「ねえ、和也君、キスしたことある?」 敦子が急にそう言いながら覗き込むようにして僕の顔を見上げた。女の子と付き合うのも敦子が初めてだというのにそんな経験が僕に…
自分の家族を貶されたような気がした。敦子の言う「普通の人たち」が僕の家族なのだ。だいたい朝早くから押しかけて来ておいてそれはないだろう。彼女の言葉には棘があ…
嘘を一つ吐くとその嘘を見抜かれない為には約30もの嘘を吐かなければならないのだと、いつか読んだ雑誌に書いてあった。敦子の吐いた嘘はその日からどんどん膨らんで…
翌朝、僕は携帯を握りしめたまま目を覚ました。洋服を着たままで、ベッドにうつ伏せになっていた。充電が切れた携帯のディスプレイは真っ暗で、飛び起きて机の横の充電…
携帯のディスプレイに敦子の名前が見えて、僕は出ようとして思わずそれを落としそうになった。それだけ慌てていたのだ。「もしもし?」「もしもし・・」 僕はほっとし…
「この町に住んでいない?」「ええ、そうよ。もう何年も前から・・」「そんな・・」「信じないのなら敦子さんの家に行ってみる?」「・・うん」 その見知らぬ少女は、「…
七月の太陽は容赦なく照りつけて来る。やはりどこからか蝉の声が聞こえて来た。そこでようやく小学校の校庭の周りにぐるりと木が植えられていることに気がついた。「ち…
受験生である僕にとって高校生活最後の春は敦子と共に始まった。ごく普通の家庭に生まれ、ごく普通の生活を送っていた僕はご多分に漏れず成績も普通だった。それでも未…
先に電車を降りる敦子を見送って僕はほっとため息をついた。彼女と同じ制服を着た女の子が何人も降りて行く。彼女は僕の方に小さく手を振ったが、その女子高校生の群れ…
何も変わり映えのしない毎日で、僕の身の上には何も起こらないまま老人になって行くのだろうか?十代の頃の僕はそう考えていた。 恥ずかしいことに若い僕はまるで人生…
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