伍勤 さん

伍勤さん: 連隊旗奉焼
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プロフィール

ハンドル名伍勤 さん
ブログタイトル連隊旗奉焼
サイト紹介文東アジアを巡るタフな旅で「昭和」を振り返ってみませんか。千枚少々の連載小説です。
参加カテゴリー
更新頻度情報提供214回 / 442日(平均3.4回/週) - 参加 2007/04/26 22:28

伍勤 さんのブログ記事

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  • 2008/06/07 14:36C23奉焼 4
  • エピローグ 誰かが、教授室のドアをノックした。呉徳生の返事も聞かず、一人の男がドアを開けて入ってきた。この国では教授室への闖入者など珍しくもないが、いまは政治局委員となった馬忠海がもたらした情報は、毛主席逝去以来のビッグニュースだった。「今朝、と言っても未明だが、四人組が逮捕されたよ」「・・・・」 似たようなことが近い将来起こり得るとは思っていた。しかしそれがついに現実のものとなってみると、呉徳生... [続きを読む]
  • 2008/06/05 17:09C23奉焼 3
  • 老兵たちの旅の終わりに、わずか十一小節に凝縮された民族の情念・・・・君が代が斉唱された。「君が代は千代に八千代にさざれ石の巌となりて苔のむすまで」 老兵たちの真正面、ロイヤルボックスに位置する小柄な人物の向こうに、三人の老兵たちが属する豊かなるわが国土と民族が連なっている。言祝ぐべし、その始まりも終わりも、人の物差しでは測ることのできない不滅の国土と民族を。 高津は、東山中佐のブローニングを真っ... [続きを読む]
  • 2008/06/03 19:17C23奉焼 2
  • そのとき金城昭二は、校長室のテレビで部下の教諭たちとともに国体の開会式を見ていた。今回の大会に、金城が校長をつとめる県立高校の若い体育教師が、沖縄県代表として参加することになっていたのだ。 入場行進でその若者を見つけ、教員たちとともに手をたたきながらテレビ越しの声援を送った。やがて行進が終わり、スタジアムに君が代が流れた。テレビカメラが日章旗、陛下、選手団、そして観客と、交互に映し出した。 最も緊... [続きを読む]
  • 2008/06/01 07:31C23奉焼 1
  • 第23章 奉焼 国道からスタジアムへ向かう一本道は、三人の不良が直前になって電柱広告の内容を差し替えたため、「銘菓奉焼」だらけになってしまった。 陛下ご一行がどんなルートをとられようと、スタジアムへ入るには、この道を必ず通過されなければならない。 電柱は電力会社系と電電公社系に分かれている。電柱広告を申し込むには、それぞれ系列の広告代理店に別々に申し込まなければならないことになっていた。広告の空き状況... [続きを読む]
  • 2008/05/31 21:38C22謀議 7
  • 「今の日本人なら、シンガポールにまさか昭南島なんて名前つけないでしょうね」「あれは独りよがりの自己陶酔だ。シンガポールのままがよかった。日本の国全体が、自分たちは最高だと思っていた。あれがなければよかった」「なにか意味があるのかしら。元号みたいに、古典から引っ張ってきたとか」「字の通りだろ。なんか安直な気もする」「でもシンボリックで分かりやすい。まんざら悪い名前でもない」「そうとも言える。もし世の... [続きを読む]
  • 2008/05/29 01:54C22謀議 6
  • 岡田は敦賀の岡田商店を人に任せ、京都市内で学生相手のアパートとコインランドリーを始めた。しかもなんとアパートの近くでは、岡田と絹江が住むための家を建てている最中だった。 高津は、今後は評論活動に専念すると言い残して、あっさり会社を辞めてしまった。依然薪水社のオーナーではあるが、経営からは完全に身を引いている。 辞めぎわに、栄一を常務取締役に引き上げた。将来の社長含みの人事であることは、誰もが納得し... [続きを読む]
  • 2008/05/27 03:23C22謀議 5
  • スコールは二人の右手、ずっと先の岬をかすめるようにして、島の西側の海・・・・マラッカ海峡の方へ抜けていった。 いま栄一と由里の二人は、豊かに生い茂った菩提樹の下で、静かに海を見ている。「天国みたい。これが大人の時間の過ごし方ね。がつがつ免税店を漁らない。オプショナルツアーなんて無視して、行きたいところがあったら自分で行く。それよりもなによりも、ビーチでただ時間が過ぎていくのを楽しむ。大人なら、静... [続きを読む]
  • 2008/05/25 02:08C22謀議 4
  • 「これを陛下の御前で奉焼する?どうやって?」 しかし安原にはまるっきり理解しがたい行動というわけでもなかった。陛下の御前で軍旗を奉焼しようということについては。 二人は、旅を終わらせたいのだ。 二人は、終戦のどさくさに紛れて軍旗をかっぱらい、この三十年間というもの、そいつをずっとタンスの奥に仕舞ったまま隠し続けてきた。わざわざそのために立派な桐箱まで作らせて。これは、容易に理解できる。高津中尉と岡田... [続きを読む]
  • 2008/05/23 07:59C22謀議 3
  • 昔懐かしい思い出話の合間の、何気ない世間話の中に、高津と岡田がいま現在抱えている問題のひとつを解決するヒントがあった。「実は、自分は春の園遊会に招待されているんです」安原がつぶやくように言った。それはごく自然な発言であり、少しも自慢めいた響きはなかったし、何の嫌みも感じられなかった。 しかし園遊会という言葉に、二人の老兵は思わず顔を見合わせた。そして、ぜひ安原の力を借りたいと思った。 今夜の二人の... [続きを読む]
  • 2008/05/21 12:50C22謀議 2
  • 輪島漆器製造の最終工程を受け持つ沈金職人である安原は、これまであまり「販売」ということを考えたことがなかった。しかし義足でも運転できるオートマチックの乗用車を手に入れ、自ら運転して金沢などへ出かけるようになると、産地商社の役を担う塗師屋の苦労が少しは分かるような気がした。 昔の旅は、容易ではなかった。大風呂敷に商品を担いだ販売員は、まず輪島から徒歩で二十キロあまり、穴水の町まで出る。そこから手漕ぎ... [続きを読む]
  • 2008/05/19 17:54C22謀議 1
  • 第22章 謀議 沈金職人の安原松岳は、高津陽二が単に陛下のお耳に達するように短く言葉を発しただけではなく、それ以上に意味のある、ある種のコミュニケーションを陛下との間で交わしたことを確信した。 こともあろうに高津は、参集者の最前列に陣取り、直接陛下のお耳元でささやいたのだ。「軍旗が奉焼されます」と。 もちろん陛下は、高津の言葉を無視なさった。しかしはっきりと高津の顔を見つめ、当たり障りのないごく自然... [続きを読む]
  • 2008/05/17 02:55C21天文 10
  • 藤原氏が送ってくれた戦闘詳報によると、守備隊が国境線を警備中、共匪部隊と遭遇、すぐに戦闘になったという。栄一の父の死因は、頭部貫通銃創。待ち伏せに遭い分断された守備隊は、相当苦戦したらしい。数名の兵とともに孤立した父は、脇腹に被弾しながらも部下を指揮して奮戦。共匪数名を殺害したが、至近に迫った敵の拳銃弾に頭部を撃ち抜かれ死亡したらしい。 佐官である父の遺体は、共匪に持ち去られそうになったらしい。遺... [続きを読む]
  • 2008/05/15 19:28C21天文 9
  • 由里と婚約してからというもの、栄一の自宅に送られてくるダイレクトメールの数は、以前に比べると五割増しくらいになったのではないか。結婚式場、ホテル、貸衣装店、マンション、ギフトショップ、家具屋、宝石店・・・・いちいち開封するのも面倒で、大方はゴミ箱に直行するのだが、世間一般の人々の言うように紙の無駄だ、迷惑だなどとばっさり切り捨てられないのが辛いところだ。これはこれでひとつの産業になっているわけで... [続きを読む]
  • 2008/05/13 19:29C21天文 8
  • 今日最後の特急電車だろうか。高速の車両が高架を走行するざーっという音が、山の方から聞こえてきた。そして、すぐ静かになった。「冬は、一年中で星がもっとも美しい季節です」 老眼が進んだせいか、岡田にはおうし座のすばるの星々が、若い頃よりもよく見えるようになってきたような気がする。 同じおうし座のアルデバラン、オリオン座のベテルギウスと辿ると、目の前には見慣れた冬の大三角。その下端にあるシリウスが、揺ら... [続きを読む]
  • 2008/05/11 19:29C21天文 7
  • 岡田と高津の二人が、絹江の学長室を辞去して数時間経っていた。 国鉄湖西線にからみつくように北上してきた国道は、このあたりで琵琶湖に別れを告げ、山間の道となり敦賀方面へ向かう。 夏場は湖水浴場として賑わうこの辺りも、冬の、しかも夜も更けた今頃は人影もなく、ただ、ざぶんざぶんと寂しげに波の音が聞こえてくるばかりだった。「たしかこの方向に竹生島が見えるはずなんですが」 岡田の記憶では、左手の岬越しに竹生... [続きを読む]
  • 2008/05/09 00:49C21天文 6
  • 「今のあなたは・・・・高津さんも・・・・悪い人ではない。むしろ善人だわ。それもお人好しと言ってもいいくらい」 岡田に向かって絹江が言った。「過去のことがどんどん風化していくのに、あることだけが、私の中で静かに大きくなって、心の中の大きな部分を占めるようになるのを感じるんです」 絹江は、学長室のオーディオセットに一枚のレコード盤をセットした。「高津さん、新吉さん、過去のことでどうか私を煩わせないでく... [続きを読む]
  • 2008/05/07 03:48C21天文 5
  • 栄一の父親は、息子が思っていたような戦争犯罪人ではなかった。むしろ帝国にはびこる、不良軍人の非行に心を痛めていた、善意の士官だったのだ。 しかしそのことを知ったからといって、息子が素直に喜ぶとは思えなかった。むしろのっぴきならない複雑な心境に陥り、落ち込むことだろう。「大嶋先生、私にはあなたのご子息と川渕由里さんの仲人をお引き受けする資格がないのです」で始まった話は、こういうことだ。 敵弾を受け負... [続きを読む]
  • 2008/05/05 03:48C21天文 4
  • 敦賀の岡田新吉から電話があったのは、前の晩遅くのことだった。会えないかという。しかも明日、つまり今日にでもと。夕方にでも自宅に来てくれればいい、話が済んだら一緒に食事に出かけよう。絹江はそう答えた。すると、連れがいるので食事は遠慮したい、はっきり時間を指定して欲しい、出来れば自宅以外のところで会えないかという。 午後一番に始まった理事会を済ませて学長室に戻ると、ちょうどお茶の時間だった。英国の知... [続きを読む]
  • 2008/05/03 19:32C21天文 3
  • 銃器の点検を一通り終えると、高津は岡田が手にする弾倉に目をやった。岡田は無言で弾倉を高津に渡した。弾倉にタマはなかった。「子供時代の大嶋部長は、興味を示さなかったのですか」 いかにも男の子を夢中にさせそうな代物だ。「安原が拳銃を返しにきたのは、栄一が京都へ帰ってからです。いきなり現れて、これを置いていきました」「安原軍曹とは?」「その後、年賀状と暑中見舞いのやりとりが始まりました」「元気なのです... [続きを読む]
  • 2008/05/01 22:47C21天文 2
  • 思った通り、店の三階が岡田の自宅になっていた。高津はその三階のリビングで、かれこれ二時間ほども岡田と対面していた。 復員後の互いの三十年について、控えめな口調で情報交換が行われた。 人生は複雑系であってQC活動ではないのだから「それはなぜ」を五回も六回も繰り返し、行為の真の動機を探ろうとするのはあまり賢明なこととは言えない。世の中は何が起こるか分からないし、人は時として不可解な行動に走るものだ。... [続きを読む]
  • 2008/04/29 03:28C21天文 1
  • 第21章 天文 北陸の寄る辺ない山間の町、小さな食料品店の店先で、二人の老兵が再会した。 福井県敦賀市は古くからの港町である。古代から中世にかけて大陸との交易が盛んに行われ、近代以降も日本海側の主要な国際港湾都市として栄えた。 だが岡田の店は同じ敦賀市でも港の反対側、山岳地帯を琵琶湖方面へ抜ける街道沿いに形成された、小さな商店街の中ほどにあった。 店頭に十台ほど停めることのできる駐車場がある。しかし... [続きを読む]
  • 2008/04/27 05:50C20諸国の旗 9
  • 呉徳生が高津の社長室を去った翌朝、高津は羽田発小松行きの飛行機に乗った。空港からレンタカーを借り、岡田の住む敦賀市へ向かうつもりだった。しかし飛行機が快晴の上空から鉛色に低くたれ込めた雪雲を突き抜け、着陸のため日本海上空を旋回している間に気が変わった。北陸道に乗った高津は、レンタカーを福井ではなく反対の富山方面へ走らせた。 日本海の荒波と、遠く白山を望む積雪の加賀平野。かつて慣れ親しんだ懐かしい... [続きを読む]
  • 2008/04/25 02:14C20諸国の旗 8
  • 北陸本線倶利伽羅駅から八の谷集落へ抜ける山間の道はきれいに除雪され、高津が小松空港で借りたレンタカーは、冬の午後の日差しを浴びながら丘陵地帯を軽快に走行していた。 八の谷集落へ抜ける左曲がりのカーブの入り口に、その小学校はあった。 吉倉尋常小学校が石川県津幡村に設置されたのは、明治十二年のことである。いま津幡村は石川県河北郡津幡町となり、現在の吉倉小学校の校舎は昭和二十四年に立て直されたものだ。 ... [続きを読む]
  • 2008/04/23 06:29C20諸国の旗 7
  • しばらくして呉徳生はひとつのことに気づいた。「この匂い、よそ行きの服を着た母さんの匂いだ」 宋露の衣装棚の奥深く、長い間眠っていた日章旗。それはまた育ての親宋露の懐かしい匂いでもあった。母と過ごした子供時代。息子を優しく抱きしめてくれたときの、母親のあの甘い匂い。よそ行きの服を着て、呉徳生の手を引きながら通りを行く宋露。その若く美しい姿は、幼い徳生の自慢であった。 呉徳生の脳裏に、満ち足りて幸せだ... [続きを読む]
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  • 衣装
  • 2008/04/21 18:11C20諸国の旗 6
  • 呉徳生の怒りの表情が、やがてなにかそれとは違う別の意思の作用を感じさせる、穏やかでしっかりとしたものに変わるのを高津は感じ取った。 しかしそれが何を意味するにしろ、高津にとってきわめて分の悪い状況にあることに違いはなかった。 つい先日、高津はわずか二千七百グラムの小さな命の重さに圧倒されたばかりだった。孫は、あんなにも苦しい思いをしながら、自分の家族に生まれてきてくれたのだ・・・・。その孫の小さ... [続きを読む]
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