- 2008/05/10 17:30ヘブンリー・ブルー
- 天国はあるの空と鴉の羽根の彼方に愛も軋轢もない境地へ傷つけないから傷つかない嘘吐きの絵空事熟れた果汁のような芳しさいるものもいらないものも星屑狼少年は月の下で眠る夜の帳も雲の海も光の粒子が弾く青満ち足りていても欲しがる今日は天... [続きを読む]
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- 2008/05/08 20:55おはりこ
- 草いきれの向こう側に手招きされた気がして青空の屍骸のような月を背中に爪を伸ばして掻き寄せようと思ったのです分かりやすい灰色の緞帳はいやおうなく引かれて貴方と貴女は隔たってしまいましたが大丈夫ですはさみならここに置いておきますので出逢えま... [続きを読む]
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- 2008/05/07 15:53円月亭奇譚h-3
- 甘やかな受け答えに対して、トキハカリは態度を軟化させることなく試すような無言を決め込み、女も状況を楽しむように唇を結んだ。結果、妙に緊張感のあるねばりつくような沈黙が流れた。流れて溜まり、円月亭の隅々まで浸透していった。 やがて、先に身じろぎしたの... [続きを読む]
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- 2008/05/06 16:19逝
- 埋没してゆければいいと思うことがあるんだ時雨が降り注いで腐葉土が濡れそぼって空から落ちてきたものと地から這い上がっていくものの感触と呼気にひたっていられたらって望むことくらいあるんだ鳴らない琴線で不器用な思い出を奏でる一方頑として後ろは振り... [続きを読む]
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- 2008/05/04 23:53樹の下のみどりご -31-
- *** 反論しようとすると、勢い良く殴られた。同年代の悪童どもの、ていの良い標的にされるのはいつものことだと、もんどりうって地面に倒れ込みながら他人事のように考えていた。 目がくらみ、息が詰まるような気がしたが、意地だけでこらえて立ち上がろうと顔を... [続きを読む]
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- 2008/04/30 23:59ロッキングチェア
- ふと思いついて窓辺の安楽椅子に腰掛けると、予想通り背中と腰にどんよりと心地良く体重が沈んだ。湖に投げ込まれた不恰好な岩が、ゆっくりと水底に定着して動かなくなるような安定感。そうしてみると、いとも都合良いことにひどく疲れたような実感がして、そう実感する... [続きを読む]
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- 2008/04/29 13:34夢郷
- 眠ってはならぬと電子時計の母様が言ったから善き夢への水先案内人を名乗る羊の群れはお役御免になって離れ離れに散ってしまった悪夢の狼の餌食とならぬよう枕に祈った深く息を吸って深くもっと深くどうしてもどうしても溺れてしまう禁じるのはだれ禁じられ... [続きを読む]
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- 2008/04/27 23:49from A to Z
- もしも錆び付いたアルバムの金具をはずす時わだかまる自分のモノクロ写真を滑稽だと笑えますようになぜこんな効率の悪い堂々巡りに興じていたのかと腹を抱えて涙を浮かべて笑っていますようにヤドカリが貝殻を引っ越すようにアゲハ蝶がさなぎから羽化するよう... [続きを読む]
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- 2008/04/20 23:17ルーツ
- 朽ちはてることのない骸骨の笑み二匹の黒猫は女神の両面性太古の寓意を解き明かせ渇望しながらあばく柩の蓋どうぞ静かに帰らせてくれただ厳かな闇の森に消えるから喧騒の火種はまがいもの惑わされてはならなかったのに [続きを読む]
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- 2008/04/18 22:40たなごころ
- あかぎれのような精神衛生の裂け目から派生した手を繋いででも真正面から掴み合う拳ならばいらないからあなたの傍にいるんですというニュアンスだけ込めてただ長い長い手紙を紙飛行機に折り曲げる指先どんな服を選んでどこまで着膨れれば事足りるだろう覆うこ... [続きを読む]
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- 2008/04/15 23:22メモリ
- 這いずるように道は繋がる縮こまって物陰に隠れたのは臆病風が脊髄に響くため不確定要素に前頭葉が疼くため誰かの吐き出した二酸化炭素を吸っていつまで平気でいられるだろうか色鉛筆で塗り絵を完成させるようにたぶん結論ならもうこの手にあなたはど... [続きを読む]
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- 2008/04/10 23:55円月亭奇譚h-2
- 佳人はちょっぴり発音を揶揄で湿らせてから、また流し目ぎみに商品群に視線を飛ばした。怪しげな魔道書の背表紙でぎっしりと埋まった本立てを一瞥し、幾何学模様のようなややこしい鍵穴を有する錠前を眺める。蛍火のように不規則に明滅するランタンの灯りを注視し、色と... [続きを読む]
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- 2008/04/09 17:59シグナル
- 角のない楕円に喰らわれた寂しいなら群れで動けばいい青い瞼と黄色い耳と赤い唇聴こえない場所で笑う白と黒の交錯する河のほとりでよろしければご一緒しませんか無味でもかまうことはない儚い言葉をしたためる虚空に呑まれていくしかないいつまでた... [続きを読む]
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- 2008/03/26 17:39円月亭奇譚h-1
- 「いらっしゃいませ」の一言もなかった。しばらくぶりの新来の客だろうに、店主は行者のようにむっつりと意に介さず、職務怠慢もはなはだしい。 長年の方針なのだと苦々しげに反論されようが、年季の入った頑固親爺ならばいざ知らず、親爺にはほど遠い彼の外見を前に... [続きを読む]
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- 2008/03/25 16:17カーマイン
- 今宵もせっせとねじを巻く切ない言葉が耳の奥にたまって目の裏をうるおしてよどむ明日は知らない顔で眠っている光を許さないカーテンを掴みながら窓際に三つ足の椅子を運ぶ遮蔽した内側からじっと垣間見る観察しながら観察されているという矛盾妖精の... [続きを読む]
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- 2008/03/23 01:50彗芒
- ほつれていく平面を縫い合わせ鏡の虚像に指を這わせる苦痛は癒えるものじゃなくうつろいと共に慣らされていくもの渡りの鳥がはばたいたのならもといたところに帰らなくてはうすまった重力に四肢は浮かぶ現世と自我の境界線がぶれる [続きを読む]
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- 2008/03/21 16:18樹の下のみどりご -30-
- ゆっくりと一度だけ目をつむってから、ウェルセはふっきるように締めくくった。「以上が、本で溢れかえるクラウゼット異本図書館が生まれた粗筋。かくて働き蟻のごとく私はあちこちに出張り、女王蟻のごとく巣の最奥に腰を据えたあの方――もとい館長にせっせとご馳走を... [続きを読む]
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- 2008/03/19 17:24ウォーター
- 雨がたくさん降り注いだのでぴかぴかしていた鉄は錆びてスチールグレイの都市は赤黒い海に呑まれて味気ない黒や白や灰色の人間は魚のようで泳げますか溺れてしまいますか浮かび上がりなさい助けられないのです雨がまったく止まなかったので魚が手放... [続きを読む]
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- 2008/03/17 18:351/2
- 明と暗の繋ぎ目手を重ねて結合した双子神からのギフトは片方のためにしわがれた擬音はもう片方のためにちょっとした成分の違いで宝玉はガラクタの砂礫澄ました同じ顔で恋人は惑わせても相対する星屑は嗅ぎ分けていた確信犯だよと憫笑して頭を撫でて... [続きを読む]
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- 2008/03/14 02:27旅人
- 一つの鞄を引きずりながら二足の靴底を磨り減らして五番目の月を取り戻しに来ました千の星の河を渡って来ました暗くて見えない円の内側底なし沼より怖い空蜘蛛の糸を伝いながら降りました帰り道は要りませんでした鳩の翼を生やしていた三角高杯で供... [続きを読む]
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- 2008/03/13 16:56樹の下のみどりご -29-
- 「ところが、世のなかそう都合よく物事は運ばない。非常に残念ながら、不純な動機で赴いた使用人を希望通り速やかに処分してくれるような魔物は、ここにはいなかった。不器用なあの方が、退屈を持て余しながら待っていただけだった。その時点で、拍子抜けして毒気も抜かれ... [続きを読む]
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- 2008/03/12 12:23樹の下のみどりご -28-
- 「……この館は、さまざまな年輪を積み重ねて今に至っている。文学的な言い回しを拝借すれば、数奇な運命を辿った、とでも」 ウェルセは唱え、椅子の背にもたれて食卓の木目に視線をくれた。しかし、そこを見ているわけではないことだけは確かだった。「私が四年前にこ... [続きを読む]
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- 2008/03/11 18:57鶯茶
- 本性を隠して鳴き交わす囀り枝先と電線と左胸に心と行動が一致しなくても隠し切れない叫びを飛ばす砂ぼこりの向こうに捜した孵ることのなかった卵ついばんで天にも昇るようなくちばしに赤い実を春を告げよう冬は巡ってくるけれども今少しまどろみ... [続きを読む]
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- 2008/03/09 16:51樹の下のみどりご -27-
- 「でも、力添えをした一人ではあるんでしょう」「まあ、ね」 語って聞かせる言葉を持たないとほのめかすような、張り合いのない調子のウェルセだったが、それでもリューは知りたかった。「クラウゼット異本図書館とは、何なんですか」 ウェルセの青い瞳が、吟味... [続きを読む]
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- 2008/03/07 21:47白
- はじまりのおわりを紡ぐ語り部になりそこねた者旅の終焉を見失った寓話客人は去りゆけども消えず蛇蠍のごとく打ち消したのは傷痕の形が同じだったから待ち焦がれているのはあなたが逃げてしまったから死がすべての結論だというなら産まれることは問... [続きを読む]
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