miki2017 さん プロフィール

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miki2017さん: 空木の影 小さな窓に
ハンドル名miki2017 さん
ブログタイトル空木の影 小さな窓に
ブログURLhttp://miki2017.blog.fc2.com/
サイト紹介文ブライスと日常
参加カテゴリー
更新頻度(1年)情報提供112回 / 151日(平均5.2回/週) - 参加 2017/01/07 22:14

miki2017 さんのブログ記事

  • (無題)
  • 「時々ママはね、坊やがわたしの想像の世界に生きていて、こうして生きているのが本当じゃないような気がするのよ」少年は頭をあげ彼女の面前であくびをした。彼の口の内部が西日の最後の光線で満たされた。 マルグリット・デュラス   『モデラート・カンタービレ』 [続きを読む]
  • 女はうつむけになり、藁の中に頬を埋めて動かなくなった。かける言葉がなくて、私は耳もとに口を寄せて名を呼んだ。いましがたまで、誰を抱いているのかわからなくなりそうな空恐ろしさから、胸の中でくりかえし呼びかけていた名前だった。ところが、「佐枝」と声に出して呼んでしまってから、私ははっとして顔を引いた。サエ、とむきだしの響きがした。ひょっとすると、やっぱり老婆の名前ではないか、死にかけている婆さんの名前 [続きを読む]
  • 言葉の色
  • しゃべれなくなって2日間くらいは、私はしゃべれたときとまったく同じ思考をしていた。たとえば、姉に足を踏まれれば、「痛い。」とはっきり言葉で思った。それを音声にしないことで、微妙な変化が起こってきた。言葉の後ろに広がる色が見えてきたのだ。姉が私に優しく接しているとき、私は姉をピンクの明るい光のイメージでとらえた。英語を教える母の言葉やまなざしは、落ち着いた金色、道端で猫を撫でれば、手のひらを通して山 [続きを読む]
  • しゃべれなくなって2日間くらいは、私はしゃべれたときとまったく同じ思考をしていた。たとえば、姉に足を踏まれれば、「痛い。」とはっきり言葉で思った。それを音声にしないことで、微妙な変化が起こってきた。言葉の後ろに広がる色が見えてきたのだ。姉が私に優しく接しているとき、私は姉をピンクの明るい光のイメージでとらえた。英語を教える母の言葉やまなざしは、落ち着いた金色、道端で猫を撫でれば、手のひらを通して山 [続きを読む]
  • しゃべれなくなって2日間くらいは、私はしゃべれたときとまったく同じ思考をしていた。たとえば、姉に足を踏まれれば、「痛い。」とはっきり言葉で思った。それを音声にしないことで、微妙な変化が起こってきた。言葉の後ろに広がる色が見えてきたのだ。姉が私に優しく接しているとき、私は姉をピンクの明るい光のイメージでとらえた。英語を教える母の言葉やまなざしは、落ち着いた金色、道端で猫を撫でれば、手のひらを通して山 [続きを読む]
  • かたい約束と 忘れた言葉
  • 私は大切にその痛みを撫でた。摩擦は思ったより楽しかった。「気持ちわりぃ」という、ずっと必死に避けようとしていた言葉を、井上君から得ることができて、なぜか嬉しかった。ちゃんと気持ち悪くなれたことが、いいことに思えた。あれほどおびえていた、「気持ち悪い」という形容詞を、一つ一つ、大切に集めて回っているようで、自分でも不思議だった。でもそれは、いつか若葉ちゃんに見せてもらった、宝石箱の中の、おもちゃの指 [続きを読む]
  • 白 
  • ずっと身体の中にあって、いつも振り回されていた欲望に、はじめて自分で触れていた。欲望は、溜め込むのではなくて奏でる、ものなのだと思った。疼きは音楽のようなものでできていて、肉体は、それを演奏するためにあるのだ。伊吹の、あのとき聞いた、小さな悲鳴のような呼吸が耳に蘇った。そのときの濡れた目と、舌に広がる体温を思い出した瞬間、爪先からぴりっと、小さな、光の粒でできた雷のようなものが走って、脚の間からそ [続きを読む]
  • 「小学校の頃の若葉ちゃん、いつもきらきらしていた。あの頃、私、ずっと若葉ちゃんみたいになりたかった。でも今、昔と違う気がする。ずっと思っていた」私から転げ落ちた言葉は、保健室の空気を震わせて、若葉ちゃんに触れた。そうして誰かに触れることは初めての経験だった。「・・・・・・・」若葉ちゃんは不愉快そうに眉を寄せた。私は続けた。水溜りに人差し指で触れたように、波紋になって自分の発した言葉が世界に広がって [続きを読む]
  •   白い壁に圧される 
  • 熱がコントロールできなくて、それをぶつけるように、私は突き刺すように、舌の先で伊吹の舌を引っ掻いた。絡めるというより叩くように、何度も伊吹の柔らかい舌に舌をぶつける。伊吹は逃げるように口を動かして、歯が私の舌を挟んだけど、噛むことはできないみたいだった。私の舌はお菓子を買ってくれなくて駄々をこねる子供の手足みたいに、めちゃくちゃに暴れていた。何度も何度も伊吹の舌を舌でたたきながら、涙が滲んだ。私が [続きを読む]
  • 機会
  • 「人は自分の死を予知できず、人生を尽きせぬ泉だと思う。 だが、物事はすべて数回起こるか起こらないかだ。 自分の人生を左右したと思えるほど大切な子供の頃の思い出も、 あと何回心に思い浮かべるか?せいぜい4,5回思い出すくらいだ。 あと何回満月を眺めるか?せいぜい20回だろう。 だが、人は無限の機会があると思い込んでいる。」ポール・ボウルズ水に濡れた,冷たい髪の毛をタオルで拭きながら,私はあることを考えていた。 [続きを読む]
  • 黒い鍵
  • 「人は自分の死を予知できず、人生を尽きせぬ泉だと思う。 だが、物事はすべて数回起こるか起こらないかだ。 自分の人生を左右したと思えるほど大切な子供の頃の思い出も、 あと何回心に思い浮かべるか?せいぜい4,5回思い出すくらいだ。 あと何回満月を眺めるか?せいぜい20回だろう。 だが、人は無限の機会があると思い込んでいる。」ポール・ボウルズ水に濡れた,冷たい髪の毛をタオルで拭きながら,私はあることを考えていた。 [続きを読む]
  • 思いおこす
  • 「人は自分の死を予知できず、人生を尽きせぬ泉だと思う。 だが、物事はすべて数回起こるか起こらないかだ。 自分の人生を左右したと思えるほど大切な子供の頃の思い出も、 あと何回心に思い浮かべるか?せいぜい4,5回思い出すくらいだ。 あと何回満月を眺めるか?せいぜい20回だろう。 だが、人は無限の機会があると思い込んでいる。」ポール・ボウルズ水に濡れた,冷たい髪の毛をタオルで拭きながら,私はあることを考えていた。 [続きを読む]
  • 優しい人々
  • 水の入った器私は最近になって,自分の目がひどく曇ってしまっているような気がしまして,何とかしなければと思うようになりました。ガラスのレンズに,汚れが付着しているような感じて,言葉を書いても,直ぐに消してしまいます。目を洗うために,今まで以上に沢山の小説を読むことにしました。美しい文章の本をはじめ,言葉の世界を拡張していく,独創性の感じられる文体の物語などが,激しく流れる水のように,私の身体全体を貫 [続きを読む]
  • メモに残した者たち
  • 水の入った器私は最近になって,自分の目がひどく曇ってしまっているような気がしまして,何とかしなければと思うようになりました。ガラスのレンズに,汚れが付着しているような感じて,言葉を書いても,直ぐに消してしまいます。目を洗うために,今まで以上に沢山の小説を読むことにしました。美しい文章の本をはじめ,言葉の世界を拡張していく,独創性の感じられる文体の物語などが,激しく流れる水のように,私の身体全体を貫 [続きを読む]
  • 残りの椅子
  • 水の入った器私は最近になって,自分の目がひどく曇ってしまっているような気がしまして,何とかしなければと思うようになりました。ガラスのレンズに,汚れが付着しているような感じて,言葉を書いても,直ぐに消してしまいます。目を洗うために,今まで以上に沢山の小説を読むことにしました。美しい文章の本をはじめ,言葉の世界を拡張していく,独創性の感じられる文体の物語などが,激しく流れる水のように,私の身体全体を貫 [続きを読む]
  • 継続している夢
  • 水の入った器私は最近になって,自分の目がひどく曇ってしまっているような気がしまして,何とかしなければと思うようになりました。ガラスのレンズに,汚れが付着しているような感じて,言葉を書いても,直ぐに消してしまいます。目を洗うために,今まで以上に沢山の小説を読むことにしました。美しい文章の本をはじめ,言葉の世界を拡張していく,独創性の感じられる文体の物語などが,激しく流れる水のように,私の身体全体を貫 [続きを読む]
  • 目を隠す
  • 私は最近になって,自分の目がひどく曇ってしまっているような気がしまして,何とかしなければと思うようになりました。ガラスのレンズに,汚れが付着しているような感じて,言葉を書いても,直ぐに消してしまいます。目を洗うために,今まで以上に沢山の小説を読むことにしました。美しい文章の本をはじめ,言葉の世界を拡張していく,独創性の感じられる文体の物語などが,激しく流れる水のように,私の身体全体を貫いていきます [続きを読む]
  • 塞がれていく道
  • ひっそりと夏は去った 暖かいというだけでは淋しい 楽しい夢が叶えられるとしても ただ、それだけでは淋しい  善も悪も明るく燃え上がる ただ、それだけでは淋しい 生は私をやさしく包んでくれる 幸せというだけでは淋しい 葉は焼かれず枝も折られないで さわやかというだけでは淋しい アンドレイ・タルコフスキー  「ストーカー」 [続きを読む]
  • 無 私
  • 本居宣長の説によれば、「かんがふ」は、「かむかふ」の音便で、もともと、むかえるという言葉なのである。「むかふ」の「む」は「身」であり、「かふ」は「交ふ」であると解していいなら、 考えるとは、物に対する単に知的な働きではなく、物と親身に交わる事だ。小林秀雄 「本居宣長」 [続きを読む]
  • 先日,新宿の画廊で久しぶりに母に会った。母の作品を観るのは,何だかひどく懐かしく思え,私は幾度も同じ場所を歩き回りながら,母の描いた絵画の表面を観た。ガラスのケースに入った円形の板や,三連になった祭壇風の絵画もあった。黒い服の男たちが行列になって歩いている写真がコラージュ作品の一部にあり,夜の,深い森のイメージを想像した。小さなソファーに座っていた母が,私に声をかけ,隣に座るように促した。私は横に [続きを読む]