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Forest of Stories https://forest-of-stories.hatenadiary.jp/

一編の小説を公開しています。現代小説ですが、恋愛や事件などに偏らず「人間」に焦点を当てて描きます。

小説:出来事の重なりで徐々に全体像が浮かび上がる大長編小説。主要人物である竹内・倉下・早瀬・井上が人々と触れ合う様子を細やかに描く。 筆者:平成6年生まれ。某国立大法学科卒業。就職活動の困難を経て、大学4年の秋に内定を得た企業に滑り込み。仕事のストレスを小説執筆で癒す。この小説の構想を大学ノートにまとめていたら50枚=100ページが埋まってしまったほどで、書くネタには困らないが睡眠時間には困る見込み。

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2018/01/11

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  • Leaf 11

    その涙に、僕はどんな言葉を掛けるべきなのかわからなかった。何も言わずに黙々とピザを頬張るさとみは、こちらに気を配る余裕がないという様子である。時折浮かぶ涙が、店内の照明を静かに反射していた。

  • Leaf 10

    「この一週間のことを話してもいいですか」

  • Leaf 9

    話ができる程度の距離まで近づくと、彼女たちからは少し焦げたような匂いの中に汗くささが漂っていた。男性のそれとは異なるとはいえ、やはり嗅覚を強く刺激する。洗い立てのセーターが後ろめたく思えて、殊更にコートの襟を立てて話しかけた。

  • Leaf 8

    針のような北風が、微動だにしない秋田犬の頬を刺す。その静けさの隣には声があり、歌があり、音がある。真っ白に覆われた冬空の下、渋谷の街は覚めない夢のように心地よい騒がしさに包まれていた。

  • Tree 1について

    筆者として皆様にお会いするのは初めてです。はじめまして。 この記事の本題に入る前に、このブログについて簡単に説明させて頂きます。

  • Leaf 7

    車内に空いている席を見つけた早瀬は、ちょこちょこと駆け寄ると腰掛けた。彼女は正面に立った竹内をまぶしそうに見上げた後で、そっと目を瞑った。呟くように「せっかくリラックスしていたのに、余計なことを思い出しちゃった」と漏らした。尋ねると、両親の姿がちらついたと笑う。酔いのせいか疲労のせいか、と首を横に振る彼女の瞼には疲労の色が浮かんでいた。竹内はその小さな顔をしばらく見つめた後で、視線を吊り広告に移した。内容はあまり頭に入らなかった。

  • Leaf 6

    「それから、一つ聞きたいことがあるんです。なぜ、さっき店を出たあと、倉下にあんな話をしていたんですか。ホテルに行こうかな、みたいな感じで」 「ああいう話をしないと、倉下さんにいじめられるんです」

  • Leaf 5

    竹内は、倉下と早瀬の関係性を密かに疑った。社内でどれほど仲が良いのか知る由もないが、軽くそのような話ができるのは「適切な先輩・後輩の関係」からはどこかずれている気がした。一階に降りた後に早瀬と二人きりで取り残された竹内は、彼女にどのように切り出し、どのように期待を裏切るかを思案した。 「早瀬さん、あの――」

  • Leaf 4

    倉下は「あれがさとみちゃんな」と耳打ちすると、「お待たせ―」と調子よく挨拶をした。これは大学時代から変わらない。彼にとって目の前の人の性別など無関係である。男子校出身の竹内には、これが共学校の実力かとまさに驚愕している部分だが、以前から倉下は「単なる性格の違い」と受け流している。竹内は店の前で会話が止まらない二人の様子を見て、ついていけないとばかりに首を右に少しかしげた。

  • Leaf 3

    やがて電車が隅田川に差し掛かったところで、倉下は竹内に微笑みかけてきた。 「緊張してる?」 「そりゃ女の子と会うんだから、まあ多少は」 「そろそろ慣れた方がいいぞ」

  • Leaf 2

    「竹内、最近浮いた話とかないの」 思えば倉下のこの言葉からすべてが始まったのだといっていいかもしれない。大学の部活動で知り合った彼とは、互いに就職してから3年が経った現在も交流を持っている。最近では結婚を意識する年齢になったこともあって、顔を合わせるといえば話題もそちらに傾きがちだった。 「申し訳ないけど相変わらず女の子の影はないかな。倉下は彼女とうまくやってるんでしょ? いいよな、余裕で」

  • Leaf 1

    地下鉄のプラットフォームに下る階段に差し掛かった辺りで、スイングトップの内ポケットの中でスマートフォンが電話の着信を告げた。少しの緊張を感じながら画面を見ると、「倉下裕介」の名前が表示されていた。 「――なんだ、倉下か」 「おっ、張り切ってるじゃん。『健闘を祈る』って言おうと思って電話したけど、言うまでもなさそうだな」

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