Unenlagia さん プロフィール

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Unenlagiaさん: 海底白夜
ハンドル名Unenlagia さん
ブログタイトル海底白夜
ブログURLhttp://ameblo.jp/unenlagia/
サイト紹介文地が天よりも輝けば、暗い夜空はないだろう。心が星より暗ければ、希望は沈黙するだろう。
自由文酸素が不要になって、何千年かすぎた。時をリズムで刻むことも、どこか遠くに捨ててきた。

水の底で、光るものたちが寄ってくる。深海魚、虫、プランクトンの死骸。

地が天よりも輝けば、暗い夜空はないだろう。心が星より暗ければ、希望は沈黙するだろう。
参加カテゴリー
更新頻度(1年)情報提供14回 / 137日(平均0.7回/週) - 参加 2017/03/03 05:38

Unenlagia さんのブログ記事

  • 過去の記事 …
  • 滅びた都
  •  その昔、まだ僕が天上にいたころ。ある地上人が、「海底にも都はある」と言って、幼い皇帝を道連れ自殺に巻き込んだらしい。  迷惑な話だ。自分の都合で、判断力のない子供を殺すとは。   しかも、ここには、大きな誤解がある。  海底に、都はないのだ。   正確に言おう。海底には世襲君主がいない。だから、普通の都市ならまだしも、君主のおわす都はない。以上だ。 さて、海底にも普通の町ならある。 僕はその日 [続きを読む]
  • 夜光柱
  •  白夜とはいえ、明るすぎる。水の濁らない日が続いているのだ。 透明な水の中に、下からの光の柱が固まっている。水面という余分なものがないので、揺らがない。 柱ははるか上の浅い海にまで伸びている。クジラによると、海面近くはさすがに光がとおらず、暗くなっているらしい。 プランクトンや栄養分がたっぷりの暗い海。たかが数百メートルの薄い天井を、数千メートルの柱が支えているのは絶景だとか。  「こう、まぶしい [続きを読む]
  • 注文の多い自販機
  •   彼は以前、地上に住んでいた。海底では、カスタネットガイを飼っている。急ぐときは、2枚のカラをカチカチ鳴らして泳ぐ、意外と器用なやつだ。 男の好物は茶。不幸なことに、海底では手に入りにくい。いつも、海底は昆布茶ばかりだと愚痴っていた。 ある日、彼が浅い海まで散歩に行くと、意外なものを見つけた。  自動販売機。海底で見るのは、初めてだ。それも、飲み物と来ている。 「珍しいな。お前も久しぶりだろう」 [続きを読む]
  • 美しき水底の非文(後編)
  •  天上の夜は、上からの星と、下からの町灯りに照らされている。 影は上下斜めあらゆる方角に伸び、雲に映っては揺らめくものだ。 アンニナとネクタリネがパン屋のカゴに隠れた後、僕はタイミングを見て、サンゴを落とせと告げた。 ふたりの脳の中で、その音が響いたはずだ。 やがて、サンゴの硬質な音を最後に、ふたりの感覚器は、最低限の情報しか送ってこなくなった。  布団の人間にも暖かさが分かる。僕にも、パン屋のか [続きを読む]
  • 美しき水底の非文(中編)
  •  ホラフキダンシャクノツカイが、口をふくらませて帰ってくる。 魚は無駄に旋回し、ぐわっと女の子ふたりを吐き出した。 氷点。 永遠の液体にして気体であるはずの海水を、凍らせる限界値。 「ええっ……と……大丈夫かい?」 「大丈夫です。お遣いさんとはいつも一緒だから」。 ふたりとも、見た目よりタフでよかった。タフでなければ、魚の相手はできないのだ。 「話は聞いてるかな」。 「おう、後はサインだけだぜ」 [続きを読む]
  • 美しい水底の非文(前編)
  •  明日は雨だった。昨日は雪に変わると予想されている。  おかしなことを言っているわけではない。海底だからといって、時間軸が地上と違うわけでもない。ありのままを述べている。  時とはなんであるか? ぼくらに取っては明確だ。「生まれて死ぬまでのプロセス」。「生まれて死ぬまでの単位や軸」ではない。  内的体験の序列やリズムを、単位や軸でしばることはできない。形式的な時間は、音楽を楽しむ時の便宜的ルールに [続きを読む]
  • 記憶の棚
  •  僕らが住んでいる場所よりだいぶ上に、大陸棚がある。 柱があって、横板があって、たくさんのものをしまっておけるのだ。  これは実に便利だ。光に極度に弱いものを除けば、大抵のものは保存が利く。 沈んだ神殿の柱。底滑りで切り出された地層。棚を作る材料は、いくらでもある。 区画整理や整頓は、ウミクジャクの仕事。たくさんの目で、あらゆる方向を監視している。   ニンゲンがその昔、核のゴミを深海に捨てようと [続きを読む]
  • 方舟伝説
  •  ギルガメッシュは水中にある。アララト山も、水に沈んでいる。  洪水と方舟の物語は、地上が起源ではないのだ。 方舟は、空をわたらない。それどころか、みなもをわたることもない。  はるか昔の技術で、底にアスファルトを塗った程度では、地を覆うほどの水に耐えうる船は作れない。  だから、洪水に備えて作られたのは、「大きな1つの船」ではなかった。それは「多数の小船」の総称なのだ。 「数多きもの」には、方舟の [続きを読む]
  • 海面活性剤
  •  海面活性剤というものがあるらしい。  空と海を混ぜ合わせてしまうというのだ。これを使うと、もう、ふたつはバラバラにもどれない。  星のすべてが、輪郭線のはっきりしない、ぶよぶよしたものになってしまう。 僕の知らない遠くの星で、時々それが、海にばらまかれるという。 いや、正確に言うと、仕方なくて、ばらまかれるのだ。 その星のジンルイは、大量の油を使わないと生きてゆけない、悲惨な文明を築いてきたらしい [続きを読む]
  • 巫女とまた
  •  ヤサシイネ……  僕は海底に横たわっていた。  ヤサシイネ…… ヤサシイネ……  海底からわきあがる、けっして粘着しない綿菓子。けむりのように揺らぎ、僕らを抱きとめるが、やがて水にとけて消えて、笑っていく。  砂の間から吹きぬけてくる白い光が、あたり一面を白夜に変えていた。水は、下から照らされた闇夜だった。  夜の底は、白くならない。光はプリズムで分解すれば、かならず白以外の色を含んでいる。 夜 [続きを読む]
  • 脱げたくつ
  •  赤いくつが沈んでくるのは、昔から珍しかった。最近では、ほとんど見ないほどだ。 くつがまっすぐ沈んでくることはない。むしろ、浮かびっぱなしのほうが多いらしい。  水に落ちたくつは何かの偶然で外海に出ると、流れに乗って、遠くまで旅することがある。くつが海底まで降って来る時、もともとどの岸辺にあったのか、分かりにくくなっている。 革靴、ブーツ、スニーカー、パンプス……いろいろ海底に着地するが、左右がそ [続きを読む]
  • 波打ち際にて
  •  波打ちぎわに絵描きがいた。  時折、潮の満ち引きに砂がかき回され、水底の形がやさしく変わっていっても、強く打ち込まれたイーゼルは、ゆらぎもしなかった。  頭上で水が空に押しつぶされ、悲鳴を上げながら、波となる。 真昼の空が海に割り込んでくるのを見て、絵描きはただ黙っていた。  絵描きはイーゼルに、ザブトンエイの皮でつくったキャンバスをとりつけ、あとはじっと、空の色を見ている。  河口から流れこん [続きを読む]
  • メンタル・クズレール
  •  海底には精神科医がいない。  深層水はすべてを癒してしまう。妄想と孤独のすべてを。傷跡と慢心のすべてを。 絶望も、幻覚も、虚しさも。 強迫も、忘却も、離別ですらも。  失われた未来が、満たされた過去に変わる。絶望の今が、軸には還元できぬ時間になる。 そんな素敵な場所に、ある日、財宝を積んだ海賊船が沈んできた。仲間たちは、もう、大騒ぎだ。人間がいきなり海底にやってきた場合、ほとんどは死んで [続きを読む]
  • 海底においでよ
  •  水ほど渇くものはない。 ウミユリのポプリ、人魚のミイラ、ミズナギドリの剥製。 フカフカ昆布のお布団に、平らなアンコウが潜り込んで、ますます干からび薄くなる。ヒラメもカレイも、目玉がどっちを向いているのか、わからなくなっている。  海面から沈んでくる水銀の泡が、決して泡立つことのない固形水をなでてまわる。 静寂、泡の。 こんな素敵な世界、天にも地獄にもありはしない。地上? そんなもの、この惑星にあ [続きを読む]
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