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- 2008/03/05 00:32【第3章】SHY BOY―Scene24
- 「はぁ? ちょっ……、何やねんこいつ?」 ソフトモヒカンは、自分と似たような高さの背格好で、結んだ長髪、耳にピアスと首にペンダントを光らせ、すそを適当に出した水色のカッターシャツにグレーのズボン――という目立つ身なりの安西を、品定めでもするかのような目でにらみつけた。「帰ろうとしたら、出入口の方まで、金出せやの何やの、物騒な話聞こえてきたからやー、何やと思うて来てみたら……またおまえか」 安西は眼 [続きを読む]
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- 2008/02/05 01:49 【第3章】SHY BOY―Scene22
- 「えっ? 今のは、何なん……?」 淳一は顔をしかめて左側を振り向き、声のする芝生の方に近づいてみる。 安西やサカチも、淳一のぴったり後ろを歩く。 植え込みが途切れたところから、遠目で芝生をのぞくと、坊主頭やら、やたら派手な茶髪やら、陰険そうなのやらと、見た目にもたちの悪そうな3人組の男が、びくびくしている1人を取り囲んでいる。「おいおい、カツアゲかよ……。3人も寄ってたかって、しかもあんな金持っ... [続きを読む]
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- 2008/02/05 01:45【第3章】SHY BOY―Scene21
- ヒロは、ソフトモヒカンの金髪に取り押さえられながら、ヒロの体重の1.5倍はありそうな巨体の坊主頭に、背中を押されるようにして、図書館の入口より南東側手前にある、植え込みに囲まれた芝生まで連れて行かれた。 あと1人――ヒロがユウと呼んだ少年は、数歩離れたところから、ヒロをどうにかしようとすることもなければ、2人の仲間に力添えしようとする様子もなく、黒く無感情な目で、ただじっと見つめている。「ちょうど [続きを読む]
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- 2008/02/05 01:38【第3章】SHY BOY―Scene20
- 「さぁてと……、ジュンくん、そろそろ帰ろっかぁ。今日ってあれの日やん。もうそろそろ始まるやろ、行かなっ」 サカチが、ベルト部分にでびにゃんなどのキャラクターのマスコットをにぎやかにぶら下げた、白のエナメルバッグを肩に掛ける。「あっ……、そっか、あれやなぁ。今日はどんなんやろなぁ?」 サカチに促され、淳一は壁面の掛け時計をちらっと見ると、Nintendo DSをたたんで、サカチのかばんの中に無造作に押し込んだ [続きを読む]
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- 2008/02/05 01:32【第3章】SHY BOY―Scene19
- 一方、図書館4階の、丸テーブルが並ぶ、メディアセンターの談話コーナー。 いつものように、J-POPのBGMが流れ、笑い声や話し声でざわついている。「ふう……、今回の英語って、範囲広くて大変やねぇ……。覚えきれへんかも」 真由香は広げたノートにそっとシャープペンシルを置き、ぱたんと音を立てて英語の教科書を閉じると、ほっと息をついた。「ちゃんとできてるやん」 その横で琢郎が、ルーズリーフや教科書、辞書など [続きを読む]
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- 2008/01/14 21:50【第3章】SHY BOY―Scene18
- その3日後、その週の木曜日―― 梅雨明けはまだ先だが、ここのところずっと続いていた、すっきりしない梅雨空がいったん落ち着き、久々に傘のいらないおだやかな1日となっていた。 夏至を過ぎたばかりなので、18時をまわっても、雲の少ないからりとした青空に、太陽のあかね色が少しにじみ始めたかなというぐらいで、まだまだ空の様子は昼間とあまり変わらなかった。 藤尾台図書館のエントランスから、白のパーカーに [続きを読む]
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- 2008/01/14 21:47【第3章】SHY BOY―Scene17
- 「えーと……そ、それじゃぼく、また買い物して帰らんと、あかんので……。ごめんなさい」 ヒロは、スケッチブックやかばんなどをまとめて、ゆっくり席を立った。「わっ、出たで……、買い物。今日はなんや、にんじんか?」 サカチが、からかうような口調で言う。「いえ、今日は卵なんです。オムライスしますんで。ちょうど今日は特売日で、1パック半額らしいんですよ」「オムライスかぁ……、いいなぁ。お [続きを読む]
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- 2007/07/26 04:15 【第3章】SHY BOY―Scene16
- 「あのなぁ……。おれ、今、そんなこときいとんと、ちゃうんやけど?」 安西はテーブルを右手の拳でこつんとたたき、結った後ろ髪が揺れるほど、大きく首を横に振った。「おまえが今言うたことの意味は、なんとなくわかるけどやぁ……、それは、さっき琢郎がきいたことに対しての答えやんけ。今、おれが知りたいことはやぁ、おまえが絵を描いとる理由とか目的やねん。……わかっとる? おれの言うとーこと」「あっ、 ... [続きを読む]
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- 2007/07/26 04:12【第3章】SHY BOY―Scene15
- その後、ゆっくりと15分ぐらいが経過した。「んと……、描けましたぁ。遅くなってホントすみませんでした」 ヒロは鉛筆をテーブルに置いて、充実感いっぱいに、ほっと一息ついた。 そして、スケッチブックから、ぴりぴりっと1枚ちぎる。 安西は腰をいすから浮かせてそれを受け取り、あらためて手にとって眺める。「へぇ……。こういう感じの、いつも描いとんや?」「は、はい。あの……、期待はず [続きを読む]
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- 2007/07/26 04:09【第3章】SHY BOY―Scene14
- 「あの……ホントに好きなんですねぇ、でびにゃん」 サカチたちのやりとりが落ち着いたところで、依然として真由香の横の席で、安西の絵を描いているヒロも、左手の鉛筆をスケッチブック上で動かしながら言った。 サカチたちがここに戻ってきてから、目の前で容赦なくくり広げられたでびにゃん騒ぎを、うるさく思っているような様子はなく、むしろ楽しんでいるようで、笑顔さえ見せている。「うん、かわいいもん」 [続きを読む]
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- 2007/07/26 04:05【第3章】SHY BOY―Scene13
- 席をはずしていたサカチと淳一が、一同のいるテーブルに戻ってきたのは、それから10分後ぐらいのことだった。「なぁ、真由香ちゃん真由香ちゃん、ちょっ……これ見てみぃ?」 サカチはうきうきした様子で、持ってきたイベント情報誌を、見開きにして真由香に渡した。「えっ、なぁに? どうしたん、サカチ? 何かおもしろそうなことでも載ってるん? ……って、あーっ……!」 真由香はそう言いながら、サ [続きを読む]
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- 2007/07/26 04:01【第3章】SHY BOY―Scene12
- そして、週明けの夕方――「あのっ……、あんまり動かないで下さい」「えーっ……、まだぁ!?」「あっ、えっと……。その、そんなこわい顔もしないで下さい……」 談話コーナーの一席。 体調はすっかり回復した安西だったが、いつものように4階に来るなり、彼が来るのを待っていたらしいヒロにつかまり、先ほどからずっと、絵のモデルとして、席を立つことができない状態にさせられていた。 安西の [続きを読む]
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- 2007/06/16 23:12 【第3章】SHY BOY―Scene11
- 「そんなら、週明けにでもまた来たら、これぐらいの時間やったら、だいたいおると思うで?」 そうですね、とヒロは淳一にうなずきながら同意したあと、表情をぱっと明るくした。「あっ! そうそう。そう言えば……、見つかったんですよぉ、傘立ての鍵!」 ズボンのポケットから、番号のついた傘立て用の鍵を出し、4人にぷらぷらと示した。「へぇ、よかったやん」 ヒロは、サカチのほうを向いて、はいっと ... [続きを読む]
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- 2007/06/16 23:08【第3章】SHY BOY―Scene10
- 「あー、そういや……、おれらも家着く直前ぐらいに、いきなり大雨になったなぁ……。あれ? でもあいつ確か、琢郎に傘借りるとか言うてたと思うけど?」 淳一とサカチに同時に見られ、琢郎は少し苦々しい表情で、首を横に振る。 「なんか、そうらしいけど……、おれもあのとき、あいにく自分の分しか持ってへんかったから、貸されへんかってん」「そうなんや。じゃあ、しゃーないよな」 淳一が軽くうなずいた [続きを読む]
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- 2007/06/16 22:59【第3章】SHY BOY―Scene9
- 翌日の夕方、まもなく5時になろうとしてる頃、4階メディアセンター内にある、談話コーナーの丸テーブルで、琢郎と真由香は、それぞれのんびりと、自分が借りてきた本を読んでいた。「よっ、琢郎、真由香ちゃん。おじゃましまーす」 白のエナメルバッグを肩にさげたサカチが、いつものように淳一を連れて、受付方面から、琢郎たちのほうに向かってやってきた。 外はまた雨が降っているらしく、2人のかばんや服装 [続きを読む]
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- 2007/06/05 03:11 【第3章】SHY BOY―Scene8
- 「あっ、ええよええよ、真由香ちゃん。そんなことして、真由香ちゃんが風邪でもひいてもうたら、大変やからやー。んー、真由香ちゃんはホンマに、いつもやさしいなぁ、ありがとうな♪ ……琢郎は、別にどうでもええけど」 安西は真由香に愛想よく笑顔を向けたあと、琢郎にべーっと舌を出した。 琢郎は眉をひそめ、不快感をあらわにする。「あはは、冗談やって。琢郎も風邪ひいたらこまるでー? だって、真由香ちゃ ... [続きを読む]
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- 2007/06/05 03:01【第3章】SHY BOY―Scene7
- 「でも傘がないと、これからも雨の日にこまるし、それに、今もけっこう降ってますから……、スケッチブックとか、濡れたら紙がめちゃくちゃになって、使い物にならなくなりますし、だから、ホントにどうしようって……、えっと……」「あぁ、もうええわい!」 いらだちをがまんできなくなった安西は、ぐずぐずと続く少年の話を、声を荒げて打ち切った。 彼はびくっと、おびえた目を安西に向ける。「さっきから聞 [続きを読む]
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- 2007/06/05 02:58【第3章】SHY BOY―Scene6
- 「あっでも……、見たことはありますよ。目立つ格好ですし、よく来てはるみたいですから……、モデルには、しやすかったですねぇ」 少年は、人のよさそうな笑顔をかすかに3人に向けながら、のほほんとした口調で言った。「モデル?」 サカチが、大きな目をぱちぱちまばたきさせる。「はいっ。えっとですねぇ、ぼく……、趣味で、毎週1枚を目標に、いろんなものを描いてるんですよ。これに」 少年は先ほど [続きを読む]
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- 2007/06/05 02:54【第3章】SHY BOY―Scene5
- やがて、時計は7時半を過ぎ、閉館まであと30分足らずになり、館内に残っている利用者も、ちらほらと出口のほうに向かっている。 充分遊んだ安西、サカチ、淳一、琢郎、真由香の5人も、そろそろ図書館をあとにしようと、1階に下りるエレベーターに乗り込んでいた。「あっ、しまった……。わたし……本返すの、忘れてた。せっかく持ってきたのに」 真由香がそう言いながら、背負っている通学用の小さなリュック [続きを読む]
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- 2007/05/30 04:17 【第3章】SHY BOY―Scene4
- 「それにしても……安西、この間おまえ、真由香のファン何号とか、終身名誉会員がどうとか、いろいろ言うてへんかったっけ? えらそうにあんなん言うといて、実はジュンくんにも走っとったんか。節操あらへんなぁ……。ホンマに何でもありなんやな?」 琢郎はあきれ半分の笑顔を、安西に向けた。 それが淳一にとっては、充分助け舟になった。「そっ、そうやで!? 確かファン75号やったっけ? 浮気すんな」 ... [続きを読む]
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- 2007/05/30 04:13【第3章】SHY BOY―Scene3
- 「へっ!?」 サカチは間の抜けた顔で、安西を見た。 そばにいる淳一や琢郎、真由香も、安西のほうを向く。「んーと、だってやー、世の中には、男同士、女同士でくっつく人らっておるやんかぁ? でもその人らは、たまたま好きになってもうた相手が、同じ性別やっただけの話やろ? おれは必ずしも、そういうのがおかしいってわけやないと、思うねん」 安西がサカチのほうに首を少し傾けたとき、右耳の銀色のク [続きを読む]
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- 2007/05/30 04:07【第3章】SHY BOY―Scene2
- 一方同じ頃、その安西や淳一のちょうど背後にある、別の丸テーブルでも、佐々木琢郎(ささきたくろう)と、鈴木真由香(すずきまゆか)が、いすをぴったりくっつけて、寄り添うような体勢で、2人だけの世界をつくって話していた。 恋人同士になって、まだ1ヶ月もたたないのだが、もう何年もつきあい続けているかように、落ち着いている。 もっともその雰囲気は、くせのかかったやわらかめの髪と、長いまつ毛にかこま [続きを読む]
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- 2007/05/30 04:06【第3章】SHY BOY―Scene1
- どんよりとした雲に覆われた、6月後半の夕方。 毎日、雨が降ったりやんだりと、気まぐれな梅雨空だが、藤尾台図書館の4階にある、メディアセンターには、そんな天候に関係なく、毎日夕方以降になると、漫画を読んだり、ちょっとした用事でパソコンを利用したり、ひまつぶしにDVD鑑賞やゲームを楽しみに来たりなど、様々な目的で、たくさんの利用客が訪れる。 入口すぐのカウンターから左に行けば、DVDを観たり [続きを読む]
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- 2007/04/30 23:23 【第2章】変わるために、変えるために……―Scene36
- 「……なんや今度は? ひとのこと、また遠巻きにじろじろ見やがって」 受付を済ませてから、琢郎は安西たちのいるテーブルに行った。「ん〜。この梅雨入り前のうっとうしい時期に、その髪型はないんちゃう? その中途半端な長さ……ばっさり切りとーて、しゃーないわ」 右手首のリストバンドと似たような柄の、オレンジ色のヘアバンドで、全体的に茶色がかった髪をすっきりまとめているサカチが、琢郎の髪を手ばさ ... [続きを読む]
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- 2007/04/30 23:08【第2章】変わるために、変えるために……―Scene35
- 春樹が去ったあと、琢郎と真由香は同時に、部屋の前に立つ2人をきっとにらみつけた。「もう……。ちょっと、おかあさん! なんでこんなとこに、いんのよぉ!? ありえへん!」「安西、おまえも……帰ったんとちゃうんか!?」 真由香の母親と安西は、顔を見合わせて苦笑いしている。「えっと……ほら、お茶をねぇ……片付けてあげようと、思ったら……。あっでも、ホントに今来たばかりなんよ? だから、心 [続きを読む]
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