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掌編な小説 https://blog.goo.ne.jp/masadon87

愛と死を題材にしたものだけを投稿しました。長編は苦手。少しずつですが続きを書いていきたい。

masadon87
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2018/05/12

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  • つぶやき

    こんにちは。書きはじめても、途中でボツにしてしまうものが多い。書くもの皆悲観的になり、悲愴感が漂う。第一、ブログの趣旨からして、愛と死を扱った創作物だけを載せている。何故かは言えない。秘密なのではなく、わからないから言えないのだ。前からそういうものを集めてブログに載せたかった。つぶやき

  • 意地悪で寡黙な悪魔

    ただ、水面を漂い揺れる浮き草のような、外部からのちょっとした干渉や刺激に対しても、自分でもどうしようもなく、敏感に反応せざるを得ない身体や心の動揺。そんな青春の未熟さに向かって、後向きに走ってみたい――と思ったことはありませんか?一度でもそう思ったことがあるあなた、この物語はそんなあなたが、主人公です。母と一緒に買い物に出かけた時、母は何か思い出したように、「ちょっと他に用事があるから、どこかで時間を潰しといて」と不自然に言った。(どこに行くんだろう。杉基(すぎもと)さんの所か…)と思ったが、2時間後紀伊国屋で待ち合わせをすることにした。本屋はよく行くが、紀伊国屋には久しぶりだ。ちょうどよい機会だから家庭料理の本を買おうと思った。料理本のコーナーなのに大きな場違いな本がある。「ランボー散文詩集」(何?これ詩集?...意地悪で寡黙な悪魔

  • 不確定性原理

    箪笥の抽斗にしまっておいたものがなくなっいる。彼だ!と由宇佳里{ゆうかり}はとっさに思った。他の抽斗を探したが、どこにもなかった。(でもそんなはずは…)とも思う。白い封筒に入った書類。役所に出して受付られた日から有効となる。彼が名前を書いて三文判を押したことになっている。実際は由宇佳里が筆跡を変え、彼の名前を書いて印鑑を押した。勿論自分の名前の枠にも自分の名を書き、自分の印鑑を押印した。正式な婚姻届である。それがなくなっている。(彼以外に誰が持ち出せるんだろう)でも、彼であるはずはなかった。なぜならもう彼は亡くなっているからである。(あの時、彼の抵抗はあったが、確かに私は彼を殺した。鈍器で頭を打ち付け、ショック死したはず。そして死体は床下に遺棄した)由宇佳里は不思議でたまらなかった。由宇佳里の家を知っている者は...不確定性原理

  • ふたつめの遺言書

    祖父の遺言書があることは知らされていた。自分が死亡するとすぐに、棚の引き出しに書いて入れてあるから読みなさいと言われていた。祖母が去年亡くなり、両親は兄が3歳、私が生まれるとすぐに交通事故で亡くなった。我々兄妹は祖父と祖母に育てられたのだ。祖父は祖母が亡くなるとすぐに具合を悪くし、入院となった。兄とそして妹である私の二人の孫に看取られ、安堵した祖父は最期を飾った。死亡理由は心不全だが、百歳近くまで生存したので、大往生だと言えるかもしれない。兄はもう40歳を過ぎており、私も30歳代だがアラフォー世代だ。二人とも未だ独身だった。遺言書は我々たった二人の家族にあてたものであることはわかりきっていた。祖父を見送り、葬儀の前に兄妹で早速開いてみた。古い封筒に遺言と書かれてあったので、随分前に書かれたのであることは想像でき...ふたつめの遺言書

  • 友達の銀次

    まぶしいくらい強く朝の日が差している。ずっと眠っていた感覚で、浩一は目を覚ました。何時間眠っていたかなんてわからない。昨日寝入ったのかな。覚えていない…。寝入った時間も今何時かさえもわからない。浩一は時計を探した。体を起こして視線を上部にゆっくりと回転しながら動かす。どうもここは自分の部屋のようだ。あらためて思った。忘れているのだと。何で自分はここにいるのかということを。半分ほど体を捻った時、浩一は声をあげた。父親が首を吊っていたのだ。「な、何で?」声が恐怖でかすれた。部屋の隅には空のペットボトル、机の上には灰皿で何かを燃やした後がある。親父が死んでいる!?。何で首を吊ったのだろう。何で親父は自殺なんかしたんだろう。しかも俺の部屋で…。浩一はなんら思い当たるふしがなかった。震えが生じた。そして冷や汗が出ていた。...友達の銀次

  • 本当の理由

    浩一が戻って来たとき、家の中には誰もいる気配はなかった。(親父のやつ、またどこかで飲んでいやがるんだな)時計の針はもう午前三時を回っている。浩一は、いつもこんなに遅くなって家に帰る。時には明け方を過ぎ、昼近くになることもある。毎日夜遊びしているからだ。彼は二年前に母に先立たれ、父と二人暮らしだった。そのころからぐれはじめ、万引き、深夜徘徊、窃盗、シンナー、暴走行為、淫行、etc…。ひと通りの悪さを経験し、現在も続いている。家に帰ると、すぐに台所に向かう。それが日課となっていた。冷蔵庫を開け、炭酸飲料水の入ったペットボトルを取り出し、喉の渇きを潤す。毎日そうしている。欠かしたことがない。浩一が飲もうと、ボトルに口をつけようとしたその時、二階からドスンという鈍い音、そのすぐ後にドアの開く音がしたような気がした。(ん...本当の理由

  • はなむけ

    穏やかな暖かい天候が続いた。澄江の嫁ぐ日が近づいている。達造は、娘の花嫁姿を見るのを憂鬱な表情を浮かべながら、居間のソファーに腰を下ろす。庭に散った葉が一本の銀杏の木の周りを埋め尽くしている。やがて枯葉となり、黄土色から焦げ茶色に変わって土に戻るだろう。その枯葉の下には人間の死体が埋まっている。澄江の母であり、達造の妻、紀伊子の遺体である。もうすでに白骨化しているに違いない。と達造は思った。キャスパーの法則によると、地上よりも地中に埋めたほうが8倍腐敗スピードが遅く、白骨化しにくい。達造が紀伊子を庭に埋葬した時から10年も経った。澄江が結婚をすると言い出した。達造は驚きはしなかった。父親としてろくな返事もできなかった達造は何も言わず、昔のように走りはじめた。ハンドルを曲がる方向に少し。まず強めにブレーキをかけ、...はなむけ

  • シュレーディンガー

    第4世代セフェムを10g(1日1gを10日間)を静注(静脈注射)し、やっと気管支が安定した。1gのバイアルの粉を100㎖のブドウ糖溶解液に溶解し、ゆっくりと30分以上かけて点滴する。3か月も続いた咳に、当初は喘息かと思ったが、咳が酷いだけでは喘息と決めつけられない。喘鳴をともなう咳ではなかったし、結核菌の同定検査もしたが、その抗原も見つからず、グラム陰性の球菌が関与している感染症で急性の気管支炎と診断された。グラム陰性球菌とは何なのか俺にはわからない。一応物理化学は勉強したが、医学・薬学に関しては素人の域を超えない。部屋の炬燵で丸くなって考えていても他人の思っていることは分からない。喘息というのは免疫化学で説明するのだと訊いている。なぜ免疫なのか、素人の域を超えないどころかそんなことすら知らない。医師から一般的...シュレーディンガー

  • 涙別

    彼女の住んでいた近隣の駅は、昔から阪急宝塚線蛍池駅と呼ばれ、小さい街に埋もれていた。梅田方面から降車して線路を渡り、改札を出て狭い路地を通り、商店街に差し掛かる。雅昭にとって懐かしい街が広がった。雅昭は京子と結婚の約束をし、ある理由から別れた。そして10年経って京子の家に訪ねてきたのだが、京子はすでに亡くなっていた。雅昭は当時34歳。中年と呼ぶにはまだ早いかもしれない。彼女は雅昭と別れてすぐに自殺していた。雅昭はそのとき強い衝撃を受け、それ以来生ける屍となった。十余年も屍となっていた。現在は初老といってもいいだろう。しかし十余年もぼおっとして、またこの蛍池にやってきたのだ。彼女の父、茂郎に会うために。茂郎は昭和16年、尋常小学校を卒業し高等小学校に進学予定であったが、高等小学校は廃止されて、国民学校高等科となっ...涙別

  • ラベンダー畑に死す

    日々の生活の中に、訳もなくやってきて、歓迎されるはずもない退屈や、湿った空気の中から湧き出たような物憂い心の状態を倦怠症候群(アンニュイ・シンドローム)と呼んでいる。これは同じ憂鬱な状態の、曇り空の時のように何もかもが沈んで見えるような症状、鬱症候群(メランコリー・シンドローム)とは区別されている。ここに、愚にもつかない物語を述べることを許してもらえるなら、私の過去の真実を少しだけ語らせてもらえないだろうか。それはあなた方にとって、これから生きていくうえで、何の参考にもならないかもしれない。糧と呼べるものでもない。ひとりよがりだと嘲られるに相違ない。でも、どうしても誰かに伝えたくてしょうがない。なぜなら、それは今、退屈だから…。もしあの時、彼女と富良野のラベンダー畑で出会わなかったら……。このごろよく思い出に耽...ラベンダー畑に死す

  • 無限ループ

    気がつくとベッドの上だった。どうやらここは、病院の一室らしい。私は、慎重にゆっくりとした動作で辺りを見回した。というより、自分の体を思い通りにすばやく動かすことができない。ぐったりと、体が弱ってしまっている。どうしてこの場所にいるのかさえわからない。まるで記憶がないのだ。(交通事故にあったのだろうか。それにしては外傷がない。骨も折れていないようだ)私は、自分の体のあちこちを手で触れてみたが、体が弱っていること以外はどこにも異常はなかった。(自分の名前さえわからない始末だ。いったいどうしてこうなってしまったのだろう。誰かに鈍器のようなもので殴られて、気を失い、病院に担ぎ込まれてしまったのかもしれない。頭がぼーっとしているのもそのせいなのか。あるいは、何か精神的衝撃{ショック}が原因で記憶喪失に陥ったのではないだろ...無限ループ

  • 二度目のさよなら

    大阪府豊中市に蛍池{ほたるがいけ}という場所がある。その辺り一帯の地名になっているが、実際にはその名の小さな池が存在する。昔、普段は静かで、美しいその池が、毎年蛍の飛び交う季節になると、蛍狩りの家族連れなどで、小宴さながらの賑わいを見せたことから、蛍池と呼ばれたことは容易に想像はつくが、定かではない。阪急電鉄宝塚線蛍池駅は憐憫{れんびん}を誘うような小さな街の小さな駅だが、閑静な住宅街に接するように、その両端に線路を延ばしている。村崎雅昭が、藤原京子の家を訪ねるのは、10年ぶりのことである。今ではもう中年といってもおかしくない年頃だ。電車を降りて駅から申し訳程度の繁華街を過ぎると、蛍池があった。(昔とちっとも変わってない…)と、彼は思った。夏の盛りへと向かう昼下がりは、雅昭にとって、汗が滲み出るほど暑く、歩く足...二度目のさよなら

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