ウイルソン 金井の小説 さん プロフィール

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ウイルソン 金井の小説さん: ウイルソン 金井の小説
ハンドル名ウイルソン 金井の小説 さん
ブログタイトルウイルソン 金井の小説
ブログURLhttp://wilson-t-kanai.muragon.com/
サイト紹介文創作小説を紹介
参加カテゴリー
更新頻度(1年)情報提供18回 / 22日(平均5.7回/週) - 参加 2017/07/04 16:28

ウイルソン 金井の小説 さんのブログ記事

  • 過去の記事 …
  • 雨宿り  完
  • 【最後の手紙を美佐江さんに捧げる。  私は、これからお国のために戦地へ行きます。決して戻れるとは思っていません。  あの雨の夜に、初めて貴女にお会いできたことは、偶然ではなく運命であると信じて  います。この世に生まれ、初めて経験する異性への思慕。これほど素晴らしい感情を、私に芽生えさせたのは貴女でした。  雨の晩は、貴女に会える喜びに我を忘れ、逸る心を抑え民家の軒先で待ちました。いつしか、雨の日 [続きを読む]
  • 雨宿り  Ⅴ
  •  窓から心地よい風が吹き込む。ソファに寛ぎテレビを見ていたが、睡魔に襲われ瞼が重くなってきた。  誰かが私を呼ぶ。その声に反応して、私は目を開けた。目の前に和服姿の美佐江が立っているではないか。何故、彼女がここにいる。私は愕然として目を瞬き、彼女を見詰めてしまった。 「えっ?」 「あなたが、新之丞さんの手紙を持っているのね?」 「・・・・」 「そうでしょう? それは私の手紙よ。だから、返して下さる [続きを読む]
  • 雨宿り  Ⅳ
  • 「さて、ここからが問題なんじゃ。それで・・」  祖父は中庭に目を置き、真剣な眼差しで何かを見詰める。私は近くにある冷水器からお茶を汲み、祖父の横のテーブルにコップを置いた。祖父は一口飲み、喉の渇きを潤すと再び語り始めた。  敗戦の翳りが感じられる頃、新之丞が学徒出兵に召集された。祖父は工学部のため群馬の中島飛行場へ配属されたが、新之丞は文学部にいたので戦地へ。実家の新潟に疎開したらしい美佐江に、出 [続きを読む]
  • 雨宿り  Ⅲ
  •  寝汗で下着がびっしょりだった。シャワーを浴び気持ちがさっぱりする。 《あの名前は誰だろうか。腑に落ちない。オヤジに聞けば分かるかもしれないなぁ》  その日の夜、仕事から帰るとオヤジに電話した。 「オヤジさん、元気かい?」 「どうした、お前から電話が来るなんて珍しいじゃないか? まあ、こっちはふたりとも元気だ」 「そう、それなら良かった。それで、ひとつ聞きたいことがある」 「なんだ、聞きたいことっ [続きを読む]
  • 雨宿り  Ⅱ
  •  私はベッドから起き上がらず、そのまま横になり夢の中の状況を考えた。 《やはり現れた。ただ、場所が違う。それに和服姿ではなかった。どういうことだ。このまま毎晩、彼女と会うのだろうか》  幾人かの知り合いに相談する。 「そんなの夢占いで調べてもらえば・・」 「お祓いした方がいいんじゃないの」 「誰かがあなたに恋をしていたけど、何かの理由で亡くなった。でも、諦められずに夢の中に現れる。ドラマチックね」 [続きを読む]
  • 雨宿り  Ⅰ
  •  日常で見る夢は、自分本位の希望や憧れなどの空想に過ぎない。儚く散ることが多々あるも、自分の意志によって実現する可能性も否定できない。  眠りの中で見る夢は、決して自由にはならない。意外な展開に現実の感覚が痺れ、あらゆる感情をその世界へ誘惑する。ただ、必ずしも結尾に至るとは限らない。目覚めて安堵するか、苦悩や後悔に陥るかは人それぞれだ。  この数日、奇妙なことに同じ内容の夢を見ている。  突如、西 [続きを読む]
  • 無題  完
  •  映写会は雨のために延期になってしまった。しかたなく、本部で見ることになる。フイルムの音だけが聞こえ、全員がボーッと画面を見詰める。 「どうして、喋らないんだ」  勇ちゃんが、オレ達に言った。映写会ではアドリブでやるはずだったが、四人は延期になったために気持ちが落ち込んでしまった。 「うん、最初からやるよ」  敏ちゃんが、ぼそぼそとオレ達に言ったので準備した。貴ちゃんがフイルムを巻き戻し、最初から [続きを読む]
  •  ア・ブルー・ティアーズ (蒼き雫) 完
  •  寒い季節も終わりに近づき、春めく日曜日の朝。 「これから渋川に行くけど、一緒にどうだ?」  当直明けの病院から戻ると、妻を誘った。私が突然に言い出したので、八重子は戸惑いを見せた。その様子に笑いを堪える。おそらく行くのを拒むだろう。 「どうしたの急に? だめよ、子供たちが遊びに来るのよ」 「じゃあ、独りで行ってくるから・・」 「どうぞ、お好きなように」  私の行動を理解しているのではなく、三十五 [続きを読む]
  • ア・ブルー・ティアーズ (蒼き雫)Ⅳ
  •  穏やかな元旦の朝を迎えた。全日本実業団駅伝の報道用ヘリコプターのプロペラが、澄みきった空気を切り裂き忙しなく飛んでいる。私は妻の八重子と初詣に高崎観音へ出かけた。ブラジルから帰国して二十五年になるが、高崎観音に毎年欠かさずに参詣している。時折、八重子が他の寺社へ誘うこともあるが、私は頑なに譲らない。  その訳は、父と最後に会話をした高崎駅のプラット・ホームにある。発車を知らせるけたたましいベルが [続きを読む]
  • 疑 ? ?
  •  これは小説ではありません。突然に疑問が湧き書きたくなった。これも?  この世の中は疑問だらけだ。暑ければ? 寒ければ? 雨が降らなければ? 降れば? 生きることも、死ぬことも? 疑問は不思議な感情だ。その感情を持つ人間は不思議な生き物だ。人間ってなんだ? 考える葦? 本当か? 信じられん。腹が空けば死ぬ? 食べ過ぎても死ぬ? 訳の分からぬことを言う?   タバコは間接的に命の危険だと言ってCMを [続きを読む]
  • ア・ブルー・ティアズ (蒼き雫) Ⅲ 
  •  クリスマスのイルミネーションが町の至る場所に飾られ、彩りの風景が行き交う人々の心を楽しませる。病院でも各階のナース・センター前に、小さなツリーが置かれ患者の目を和ませた。  巡回の折、いつも気にかけている佐藤の様子をナース・センターの画面から眺めている。白く冷たい壁に囲まれ何もない天井を見つめる佐藤の姿。担当の看護師の話では、緊急入院の三日後にアルコールが抜けて穏やかな表情になったという。意識は [続きを読む]
  • 無題  Ⅴ
  •  半世紀前の記憶を辿るのは簡単ではなかった。それも六十数年のたった一年間だけだ。ジグソーパズル全体のイメージは浮かぶのに、肝心な幾つかのピースが脳裏のどこにも見当たらない。大切な記憶のピースを当て嵌めることができず、思い出は蝕まれおぼろげにしか現れなかった。  一町ほどの通りを北に歩きながら、あちらこちらの面影を突きはむ。時折、面影のピースがポロリと現れるが、当て嵌める箇所が思いつかない。オコちゃ [続きを読む]
  • ア・ブルー・ティアズ (蒼き雫) Ⅱ
  •  白い雪に覆われた浅間山が陽に輝くほど良い天候であったが、澄んだ秋の空気に冬の冷気が流れ込む夕刻から、冷たい雨模様に変わった。雨は次第に強くなる。  夜十時過ぎに、救急隊から受け入れ要請の電話が入った。 「はい、F病院ですが」 「中央救急の狭山です。三十代の男性が側溝の中に転倒。呼びかけに反応が無い状態です。受け入れできますか?」  私は、当直の藤田先生に報告して受け入れの確認をとる。 「はい、受 [続きを読む]
  • ア・ブルー・ティアズ (蒼き雫) Ⅰ
  •  肌寒の雨模様の静かな夜。  市内の北部環状線に近い病院の待合ロビー。柱の時計が弱々しく九時を告げた。時間を持て余していた数人の患者が、ため息をつきながらゆっくりと病室に戻って行く。  事務所内にいた私は、パソコンの画面から目を離すとしばらく目を閉じた。両手で額を数回摩り、独り言を呟く。 「時計の電池を交換した方がよさそうだな・・。さて、見回りに行くかな」  息をフッと吐き、席を立った。  受付窓 [続きを読む]
  • 無題 Ⅰ
  •  人の記憶とは、不思議なものである。  消し去りたいと願う記憶はなかなか消えず、がむしゃらに振り返っても全く甦ることのない記憶もある。時として、爽やかな風がフッと脳裏を掠め、心を揺さぶる意地悪な記憶もある。  私の心肝に残る年少期の記憶が、生年六十五を過ぎた頃より日々霞みはじめた。老いた脳裏から散逸する前に、あの思い出を確かめたく故郷の高崎へ半世紀ぶりに訪れてしまった。  駅舎は近代的な駅ビルに改 [続きを読む]
  • 無題 Ⅳ
  •  朝からそぼ降る雨の日。  敏ちゃんが本部へ行こうと迎えに来た。ふたりは傘も差さずに走って本部へ行く。本部には、全員が集まっていた。思い思いに何かをしている。貴ちゃんと浩ちゃんがオレ達を見て集まると、映画製作の話に夢中になった。  そのとき、敏ちゃんが急に不快そうに顔をしかめ、キョロキョロと辺りを見回す。その様子に、オレも異様な臭いに気付く。勇ちゃんが、突然に怒鳴った。 「スカンクは、誰だ!」   [続きを読む]
  • 無題 Ⅲ
  •  カブスカウトの二泊三日の宿営キャンプで新潟の海へ行き、帰って来た翌日の朝。隣の家に住む幸雄ちゃんから本部に来るよう言われた。すぐに本部へ行くと、孝夫ちゃんがみんなのTシャツをめくって、肌の焼け具合を調べていた。 「輝ちゃんも見せて」  オレは、言われたとおりに背中を見せる。 「おっ! 輝ちゃんが一番焼けている。勇ちゃん、確認してよ」 「うん、こりゃあいいぞ。輝ちゃんに決めた」  みんなが拍手。オ [続きを読む]
  • 無題 Ⅱ
  • 「仕方ないな、続きは外でやろう」  勇ちゃんが困った顔で、孝夫ちゃんに言った。 「じゃあ、そうしよう。四人はこっちに来てくれ」  外はやぶ蚊だらけで大変だ。オレ達は渋々集まった。敏ちゃんが自分の頬を平手で叩く。オレも左手の甲を刺されたので、ボリボリと掻いた。ほかの皆も叩いたり掻いたりで忙しい。 「貴ちゃんの家に、八ミリカメラがあったよね? それ借りられるかな?」 「うん、大丈夫だと思う」 「じゃあ [続きを読む]
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