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- 2008/09/06 13:55師走ホラー 「小人(こびと)」 プロローグ
- 文月のホラー「ある暑い夏の日に」の語り手の原田氏は、若くして不動産の地上げで資金を作り、アメリカに留学して不動産投資ファンドの運用を学び帰国した。彼は六本木ヒルズの中に不動産投資ファンドの運用会社を構え、成功を重ねる。文月のホラー「ある暑い夏の日に」は、その当時の原田氏を語り手にした物語である。そして、この物語では彼の美人秘書 佐久間さんとの、厚い信頼関係が殺伐とした原田氏の心に、一筋の光を与... [続きを読む]
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- 2008/09/05 13:55霜月のホラー 「顔中に・・・」 第13話 完結
- 「しかし、それは、また人騒がせな化け物んやなあ。」 電話口で、大原氏が笑いながら、言った。 「でも、よろしかったですわ、奥さんの誤解がとけて。社長さんの奥さんに、京都に女がいるなんて思われた日には、もう京都に来ていただけなくなりますから。まだ、社長さんに、たんと案内したい店もありますからね。京都、好きになっていただかんとね。われわれ、せっかく仲ようなったんだしね。」 そんな大原氏との電話... [続きを読む]
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- 2008/09/03 01:42霜月のホラー 「顔中に・・・」 第12話
- 文子は、僕を前にして、じっと僕を見つめた。その表情から、僕は文子が僕に何か疑惑をもっていることを悟った。僕には、文子にそんな風に見つめられるような覚えはなにもなかった。 「文子。どうしたの?はっきりいってごらん。何か、君は、僕を誤解しているみたいだよ。」 文子は、大きくため息をつくと、一言、口を開いた。 「あなた。この間の出張、土日に延長したわよね。誰といたの?」 僕は文子に何を言われてい... [続きを読む]
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- 2008/09/02 18:30霜月のホラー 「顔中に・・・」 第11話
- 大原氏は、僕をそのまま京都駅に送ってくれた。僕は丁重にお礼を言って、京都駅から新幹線に乗った。そして、文子に電話をかけた。 「あなた、お仕事は大丈夫?昨日から連絡がないから心配してたのよ。」 文子の声に、僕は深い安堵感を覚えた。 そして、また、東京での僕の日常生活が始まった。僕は、京都での女のことなど忘れ、そして出張から帰ってから10日程が過ぎた。 そんな、ある日の夕刻、僕の携帯に文... [続きを読む]
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- 2008/09/01 18:30霜月のホラー 「顔中に・・・」 第10話
- 大原氏の運転する車に乗り込み、僕は、温かい「午後の紅茶」レモンティーのペットボトルを受けとって口に含んだ。 「社長。大丈夫ですか?顔が真っ青じゃないですか。」大原氏は、車の運転席から僕の顔を覗き込んだ。僕は、大原氏に、京都初日でのホテルの出来事、その女の様子などを細かく話していった。 「京都ちゅうところは、昔から、たあんと、亡霊やら幽霊の話がありますさかい。まあ、そんなのに引きづり込まれんで... [続きを読む]
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- 2008/08/31 13:14霜月のホラー 「顔中に・・・」 第9話
- 僕は、平野屋を出て、改めて夕暮れに染まる赤い鳥居と、藁ぶき屋根の平野屋の光景を眺めた。日ごろ、僕たちがテレビ番組やCMで流されている京都の街中の光景とは異なる、原風景。僕は、それを感じていた。 携帯が鳴った。 昨日、一緒に酒を飲んだ大原氏からだった。 「今日、嵯峨野行きはりましたか?」 大原氏が電話の向こうから尋ねてきた。 「はい、実は、今、ちょうど、お教えいただいた平野屋の前にお... [続きを読む]
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- 2008/08/27 23:57霜月のホラー 「顔中に・・・」 第8話
- 平野屋の前に立った。藁ぶき屋根の屋敷のまえに、赤い毛氈を敷いた腰掛けが並んでいる。 「鮎茶屋」・・・春から秋にかけては、天然物の鮎を食べさせる料亭だ。 その趣は、1000年の時を、ゆっくりとした時間をかけて歩んできたことを語っている。僕が店を覗き込んでいると、お上が笑顔で店前に出てきた。僕の身なりは、ハイキングにきた中年男であったが、お上は丁寧に対応をしてくれる。 腹も減った。今の時期は... [続きを読む]
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- 2008/08/26 15:50霜月のホラー 「顔中に・・・」 第7話
- 「平野屋さん?ああ、もう少しですよ。あと1キロくらい。」 道端を通るおかみさんに、道を確認し、坂道を登っていく。遠くに、赤い鳥居と藁ぶき屋根の家屋がみえた。 あの夜に、僕の脳裏に現れた光景そのまま。 深い山の中の光景。 深い、深い、山の中。 山の奥に向かう道に、赤い鳥居が見える。 その鳥居の手前に、藁ぶき屋根の家屋が、一軒。 山は、一面に紅葉(もみじ)に彩られ。 紅葉の赤と、鳥... [続きを読む]
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- 2008/08/25 07:56霜月のホラー 「顔中に・・・」 第6話
- 翌日は日曜日だった。僕は朝早くに目を覚ました。 そして、タクシーで嵐山に向かった。秋の観光シーズン、特に嵐山は秋の京都の観光メッカだ。嵐山に近づくと、観光客の車が渋滞を起こし、先に進めなくなった。僕は途中でタクシーをおりて、歩いて進んでいった。渡月橋の手前を左折して、天龍寺に至る道は、観光客でごったがえしていた。しかし、天龍寺を抜け、その裏門から外へ出ると、観光客はめっきりと少なくなった。... [続きを読む]
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- 2008/08/24 02:42霜月のホラー 「顔中に・・・」 第5話
- 「うーん。山の中の、赤い鳥居ね・・・。どこやろうな?」 大原氏は、鍋から湯豆腐をすくいながら、そう呟いた。 その日の夕刻。京都南禅寺の境内にある湯豆腐の老舗「奥丹」で、僕は大原氏と湯豆腐の鍋を挟んで向かい合っていた。大原氏は、立命館大学の教育システムを担当する課長。いわば、僕の仕事のお客様の責任者であった。昨日、初めて訪問した立命館大学で知り合ったが、仕事がスムースに進み、お互いに意気投合... [続きを読む]
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- 2008/08/23 22:45霜月のホラー 「顔中に・・・」 第4話
- それは、深い山の中の光景だった。深い、深い、山の中のように思えた。山の奥に向かう道に、赤い鳥居が見える。そして、その鳥居の手前に、藁ぶき屋根の家屋が、一軒見える。山は、一面に紅葉(もみじ)に彩られている。紅葉の赤と、鳥居のあざやかな赤。その燃えるような、あざやかな秋の景色の中に、凛としてたたずむ藁ぶき屋根の家屋。燃える赤と、そして古い藁ぶき屋根。その強烈なコントラストが、僕の脳裏に焼き付いてい... [続きを読む]
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- 2008/08/21 14:06霜月のホラー 「顔中に・・・」 第3話
- 僕は部屋の中に歩み入った。そして、薄暗い部屋の中の女に近寄って行った。年のころ、十八か二十歳(はたち)。若い女だった。 しかし、その風貌は、現代の女性のものとは異っていた。 白い着物の上からも痩せている体がわかる。やや下を向き加減の顔には、相変わらず蠅が黒い無数のほくろのように動きまわていたが、もしその蠅を除いたならば、細い痩せた若い女の顔が現れることだろう。唇には薄い紅をつけている。 ... [続きを読む]
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- 2008/08/20 14:06霜月のホラー 「顔中に・・・」 第2話
- その日、僕は、夕刻まで立命館大学で、打ち合わせや、システム導入実験の段取り確認を行い、午後6時ごろに、その日宿泊するビジネスホテルに帰った。僕が宿泊するホテルは、四条松原にあるビジネスホテルだった。 今回の出張は、一泊の予定だった。立命館との仕事は、今日、予定通り進み、僕は明日の朝の「のぞみ」で東京に帰る予定だ。 ホテルにタクシーが到着した。 チェックインの手続きを済ませ、ダブルの... [続きを読む]
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- 2008/08/15 03:43霜月のホラー 「顔中に・・・」 第1話
- 品川から乗った新幹線「のぞみ」が、静かにホームを滑り出した。 僕は、8号車のグリーンの窓側の席に腰をおろした。僕の会社のオフィスは、品川のインターシティーの高層ビルに、今は入っている。そのため、オフィスを出てから、5分で新幹線に乗ることができる。快適だった。 僕は、現在、独立系のITソフトの開発・保守を行う会社を経営している。売上高は、年商15億円。大きい会社ではなかったが、ソフトを開発... [続きを読む]
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- 2008/08/13 20:24神無月のホラー 「神在月」 第17話 完結
- 「そうそう、先生。忘れちゃうところでした。これ、酔っぱらう前にお渡しします。ありがとうございました。」 真奈美は、封筒を取り出した。兄の事件の成功報酬だった。 「いやいや、これはいいよ。手付金をいただいているしね。」小野弁護士は言った。 「先生、そんなわけにはいきません。お約束じゃないですか。先生に兄を助けていただいたのですから。兄に前科がつかなかったのは、ひとえに先生のおかげです。」 小野弁護士... [続きを読む]
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- 2008/08/12 19:01神無月のホラー 「神在月」 第16話
- 三枝の釈放から3か月が過ぎた。新しい年が明けていた。 小野弁護士と真奈美は、その日、銀座四丁目交差点の和光の下で待ち合わせ、銀座五丁目のイタリアン エノテーカピンキオーリでワインを傾けた。三枝と、三枝の勤めていた製薬会社との間で示談が成立した、お祝であった。 小野弁護士は嬉しそうだった。 「でも、本当にお兄さん、出雲に行くとは思わなかったな。僕は、思いつきと軽いジョークで言ったつもりだっ... [続きを読む]
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- 2008/08/11 17:49神無月のホラー 「神在月」 第15話
- 「はい、本当に懲りました。もう二度と、犯罪行為に手を染めたりしません。あのお・・・会社にはお詫びに行くことはできないでしょうか?」 私は恐る恐る尋ねた。 「そうだね、会社側が詫びに来いと言ってくれば、訪問できるけどね。会社の出方次第だね。ただ、今の感じでは、会社は民事訴訟を起こしてくるだろうね。あとは、示談に持ち込めるかどうかだね。とりあえずは、会社の出方待ちだね。」 「そうですか。それと・・・あ... [続きを読む]
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- 2008/08/10 16:33神無月のホラー 「神在月」 第14話
- 留置所にいる間に、暦は神無月になっていた。東京の街を歩いたのが、何年も前のような錯覚に陥るほど、なつかしかった。真奈美と私は、中央線の四谷駅から、紀尾井町に向って歩いていった。 小野弁護士は事務所で、笑顔で私を迎えてくれた。私は、入口で頭を深く下げた。 「ああ、大丈夫。まあ、入ってください。あなたは、もう容疑者ではない。昨日、釈放されたんだから。」 事務所の会議室に通された私は、小野弁護... [続きを読む]
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- 2008/08/08 16:30神無月のホラー 「神在月」 第13話
- そして、逮捕から21日め。私は突然釈放された。その前日、小野弁護士が私に面会にきてくれた。 「三枝さん、明日あなたの勾留期間が満了します。その結果、あなたを不起訴として釈放が決まりました。明日、家に帰れます。」 小野弁護士にそう伝えられて、私は何が起きたのかわからなかった。犯罪を行ってしまったことは事実だし、なぜ、起訴をされないのか、私にはまったくわからなかった。 その夜、いろいろなことが頭... [続きを読む]
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- 2008/08/07 12:45神無月のホラー 「神在月」 第12話
- 「神様の声か・・・」私は小野弁護士の言葉を思い出していた。 「私は営業部長でした。商品である薬品の保管や出荷は、商品部が行っておりました。ですので、私は薬品の保管や持ち出しには権限がありませんでした。」 私は応えた。 「うーん。」 後藤副検事は唸った。警察の取り調べや、証拠からも、本件は窃盗として送検されている。しかし逮捕状は業務上横領で請求されていた。 これは困ったな・・・後藤検事は内心困... [続きを読む]
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- 2008/08/06 11:59神無月のホラー 「神在月」 第11話
- 小野弁護士と面会した翌日、私は、朝から警察の護送車で検察庁へと向かった。警察の護送車は、各警察署にある代用監獄から、裁判所・地検・区検に向かう勾留者を乗せてゆく。各警察の裏側で停車すると、手錠をはめ、その手錠をロープで数珠つなぎにされた勾留者が乗せられる。霞が関にある検察庁の地下には、これらの勾留者を終日留置する臨時監獄が並んでいる。 この監獄は、一室におよそ15人が収容され、裁判所や検察の... [続きを読む]
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- 2008/08/05 11:59神無月のホラー 「神在月」 第10話
- 刑事との面会を終えた小野弁護士は、警察で三枝との留置所での面会の順番を待っていた。警察は、やはり業務上横領で送検する気はないな、小野弁護士は確信した。 森口刑事が指摘したとおり、業務上横領と窃盗は、法定刑は同一だった。しかし、実務に長けた小野弁護士から見たとき、その違いは大きいのだった。 業務上横領罪を立証するためには、業務権限の存在や、目的物の占有、そして横領という行為を立証するために、行為... [続きを読む]
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- 2008/08/04 08:52神無月のホラー 「神在月」 第9話
- 留置所の三枝に、小野弁護士が面会をする前。 小野弁護士は、その日、午前中に事務所に飛んできた真奈美から事件の受任を受けると、すぐに警察の担当官である森口刑事に連絡をとり、自分が三枝の私選弁護士である旨の顕名を行うと、すぐに警察に向かった。そして森口刑事から、会社の告発状や、取調記録、そして証拠品などを借りて、丹念に読み込んでいった。その上で、小野弁護士は、森口刑事と面会したのだった。 「... [続きを読む]
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- 2008/08/02 03:49神無月のホラー 「神在月」 第8話
- その夜の午後7時過ぎ。私は看守から、呼ばれた。 「2番。弁護士の面会。表に出なさい。」 弁護士の面会は、看守の付き添いが免除される。私は、面会室の透明ボードの前に腰をかけ、待っていた。 ボードの向こう側に、40代の、スーツを着た男性が入ってきた。私の顔を見て、彼はほほ笑んだ。その笑顔に、私は深い安堵感を覚えた。 「弁護士の小野です。はじめてお目にかかります。」 彼は、茶色の革の鞄から、... [続きを読む]
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- 2008/08/01 02:40神無月のホラー 「神在月」 第7話
- 外の世界では、もう秋の気配が感じられる頃なのだろうか。しかし、留置所の中には、四季の移ろいは一切感じられなかった。私は、来る日も来る日も森口刑事の取り調べに応じた。伝票の操作から、薬の受け渡し方法まで、詳しく話をしていった。そして、私は、ほどなく私が行った行為の全貌を残らず話し尽くした。 それから数日、私には森口刑事の取り調べがとぎれた。雑居房の中で、一日中、本を読んで過ごす日が続いた。 ... [続きを読む]
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