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本で死ぬ https://ada-bana.hatenablog.com/

基本的には本の話。でもたまに別の話。

ビジネス、自己啓発、ミステリー、SFが多いです。あと、映画の記事も多いです。

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2017/03/11

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  • 『10歳のミッション』(齋藤孝・著)

    しばらくお休みしていましたが、またボチボチ始めていきます。 今後はレビュー(自分の感想)というよりも、「分析」に近いものになるかもしれません。まあ備忘録ですね。 10歳のミッション キミを一生ささえる31の行動 (幻冬舎単行本) 作者:齋藤孝 幻冬舎 Amazon 今回はこちら。 著者の齋藤孝先生は、日本人なら知らない人はいないであろう人物で、NHK・Eテレの番組「にほんごであそぼ」の総合指導を務めています。 大人向けの書籍はもちろん、子ども向けの書籍でも多数のベストセラーがある人気作家です。 本作もよく売れていて、同じ出版社から以下のようなシリーズ続刊があります。 10歳の選択 自分で決める…

  • 『バールの正しい使い方』(青本雪平・著)のレビュー

    ランキング参加中読書 今回紹介するのはこちら。 バールの正しい使い方 作者:青本雪平 徳間書店 Amazon この本、書店でたまたま見かけて、なんとなく惹かれて買ったものの、しばらく積読になっていた一冊です。つい先日、ふいに読んでみたら予想外(←失礼)におもしろくて一気に読んでしまいました。 んで、この作品についていろいろ考察も書きたいのですが、たとえばこの本に通底しているテーマとか、タイトルの意味とかをちょっと書くだけでもすごいネタバレになってしまうので、ちょっと憚られてしまいます。 といっても、べつにこの作品の場合は、たとえば最後の最後にすごいどんでん返しがあるとか、驚くべきトリックがある…

  • 『四つ子ぐらし』(ひのひまり・著)のレビュー?

    今回紹介するのはこちら。 四つ子ぐらし(1) ひみつの姉妹生活、スタート! (角川つばさ文庫) 作者:ひの ひまり,佐倉 おりこ KADOKAWA Amazon 自分に子どもが生まれてから図書館に行く頻度が増えて、絵本のコーナーによく行くようになったのですが、そうすると自然と児童書のところをブラブラして、いわゆる児童書もよく読むようになりました。じつは以前に紹介した『バーティミアス』も、そんな過程で発見した一冊です。 バーティミアス サマルカンドの秘宝 上 1 作者:ジョナサン・ストラウド,金原瑞人,松山美保 静山社 Amazon んで、最近は自分の仕事でも文芸というか、いわゆるフィクション系…

  • 『「人それぞれ」がさみしい』(石田光規・著)のレビュー

    今回紹介するのはこちら。 「人それぞれ」がさみしい ――「やさしく・冷たい」人間関係を考える (ちくまプリマー新書) 作者:石田 光規 筑摩書房 Amazon 私は天邪鬼な性格なので、世の中でよいとされているものがあると「ほんまかいな」と思ってしまう人間です。そうしたなかで最近ふと思ったのが「多様性を尊重することにはなにかデメリットはないのかな」ということでした。きっかけになったのは、大手量販店ドン・キホーテを運営する会社が、管理部門でも髪色を自由にしてOKというニュースを見たときのことでした。 news.yahoo.co.jp これに対して街の人たちに意見を聞いていて、わりとご高齢の方でも「…

  • 『名探偵のままでいて』(小西マサテル・著)のレビュー

    今回紹介するのはこちら。 名探偵のままでいて 作者:小西マサテル 宝島社 Amazon 宝島社が主催している「このミステリーがすごい!」で2023年の大賞を受賞した作品です。 著者の小西マサテルさんは、小説家としてはこれがデビュー作になりますが、もともとお笑い芸人から放送作家に転身してラジオ番組「ナインティナインのオールナイトニッポン」などの構成をずっと担当していたようです。帯にはナイナイの岡村さんによる推薦コメントがついていますが、これはそういう経緯があるからみたいです。 本書をざっくり説明すると「認知症になってしまった祖父のところに孫娘(社会人)が身の回りで起きた謎を持ち込んで解決してもら…

  • 『ロボットには尻尾がない』(ヘンリー・カットナー著)のレビュー

    今回紹介するのはこちら。 ロボットには尻尾がない 〈ギャロウェイ・ギャラガー〉シリーズ短篇集 (竹書房文庫 か 18-1) 作者:ヘンリー・カットナー 竹書房 Amazon なにで見つけた本なのかまったく記憶がないのですが、刊行したのが双葉社なのがちょっと珍しいなあと思ったのだけ覚えていました。 こういうSF系の文庫の場合は早川書房とか東京創元社とかが多いのですが、はたして双葉社文庫はほかにどういうのを出しているのだろうかと調べてみました。 まあ、このリンクを見てもらえばわかりますが、ざっくり「時代劇」「ラノベ」「サスペンス」あたりが多いですね。 ターゲット年齢高めな感じです。 www.fut…

  • 『22世紀の民主主義』(成田悠輔・著)のレビュー

    ブログの最終更新が昨年の5月になっていて驚きました。 私もいい年になってイロイロ忙しくなってしまったのがおもな理由ですが、このところちょっと余裕も出てきたので、ぼちぼちブログのほうも再開していきます。 ということで、再開の第一発目はこの本。 22世紀の民主主義 選挙はアルゴリズムになり、政治家はネコになる (SB新書) 作者:成田 悠輔 SBクリエイティブ Amazon 右側が丸いフレーム、左側が四角いフレームという変わったメガネだけで認識されているのではないかと思われる気鋭の研究者、成田悠輔さんの本です。 20万部以上売れている超ベストセラーですね。 成田さん自身もメディアへの露出が多く、バ…

  • 『匿名作家は二人もいらない』(アレキサンドラ・アンドリューズ著)のレビュー

    匿名作家は二人もいらない (ハヤカワ・ミステリ文庫) 作者:アレキサンドラ アンドリューズ 早川書房 Amazon ※今回のレビューはネタバレを含むのであしからず。 私の独断と偏見ですが、本好きの人はだれでも、多かれ少なかれ「作家願望」をもっているものではないでしょうか。 たくさんの本を読んでいるのに「本を書きたい」という気持ちがまったく沸き起こらないのはあり得ない……とすら考えています。 私も、何度か小説を書いてみようと思いたち、書き出しを数ページ書いてはそのままになっている遺物がいつくかあります。 本書は、そういう「作家願望」というドロドロした欲望をもった女性がどんどん暴走し、ついには人殺…

  • 『生物はなぜ死ぬのか』(小林武彦・著)のレビュー

    生物はなぜ死ぬのか (講談社現代新書) 作者:小林武彦 講談社 Amazon ブログを初めてかれこれ7年になりますが、初めて「1か月以上更新しない」ということをやってしまいました。 まあもともと趣味として始めたブログだったので、あまり無理をしないようにやろうという心づもりでいたのですが、そうはいっても1か月以上更新しないでおくのもカッコ悪いなあという感覚があり、なんとなく最低でも月に一度は更新しようかなと思ってはいたのですが、ついに破ってしまいましたね。 単純に公私ともに忙しすぎたせい……というのが目下、最大の理由ですが、もうひとつあるのは、いままでの読書を見直すということもありました。 その…

  • 『バーティミアス サマルカンドの秘宝』(ジョナサン・ストラウド著)のレビュー

    バーティミアス サマルカンドの秘宝 上 1 作者:ジョナサン・ストラウド,金原瑞人,松山美保 静山社 Amazon バーティミアス サマルカンドの秘宝 中 2 作者:ジョナサン・ストラウド,金原瑞人,松山美保 静山社 Amazon バーティミアス サマルカンドの秘宝 下 3 作者:ジョナサン・ストラウド,金原瑞人,松山美保 静山社 Amazon 私たちの人生は有限であり、無限に近い本のすべてを読むことはできません。 生きている間に読める本は、この世に存在する本のごくごく一部だけであり、そのなかで自分が「最高におもしろい!」と呼べる本に出会えるのは奇跡に近いでしょう。 だからこそ、読書人たちは日…

  • 『老虎残夢』(桃野雑派)のレビュー

    老虎残夢 作者:桃野雑派 講談社 Amazon SNSの投稿では、「タグ付け」が重要になったりしますね。 いかにフックのあるタグがたくさんつけられるか、みたいなところで注目されやすくなったりするものです。 その意味では、この本は「タグもりもり」な一冊でした。 帯の裏のほうにも書いていますが、本書は ・芥川賞受賞作であり ・新人著者のデビュー作であり ・中国の歴史小説であり ・武道の達人たちが特殊能力を発揮する「特殊設定もの」であり ・密室殺人であり ・館のなかの殺人であり ・孤島での殺人であり ・百合要素もある という作品であるからです。 本書の中でとくに特徴的なのは「特殊設定」と「百合」でし…

  • 『タイタンの妖女』(カート・ヴィネガット・ジュニア)のレビュー

    タイタンの妖女 作者:カート ヴォネガット ジュニア 早川書房 Amazon ※ネタバレ入ってます SFというジャンルが問いかけてくるテーマは壮大なものが多いですが、哲学的なものも少なくありません。 つまり、 ・私たちはなんのために生きているのか ・人間とはなにか ・神のようなものは存在するか といったことで、それらをどストレートに読者に問いかけてくるのが、今回紹介する『タイタンの妖女』です。 ちなみに、解説を書いているのは爆笑問題の太田光さんです。 太田さんはこの作品の大ファンで、自分が所属する個人事務所「タイタン」は、この作品名に由来しています。 さてあらすじ。 本作最大のキーパーソンはラ…

  • 年末年始はコレを読んどけ <2021年版>

    ギリギリになりましたが、今年も私が読んだ本のなかからとくによかった10冊を選んでまとめておきます。 今年はわりと年末年始の休みが短めというか、実質一週間くらいしかない人が多いのではないかと思いますが、新型コロナのオミクロン株が流行の兆しを見せていますので、自宅でまったり過ごすという人は、ぜひ本選びのお役に立ててください。 そういえば今年はけっこう、Audibleも利用したりしました。電車に乗っているときとかはけっこう便利ですね。 Audible (オーディブル) - 本を聴くAmazonのサービス Audible, Inc. Amazon さて、2021年に読んだ本は12月30日時点で「142…

  • 『medium 霊媒探偵城塚翡翠』(相沢 沙呼・著)のレビュー(ネタバレ注意)

    ※今回はレビューの性質上、思いっきり本作のネタバレを含んでしまうので、読んでない人は自己責任でお願いします ちょこちょことミステリーを読んでいると、なんとなく「きな臭い登場人物」というのが嗅ぎ取れるようになってくるのではないでしょうか。 個人的には「こんなやつは怪しい3大ミステリ登場人物」がいたりします。 「やたら親切な人」「まったく目立たない地味な人」、そして「可憐で守られるタイプのヒロイン」です。 ミステリの定石として、基本的に読者の予想を裏切るキャラクターが求められます。 つまり、 ・やたら親切な人だと思ったけど、じつは猟奇殺人鬼だった ・すごく地味で目立たない人かと思ったら、偏執的殺人…

  • 『サクッとわかるビジネス教養 地政学』(奥山真司・監修)のレビュー

    サクッとわかる ビジネス教養 地政学 新星出版社 Amazon 地政学というのはわかるようでよくわからない学問であります。 実際、本書の冒頭、「はじめに」で監修を務めた奥山真司さんも次のように述べています。 地政学とは何なのでしょう。研究者によっていろいろな答えがあると思いますが、私は「国際政治を冷酷に見る視点やアプローチ」と考えています。 それがどういう学問なのか自体が「研究者によっていろいろな答えがある」のは学問としてどうなのかというツッコミを入れたくなります。 が、まあそこは置いておいて、いわゆる自然科学や数学のように明確な答えがあるものではなく、どちらかというと哲学とか経済学のようなも…

  • 『コンピュータ、どうやってつくったんですか?』(川添愛・著)のレビュー

    コンピュータ、どうやってつくったんですか?:はじめて学ぶ、コンピュータの歴史としくみ 作者:川添 愛 東京書籍 Amazon ちょっとご無沙汰していましたが、また更新します(理由はあとで)。 『2001年宇宙の旅』などで有名なSF作家のアーサー・C・クラークは、『未来のプロフィル』というエッセーのなかで、のちに「クラークの三法則」とよばれるものを書きました。 (1)高名で年配の科学者が可能であると言った場合、その主張はほぼ間違いない。また不可能であると言った場合には、その主張はまず間違っている。(2)可能性の限界を測る唯一の方法は、その限界を少しだけ超越するまで挑戦することである。(3)十分に…

  • 『かがみの孤城』(辻村深月・著)のレビュー

    かがみの孤城 作者:辻村深月 ポプラ社 Amazon 本をつくる仕事をしていてつねづね思うのは、「売れる本にするのであれば、内容を難しくしすぎてはいけないなあ」ということです。 ビジネス書とか実用書だと、これはとくに顕著です。 そもそも著者はなんらかの道のプロフェッショナルであり、一般の人よりもたくさんの知識と経験を持っているという点で特異な人物です。 だからこそ本を書けるわけです。 私は文芸書の編集者ではないので小説については門外漢ですが、おそらくこの法則は小説にも当てはまるのではないかなと思います。 それを感じたのは、『謎解きはディナーのあとで』を読んだときでした。 謎解きはディナーのあと…

  • 『知識ゼロからの日本絵画入門』(安河内眞美・著)のレビュー

    私は仕事でビジネス実用系の本を作っているので、仕事の一環として最近売れているビジネス書とか実用書とかもよく読むのですが、最近はちゃんと「読む」ことがめっきり減ってきてしまいました。 この理由を考えると、単純に私が年をとってしまったことがあるのかもしれません。 結局、ビジネス書とかハウツー本で書かれていることは同じことの繰り返しであり、既知の情報ばかりになってきてしまったので、「おもしろい」と感じる機会が減ってきてしまったのです。 なので、そういったビジネス書はあくまで仕事のための資料、マーケティングの素材として淡々と「目を通す」だけになりました。 よほどおもしろいものであれば別ですが、そうでな…

  • 『完全版 無税入門』(只野範男・著)のレビュー

    どの本だったかは忘れましたが、先日Amazonでとある本のレビューをザッ見ていて、「著者の主義主張が入っていてよくない」というような書き込みを見ました。 私からすれば、著者の主義主張がまったく感じられない本なんて読む必要があるんか?……などと思ってしまいますが、まあ本に求めるものは人それぞれです。 しかい、じゃあ「著者のキャラが文章に出る」っていうのは具体的にどういうことなんでしょうか。 これは、なかなか説明するのが難しいです。 でも、ちょっとした言い回しや言葉の選び方、具体例の挙げ方といった文章の端々に「その人らしさ」というのは絶対に現れてくるものなのです。 あとは、「余計な一言」ですね。 …

  • 『世界のエリートが学んでいるMBAマーケティング必読書50冊を1冊にまとめてみた』(永井孝尚・著)のレビュー

    世界のエリートが学んでいるMBAマーケティング必読書50冊を1冊にまとめてみた 作者:永井孝尚 KADOKAWA Amazon ある本が「いい本」か「悪い本」かというのは完全に個人の主観なので正解なんてないと思いますが、私はいち読者として本に接する場合、「世の中の99%はいい本である」というスタンスでいます。 それはなぜかというと、「どんな本でも学ぶべきところが1つくらいはある」という視点で本を見ているからです。 死ぬほどつまらない本も、「なぜこの本は死ぬほどつまらないのか」ということを考えると、今後同じような本を読まないようにしようという学びを得られますね。 さて本書はタイトルの通り、マーケ…

  • 『道徳感情はなぜ人を誤らせるのか』(管賀江留郎・著)のレビュー

    道徳感情はなぜ人を誤らせるのか ~冤罪、虐殺、正しい心 作者:管賀 江留郎 発売日: 2016/05/11 メディア: 単行本 鎌倉時代に浄土真宗を起こした親鸞は「他力本願」「悪人正機」という考え方を世に打ち出しました。 この考え方を端的に表現しているのが、有名な『歎異抄』のなかの次の一文です。 善人なおもって往生を遂ぐ いわんや悪人をや (善人だって極楽に行けるんだから、悪人だったら極楽に行けるに決まってるでしょ) ふつうに読むと「は?意味わからん」となりますね。 善人が極楽に行けるのはわかるけど、なんでそれで「悪人も当然、極楽に行ける」という結論に行き着くのか。 ここでポイントになるのは「…

  • 『ネガティブ・ケイパビリティ』(帚木蓬生・著)のレビュー

    新型コロナで東京都などに3度めの緊急事態宣言が出て5/31までの延長が決定しましたが、まあたぶん大多数の市民の感覚としては「はいはい」という感じであまり気に留めていない感じかと思います。 そもそも「緊急事態」というのはなんなのでしょうか。 Wikipediaによると、日本で緊急事態宣言が出たのは 1941年:太平洋戦争 1948年:阪神教育事件(GHQの養成を受けた日本政府が朝鮮学校を閉鎖しようとしたら在日韓国・朝鮮人と共産党が暴動を起こした事件) 1982年:日本国有鉄道(いわゆる国鉄)の極度の経営悪化による強行民営化 2011年:東日本大震災による福島第一原発事故 となっています。 つまり…

  • 『書きたい人のためのミステリ入門』(新井久幸・著)のレビュー

    「クローズド・サークル」のお手本になる3冊 「論理を重ねて真相にたどり着く」のお手本になる1冊 「奇想天外で美しい謎」のお手本になる3冊 「密室もの」のお手本になる3冊 「心理的に美しい謎」のお手本になる3冊 「地の文にひそむウソ」のお手本にある2冊 「フーダニットの変化球」のお手本になる3冊 「意外な動機」のお手本になる4冊 「ホワットダニット」のお手本になる5冊 「うますぎる伏線」でお手本になる2冊 「安楽椅子探偵」のお手本になる6冊 「アリバイトリック」のお手本になる2冊 「リドル・ストーリー」のお手本になる2冊 「群像劇」のお手本になる1冊 「ファンタジーミステリ」のお手本になる2冊 …

  • 『大人の教養として知りたい すごすぎる日本のアニメ』(岡田斗司夫・著)のレビュー

    ここのところブログの更新が滞り気味なのは仕事がいろいろ忙しくてあまり本を読めなかったというのもあるのですが、同時に「これはおもしろい。紹介せざるを得ない」と感じるような本に出会えなかったことも理由の1つにあるような気がします。 おもしろい本に出会えない原因はいくつか考えられます。 1つは、単純に読んでいる本が少なすぎる、あるいは書店に行く時間が少なすぎるということです。 結局のところ、なにをおもしろいと感じるかなんて十人十色なので、自分がのめり込める本に出会うには有象無象の本を読みまくるしかないでしょう。 あとは、「つまらない本でも読まざるを得ない状況だった」というがあります。 これは私が編集…

  • 『ブルシット・ジョブ』(デヴィッド・グレーバー著)のレビュー

    アルベール・カミュの随筆『シーシュポスの神話』には、神々の怒りを買ったシーシュポスが、ひたすら山の山頂に岩を運び続ける罰を与えられるという話があります。 でもシーシュポスが苦労して山頂に岩を運んだ瞬間、岩は絶対に山のふもとまで転がり落ちてしまいます。何度やっても、この結果は変わりません。 シーシュポスの神話 (新潮文庫) 作者:カミュ 発売日: 1969/07/17 メディア: 文庫 私たちが日々やっていることも、このシーシュポスとなんら変わらないのかもしれません。 自分がやっている仕事に意味があるのか……という思いを抱いたことがある人は少なくないのではないでしょうか。 少なくとも私はけっこう…

  • 『センスは知識からはじまる』(水野学・著)のレビュー

    センスは知識からはじまる 作者:水野学 発売日: 2014/07/08 メディア: Kindle版 編集者はある程度のセンスが求められる職業であります。 たとえば本の表紙(厳密にはカバー)。 つくるのはもちろんデザイナーさんですが、デザイナーさんが出してくれた案にいろいろ注文をつけたり、いくつかデザイン案があるなかで最終的にどれにするかを決めるのは編集者に委ねられます。 また、それ以前の「企画コンセプト」や「タイトル」「帯コピー」「章タイトル」から文章の細かい表現に至るまで、書籍の編集者は自分が担当する書籍のさまざまなところで大きな裁量を任されます。(このあたりが雑誌の編集者と書籍の編集者のお…

  • 『羊たちの沈黙』(トマス・ハリス著)のレビュー

    羊たちの沈黙(上)(新潮文庫) 作者:トマス・ハリス 発売日: 2020/05/15 メディア: Kindle版 羊たちの沈黙(下)(新潮文庫) 作者:トマス・ハリス 発売日: 2020/05/15 メディア: Kindle版 ※ネタバレ含むので注意 今回紹介するのは歴史に名を残すサイコスリラーの傑作、『羊たちの沈黙』です。 映画も大ヒットしたので名前は知っている人は多いと思いますが、意外と原作小説を読んだことがない人も多いのではないでしょうか。 じつは私もそのクチで、小説は読むつもりはなかったのですが、平山夢明さんの『恐怖の構造』を読んでいたら、平山さんがこの『羊たちの沈黙』の小説が大のお気…

  • 『幸せになる明晰夢の見方』(ディラン・ドゥッチロほか著)のレビュー

    幸せになる明晰夢の見方 作者:ディラン・トゥッチロ,ジャレド・ザイゼル,トマス・パイゼル 発売日: 2014/11/07 メディア: 単行本(ソフトカバー) 明晰夢というのをご存じでしょうか。 「これは夢だ」と、夢を見ている本人が自覚しながら見る夢です。 「明晰(めいせき)」というのは「はっきりしている」という意味ですね。 「頭脳明晰」などと使われます。 (ここでいう「夢」とは、将来の夢とかではなく、夜寝ているときに見る夢のことを指します) ふつう、夢を見ている人は、「いま、自分は夢を見ている」とは気づけません。 起きて初めて「あ、夢だったのか」と気づくわけですね。 明晰夢はそんな当たり前を打…

  • 『三行で撃つ』(近藤康太郎・著)のレビュー

    三行で撃つ 〈善く、生きる〉ための文章塾 作者:近藤 康太郎 発売日: 2020/12/12 メディア: Kindle版 どこかの本で読んだのですが、 「クライアントに感謝されるようでは、カウンセラーとしては二流」 といわれるです。 一流のカウンセリングを受けると、クライアントは、 「お金を払ってカウンセリングを受けるほどの悩みでもなかったな」 と感じるそうです。 カウンセラーは相手の悩みを解消してあげるのが仕事ではなく、クライアントが自分で悩みを解決できるように陰ながら仕向けるのが仕事、ということですね。 この話、どの領域でも同じことが言えます。 「話がうまいなあ」と感じさせる噺家は二流だし…

  • 『職業としての編集者』(吉野源三郎・著)のレビューになっていない

    職業としての編集者 (岩波新書) 作者:吉野 源三郎 発売日: 1989/03/20 メディア: 新書 私はこれまで「自分の人生を変えた本」というに出会ったことがありません。 いや、たぶん私の思考に多大なる影響を与えて、いまの私をかたちづくった本は無数にあるのでしょう。 ただ、改めて思い返してみると、なにか一冊の本がパッと思い浮かばないのです。 人に関しても、これは同じです。 「尊敬する人」とか「師匠」とか「メンター」のような存在が思いつきません。 もちろんこれも、たいへん学びになった人とか、お世話になった人はたくさんいるし、そういう人たちとの出会いがなければいまの私がなかったのは間違いないで…

  • 『サードドア 精神的資産のふやし方』(アレックス・バナヤン著)のレビュー

    サードドア―精神的資産のふやし方 作者:アレックス バナヤン 発売日: 2019/08/16 メディア: Kindle版 いい本というのは、毀誉褒貶が激しいことが多いです。 読んだ人が多ければ多いほど、批判的に受け取る人も多くなるのは仕方がないことです。 この本も、売れた本の宿命なのか、Amazonなどを見ても辛辣なレビューが多くありました。 タイトルだけだと、どんな内容の本かわかりにくいですが、ザックリ説明すると、 「クイズ番組で大金を手にした大学生が、さまざまな成功者たちがどうやって最初の一歩を踏み出したのかをインタビューするための試行錯誤をつづったエッセー」 です。 具体的に、著者はビル…

  • 『読書について』(ショーペンハウアー著)のレビュー

    「読書術」をテーマにした本は実用書の鉄板ジャンルの1つで、その多くは「読書はいいものだ」と読書を全肯定しています。 読書術の本を手に取る人は普段から読書習慣があるわけですから、「読書する人はそうじゃない人よりすごい人なんだよ」と言ってもらえれば、それだけでちょっとだけ自己肯定感を高めてもらえるわけですね。 本を読む人だけが手にするもの 作者:藤原 和博 発売日: 2015/09/29 メディア: 単行本 読書する人だけがたどり着ける場所 (SB新書) 作者:齋藤 孝 発売日: 2019/01/07 メディア: Kindle版 とくに現代はスマホの普及により、ちょっとした空き時間があれば大抵の人…

  • 年末年始はコレを読んどけアワード2020 ~小説・人文・ビジネス・実用~

    今年は新型コロナの影響で私の仕事も在宅になったりして、わりと本を読む時間が増えました。 2020年12月7日時点で、今年読んだ本は259冊。最多は5月で、41冊も読んでいました。 なかにはマンガも含まれるのですが、今年も年末年始のお休みのときにぜひ読んでいただきたい本を10冊ご紹介していきます。 では始めましょう。 もくじ 1.『書くことについて』(スティーブン・キング/小学館) 2.『PIXAR 世界一のアニメション企業の今まで語られなかったお金の話』(ローレンス・レビー/文響社) 3.『ぼぎわんが、来る』(澤村伊智/KADOKAWA) 4.『13歳からのアート思考』(末永幸歩/ダイヤモンド…

  • 『トコトンやさしいエントロピーの本』(石原顕光・著)のレビュー

    トコトンやさしいエントロピーの本(第2版) (今日からモノ知りシリーズ) 作者:石原 顕光 発売日: 2020/02/28 メディア: 単行本 世の中には聞いたことがあるけれど、じつはなんのことだかよくわかっていない言葉ってたくさんありますよね。 「エントロピー」というのはそんな言葉の1つじゃないでしょうか。 図書館をフラフラしていて、たまたま目についてこの本を読んでみました。 結果、エントロピーについてわかったのか? わかったような、わからないような感じです。 エントロピーを私なりに解釈してまとめると「世界全体の不可逆的な出来事の発生度合い」を示すもの……でしょうか。 ブラックコーヒーにミル…

  • 『三体』(劉慈欣・著)のレビュー

    三体 作者:劉 慈欣 発売日: 2019/07/04 メディア: Kindle版 ついに読みました。 アジア人として初めて、SFの賞のなかでもっとも権威があるといわれているヒューゴー賞を受賞した傑作です。 ヒューゴー賞は1953年から続くもので、ファン投票によって決められます。 過去の受賞作では、『タイタンの妖女』『月は無慈悲な夜の女王』『アルジャーノンに花束を』『ニューロマンサー』などがあります。 タイタンの妖女 作者:カート ヴォネガット ジュニア 発売日: 2013/03/29 メディア: Kindle版 月は無慈悲な夜の女王 作者:ロバート A ハインライン,矢野 徹 発売日: 201…

  • 『ベストセラーコード』(ジョディ・アーチャー&マシュー・ジョッカーズ著)のレビュー

    ベストセラーコード 作者:ジョディ・アーチャー,マシュー・ジョッカーズ 発売日: 2017/03/24 メディア: Kindle版 人工知能が小説を書き上げる未来というのは、おそらくそう遠くない将来に実現するでしょう。 www.fun.ac.jp 私はなんだかんだ10年近く編集者として本づくりに携わってきましたが、結局、人間がおもしろいと思うもの、興味を持つものには特定のパターンがあって、あとは細部を工夫したり、組み合わせを工夫したりして、目新しさを演出し、うまくプロモーションすることが大事だと思っています。 セレンディピティという言葉もありますし、名著『アイデアのつくり方』にも書かれています…

  • 『戦国自衛隊』(半村良・著)のレビュー

    新装版 戦国自衛隊 (角川文庫) 作者:半村 良 発売日: 2012/10/01 メディア: Kindle版 1974年に発表された、たびたび映像化や舞台化などもされた、日本を代表する歴史SFの名作ですね。 戦国自衛隊1549 発売日: 2013/11/26 メディア: Prime Video 戦国自衛隊 発売日: 2013/11/26 メディア: Prime Video 文庫本を買ってみてまずびっくりしたのは、本の薄さでした。 「解説」を抜かすと165ページで終わり。 とにかくテンポが早いです。 状況説明が淡々としており、いつのまにか数年くらいの時間が経っていたりします。 といって、読者が状…

  • 『高校生からわかる「資本論」』(池上彰・著)のレビュー

    池上彰の講義の時間 高校生からわかる「資本論」 作者:池上 彰 発売日: 2009/06/26 メディア: 単行本 最近わりと、「資本論」がブームになっていますね。 これはやっぱり新型コロナによって不況になっていることが影響しているのかな……などと私はぼんやり考えています。 不況になると、だいたい割りを食うのがアルバイトとか派遣社員とか、いわゆる非正規雇用と言われる人たちです。 正社員でも、夏とか冬のボーナスが減った人が多いとは思いますが、それでも仕事と固定給がもらえるだけマシでしょう。 実際、2008年にリーマン・ショックが起こり、「年越し派遣村」というものができたときには、小林多喜二の『蟹…

  • 『ベストセラーを書く技術』(晴山陽一・著)のレビュー

    ベストセラーを書く技術──「書いて伝える力」があれば、一生負けない! 作者:晴山 陽一 発売日: 2018/08/10 メディア: 単行本(ソフトカバー) 私は気になる本があった場合、とりあえずAmazonの「欲しい物リスト」に放り込んでいます。 気になる本を片っ端から買っていくと、私の財布がスッカラカンになってしまうのと、置く場所がなくなるからです。 たぶんいまは200冊くらいがストックされているはずです。 「ほしいものリスト」は定期的に見直します。 あんまり読む気がなくなった本はリストから削除し、「やっぱり読んでみよう」と思った本はだいたい図書館で借ります。 図書館でも手に入らなくて、それ…

  • 『一人の力で日経平均を動かせる男の投資哲学』(cis著)のレビュー

    一人の力で日経平均を動かせる男の投資哲学 (角川書店単行本) 作者:cis 発売日: 2018/12/21 メディア: Kindle版 私は、すべての活動は「投資」であると思っています。 たとえば、私が仕事の帰りにコンビニで、「青汁アイス」(税抜120円)という新商品を見つけて、買ったケースで考えてみます。 このとき、私は「この青汁アイスは120円に相当する価値がありそうだ」と思ったから、買うという行動に出たわけです。 つまり、私は青汁アイスに120円の投資をしたとも言えるわけですよね。 もし、青汁アイスがすごくおいしくて、「150円でも買っちゃうな」と私が感じたとすれば、この投資は成功です。…

  • 『ヒポクラテスの誓い』(中山七里・著)のレビュー

    ヒポクラテスの誓い 法医学ミステリー「ヒポクラテス」 (祥伝社文庫) 作者:中山七里 発売日: 2016/07/08 メディア: Kindle版 私がこのブログを解説したのが2015年のことなので、かれこれ5年も!書き続けていることになります。 あんまり書く気が起きないときはサボったりもしていましたが、そうはいっても更新が滞って「1ヶ月以上更新がないブログ広告」が出てしまうのはなんだかイヤだったので、(たぶん)1ヶ月も間が空いてしまったことはないはずです。 『本のレビューの書き方』なんて記事を偉そうに書いたこともありますが、5年以上本のレビューを書き続けていても、いまだにまだあんまりうまくなっ…

  • 『妻のトリセツ』(黒川伊保子・著)のレビュー

    「男性脳」と「女性脳」の違いというテーマは、実用系の書籍では鉄板テーマのひとつです。 古いものでいえば、『話を聞かない男、地図が読めない女』という2000年に邦訳された本もベストセラーになりました。 話を聞かない男、地図が読めない女 作者:アラン・ピーズ,バーバラ・ピーズ 発売日: 2012/01/01 メディア: Kindle版 ほかにもいろいろあります。 察しない男 説明しない女 男に通じる話し方 女に伝わる話し方 作者:五百田達成 発売日: 2014/07/31 メディア: Kindle版 男女脳戦略。 作者:メンタリスト DaiGo 発売日: 2014/11/04 メディア: Kind…

  • 『そこまでやるか!裏社会ビジネス 黒い欲望の掟』(丸山祐介・著)のレビュー

    この間、とある出版社のマーケティング担当者の方に聞いた話なのですが、裏社会をテーマにした某マンガの売上をアップさせるため「パニックマンガとして描いてください」という要望を作者に伝えて内容を変更していってもらったところ、人気が出るようになったとういことでした。 アングラ(アンダーグラウンド)な世界というはなんとなく惹かれるものがありますが、それは一種のファンタジーというか、ホラー映画、パニック映画に似た要素があるように思います。 ホラー映画の怖さは「もしかしたら自分の身にも降りかかるかもしれない」と思うところにありますよね。 ヤクザとか闇金とか麻薬とか、そういう裏社会系の話も、一見すると自分とは…

  • 『なめらかな世界と、その敵』(伴名練・著)のレビュー

    伴名練(はんな・れん)という作家さんの名前を初めて知ったのは、『アステリズムに花束を』というアンソロジーを読んだときです。 アステリズムに花束を 百合SFアンソロジー (ハヤカワ文庫JA) 発売日: 2019/06/20 メディア: Kindle版 ただ、そのときはとくにこの作家さんの作品がすごくよかったという印象は、正直な所ありませんでした。 本書に収録されていたのは『彼岸花』という、吸血鬼が登場する往復書簡形式の耽美的な作品だったのですが、あんまりSFっぽい感じがしなかったからです。 その後、『なめらかな世界と、その敵』が刊行されたことは知っていたし、SFの単行本としては異例の売れ行きを見…

  • 『恐怖の構造』(平山夢明・著)のレビュー

    私はホラーとかオカルト系の話が好きなんですが、ホラー映画やホラーゲーム、お化け屋敷は大の苦手です。 なんでかというと、「びっくりする」のがイヤだからです。 その意味では、『ジュラシックパーク』みたいなパニックムービーも苦手です。 観客をびっくりさせるシーンが多いからです。 ただ、じゃあ私が「びっくりするシーン」が怖い、恐れているのかというと、なんだかそれはちょっと違うような気がします。 「びっくりするシーン」について抱くのは、「怖い」というよりも「嫌い」「苦手」という感覚です。 たとえばホラー小説やホラーマンガを読むと、背すじがゾクゾクして「怖い」と感じますが、びっくりするのは、それとは違うん…

  • 『役に立つ古典』(安田登・著)のレビュー

    1万冊以上の本を読み、教養に関する知識が半端なく、現代の知の巨人のひとりであるライフネット生命の元会長・出口治明さんが、かつて恩師から言われたのは 「古典を読んで分からなければ、自分がアホやと思いなさい。現代に生きている人が書いた本を読んで分からなければ、著者がアホやと思いなさい。読むだけ時間の無駄です」 ということだそうです。 これはほかの読書術の本でもよくいわれることではありますが、古典としていまもタイトルが知られている、読み続けられている本というのは、時代を超えてなにか学ぶべきことがある本である証だから、ヘタな最近のヒット作を読むよりもよっぽどタメになるという考え方です。 これはたしかに…

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