ささむ さん

ささむさん: どうしようもないこと。
  ささむさん 携帯プロフィール QRコード   

参加トラコミュ

小説宣伝広場小説同盟オリジナル小説を紹介しよう!
小説宣伝広場小説同盟オリジナル小説を紹介しよう!

プロフィール

ハンドル名ささむ さん
ブログタイトルどうしようもないこと。
サイト紹介文短編をぼちぼち投稿しています。
参加カテゴリー
更新頻度情報提供99回 / 538日(平均1.3回/週) - 参加 2006/12/07 19:29

ささむ さんのブログ記事

記事削除機能過去の記事 … 1 2 次へ
  • 2008/04/18 09:27自由通路(6)
  • 「…出るぞ」僕は立ち上がって、店主に金を払った。アイコはまだストローをちゅうちゅう吸いながら、力の入っていない目で僕を見上げた。「どこに行くの」「知るか。クライアントは君だろう。君が行くところに同行するのが僕の仕事だ」「じゃあ、まだいいじゃない」「…帰って少し眠った方がいい」愚図る彼女の腕を引っ張って半ば無理矢理立たせると、僕たちは店を出た。通りでタクシーを止め、乗り込むと僕は、「家はどこだ」と彼... [続きを読む]
  • 2008/04/11 22:49自由通路(5)
  • 「…どうやら、君のことをクライアントとして認めざるを得ないようだ」僕は契約書をアイコに返しながら言った。「最初から言ってるじゃない」彼女は、唇を尖らせた。「私が依頼主だ、って」僕は頭を掻いて、悪かったよ、と言い捨てた。「…で、依頼内容はなんだ」「ボディガードよ」「さっきの人影か」僕は、駅前の地下道入口にいた何者かを指して言った。「そう…かな、分からない」答えながら、アイコは明らかに眠そうだった。テ... [続きを読む]
  • 2008/04/10 09:57自由通路(4)
  • 「アイちゃんっていうんだ」不意に娘が口を開いた。「かーわいい」そう言うと彼女は僕の顔を見上げ、にやにやと笑った。「コードネームだ」と僕は困惑して言った。「あーいちゃん」「止めろ」僕は苛立って怒鳴ったが、彼女に懲りた様子は窺えない。やれやれ、と僕は溜息をつく。「…君は何者だ」と僕が訊ねると、彼女は椅子の背にもたれかかりながら答えた。「私もねえ、アイちゃん」「ふざけるな」「だって本当だもの。ウエダアイ... [続きを読む]
  • 2008/04/09 23:46自由通路(3)
  • 僕は頭を抱えてしまった。どういうことだ。僕に女のクライアントをつけるなんて。目の前の娘は、顔全体を桜色に染めて、もはやうとうととし始めていた。本当に彼女がクライアントなら、これはこれで危険な状況だ。僕は携帯電話を取り出して、本部に電話を掛けた。すぐにマネージャーが出た。「もしもし、エージェント・Iだ」Iというのは、僕のコードネームだ。少なくとも本部管轄のエージェントは、すべてアルファベット一文字の... [続きを読む]
  • 2008/04/08 09:50自由通路(2)
  • 「…お酒、入ってます?」「アイリッシュ・コーヒーだからな」僕はほぼ同じ会話をリフレインするようにして、そう言った。彼女の眉間の皺は更に深くなった。「酔っぱらっちゃうじゃないですか」「マスターがしくじってなければ、酔うほど入ってない」僕はちらっとカウンターに目をやって、自分のコーヒーを口にする。完璧な仕事だ。寸分違わず、いつものアイリッシュ・コーヒーだ。店主はこちらを気にする様子もなく、再び新聞を開... [続きを読む]
  • 2008/04/04 22:52自由通路(1)
  • 「少しお話しをしませんか」と彼女は言った。僕は疎ましく思って、吸いかけの煙草を灰皿に放り込み、無言のままその場を通り過ぎようとした。「あの」と彼女は僕の前に立ちふさがって、僕の顔をじっと見上げる。僕は驚いて足を止める。「ねえ、」と僕は溜息をついて言った。「僕は急いでいるし、セールスも宗教の勧誘も興味がないんだ」僕が幾分穏やかな口調でそう断ったのは、彼女がさっき一瞥した印象よりはずっと若く、可愛らし... [続きを読む]
  • 2008/03/28 10:24ファミリー・コンピュータ(9)
  • サツキはだから、カズヤとはお似合いといえばお似合いだった。不意にカズヤの家の電話が鳴った。しばらく電子的なベルが鳴り続け、留守電に切り替わった。相手がメッセージを入れる声がする。「タミオ、いたら出てくれ」カズヤの声だった。僕は腰を上げて、二階の廊下に置かれた電話機の受話器を持ち上げる。「もしもし」「ああ、タミオ。ごめん」カズヤは僕が受話器を取る早々、謝った。「なんだよ」「帰れなくなった」「道にでも... [続きを読む]
  • 2008/03/25 08:38ファミリー・コンピュータ(8)
  • 僕がカズヤの告白を受けたのは、一年の夏休み直前、くらいだったと思う。彼はうなだれて、僕に言った。「…順番に話したほうがいいかな」「なんだよ」と僕は要領を得ないで答える。「実は、ヤヨイ先輩とは、その、付き合ってる」「そう」僕の返事があっけないので、カズヤは眉をしかめる。「なんだよ、黙ってて悪いと思って話してるのに。お前、俺にそんなに興味ないか」「いや、そういうことじゃないけど」本当は噂どおりだったん... [続きを読む]
  • 2008/03/21 16:21ファミリー・コンピュータ(7)
  • その後、そういう機会は当然のように訪れなかった。万が一アヤ兄が「今日は可愛いから見せようか」と申し出たとしても、僕は断ったに違いない、多分。彼女に女性としての魅力が全くなかった、訳ではなかったのだけれど(むしろぱっと見には大人びて美しい人だった)、僕は彼女との間に男女を意識するような関係は望んでいなかったし、何よりもそれ以上に、当時の僕はウブだったのだ。ジュンコはしばらく顔を上げなかったので、僕は... [続きを読む]
  • 2008/03/21 12:57ファミリー・コンピュータ(6)
  • 「二十九インチです、けれど」「貸せ」「は?」「トイレ行くぞ」僕は要領を得ないまま、アヤ兄に手を引かれて駅のトイレに入る。アヤ兄は迷わず男子トイレに僕を連れて入ると、個室に僕を押し込め、自分は隣の個室に入った。「タミオ、私のジーンズと帰るまで交換だ」彼女はそういうと、しばらくして仕切りの壁の上にホワイトジーンズを引っ掛け、僕のを要求した。僕は言われるまま、自分のジーンズを脱ぎ、同じように壁に引っ掛け... [続きを読む]
  • 2008/03/19 23:50ファミリー・コンピュータ(5)
  • 僕は心配になって、一階に下りた。もし彼女が急に帰ってしまったのなら、それはそれでいいや、と思ったのだけれど、何か困難なトラブルだったら、何かしてあげられるのは僕だけだった。といってもトイレの中なら、せいぜい紙がない、とかそんなところだろうか。いや、ひょっとしたら貧血を起こして倒れているかも知れない。僕は廊下を急いだ。トイレのドアをノックする。返事はない。ノブに手をかけると、鍵が掛かっていた。「ジュ... [続きを読む]
  • 2008/03/19 17:11ファミリー・コンピュータ(4)
  • 彼女はずっと、他人に関心が薄いような素振りをしていたので、僕が入部してから僕にかまうようになって、僕に恋でもしたのではないか、という噂が立った。僕が「アヤ兄」と呼ぶようになって、そういう勘ぐりをする輩はほとんどいなくなったのだけれど(兄弟のような、という形容がいかにも適切な関係に見えたのだろう)、そもそも最初から彼女は気にする様子もなかった。「阿呆はほっとけばいい」とアヤ兄は言った。「自分が正しい... [続きを読む]
  • 2008/03/18 23:31ファミリー・コンピュータ(3)
  • ジュンコは、驚いたような顔をして、「私は、いいよ」と手を引っ込めた。「ゲーム、よく知らないんだ、私」「僕もだけど、そんなに難しくないよ、これ」僕は、ジュンコにもう一度勧めたが、彼女は頑なに首を振った。テレビには、待機中の画面と安っぽい電子音の音楽が流れている。沈黙が怖くて、僕はそれを消せない。部屋の主は、姿を消していた。小さな折り畳み式のテーブルには、ペットボトルのファンタ・グレープとポップコーン [続きを読む]
  • 2008/03/14 09:03ファミリー・コンピュータ(2)
  • それが多分、四月とか五月とかの頃、だったと思う。それからほとんど一年間、僕はジュンコと口をきかなかったし目も合わせなかった。それは、さほど難しいことではなかった。当時僕の中学は、一クラスが五十人ちかくだったし、特に意識しなくても何人かの女子についてはまったく接点を持たないまま一年が過ぎていくのはザラだったからだ。僕が彼女を毛嫌いしていたのか、といえば、それは少し違う。むしろ正確には、好意のようなも... [続きを読む]
  • 2008/03/12 08:38ファミリー・コンピュータ(1)
  • ジュンコは困った顔をした。僕も多分、ものすごく困った顔をしていたに違いないのだけれど、それは彼女の顔を見てひどく動揺していたからだ。いや、きっと悪いことは言っていない、はず、だった。僕は黙ってスイッチを押し、Aコントローラーを握りしめる。ICチップが、能天気な音楽を奏でる。14インチのブラウン管を、僕はじっと見つめる。すぐ隣でジュンコがもぞもぞと座り直している。僕とジュンコはとても仲がいい、訳では... [続きを読む]
  • 2008/02/20 23:38ピアノ・マン(39)
  • 「それについては感謝してますよ、少なくとも過去二年間面倒を見ていただいたことは」僕は座ったままそう言った。彼は、僕に目線を合わせないまま歩き始めた。僕は煙草を置き、続けた。「あなたは多分、二十年以上前に同じようなことをしてますね」彼は足を止める。「…君には関係のないことだ」彼はそう言ってドアを開け、足早に出て行った。入れ替わりに、秘書の女性が入ってきた。僕は上着と鞄を持ち、立ち上がって彼女に礼をし... [続きを読む]
  • 2008/02/20 09:05ピアノ・マン(38)
  • 僕はきっと、もっと弱さを晒すべきなのだ。弱くて脆い、だらしないくらいにどうしようもない自分を晒して、レミに受け止めてもらうべきだ。それは、僕が強さを獲得するために必要なことなのだ。僕はそのとき、そう考えていた。レミはまだじっと俯いたまま、嗚咽に肩を震わせていた。しばらく何も言わなかった。日が短くなったその日の夕暮れは、彼女の姿をぼんやりと隠して、表情を窺う仄かな機微を見えなくさせていた。僕はなんの... [続きを読む]
  • 2008/02/19 08:40ピアノ・マン(37)
  • 僕はその目つきに怯んでしまう。蛇に睨まれた雨蛙、ってこういうことを言うんだろうか。上手く返事をすることが出来ず、僕は俯いた。「ねえヒデさん、リサちゃんはあなたや奥さんが傍にいなくても、それなりにちゃんと育つと思う。親はなくとも子は育つ、ってなんの喩えでもない、そのままだよ。僕がいうんだから間違いない」「…そうかな」「勿論、幸せな境遇じゃない。でも幸いなことに、リサちゃんは多分、お金に困ることはない... [続きを読む]
  • 2008/02/14 09:20ピアノ・マン(36)
  • 置き手紙のようなものも特になかった。残っていたのは、僕たちの行為の残滓だけだった。僕はバスルームで、熱いシャワーを浴びる。たぶん、あれがリエコとは最後なんだろうな、と思うと、微妙な感情が一瞬僕を覆う。悲しいというのでも、晴れ晴れしているわけでもない、もやもやとした手応えのない感情だ。彼女とは、そのはじめから僕は何ひとつ決めていない気がした。交際の開始から、結婚、出産、離婚。僕は彼女が手を挙げたこと [続きを読む]
  • 2008/02/12 07:52ピアノ・マン(35)
  • 「父は、私に真っ当な生き方なんか出来ない、と思っているんだわ。父が考えるような、母親としての振る舞いがね」「リエコ、」と僕は苛立たしい感情を露わにして言った。「それはお義父さんの考えで、君の考えじゃない。リサは君と僕の子供であって、彼の子供じゃない。間違ってるかい?ひいおばあさんの養子になる子供なんか、聞いたことがない」「仕方ないじゃない」リエコは言った。「あなたと結婚したのは私の意思で、あの人は... [続きを読む]
  • 2008/02/08 09:30ピアノ・マン(34)
  • 「再婚」「養子」。いったい何の話だ?僕は、全ての思考が一瞬にして停止するような感覚に襲われた。まるで真夜中にブレーカーが落ちて、全ての明かりと家電が止まり、感じたこともないような静寂に突然包まれたような感覚だ。そろそろと闇の中分電盤に近寄り、注意深くスイッチをひとつひとつ確認する。まるでそんな風にして、僕は自分の感覚を確かめる。僕は自分の部屋にいて、ダイニングチェアに腰掛けて便箋を手にしている。そ [続きを読む]
  • 2008/02/07 01:38ピアノ・マン(33)
  • 僕は夜遅く、僕の部屋のピアノを開く。ヘッドホンをかけ、電源を入れる。しばらく右手の指づかいを練習する。電子ピアノは、レミのレッスン室のピアノとは、少し鍵盤の重さや返り方が違う。押さえるときはいくぶん軽く、返りのタイミングがほんの少し遅い。でも、練習には十分だ。それに、こんな時間でも周りを気にせずに弾くことができる。「奥さんは普通のピアノを買いたかったみたいだけどね、僕が電子ピアノを勧めたんだ」ある... [続きを読む]
  • 2008/02/06 14:24ピアノ・マン(32)
  • レミの家に戻ると、僕たちは居間で、帰りがけに買ってきたジャック・ダニエルを開けた。テレビではちょうどスポーツニュースが始まっていて、横浜スタジアムの試合結果を流していた。「やっぱりホームランだったんじゃないかな」画面に映し出されたスコアボードには、四回裏に二点が入ったことと、外国人選手がホームランを打った内容が書かれている。「でも、ほら」レミが指さすと、五回の表、ショートの選手がファインプレーを見... [続きを読む]
  • 2008/02/05 13:34ピアノ・マン(31)
  • 「そもそも、君はなんで音楽教室を辞めたんだっけ」僕が尋ねたのは、一品目のコンソメのジュレを食べ終えたときだった。皿が片付けられ、グラスの減ったワインが注ぎ足され、申し訳なさそうにテーブルの隅で縮こまる堅いパンをレミが千切って口に放り込んだところだった。「聞きたい?」「うん、まあ。多分、君の場合仕事のモチベーションが例えば僕とは少し違う」「どんな風に?」「僕の仕事は、一義的に金を稼ぐ手段だけど、君は... [続きを読む]
  • 2008/02/04 15:26ピアノ・マン(30)
  • レミが僕を連れてきたのは、ある老舗のレストランだった。高級な佇まいではないが、落ち着いた雰囲気がある。「今日はお二人ですか」ドアを開けると高齢のウェイターが恭しく挨拶をし、彼女にそう声を掛けた。「私だってデートくらいするわ」とレミが応じると、「いや、お連れ様が羨ましいですね」と彼は静かに笑いながら僕を見て、席に案内した。「常連なのかい」僕はレミに尋ねた。週末で、店内はそれなりに席が埋まっていたが、... [続きを読む]
過去の記事 … 1 2 次へ

にほんブログ村

>

どうしようもないこと。