森田 享 さん プロフィール

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森田 享さん: 物語作家 小説家 森田 享
ハンドル名森田 享 さん
ブログタイトル物語作家 小説家 森田 享
ブログURLhttps://ameblo.jp/torujiro/
サイト紹介文私の書いた物語や小説、映画原作などを、このブログやアマゾンのkindleストアで発表していきます。
参加カテゴリー
更新頻度(1年)情報提供63回 / 258日(平均1.7回/週) - 参加 2016/12/29 11:56

森田 享 さんのブログ記事

  • 自伝短編小説『幼年時代「戸田少年(下)」』
  •  戸田少年は、港南台の大型商店で、私にジュースや菓子パンを買ってくれた。そして、亀にパン屑などを与えていたが、亀は食べてはいなかったように思う。まだ私は、お金の感覚なんて無かったが、彼も子供だから、そんなにお金を持っていたはずがない。たしか彼自身も、「もうお金がないや」、と言っていた。しかし、ふいに彼は目を光らせて、商店の中へ入って行った。 そうして、彼は、何回か万引きをして見せて、私を驚か [続きを読む]
  • 自伝短編小説『幼年時代「戸田少年(中)」』
  •  まだ朝の七時か八時だったと思う。私は母に、兄の友達の戸田くんと鼬川から山の方まで亀を捕まえに行って来る、と言った。母は、なぜ戸田くんと二人でなのか、なんで兄は一緒に行かないのか、などと尋ねたかも知れない。私は、とにかく大きな亀を捕まえに行きたいことを言い張ったと思う。あまり遠くまで行かないこと、昼過ぎくらいまでには帰って来ること、そのようなことを、母は私に注意しただろう。でも私はまだ、そん [続きを読む]
  • 自伝短編小説『幼年時代「戸田少年(上)」』
  •    戸田少年  あれは、私が六歳の夏の頃であった。来年の春には、私も小学校へ通い始めるということを何となく意識していたためなのか、近所の同い年の友達や自分が通う幼稚園の友達に飽きていたためなのか、はっきりとは記憶していないが、その頃の私は、四歳年上の兄が、ときどき家へ連れて来る友達に興味津々であった。小学校というのが、どういうところなのか、そこにはどんな友達が集まって来るのか。その情報を得よ [続きを読む]
  • 自伝短編小説『幼年時代「迷子」』
  •    迷子(まいご)  ここに、これから私の最初の記憶と呼べるものを書き記そうと思う。 あれは私が四歳になる前くらいの、ある夏の日の午後だった。 まだ物心が不完全であった私にとって、川崎市武蔵小杉の社宅団地の敷地内が、私の世界の、すべてであった。社宅団地の敷地内には必要なものが何でもあり、なんの不足もないようだったから、私の目には、敷地外の世界のことは無用で、空に続いているただの風景のようだっ [続きを読む]
  • さようなら
  • 『   あの人はもう  思い出だけど  君を遠くで 見つめてる   あの人の目が  うなづいていたよ  別れも愛の ひとつだと                   』                                          (「銀河鉄道999」より) [続きを読む]
  • 私の心に残った名言
  • 『12歳の時のような友達を持つことは二度とできない。 誰でも、そうなのではないだろうか?』                                    (映画『スタンド・バイ・ミー』より) 『子供の頃、一日は永遠に続くような気がした。 大人となった今は、あの頃が、ほんの一瞬に思える』                                    (映画『アトランティスの [続きを読む]
  • 連作短編小説『夢物語「洞穴(後編)」』
  •  私は平静を取り戻して、彼の体を、よく監察してみた。彼の左足は明らかに変形していた。おそらく、狩猟の時に、ひどく骨折して歩行も困難になったのだろう。この石器時代では、走るどころか食物採集のために普通に歩くこともできない彼が、自力で生き抜いていく道はない。 私は好奇心から彼に訊いてみた。「その足の怪我は狩りのときに負ったのか。それとも、まさか戦争か何かで?」「戦争だって?」「獲物を奪い合ったり、 [続きを読む]
  • 連作短編小説『夢物語「洞穴(前編)」』
  •    洞穴  小さな川の向こう岸へ渡って、森の中に小道を見つけた私は、その暗い上り坂を進んで行った。 川沿いの道をずっと歩いて、ここまで来たので、下流の町の音はもう聞こえないし、何時間も人に行き会っていなかった。その内に、もう何日も人と接触したことがなく、たった一人で文明から遠く離れた場所にいるという気がしてきた。 暖かな春の木洩れ日を感じながら私は、獣道のような坂を上っていて、木々の向こう [続きを読む]
  • 連作短編小説『夢物語「鯨」』
  •    鯨  夜明け前の渚を、私は一人で歩いていた。 薄暗い空の下の黒い海に、微かに白い波頭が立っては砕け散り、暗い砂浜に、黒い生き物のような波が広がる。滑るように寄せては返す波を見ていると、意識が海に引き込まれていくように感じた。 歩き続けていると、やがて辺りは乳白色に明るみ、東の水平線の太陽が昇ろうとしているあたりが、薄紫色から徐々に薄桃色に染まってゆく。 まだ薄闇に暗く沈んでいる足下の砂 [続きを読む]
  • 連作短編小説『夢物語「卵(後編)」』
  • 鯨の卵にしては小さ過ぎるのか、いやいや鯨の卵であるはずはないので、質問を変えてみた。「まあ、何の卵であるとしても、今まで話してみて、お前は孵化したら、すぐに全力で走り出したり、泳ぎ出したりしそうな感じだな」「まあ、すぐに自分の身を守るために、全力で走り出せる自信があるな。哺乳類でも、すぐに歩き出したり泳ぎ出したりするのが多いけど、それでも親に手厚く守られているから、羨ましいよな [続きを読む]
  • 連作短編小説『夢物語「卵(前編)」』
  •    卵 「そろそろ出て来たらどうなんだ?」 私は、今までに見たこともないくらいに大きな白い卵に向かって、そう言った。その卵は、いわゆる私が、まず思い浮かべる卵の色かたち、つまり鶏の卵のようなのだが、ただそれは駝鳥(だちょう)の卵の十倍以上はあるだろうか。とにかく両手でも抱え切れないほどに巨大な卵なのだ。卵は、のっぺりと表情もなく、およそ話し相手にはなりそうもな [続きを読む]
  • 連作短編小説『夢物語「夜の丘(後編)」』
  • 「もう、行きます」俯き、星明かりを失って沈んだ影になっているはずの私の顔を見て、女は、そう言った。女の視線を痛々しいように感じながら私は、呼吸も忘れてしまったかのように、胸を詰まらせながらも無理矢理、溜息を漏らして、明るい星空を見上げた。私の顔を微かに照らし、南の空に白く輝いている大きな星を見つめながら私は、まだ何とか彼女の感情に訴え掛けようと試みていた。「私は作家だから [続きを読む]
  • 連作短編小説『夢物語「夜の丘(前編)」』
  •    夜の丘 「君は、もう行ってしまうんだね……」「…………」「そうだろう?」 こんなに幻想的な、満天の星が輝き夜空に満ち溢れ落ちて来そうな、不思議とほの明るい夜の丘。その頂きに一本だけそそり立っている巨木が、丘の上に漆黒のような濃く深い影を落としていた。その闇の中には一人の男が立っている。今、その暗闇の中から、思い詰めたような顔をしたその男が、一歩だけ足を前に [続きを読む]
  • 悲恋怪談『滝壺の底』(その十八)
  •  今、この露姫の影虎に対する心情を、玄有の口から聞いた安明の亡霊は、肉体だけで無く、魂までをも失ってしまったかのようで、ただそこに揺らめいている。「…………」 露姫との睦言を回想して語り終わった玄有は、これを聞いた安明の沈黙が、絶望によるもので有ると推断した。そして、自身の命の存続に一縷の光を見い出して、さらに、熱情を持って語り続けた。「安明、いや影虎よ。露姫にとって、お [続きを読む]
  • 悲恋怪談『滝壺の底』(その十七)
  •  午後の陽光が降り注ぐ岩山の頂上を逃げ惑っている玄有の背後に、熊太郎の巨体が迫って来た。「やいっ坊主、往生際が悪いぞ! いい加減に観念しろ!」 濁声を張り上げ、野獣のような敏捷性を見せる熊太郎は、玄有を追い込んで行き、早くも滝壺の真上の崖っぷちにまで追い詰めた。 玄有は、崖の淵に足が掛かると、覚悟を決め、滝壺を背にして熊太郎の方に向き直り、開いた掌を突き出して [続きを読む]
  • 悲恋怪談『滝壺の底』(その十六)
  •  今、露姫は、この一瞬の間に、頭の中に明滅した記憶の光景から解放され、意識を再び目の前の現実に集中させようとしている。ちょうど一年前、影虎と離れ、それから、玄有によって、ほとんど幽閉生活に落とされた、その人生の空白期間とも言うべき日々から、急に元の自分自身を取り戻した戸惑いもある。それでも、露姫は、玄有が鶴丸を凝視しながら激しく狼狽しているのを見て、「玄有和尚。影虎 [続きを読む]
  • 悲恋怪談『滝壺の底』(その十四)
  •    鶴丸  安明の許に走り寄って来た鶴丸は、円らな瞳で安明の顔を見上げながら助けを求めた。「影虎、何をしている? お前は、いつも姉上を助けるのに」「…………」安明は絶句して、驚愕の表情で鶴丸を見下ろしている。玄有は緊張したまま、安明の亡霊に話し掛けている様子の鶴丸と、安明が居るであろう辺りを注視していた。鶴丸は尚も、安明の顔を見上げながら、今度は命令し始めた。 [続きを読む]
  • 悲恋怪談『滝壺の底』(その十三)
  • 本堂の暗闇の中で、仁王立ちの熊太郎。その熊太郎の足下には露姫が蹲っている。玄有は、露姫を見て激しく惑乱していた。 露姫のすぐ近くで、安明は夢見るように、露姫の若々しく艶めかしい容姿を見つめながら、この急展開した目の前の信じられない現実を理解しようと懸命になっている。熊太郎は酒に酔っているので、普段より更に大きな濁声で喚き散らした。「飯を喰い終わって、何か金目の物は無いかと [続きを読む]
  • 悲恋怪談『滝壺の底』(その十二)
  • 『梅雨どきの雨が、しとしと降り続いている。じめじめとした本堂の暗闇の中で一人、座禅を組み瞑想している安明。しかし、安明の表情には、孤高ではなく、絶望という現実の色が濃いままで、今その堅く閉じた目から再び、涙が一筋、流れ落ちた。突然、目を見開いて立ち上がった安明は、左足を引き摺りながら本堂の扉を開けると、煙るような霧雨の中へ出て行った。雨に打たれ、全身がずぶ濡れ [続きを読む]