- 2008/05/10 15:40『鼻/外套/査察官』 ニコライ・ワシーリエヴィッチ・ゴーゴリ
- はじめてゴーゴリの「鼻」を読んだとき、「このおっさん、頭がおかしいんじゃないだろうか。」と思った。なんとも下品な表現ではあるが。なにしろ、朝起きると自分の鼻がなくなっているのである。なんの前触れもなく、いきなり。しかもその鼻が、床屋が食べようとしたパンの中から出てくるのである。それで驚くのは、まだ早い。持ち主から独立した鼻は、立派な制服を着て町をのし歩いているのだから。ここまでくると、想像力の針 [続きを読む]
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- 2008/05/09 20:28『ホーミニ・リッジ学校の奇跡!』 リチャード・ペック
- 小学生の私にとって大雨洪水警報は、まさに天から降ってくるプレゼントに思えたものだ。警報が出れば、学校は休みになる。朝起きて外がざあざあ降りになっていようものなら、「今日はイケるんじゃないか」と淡い期待を胸に、登校時間ギリギリまで粘っていた。同じように、風邪が流行って学級閉鎖になったときもはしゃぎ回っていた。もちろん、子どもたちを学校から解放することが、警報や学級閉鎖の目的ではない。困っている人た ... [続きを読む]
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- 2008/05/08 20:39『核を売り捌いた男ー死のビジネス帝国を築いたドクター・カーンの真実』 ゴードン・コレーラ
- 世界を股にかけて核関連物資・技術を売り捌いていた男・アブドゥル・カディール・カーン。数年前、彼が牛耳っていた核兵器市場の実態が暴かれたとき、その闇の深さに驚くとともに、どうやって一介の科学者が強大な権力をもつに至り、何十年にもわたって自由に活動できたのか、不思議に思った。また、私には悪の手先にしかみえない(“博士”という敬称に違和感を覚える)カーンが、祖国・パキスタンでは「核開発の父」とまで呼ば... [続きを読む]
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- 2008/05/08 20:28『ミシシッピがくれたもの』 リチャード・ペック
- アメリカ人にとって、南北戦争は核になっていると思う(実際に尋ねたことはないが)。南北戦争によっていまのアメリカが形作られ、戦争のずっと後に産まれた世代の体を流れる血にも、当時の記憶のようなものが脈々と受け継がれているのではないか。牧歌的でユーモア溢れる『シカゴよりこわい町』『シカゴより好きな町』から一転して、『ミシシッピがくれたもの』は、歴史の重みと人々の悲しみの深さを感じられる作品である。物 ... [続きを読む]
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- 2008/05/07 22:00『〈眠り病〉は眠らない―日本発!アフリカを救う新薬』 山内一也・北潔
- 普通の人より睡眠時間が多い方だと思うが、それでも毎日異常に眠い。心ゆくまで眠れたらどんなに幸せだろう。ところが、眠り続けて最後には死亡するという、ギクリとするような病気があるのだという。その名も、「睡眠病」。本書は、睡眠病研究の歴史と現状を紹介した一冊である。日本での「睡眠病」の認知度はどれぐらいのものなのだろうか。浅薄な私は、本書を読むまでその言葉を見聞きしたことすらなかった。しかし、アフリ ... [続きを読む]
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- 2008/05/06 23:21『かわべのトンイとスニ』 キム・ジェホン
- 5月である。新緑が目に眩しいこの時期が、一年をとおして最も好きだ。爽やかに晴れわたった青空を、つい時間を忘れて見入ってしまう。子どもの頃、浮かんでいる雲を眺めながら、そのかたちが何に見えるか、想像しては楽しんでいた。さまざまに姿を変える雲に意味をもたせると、ぐっと身近に感じられるからおもしろい。さて、好天に恵まれたゴールデンウィーク、川へ遊びに行った人も多いと思う。木々やあちこちに転がっている岩 ... [続きを読む]
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- 2008/04/30 22:40『リリー・モラハンのうそ』 パトリシア・ライリー・ギフ
- うそをついてはいけません。ものごころついてから今まで、この言葉を何度見聞きしたことだろう。おとぎ話や昔話にも、うそをついた者の悲惨な末路が数多く描かれている。たしかに、うそは人を傷つける。世間を騒がせた食品偽装や耐震偽装といった“うそ”は、人の命にかかわるだけに見過ごすことはできない。けれど、うそは本当にいけないものなのだろうか。うそで寂しさを紛らわせ、いっときの夢を見ることができる。うそで包ま... [続きを読む]
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- 2008/04/29 21:01『シカゴよりこわい町』『シカゴより好きな町』 リチャード・ペック
- 舞台は、禁酒法時代のとある田舎町。噂話が大好きな人々の暮らすのどかな町が、都会っ子の兄妹にとってはアル・カポネらギャングがはびこるシカゴよりもこわい場所だった。なぜならそこには、豪胆で型破りなおばあちゃんがいるから。『佐賀のがばいばあちゃん』が大ベストセラーになったが、これは言うなれば、イリノイ州の「がばいばあちゃん」である(英語ならどんな表現になるのだろう。greatでは上品過ぎる気がする)。とに ... [続きを読む]
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- 2008/04/25 19:28これでいいのか、大学生
- 全国の書店員が選ぶ「本屋大賞」は着々と回を重ね、いまや売り上げを左右するほどの影響力をもつようになっている。時代は、作家や評論家といったプロの書き手側から発信されるものより、“読者”という同じ目線に立った人の親しみやすい意見を求めているのかもしれない。そして新たに、「大学読書人大賞」なるものが創設されたのだという。これは、大学の文芸サークルに所属する学生が、「大学生に最も読んでほしい本」を選び出 ... [続きを読む]
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- 2008/04/24 22:45『あなたに不利な証拠として』 ローリー・リン・ドラモンド
- 売れに売れ、あちこちで絶賛の嵐を巻き起こした作品を改めて紹介するのは、どうも気後れしてしまう。さんざん盛り上がった祭りの後にひょこひょこ顔を出すような、タイミングの悪さを感じる。ベストセラー本を敬遠しがちの私だが、今回文庫化されたのを機に読んでみた。あなたに不利な証拠としてローリー・リン・ドラモンド、駒月 雅子早川書房798円Amazonで購入書評/ミステリ・サスペンス「ハヤカワ・ポケットミステリ」というコ ... [続きを読む]
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- 2008/04/22 20:31『キスで作ったネックレス』 フランチェスカ・リア・ブロック
- 「ウィーツィ・バットブックス」最新刊である。『ウィーツィ・バット』が誕生したのが1989年、日本で翻訳出版されたのがその10年後。それから約10年の歳月が流れた今、懐かしい仲間と再会できるのは、ほんとうに嬉しい。しかも、これまでの登場人物ほぼ総出演の豪華さ。キスで作ったネックレスフランチェスカ・リア・ブロック、金原 瑞人、小川 美紀東京創元社777円Amazonで購入書評/SF&ファンタジー突飛な行動を繰り返していた ... [続きを読む]
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- 2008/04/19 20:56『そのブログ!「法律違反」です 知らなかったではすまない知的財産権のルール』
- 手に取ってもらいやすいタイトルにしたのだろうが、ブログ絡みの法律問題は一章を割いているだけで、全体をとおしてみれば、知的財産権全般の入門書といった方が正しい。「インターネット社会において、必要最低限知っておくべき『交通ルール』としての法解釈を、Q&A方式でコンパクトにまとめた一冊」との紹介文は、うまい表現だなぁ、と変なところで感心してしまった。まさに、この言葉どおりの内容なのだ。本書は、マル・バ ... [続きを読む]
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- 2008/04/17 21:46『初恋』 イワン・セルゲーエヴィチ・トゥルゲーネフ
- 本書を手にして、自身の初恋にしばし思いを馳せる人は少なくないのではないか。初恋なんて、その存在に気づいた時にはもう通り過ぎてしまっているものだと思うが、ウラジミールのような体験をすれば、忘れ難い想い出になるのだろう。物語は、真夜中の一室で三人の男たちが自分の初恋について語るところから始まる。二人はとりたてて面白いエピソードではなく、最後の男に期待が集まる。40歳前後のその男はもったいぶるように、自 ... [続きを読む]
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- 2008/04/16 19:26『犬身』 松浦理英子
- 犬が好きだ。犬の姿を見ると、いくぶん心拍数が上がってしまう。全体をくまなく撫で回し、肉球を触り、お返しに顔中を舐めてもらいたくなる衝動に駆られる。心ゆくまで犬と触れ合いたい、と願う犬好きは多い。しかし、本書の主人公は思うだけに留まらず、自分が犬そのものになってしまうのである。松浦理英子の作品を読むのは初めてなので、どのような作風で書く人なのか知らないけれど、本書がいっぷう変わった小説であること ... [続きを読む]
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- 2008/04/14 20:48『宝島』 ロバート・ルイス・スティーヴンスン
- 『宝島』を知らない人っているんだろうか。子どものための世界文学全集の中に必ずといっていいほど入っていた上に、「男の子におすすめの児童書」の筆頭に挙げられていた覚えがある。たくさんの翻訳が出されているのも、人気の高さを物語っているといえるだろう。ただ、子どもの頃『宝島』で繰り広げられる冒険に胸躍らせた読者でも、この作品の小説としての素晴らしさを知っている人は、案外少ないのではないだろうか。かくいう ... [続きを読む]
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- 2008/04/11 20:39こどものともは、おとなのとも。
- 絵本が好きで、新刊は割とマメにチェックする。書店のキッズコーナー(と私が勝手に呼んでいる)で、ちびっこたちに混じって絵本を読んでいる私は、さぞかし異様なオーラを放っているに違いない。「どっちか一冊にしなさい!」と母親に言われてびーびー泣いている子どもを横目に、福音館書店の月刊誌を2冊買った。この「こどものとも」シリーズは、おもしろい絵本がひょっこり出てくるので、気になる存在なのだ。『らっこち ... [続きを読む]
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- 2008/04/09 23:29『肉体の悪魔』 レーモン・ラディゲ
- 学生時代、やたら文学通ぶる同級生がいた。ひとり悦に入っているだけなら結構なのに、なぜか私に絡んでくる。「太宰はさぁ」「ゲーテはさぁ」と作家の言葉を語る彼のことが、「ブンガク、ブンガク」と鳴くオウムに見えて仕方がなかった。私の興味は、「なにを読んだか」ではなく、「なにを考えたか」にあったので(悪い人間ではないと思いつつも)、ただ鬱陶しかった。そんな彼の口によくのぼったのが、「ミシマ」だった。純文学 [続きを読む]
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- 2008/04/08 20:52『大好きな本 川上弘美書評集』 川上弘美
- 川上弘美、初の書評集である。え、まだ本になってなかったんだ。新聞や文庫本の解説など、あちこちで目にしていたから、既に一冊読んだ気になっていた。本書は二部構成になっており、一部では新聞紙上に書いた書評を、二部では文庫本や全集の解説文を収録している。10年という年月をかけて集められた書評からは、読書のよろこびがたちのぼってくる。書評本を書評するのは、なんだか妙な気分である。が、拙いなりにも書評(らし [続きを読む]
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- 2008/04/07 20:35『白河夜船』 吉本ばなな
- 読書というのは、つくづく個人的なものだと思う。そして本を読む「わたし」自身も、刻々と変化しており、置かれた状況や、精神状態、経験などによって、同じ本を読んでもひとつとして同じものはない。傑作に思えた作品が、しばらくして再読すると凡庸なものに感じてしまうことなど、ざらである。けれど、それがまた面白い。本書を久しぶりに読み返してみた。吉本ばななの作品は、心底疲れたときによく効く。風邪をひいたら薬を ... [続きを読む]
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- 2008/04/04 21:39『赤い糸の電話』 立原えりか
- 本書には、11篇の物語が収められている。立原えりかさんの作品は、優しさの中に現実の痛みが潜んでいることは、前のレビューで触れた。ここには、昔助けられた恩を忘れなかった動物と人との交流を描いた「ねこのおんがえし」や「一月のウグイス」といった心あたたまる物語もあるが、全体的に切なくて毒のあるものの方が多い。 [続きを読む]
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- 2008/04/03 19:06『幸せな子犬の育て方』 矢崎潤
- 18年飼っていた愛犬が、今年の2月に他界。大往生で安らかな最期だったとはいえ、寂しさは耐えがたく、ペットロスになってしまった。そんなとき縁あって、捨て犬や野犬の保護・里親探しを行っているNPOから子犬を譲っていただけることになった。親犬を保護するつもりで捕獲したところ、子どもを産んでいたのだという。 ... [続きを読む]
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- 2008/03/26 22:37『ファーストマン ニール・アームスロングの人生(上・下)』 ジェイムズ・R・ハンセン
- 本が好き!プロジェクト経由で献本していただいたものの、どうにも気分が乗らず、読みかけたまま放置すること数ヶ月・・・。そんな時、エンデバー打ち上げのニュースが私の目を引いた。「今だ!土井さんが宇宙にいるこの時を逃していつ読む!」と人知れずモチベーションをあげて、読書を再開。ファーストマンJames R. Hansen、日暮 雅通、水谷 淳ソフトバンククリエイティブ2499円Amazonで購入書評/ルポルタージュ [続きを読む]
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- 2008/03/25 20:33『アメリカにいる、きみ』 チママンダ・ンゴズィ・アディーチェ
- しぼりたてのヤシ油が何色をしているか、ご存知だろうか。正解は本書に書かれているが、おそらくほとんどの日本人が答えられないだろう。そして、ヤシ油の色を知らないのと同じように、アフリカやそこで暮らす人々のことを私たちは、いや私は、何も分かっていないのだ。『アメリカにいる、きみ』は、ナイジェリア出身の作家・チママンダ・ンゴズィ・アディーチェの短篇集である。30歳という若さにして、既に2冊の長篇小説と20 ... [続きを読む]
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- 2008/03/24 20:04『ハーケンと夏みかん』 椎名誠
- 『くだものだもの』というアンソロジーの中で強烈に印象に残ったのが、椎名誠さんの「ハーケンと夏みかん」だった。いつか元本を読みたいと思っていたところ、古本屋で見つけたので購入。私が買ったのは山と渓谷社から出版されたハードカバーだが、集英社文庫としても出ているので、そちらの方がリーズナブルである。 [続きを読む]
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- 2008/03/21 20:54『ジェイン・エア(上・下)』 シャーロット・ブロンテ
- オースティンの『高慢と偏見』が少女マンガだとすれば、この『ジェイン・エア』はさしずめメロドラマといったところだろうか。孤児になった少女は、引き取られた伯母の家で冷たい仕打ちを受け、寄宿学校に厄介払いされる。やがて成長し、家庭教師として赴いた屋敷の主人と恋に落ちるが、次々と苦難が襲い掛かってくる。あらすじをみると、実に波乱万丈な物語である。このいかにも少女趣味的な内容が嫌でこれまで手が伸びなかっ [続きを読む]
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