トオルKOTAK さん プロフィール

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トオルKOTAKさん: トオルKOTAK  短篇小説
ハンドル名トオルKOTAK さん
ブログタイトルトオルKOTAK 短篇小説
ブログURLhttp://s.ameblo.jp/hiroyukifukushima2004/
サイト紹介文短篇小説集。一週間で読みきれる物語を7〜9回くらいに分けてアップ。題名ごとに「1/X」からどうぞ。
自由文都市や地方に住む人々の何気ない日常、普通の生活の中で起こる、数々の物語です。
参加カテゴリー
更新頻度(1年)情報提供180回 / 236日(平均5.3回/週) - 参加 2016/10/24 15:03

トオルKOTAK さんのブログ記事

  • 愛を見てきた(8/8)
  • 周りのスタッフがちょうど離れたため、根元は眼前の来訪者に自ずと気づいた。「おっ、こんなとこに招かざる客やないか」「初めまして、オフィス・サカエの江頭と申します。こちら、所属の砂田啓一郎です」根元と初対面の江頭は、連れの腰に腕を回し、ふたりの面識を承知のうえで、事務所の新人タレントを改めて紹介した。「おう、あんたはエトさんやろ。知っとるで。大城戸栄のパートナーのな……わしは音楽ギョーカイにも詳しいん [続きを読む]
  • 愛を見てきた(7/8)
  • 「エトさん、栄さんに砂田くんのこと伝えてくださいよ」「はい……そしたらやっぱり、砂田くんの名前も名刺に刷ってもらおうかな」飲み物にガムシロッップを入れて、江頭がほくそ笑む。「とにもかくにも、砂田くん。エトさんにくっついてしっかりやれよ。キミはこれからが本番だ。プライムグループのタレントとして、二度とヘンな写真を撮られないようにな」リセットされた俳優は、大城戸栄に宣言する気持ちで「はい!」と頷いた。 [続きを読む]
  • 愛を見てきた(6/8)
  • 差し出された名刺で、砂田は相手の名前と顔を一致させる。プライムグループの神門(かんど)ヒロキ。ジミーFの育て親で、芸能界に広く知られた存在だ。東日本大震災から1年4ヵ月が経ち、世間の大半はその爪痕を忘れかけている。はたして、「売名行為」というバッシングを神門は知っているのか。安曇野サオリとの潔白を信じてくれるだろうかーー砂田はアイスコーヒーを口に含み、この1ヵ月あまりの出来事を追想する。まるで、映画か [続きを読む]
  • 愛を見てきた(5/8)
  • ちょうど、iPhoneがタイミングを計ったように着信を告げ、砂田は表示画面を確認した。相良からだ。メッセージは録音されていない。オフの日に電話があるのは珍しく、仕事のやりとりならメールで済むはずだが。コールバックのために会場をいったん出て、人気(ひとけ)の少ないロビーで端末を耳にあてた。呼び出し音が続く。運動したわけでも、飲酒したわけでもないのに、脈拍が速まる。「ごめん、運転中なもんで」ようやく繋がった。 [続きを読む]
  • 愛を見てきた(4/8)
  • 言った後で、キャップのつばを下げて、エフが口をすぼめる。「エフは『天知る地知る』の集まりに行くんだろ?」会話の途絶えたテーブルで、砂田は話題を変えた。「天知る地知る」は、ふたりが出演したドラマだ。正しくは「天知る地知るチルチルミチル」。再来週、そのDVD発売記念のパーティが銀座のホテルで開かれる。いわば、キャストとスタッフの同窓会であり、震災を経て創ったドラマの労苦を思えば、戦友会というべきものだ [続きを読む]
  • 愛を見てきた(3/8)
  • ハガキサイズの1枚の写真。室内に座る人々の中央で、ジミーFと砂田啓一郎がペットボトルの水と使い捨てカイロを配っている。既に有名人だった黒人歌手は、マスクとニューヨーク・ヤンキースのキャップで顔を隠していたのに、目ざとい一般人に声をかけられたり、ケータイをかざされたりもした。ケイは「プレゼント」をじっと見つめた。15ヵ月前の3月11日。あの日あの時間、砂田たちはドラマのロケ隊とともに新宿の中央公園にいた [続きを読む]
  • 愛を見てきた(2/8)
  • 新人劇団員だった砂田啓一郎が、地方局のスペシャルドラマと全国ネットの連続ドラマで一躍注目株になった昨年、その砂田をスターライト・プロモーションにアテンドしたのが荒川で、マネージャーの相良は寿限夢×2のOBだった。 「もう、オレはテレビ屋とのパイプがほとんどないから、お前は後藤田さんとこで面倒見てもらえ」NHKの単発ドラマが砂田をオファーした夜、新宿3丁目のバーで荒川は言い、我が子を旅出たせる想いで [続きを読む]
  • 愛を見てきた(1/8)
  • 1 ガラス天板のローテーブルに写真週刊誌が置かれている。逮捕状を突き付けられた思いで、砂田啓一郎は唇を噛んだ。半年前、マネジメント契約の書面にサインし、事務所代表の後藤田(ごとうだ)と握手を交わした応接室。ブラインドから差し込む斜陽が雑誌の表紙にコントラストを生み、文字がいっそう鮮やかに見えた。ーーー激写!安曇野(あずみの)サオリと若手俳優、ラブホテルの熱い夜ーーー砂田が目を背けたとき、マネージャーの [続きを読む]
  • 々(ノマ)(8/8)
  • 「それは、たまたまだね。僕の苗字は関係ない」「呼び名があるって……あくまでも記号なのね」「そう。で、作家っていうのは、そのノマみたいな存在だと思うんだ。いろんな音(おん)……つまり、いろんな表現で何かの意味を創る。『人々』みたいに複数形を作ったり、『佐々木』や『代々木』みたいに前の音を反復して次の文字に繋げたり。ノマの役割はさりげないけど、すごく大きいよ」かみ砕いた説明を素直に飲み込んでみた。いまひ [続きを読む]
  • 々(ノマ)(7/8)
  • わたしは言葉を返せない。ドラマについては、たしかに不満はあるけど、「仕方ない」という気持ちも芽生えていた。文学と映像のドラマは別世界のもので、それぞれに適した表現方法があるはず。テレビ局も、けして手抜き仕事で作品に接しているわけじゃないだろう。小説の執筆が行き詰まるにつれ、そんなふうに状況を客観視するようになっていた。「あの脚本……すごく苦労してまとめたカンジだよな。原作のディテールをなんとか残そ [続きを読む]
  • 々(ノマ)(6/8)
  • 「役者もたいへんだよなぁ。メジャーなところはまだしも、世の中の多くの劇団員はアルバイト生活だろ」「……好きじゃないと続けられないわね」心ここにあらずの応えを途中駅の発車メロディに被せた後で、売れない作家と役者のどちらが辛いかを考え、砂田啓一郎の立ち振る舞いを思い出す。背が高く、ハンサムで、芝居はぎこちなく見えたけど、他の出演者にはないオーラがあった。吊り革がスピードの緩急でまったりと揺れ動く。幼い [続きを読む]
  • 々(ノマ)(5/8)
  • 「小説のドラマ化って、そんなもんじゃないの?」「納得出来ないなぁ。ストーリーだけ盗まれたようなもんだ」腕時計を見て、野間口さんは唾棄する感じで言った。「相談したい」と言われてやって来たわたしは、聞き込み中の刑事っぽく手帳を開き、問題と冷静に向き合う。「テレビ局は、『一応』許諾を取って置きたいってことだけど、わたしたちはどこまでノーを言えるのかしら?」ペン先を紙に留め、意識的に声色を柔らかくした。「 [続きを読む]
  • 々(ノマ)(4/8)
  • 昨年のクリスマスに「伊達直人」と名乗る者が群馬県の児童相談所に10個のランドセルを送り、その報道を皮切りに匿名の寄附活動が全国に拡まったという。擁護施設に届く物は、玩具・文房具・商品券……検査が必要な食品類もあるらしい。母とふたりで暮らしていた頃、わたしの誕生日に必ず届く贈り物には「九州のオジサンより」とあった。他にメッセージはなかった。包みを開けるわたしを母はどこか哀しげな目で見つめ、高校に入学す [続きを読む]
  • 々(ノマ)(3/8)
  • 「熊本にいるのは父親じゃなくて、元父親よ。それに、わたしは砂田謙吾という人をリスペクトしてないから、『ご尊父』っていう呼び方はちょっと……」「あっ、ごめんごめん。適当な言い方がないもんでさ」「『知り合いの砂田』とか『昔のお父さん』とか……」こちらの子供じみた言い分を殊勝に受け入れて、野間口さんは「じゃあ、『ミスター砂田』が妥当かな」と笑った。熊本行きのずっと前から「昔のお父さん」の存在を伝えていた [続きを読む]
  • 々(ノマ)(2/8)
  • 熊本市方面に伸びる国道が少しの渋滞もなく車を走らせていく。窓の外を眺めるわたしに、運転手は会話を振らず、ラジオから流れる曲に鼻歌を乗せている。……そう、いまは鼻歌くらいあっていい。夏に出したわたしの3作目の小説が、名古屋の地方局でドラマ化されることになって、ネガティブ思考な作者が半信半疑なのをよそに、編集者の野間口さんはすっかりテンションを上げている。「タイトルは変えられちゃったけど、佐々木有美の [続きを読む]
  • 々(ノマ)(1/8)
  • 1 願(がん)かけ石。「心に願いごとを念じ、この神石を撫でること三度、更に願いごとを唱えるべし」次の小説と砂田謙吾のことを考えながら、そう書かれた案内板を右手でそっと触れてみる。注連繩(しめなわ)が掛かった神石は、雨風を避けた小さな社殿に納められているので目立つ傷みはない。黄昏に鎮座する神々しさに背筋を伸ばすと、本殿に向かう制服姿の女子高生が目に留まり、このパワースポットが縁結びでも知られることを [続きを読む]
  • 変態ゲームGO!GO!(8/8)
  • ジミーFは、チームメンバーの「変態」の催促に慌てて立ち上がり、両手で頭を抱え込むようにして廻り始めた。直径1メートルの範囲をぐるりぐるり。スタッフの哄笑が起こる。体を丸めて顔を下に向けているので、ピンク色の布団が洗濯機のドラムに操られているみたいだ。「なに、それー?」「泳いでんのか?」「次、次!その後!」チームメンバー同様、正解が分からないヤマドリも心の中でジミーFのジェスチャーを煽った。35・30・ [続きを読む]
  • 変態ゲームGO!GO!(7/8)
  • 声を押し殺した管理部長の迫力に、ヤマドリは気持ちを落ち着けようとソファに深く座り直した。捏造・虚偽・断罪・横領……言葉の不穏な響きに胸の鼓動が乱れる。「ディレクターとかプロデューサーとか、芸能界に密接している者の周りには、多かれ少なかれ、キナ臭い話がつきまとうもんだ。しかし、島田広志については状況証拠が揃っている。我々は、架空の領収書を書けないよう、手も打ってきた」奥歯を苦々しく噛み締める様が、頬 [続きを読む]
  • 変態ゲームGO!GO!(6/8)
  • 帽子の傾きを正した神門の隣りで、社長の福井が島田にアイコンタクトした。「……ヤマ、実はな、ひとつ相談事があるんだよ」「相談というか、お願いです」島田の切り出しに、福井がコーヒーカップの飲み口を親指の腹でなぞりながら加え、神門は前屈みの姿勢を正した。「お前の……嶋田孝プロデューサーの記念すべきスペシャルドラマに、ゲスト扱いでジミーFさんを出演させてほしいんだ。歌だけじゃなく、本人をさ」ヤマドリは驚き [続きを読む]
  • 変態ゲームGO!GO!(5/8)
  • プライムレボリューションは、CDメーカーであるプライムミュージックのアーティスト・マネジメント会社だ。福井は双方の会社の代表取締役を務め、鳥打帽の神門はミュージック側の専務取締役だった。「福井社長にそう言ってもらえると、ヤマドリも出向している甲斐がありますよ」同期社員の心情を代弁するかたちで島田が言い、空いた皿を片づける店員に純米酒を注文した。「北海道のローカル局なんかも独自のバラエティやドラマで [続きを読む]
  • 変態ゲームGO!GO!(4/8)
  • 「もしもし」「島田でーす。ヤマ、昨日はお疲れ!もう仕事か?」丑三つ(うしみつ)時まで痛飲した者とは思えない溌剌とした声。ヤマドリは昨晩のお礼を言った後、虎ノ門にあるメーカーにドラマのDVD化交渉に向かう途中だと伝えた。「そうか、コンテンツの2次セールスは必須だよな。売上げをそこでどれだけ見込めるかだ。番販も手広くやっとくべきだぞ」自宅からの電話だろう。テレビの音声を背後に、島田は上司よろしく、ヤマド [続きを読む]
  • 変態ゲームGO!GO!(3/8)
  • 「変態!」「GO!GO!」グラビアアイドルの甲高い声と芸人の野太い声……非日常のバカ騒ぎで、年甲斐もなくはしゃぎ過ぎた。ヤマドリは遮光カーテンを開けて、ゲンコツで後頭部を2、3度叩く。休んでいる暇はない。デスクに置いたノートブックパソコンが起動する間に、携帯の受信メールを開いた。「今日は対外試合で勝ったよ!」娘のメールだ。彼女の送信時刻は夜中の2時。部活から帰り、受験勉強を終えて寝る前に書いたのだ [続きを読む]
  • 変態ゲームGO!GO!(2/8)
  • 「……そう、担当のベテランプロデューサーが急に入院しちゃってね。ボクが代わりを務めることになったわけ」ヤマドリが事実を打ち明けると、一発ギャグをウリにするモヒカン芸人が「いよっ!大プロデューサー」と、指笛を鳴らした。「いやいや、ボクはプロデューサー補だよ」「ホ?補欠の『ホ』っすか?」「バカ!謙遜よ。ホームランの『ホ』でしょ!」「ホームランで放送大賞!」漫才めいたやりとりの中、スーツにネクタイのヤマ [続きを読む]
  • 変態ゲームGO!GO!(1/8)
  • 1 取引先の接待を終えたヤマドリは、六本木の「ミーノー」にタクシーで向かいながら、島田広志からのメールを開く。「ギロッポン、ミーノー」の後にマップへ飛ぶURLがあり、「遅刻15分につき1曲」と書かれている。ギロッポンは六本木。ミーノーは飲み。46歳のオジサンになっても、同期の島田のノリは変わらない。むしろ、いっそう元気になったと思いつつ車を降り、芋洗坂を下った。新年会のシーズンだが、月曜日のせいか [続きを読む]
  • 銀幕のネズミ(8/8)
  • 片側二車線の道路を左折し、商店街のゲートでアクセルを緩めて公衆電話を捜す。駐車違反の取締まりが厳しいのか、辺りの路上に車はなく、いつでもどこでも停められたけど、肝心な電話ボックスがなかった。コンビニ前に据え置かれた雪ざらしの公衆電話はちょうど使用中で、傘のない監督を降ろすわけにも行かず、僕の車はアーケードをいったん離れた。「なかなかありませんね………」「世の中、携帯電話ばっかで、クラーク・ケントも [続きを読む]