越し先の新居には、ひとつ嫌なところがあった。借りるまで分からなかったことで、一部の壁にシミが浮き上がってくるのだ。 気味が悪いので、霊感のある友人に相談するため連絡をとると、旅行に出ている真っ最中で、しばらくは帰らないという。「このまま電話でいいから、ちょっと聞いてくれないか」「ああ、いいよ。一体どんなことがあったんだい」「壁に妙なシミが浮き上がってくるんだよ」「何だ、そんなことか」「君は簡 [続きを読む]
  • 第九十一話 公衆トイレ
  •  駅からの帰り道、公園の公衆トイレに入った。飲み会に行った帰りで、間もなく午前零時になろうかという時刻だった。 トイレ内の個室に駆け込み、急いで便座に座る。何とか間に合ってホッとした。 用を足し終えて、立ち上がろうとするが、立ち上がれない。金縛りと言うやつかと思い、一瞬怖くなったが、どうやらそんなものではないようだ。 何がどうなっているのか確かめる前に、ドアをノックする音が聞こえてきた。とりあえず [続きを読む]
  • 第九十話 ババ抜き
  •  仕事から帰るなり、娘がババ抜きをしようとうるさかった。妻と三人で食事を終えると、早速、居間のテーブルの上を片付けてトランプの用意を始めていた。 娘はまだトランプを覚えたばかりで、したくて仕方がないらしい。 風呂からあがって三人でババ抜きを始めた。 小学校一年になったばかりの娘を相手にわたしは負けまくった。 最初はわざと負けてやるつもりだったが、本気を出しても勝てない。「お父さんはあたしには絶対勝 [続きを読む]
  • 第八十九話 墓地
  •  下山途中でのことだった。夕暮れになって辺りは暗く、見えづらくなっていた。あと少しのところで、本来のルートを外してしまったらしかった。 下るに任せて進んでも問題はないはずだった。焦る必要はまったくない。 行き着いた先は小さな墓地だった。十数基の墓石が見える。花が供えてあり、蝋燭には火が灯り、線香は煙を漂わせていた。「ちょっと、通らせていただきますよ」 小さく、誰にともなく声を掛けて通る。 きれいに [続きを読む]
  • 第八十八話 眼鏡
  •  信号のない交差点を通るとき、何かにぶつかって乗り上げた。真っ直ぐ前を見ていたつもりだった。人も動物も何も見えなかった。だから、ぶつかるまでブレーキすら踏んでいない。 交差点を過ぎたところで、車を道路脇に寄せて停めた。車から降りて、走って来た道を振り返るが、道路には何も落ちていないし、人や動物が倒れているなんてこともない。 車の前に回ってみると、バンパーは少しへこんでいた。何かに当たったのは確かな [続きを読む]
  • 第八十七話 蛇
  •  最近、腕、腹、首、足、背中など体のいたるところが、ズキズキと痛むことがある。痛みを感じるところには、決まって赤い奇妙な縞模様が浮かび上がっていた。 今も左腕が酷く痛みだした。飲み会に行っていた友人を車で送ってあげているところだった。 助手席に座っている友人は、ぼくの異変に気付いたらしかった。ぼくの左腕を見つめたままで問い掛けてきた。「腕が痛むのか」「ああ、でも、大丈夫だ。心配いらないよ」「そうか [続きを読む]
  • 第八十六話 試験
  •  進学して高校一年になって初めての学期末試験のときだった。 四時限目は、ぼくの最も苦手とする数学の試験だった。ある問題で考えが行き詰まり、適当な回答を記したところで、一切の身動きがとれなくなった。頭というか、脳がどうにかなったと思った。次段階として気を失うであろうことを恐れ、不安が体中を駆け巡った。 ところが、なかなか意識は落ちない。ぼくは自分自身が人形にでもなってしまったような気分になった。 ぼ [続きを読む]
  • 第八十五話 禁煙
  •  会社の飲み会へ行った。ぼくを含めて二十人ほどの飲み会だった。 ぼくの部署が開催する飲み会で、他部署からも数人の女性社員が呼ばれていた。そのなかには、ぼくの気になっている女の子がひとりいた。 飲み会が進むうちに、煙草の話になった。今ここにいる二十人ほどの内で煙草を吸うのは、ぼくを含めて三人しかいなかった。 煙草を吸わない者のなかには、煙草を嫌っている者も少なくない。アルコールの勢いを借りてか、ぼく [続きを読む]
  • 第八十四話 盗難
  •  タクシー会社に就職した。一台のタクシーを割り当てられると、近くで見ていた、ほかの運転手たちが妙な顔でこちらを見ているのに気付いた。 わたしに鍵を渡した職員は、みんなを追い払うような仕草をする。みんなはそのまま仕事に向かって行った。 わたしもタクシーに乗り込み、初仕事にかかった。 駅前のタクシー乗り場で行列に並んでいると、トイレへ行きたくなり、車をそのまま置いて駅のトイレを借りに走った。 戻ってみ [続きを読む]
  • 第八十三話 道連れ
  •  今夜こそは目の前の女を殺そうと決めていた。いろいろと考えた結果、殺さない限り、この女と別れることは不可能だという結論に達していた。 睡眠薬とロープを用意してきていた。女の住む部屋で、自殺に見せかけて殺すつもりだった。 女は万にひとつも自分が殺されるとは思っていないはずだった。 女が作った手料理を一緒に食べながら、女は睡眠薬を混ぜたワインを何の疑いもなく飲み干して笑っていた。 時間はたっぷりあった [続きを読む]
  • 第八十二話 訪問者
  •  ぼくには霊感があった。友人が新たに引っ越した先の部屋を一度見てくれと言ってきた。 事故物件なら借主に伝える義務があるはずだが、騙されているかもしれないというのだ。こう言ってくる以上、何か霊的なことが起きているということなのだろう。 訪ねていくと、友人が恐る恐る玄関ドアを開き、ぼくを見てほっとした表情を見せた。幽霊以外に借金取りにでも追われてるのかと訊きたくなったが、余計なことを訊くと藪蛇になりそ [続きを読む]
  • 第八十一話 とおせんぼ
  •  道に迷っていた。 そのうち、車が一台やっと通れるくらいの細い道に入り込んでいった。 進んでいくうちに道路上に女の子が座り込み、何かを地面に描いているのが見えた。 クラクションを鳴らす。女の子は完全に無視をしている。 何度もクラクションを鳴らしているうちに、女の子は立ち上がって睨んできた。 窓を開けて叫ぶ。「どいてくれないか」「何でよ」「そっちへ行きたいんだよ」「だめだよ。あんたは通っちゃだめ」  [続きを読む]
  • 第八十話 ねずみ花火
  •  盆休みにいとこのお姉ちゃんがやって来た。 お姉ちゃんが着いたのは夕暮れのことで、伯父と伯母は後からやってくるとのことだった。 辺りが薄暗くなり始めたころ、待ち切れなくなったあたしは、恒例の花火を始めようとせがんだ。「伯父さんと伯母さんがまだだけど、始めちゃおうか」 父は花火の準備を始めた。庭に、水を汲んだバケツを用意し、火を灯した蝋燭を立てる。 母が花火のセット持ってきて、あたしに渡しながらお姉 [続きを読む]
  • 第七十九話 御守り
  •  ぼくは高校受験を間近に控えていた。 今日は母が御守りを買ってきた。学業成就の御守りだった。 父も母と同じことを考えていたらしく、御守りを買ってきて、夕食のときに出してきた。「あらっ。あなたも買ってきたの」「あなたもってことは、おまえも買ってきたのか」「さっき渡したところよ」「そうだったのか。まあ、ふたつあってもいいじゃないか。無いよりはたくさんあった方がいいだろうし」「そんな言い方はないでしょ。 [続きを読む]
  • 第七十八話 お化け
  •  一歳の息子を抱いて、小学一年生になる娘を公園に遊びに連れて来ていた。 わたしは息子を抱いたままベンチに座り、ぼんやりと、娘とその友達を眺めていた。 しばらくすると、娘たちは奇妙な遊びを始めた。 女の子の四人グループだった。一人と三人に別れ、一人が手を前に突き出して三人の方へ向かってよたよたと歩いている。三人はきゃあきゃあと笑いながら逃げ惑う。 一人が何かの鬼役でもやっているようだが、三人が一人を [続きを読む]
  • 第七十七話 ヒッチハイカー
  •  夕方になり、荷物の積み込みが終わったトラックに乗って長距離輸送に出た。 出発して間もなく重大な故障がトラックに起きていることに気づいた。 カーステレオ関係がうんともすんとも言わないのだ。向かう先の道順は分かっているのでカーナビが動かないのはどうでもよいが、ラジオはおろか音楽再生もできないのは非常に困る。このままでは走行音だけを聞きながら約八時間の運転をすることになるのだ。 どうしようにも今からカ [続きを読む]
  • 第七十六話 閉じ込め
  •  溜池のあるところで仕事をさぼって昼寝をしていた。営業の外回りと偽って昼寝をするのが習慣になっていた。 今日はいつもよりのんびりして終業時刻の前に帰社すればいいだろうと思っていた。 帰ろうとすると、溜池に続く道の途中にある扉が閉められていた。 おかしいなと思い、扉に掛かる看板を見てみると、午後四時で閉門すると書かれていた。ついこの前までは五時だったのに変更があったようだ。 扉は頑丈な閂で閉じられて [続きを読む]