Empty Study さん プロフィール

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Empty Studyさん: 青空文庫の感想ブログ
ハンドル名Empty Study さん
ブログタイトル青空文庫の感想ブログ
ブログURLhttp://emptystudy.blogspot.jp/
サイト紹介文主に青空文庫の感想を書いています。そのまま読める作品リンク付き。
参加カテゴリー
更新頻度(1年)情報提供138回 / 46日(平均21.0回/週) - 参加 2017/02/12 10:05

Empty Study さんのブログ記事

  • 「太宰治情死考」 坂口 安吾
  • すぐれた魂ほど、大きく悩む。太宰がメチャメチャに酔って、ふとその気になって、酔わない女が、それを決定的にしたものだろう。 泥酔して、何か怪(け)しからぬことをやり、翌日目がさめて、ヤヤ、失敗、と赤面、冷汗を流すのは我々いつものことであるが、自殺という奴は、こればかりは、翌日目がさめないから始末がわるい。 太宰のような男であったら、本当に女に惚れゝば、死なずに、生きるであろう。元々、本当に女に惚れる [続きを読む]
  • 「異端者の悲しみ」 谷崎 潤一郎
  • 「こは予が唯一の告白書にして懺悔録なり」。谷崎潤一郎の自伝的作品はいくつか見られるが、谷崎にとってはこれが唯一のものであるらしい。大文豪である谷崎にこのような時代があったのかと驚かされる。蓄音機を壊す騒動など中学生の反抗期のようだ。さして親しいわけでもない友人から見栄と遊びのための金を借り(返すあてもないのに、である)、その友人が病で死んでしまったので金を返さないで済んだ、という、今風に言うととん [続きを読む]
  • 「猿面冠者/『猿面冠者』あとがき」 太宰 治
  • 伝聞のような、ちょっと変わった文体。書かれているのはかなり痛い男ではあるのだが笑えない。たくさんの本を読んだが自分では書くことができない。妄想の中では傑作を書いており、世間の反応まで細かに想像しているのだが、いざ原稿用紙を前にすると一行も書けない。過去に書いた作品を読み返し赤面する。参考にと思って開いた本に影響を受けそうになり慌てて閉じる・・・こういう人は現実にたくさんいるだろう。自分にも耳が痛い [続きを読む]
  • 「谷崎潤一郎氏」 芥川 龍之介
  • 谷崎氏はその日も黒背広に赤い襟飾りを結んでゐた。僕はこの壮大なる襟飾りに、象徴せられたるロマンティシズムを感じた。短い文章の中に、「谷崎潤一郎の派手な襟飾り」 について表現を変えながら何度も書いている。というか、この作品自体ほとんどそれについて書いたようなものである。「壮大なる襟飾り」。やたら大袈裟な表現が笑いを誘う。一輪の紅薔薇に似た、非凡なる襟飾り谷崎氏の喉もとに燃えたロマンティシズムの烽火 「 [続きを読む]
  • 「三十歳」 坂口 安吾
  • 私はもう、矢田津世子に会はなかつた。まる三年後、矢田津世子が、私を訪ねて、現はれるまで。(「二十七歳」)それから三年後の再会と別れ。 三年間、私が夢に描いて恋いこがれていた矢田津世子は、もはや現実の矢田津世子ではなかったのだ。夢の中だけしか存在しない私の一つのアコガレであり、特別なものであった。「三十歳」http://www.aozora.gr.jp/cards/001095/card42835.html [続きを読む]
  • 「鍵」 谷崎 潤一郎
  • これまでに読んだ谷崎作品の中でもっとものめり込んだ。凄い。地の文はなくすべて日記である。「痴人の愛」のような読者に語って聞かせる文体とは違い、「秘密を覗き見ている」ような感覚になる。これはもちろん妻の体やその慾について書かれた日記の内容のせいもある。主に夫婦の夜のことについて書かれた夫の日記と妻の日記、互いに読まれない2つの日記を読むことのできる読者は「覗き見」の愉しみを味わう。ところが、実は夫婦 [続きを読む]
  • 「カインの末裔」 有島 武郎
  • 獰猛な欲望と生命力に突き動かされる農夫、仁右衛門。人間に立ちはだかり圧倒する自然の猛威。羊蹄山のふもと北の大地を舞台に描かれた、無知ゆえに罪を犯す主人公の焦がすような生のいとなみ。(青空文庫の説明より)読み終わってもよくわからなかったので調べてみた。聖書のカインとアベルが根底にあるらしい。 「自己を描出したに外ならない『カインの末裔』」(1919・1『新潮』)で作者自身が述べているように、無知で野 [続きを読む]
  • 「痴人の愛」 谷崎 潤一郎
  • 私はこれから、あまり世間に類例がないだろうと思われる私達夫婦の関係に就いて、出来るだけ正直に、ざっくばらんに、有りのままの事実を書いて見ようと思います。谷崎潤一郎の代表作「痴人の愛」。なんとなく内容は知っていたものの、実際読んでみるとやはり引き込まれる。映画化や漫画化も多数あるが、谷崎の文面から立ち上るナオミの香気にはどんな画も及ばないだろう。ナオミの妖婦ぶりはもちろん、河合譲治の一人称による語り [続きを読む]
  • 「不良少年とキリスト」 坂口 安吾
  • 面白おかしく始まるのだが、檀一雄の「太宰が死にましたね」という部分でどきりとする。このエッセイでは、太宰の自殺について語られているのだ。新聞記者は私の置手紙の日附が新聞記事よりも早いので、怪しんだのだ。太宰の自殺が狂言で、私が二人をかくまっていると思ったのである。新聞記者のカンチガイが本当であったら、大いに、よかった。一年間ぐらい太宰を隠しておいて、ヒョイと生きかえらせたら、新聞記者や世の良識ある [続きを読む]
  • 「ひょっとこ」 芥川 龍之介
  • 馬鹿踊をして人々を笑わせていたひょっとこが転んで死んでしまう。ひょっとこの面の中の顔と、その人生。橋の上の見物が、ひょっとこの頓死した噂を聞いたのはそれから十分の後(のち)である。もう少し詳しい事は、翌日の新聞の十把一束(じっぱいっそく)と云う欄にのせてある。それによると、ひょっとこの名は山村平吉、病名は脳溢血と云う事であった。最近の子供はひょっとこなんて知らないかもしれないな、などと考えていたら [続きを読む]
  • 「詩人のわかれ」 谷崎 潤一郎
  • 谷崎潤一郎、吉井勇、長田秀雄の3人が久々に会い、こちらも会うのは久々となる北原白秋を尋ねる。「初めの方の大部分は事実をそのまま書いた」とのことで、谷崎にとって「甚だ懐しい」作品だそうである。つまり「終わりの方」は事実ではないわけだが、ちょっと意外な展開だった。宮沢賢治の、宗教色の強い作品のような印象を受けた。潤一郎ラビリンス〈3〉自画像 (中公文庫)谷崎 潤一郎「The Affair of Two Watches」「神童」「詩 [続きを読む]
  • 「妖婦」 織田 作之助
  • 「世相」で語られていた、阿部定を題材にした小説である。面白く読んでいたのだが、安子が芸者になる、というところで終わってしまった。殺害はおろか、その相手もまだ登場しないし、織田が「小説にするならここが山場だろう」と言っていたシーンも描かれていない。阿部定を期待すると少し違うかもしれない。調べてみたが、特に未完の作品であるというわけでもないらしい。妖婦というタイトルだが、作品に重い部分はなく、コミカル [続きを読む]
  • 「わが文学修業」 織田 作之助
  • 織田が小説を書き始めたのは比較的遅い。それまで小説にはあまり関心がなく、専ら戯曲に熱心だったようである。大学へ行かず本郷でうろうろしていた二十六の時、スタンダールの「赤と黒」を読み、いきなり小説を書きだした。わたしは同書をおそらく二十前後の頃に読んだが、面白いとか面白くないとかの前に理解ができなかった。意地だけで最後まで読み通したが、ほとんど活字を目で追っているだけだった。いつかまた手に取ってみよ [続きを読む]
  • 「私の文学」 織田 作之助
  • しかし、文学というものは、要するに自己弁護であり、自己主張であろう。そして、自己を弁護するとは、即ち自己を主張することなのだ。「自己弁護」という表現は森鴎外も使っていた。以前ほどではないが、文学とは何かということをときおり考えることがある。安吾が「自我の発見」だと言えばなるほどその通りだと思うし、織田が「自己弁護」だと言えば確かにその通りであると思う。いずれにしても、「きわめて個人的なものである」 [続きを読む]
  • 「世相」 織田 作之助
  • 小説と思って読み始めたのだがエッセイだった。 原稿を前に悩むシーンから始まり、過去の様々な回想が語られる。「青春の逆説」の豹一を思わせる、というかほぼ同じようなエピソードがある。――女というものはいやいや男のされるがままになっているものだと思い込んでいた私は、愚か者であった。「青春の逆説」が発売禁止処分を受け、「もう当分自分の好きな大阪の庶民の生活や町の風俗は描けなくなった」とうらぶれていたところ [続きを読む]
  • 「青春の逆説」 織田 作之助
  • 当時発売禁止処分を受けたいわゆる「発禁本」であるが、これは別に内容が過激だとかいうことではなく、「時世に合わない」というやつだ。豹一は自尊心というか自意識の過剰な少年なのだが、彼ほどではないにせよ誰しも若い時分にはこういうことに覚えがあるのではないだろうか。「夫婦善哉」と同じく、主人公の前にまずその両親が描かれる。そうして主人公にフォーカスしていく。周囲の人間なども丁寧に描きながら、半生というか、 [続きを読む]
  • 「さるのこしかけ」 宮沢 賢治
  • 「さるのこしかけ」に思い出したのはさくらももこのエッセイである。楢夫が栗の木に見つけたさるのこしかけに3匹の小猿が現れる。小猿に誘われて栗の木の中へ入っていくと、種山ヶ原という場所に出た。そこでちょっと不思議で怖い体験をするのだが、たまたま現れた山男に助けられ、楢夫はもとの場所、もとの世界へ帰る。調べてみると、「さるのこしかけ」というのは比喩や「そう見立てている」というわけではなく、きのこの一種ら [続きを読む]
  • 「探偵小説とは」 坂口 安吾
  • 推理小説というものは、文学よりも、パズルの要素が多い。制作の方法から見ても、一般の文学と推理小説では根柢から違っている。安吾は文学は「自我の発見」であるという。これはなるほどと思った。文章を書いていると、自分でも驚くようなことに気付かされることがある。文学は、自我の発見であり、常に予定をハミ出して、おのずからの生成展開が行われることによって、自我の発見とか創造というものが行われ得るのである。推理小 [続きを読む]
  • 「The Affair of Two Watches」 谷崎 潤一郎
  • 青空文庫にはないので文庫を購入した。大正5年の谷崎の写真が載っていた。その写真は、わたしには10代前半くらいに見えた。この頃から眼光鋭くすでに「谷崎潤一郎」の顔である。ところが大正5年というと谷崎は30歳前後のはずなのである。しかしどうも少年のように見える。「The Affair of Two Watches」は初期の短編である。大学生の「私」は友人2人と集まっては、冗談を言い合い、金がないことを嘆く。ある日友人のひとりが思 [続きを読む]
  • 「沈黙」 遠藤 周作
  • いつかいつかと思っていたのをようやく読んだ。遠藤周作は数年前に「海と毒薬」を読んで好きな作家だと思ったが、それから他の作品を読むことはなく、読書そのものからも遠ざかっていた。冒頭、日本に派遣されていたフェレイラ教父が拷問により棄教したというショッキングな情報がもたらされる。神学的才能に恵まれ、最高の重職にあったフェレイラ教父の棄教は、その教え子でもあった3人のポルトガルの司祭を日本へ向かわせた。全 [続きを読む]
  • 「勉強記」 坂口 安吾
  • 印度哲学科の学生、栗栖按吉(くりすあんきち)というのが主人公なのであるが、安吾自身のことなのではないかと想像せずにはいられない。先生が「文法もよくお知りにならず、辞書もお引けにならない」というフレーズが3回くらい繰り返されるのだが、とにかくこの小気味よさというか気持ちよさである。どこか「風博士」のような雰囲気も感じる。それが専門の帝大の先生でも、まだ文法もよくお知りにならず、辞書もお引けにならない [続きを読む]
  • 「不連続殺人事件」 坂口 安吾
  • 坂口安吾が「犯人を当てた者に懸賞金を出す」とした鳴り物入りの探偵小説である。 第一章、登場人物の多さとその関係の複雑さに面食らった。「俗悪千万な人間関係」とある通り、見事なまでの俗悪ぶりである。その上30名近くいる彼らは名字で呼ばれたり名前で呼ばれたり、果てはアダ名で呼ばれたりと混迷を極め、早くも読者は煙に巻かれてしまう。雪山の山荘とは言わないが、ある程度閉ざされた空間で事件は起こり、登場人物の中に [続きを読む]
  • 「接吻」 江戸川 乱歩
  • 短い作品。乱歩作品には珍しく、幸福絶頂の新婚男のノロケから始まる。近頃は有頂天(うちょうてん)の山名宗三(やまなそうぞう)であった。何とも云えぬ暖かい、柔かい、薔薇色(ばらいろ)の、そして薫(かおり)のいい空気が、彼の身辺を包んでいた。それが、お役所のボロ机に向って、コツコツと仕事をしている時にでも、さては、同じ机の上でアルミの弁当箱から四角い飯を食っている時にでも、四時が来るのを遅しと、役所の門 [続きを読む]
  • 「妖怪博士」 江戸川 乱歩
  • 怪人二十面相シリーズの3作目。先に「青銅の魔神」を読んだが、「青銅の魔神」は「妖怪博士」に続く4作目の作品。今回二十面相は誰かに成りすますのに加えて、「蛭田博士」とか「殿村弘三」とかの人物を作り出して演じている。蛭田博士を演じて子供らを軟禁し、今度は殿村という私立探偵を演じてその犯行を暴く。もはや涙ぐましい努力すら感じる壮大な一人芝居である。前回の話で爆死した(しかし死体は見つからなかった)と思わ [続きを読む]