西 千石 さん プロフィール

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西 千石さん: 西 千石 ショートショート
ハンドル名西 千石 さん
ブログタイトル西 千石 ショートショート
ブログURLhttp://ameblo.jp/skunk5000/
サイト紹介文ショートショート物語、原稿用紙5枚完結を 1枚分ずつアップします。どうぞお楽しみ下さい。
参加カテゴリー
更新頻度(1年)情報提供28回 / 43日(平均4.6回/週) - 参加 2017/04/10 14:58

西 千石 さんのブログ記事

  • 味噌屋の息子の青い詩 第7回
  • 悔しいけれど、ちょっとだけ家に帰るのが楽しみだった。味噌はどんな風になっているのだろうかと考えるとウキウキした。 僕は、いつもなら重い足取りなんだけど、少し小走りで帰った。こんなこと、父さんにばれたら大変なことになる。恥ずかしくて顔も合わせられない。 家に帰り着くと、僕は一呼吸してから、わざと気だるいようなふりをして玄関を開けた。 「ただいまぁ」 抑揚のない調子で小さく言うつもりだ [続きを読む]
  • 味噌屋の息子の青い詩 第6回
  • 教室では女子達の歓声が聞こえる。彼女達は一体何がそんなに嬉しいのだろうか。僕には嬉しいことなんて何一つない。どうやらアイドルの話で盛り上がっているようだ。僕にも好きなアイドルくらいいる。でも、多田と、そんな話で盛り上がったことなんて一度もない。アイドルの話で盛り上がるなんて馬鹿げている。 「どうした?ボーっとして」 多田はそう言うと、僕に煙草を吸う仕草をした。 「いかね?」 「ああ [続きを読む]
  • 味噌屋の息子の青い詩 第5回
  • ボツボツと鍋の水が沸騰する。それを聴いていると、僕は母さんが味噌汁を作っているのを思い出した。母さんの味噌汁はなんであんなにうまかったんだろか。学校の給食ででた味噌汁は正直あまりうまくなかった。二つの違いは何だろうか。 親父がそばで僕が味噌を作るのを見ている。何も言わず、じっとそばにいるだけだった。いつもの親父と違う雰囲気で、僕は包丁を突き付けられているような緊迫感を覚えた。 鍋から麦の臭 [続きを読む]
  • 味噌屋の息子の青い詩 第4回
  • 裏庭につくと、親父は底の浅い長方形の蓋のない箱のようなものを持っていた。親父はそれを縁側に置いて、また家のほうへと戻っていった。 僕は縁側に置かれた、その箱のようなものをみつめた。大分年季が入っているようだ。こんなもので一体何をするのか。 そこへ親父が袋を持って帰ってきた。 「ほらこれ」 それだけ言って親父は僕に袋を渡した。それから、ポケットから紙を取り出して僕に寄越した。 「 [続きを読む]
  • 味噌屋の息子の青い詩 第3回
  • 家に帰ると親父が仁王立ちで、僕を迎えた。 「またやったんだってな」 「うるせーな。煙草くらいでガタガタいうほうがどうかしてるよ」 そう言って僕は親父の横を通り抜けようとした。 「ちょっと待て。ついてこい」 親父は制服を引っ張り僕を引きずった。 「わかった。いくから引っ張るな」 親父は服を引っ張るのをやめて、裏庭のほうへと歩いていった。僕はしわくちゃになった制服を伸ばして [続きを読む]
  • 味噌屋の息子の青い詩 第2回
  • 多田が近づいてきた。 「おい、これ」 煙草をふかす仕草を多田がする。僕はポケットに煙草を突っ込んで、多田と一緒に便所に向かった。 別にバレても構わないと思っていた僕は、学校の便所で煙草を吸うことに罪悪感を覚えなかった。 「お前、進路決めた?」 多田が探るように聞いてきた。 「なーんも決めてない」 「だよな」 その時便所のドアが開いて 「こら!何をやっとるか」&nbs [続きを読む]
  • 味噌屋の息子の青い詩 初回
  • 僕の家は江戸時代からずっと味噌を作って売っている。今時、味噌なんて流行らないし、第一ダサい。 かといって、現在高校に通ってる僕は勉強が嫌いで大学に行くつもりなんかさらさらないし、就職して働くのも面倒だと思っている。 ありがちだけど、僕は世間を見放していたし、世間も僕を見放していた。 僕は学校で授業を受けていた。先生が何かを話している。その内容に興味なんてない僕は、窓の外から見える空を見 [続きを読む]
  • 半髪の風 最終回
  • 頭が刈られていく間、僕は胸が締め付けられる思いがした。半髪を見た時の、父さんやじいちゃんの笑顔が頭を去来した。 一か月が過ぎて、僕の髪は少しだけ伸びた。その間にも色々考えたが、今僕は吹っ切れた。自分で半髪をつくり直そうと決めたのだ。 家に帰ると、バリカンと鋏を持ち出して庭にいった。小さな鏡で自分の髪をみつめながら、僕は息をのんだ。 ちょっと出来栄えの良くない半髪だったが、僕はそれ [続きを読む]
  • 半髪の風 第4回
  • 僕は一礼してから職員室を出た。 その日の授業は上の空だった。 家に帰る足が重かった。父さんやじいちゃんは何て言うだろうか。 「ただいま」 家に帰り着くと、じいちゃんが悲しそうな顔で僕を迎えた。 「おかえり」 じいちゃんは、その後何も言わず居間に戻っていった。 その日の夕食の時になって、父さんが帰ってきたが、やはり何も言わなかった。 その晩、僕は布団の中で考えた。どう [続きを読む]
  • 半髪の風 第3回
  • 僕が教室につくと、一斉に笑いが起きた。きっと多田が先回りして変な髪形だと言いふらしたに決まっている。多田が変なことを言わなければ、みんなの反応も変わっていたかもしれない。 僕の頭の血管が、1本プツリと切れた。 「多田!出てこい」 「おう、なんだ殴るのかい?」 僕の頭は真っ白になり、反射的に多田を殴りつけていた。多田の鼻から血が勢いよく流れ出た。 僕と先生は職員室いた。多田は保健 [続きを読む]
  • 半髪の風 第2回
  • 刈ってもらった半髪を鏡で見て、僕は顎を手でさすりながら悦に入った。 首を回し、右側からと左側からを見比べる。完璧だ。僕がずっと思い描いていた半髪がここにある。 「お父さん、おじいちゃん、ありがとう」三人は鏡の中で視線を交わし、笑いあった。 翌日、僕は意気揚々と学校へ向かった。早く半髪を自慢したかった。友達はどういう反応をするのだろうか。それを考えただけでワクワクした。 「なんだ!そ [続きを読む]
  • 半髪の風 初回
  • 僕の家では10歳で半髪(はんこう)にするのがならわしだった。父さんも、おじいちゃんも半髪だ。 僕は、物心ついた時から、わくわくしながら10歳を待ち焦がれていた。今日10歳になった僕は、家に帰れば半髪にしてもらえるのだ。 家に帰ると父さんとおじいちゃんが満面の笑みで迎えてくれた。 「どういうふうにしようかの」 僕は6年位前から、どういう風にしようか決めていた。その絵をポケットから出して、おじ [続きを読む]
  • 運ぶ転柿 最終回
  • 「何をやっとるか!」僕は身体を震わせながら、先生の目をじっと見つめた。 僕の家では御飯がでないこと、学校の給食が唯一の楽しみであることを先生に打ち明けた。 「そうか、そういうことでな」 先生は、しばらく黙って思案した後、転柿が吊るしてある家の玄関まで歩いて行った。 その家の親父さんと先生は、しばらくの間話し合った。そして、先生はいった。 「いつでも転柿をくださるそうだ」 親 [続きを読む]
  • 運ぶ転柿 第4回
  • 「泣いて許されるもんじゃないぞ」先生は、そう僕に言った。僕はさらに涙が止まらなくなって、しまいにはしゃっくりが出始めた。 「もういい。今後はこういうことがないように」 それでお終いだった。 給食の時間になり、僕は必死に食べ物を腹に詰め込んだ。 帰り道、僕はすでにお腹が空いていた。明日の給食の時間まで、こらえなければならないと思うと遣り切れない思いになった。 転柿の甘い香りが漂っ [続きを読む]
  • 運ぶ転柿 第3回
  • 僕が学校につくと、黒板に (泥棒野郎が教室にいる) と大きく書かれてあった。みんなの 冷たい視線が僕に集まる。 「クックックッ」 多田が、こらえきれずに笑い出した。 僕は頭にきて、唾を飛ばしながら思 い切り怒鳴り散らした。 「金持ちのお前に何がわかる」 多田はそれでも笑うのをやめなかった。 僕の大きな怒鳴り声を聞いて、先生達が何事かと駆けつけてきた。 そ [続きを読む]
  • 運ぶ転柿 第2回
  • 僕はポケットの上から転柿を触り、小躍りした。両手を握りしめて、上に高く上げ下げして足を左右交互に踏み鳴らし、回転しながら舞った。僕は息を急き切って家へと帰った。 翌日もまた転柿が吊るしてある家のところまでいって、誰もいないか辺りを見回して、木製の塀をよじ登った。これもまた上手くいって、転柿をポケットに入れた瞬間、後ろから多田の声が聞こえてきた。「みたぞ」多田は不気味な笑みを浮かべて、そのまま学 [続きを読む]
  • 運ぶ転柿 初回
  • 僕の家は貧乏で朝と夕は飯はない。御飯にありつけるのは給食の時だけで、それが唯一の楽しみだった。学校で腹が減り、グーっと音が鳴る度に、みんなからからかわれた。給食は残さず食べた。平気で嫌いだからといって残している人をみると落ち込んだ。学校が終わり、僕は一人で帰路についた。石ころを蹴りながら、少しずつ前へと進んでいった。交差点の少し手前あたりで、ほのかに甘い香りが鼻についた。僕は辺りを見回した。すると [続きを読む]
  • 次回作を楽しむための「転柿」の紹介
  • 転柿と書いて、ころがき、と読みます。 渋柿の皮をむいて、乾燥させたもので非常に甘いものです。 干し柿と同じです。 なぜ、干し柿にしなかったのか。 使われていない日本語を使いたい。 それだけです。言葉の命を大切にしたい。 そういった思いから、転柿という言葉を題材に書いてみました。 拙い物語ですが、楽しんでいただけたなら幸いです。 にほんブログ村 [続きを読む]
  • 桐の悲しみ 最終回
  • 「わざわざいらっしゃって下さりありがとうございます」僕はとっさに気の利いた言葉がみつからず「こちらこそ」と一言だけ言って軽くお辞儀した。3人がソファーに座ると、お手伝いさんが紅茶を出してくれた。「尚美とのお付き合いのことだけど」「はい」いきなり話は核心に迫った。「尚美はどう思うの?」「私は恋もいいけど、他にやるべきことが、大切なものがあると思うわ。だからあなたには悪いけど」その後は思い出したくなか [続きを読む]
  • 桐の悲しみ 第4回
  • 学校が終わり、僕は尚美の家へと向かった。昨日、地図と住所が書かれた紙を渡されて、それを手にしながら歩いて行った。長いコンクリート製の壁面に囲まれた、大きな屋敷が目に飛び込んできて、すぐにそれが尚美の家だろうと見当がついた。大きな門は木製の扉がついていて、それは重苦しく閉じていた。右手の方に小さくインターホンが設置されていて、僕は覚悟を決めてそれを押した。「はい」それは尚美の声だったが、いつも会う時 [続きを読む]
  • 桐の悲しみ 第3回
  • 桐の葉を見ていたら、とても悲しい気分になって、そうしたら桐の葉も少しだけ下を向いた。歩いている地面が僕の足を跳ね上げるように軽くなった。尚美が川辺で座っていた。僕は尚美を驚かしてやろうと隠れながら足音をたてずに近づいていった。「私、びっくりなんかしないんだから」僕が尚美の後ろまでいくと、尚美は前を向いたままそう言って、少し笑った。また空が橙色に染まってきた。もうそろそろお別れの時間だ。「今度、母さ [続きを読む]
  • 桐の悲しみ 第2回
  • 僕は尚美が愛おしくてたまらなかった。思い出すだけで胸が痛くなる。なんとしてでも結婚したい、一緒に家族をつくっていきたいと思っている。諦めなければ思いは叶う。そう信じようと思った。しかし、尚美の母さんが許すだろうか。貧乏で学歴のない僕を受け入れてくれる可能性は低そうだ。でも、尚美の母さんが学歴や家柄で判断するとは限らない。今度、あいさつにいって、僕の気持ちを打ち明けてみようと思った。「御飯が進まない [続きを読む]
  • 桐の悲しみ 初回
  • 川の岸辺に僕と尚美は座っている。僕は尚美の右側にいて、左手を差し伸べた。尚美も黙って右手を差し出して、両手を繋いだ。橙色の夕日が沈みかかっている。人々は足早に家路についている。僕は両手を強く握りしめ、静かに息を整えた。心臓は激しく鼓動している。「じゃあ、そろそろ帰ろうかしら」聞きなれた、しかし何回聞いても死刑宣告を受けるような気持ちになる言葉だった。「もう少し」「でも、帰んなきゃ。母さんが」尚美の [続きを読む]
  • 殴りたい規律 最終回
  • 会場は一気に静まり返り、やがてヒソヒソと僕を見て話始めた。僕はそんな周囲の様子を腹を立てながら見回した。そこへ、尚美がこちらへ向かって歩いてきた。「どうしたの?」尚美は耳元で囁いてきた。「気持ち悪いんだよ」僕はトレードされた野球選手の気持ちがわかるような気がした。尚美は首を振って「ここでは必要なのは思いやり。後は守る規律も何もないわ」思いやり。それがない人間は村八分という訳だ。守るべき規律がある時 [続きを読む]
  • 殴りたい規律 No,4
  • 駅に着いて降りると尚美も後ろからついてきた。「友達と待ち合わせしてるからここで」僕がそう言うと尚美は笑顔で「あら、同じVIVAじゃない。いいでしょ、どうせ会合で一緒になるんだし」僕はそれもそうかと思い尚美と一緒に友人の所へと向かった。友人と尚美は、すぐに打ち解けた。僕だけジーンズにTシャツだった。会場に着くと、やはりみんなスーツ姿だった。僕は、ある種に異様な雰囲気を感じとった。おどろおどろしいといって [続きを読む]