- 2008/05/13 09:16小説「オルタナティブをレイプしろ」23
- PM22:00。彼女の取材が終わった後、二人そろって店を出た。駅まで一緒に行ったところで、南堀江に寄りたいからと嘘を言って、あたしは彼女と別れた。そうして彼女に内緒で、一人でこっそりとあたしは『Subrhyme』に戻ってきたのだった。<カズ>さんは閉店の準備をすっかりと終えていた。「ピアスの穴、拡張してくれへん?」<カズ>さんは、あたしの申し出を頭に浸透させるように、額の角を撫でた。そしてショーケ [続きを読む]
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- 2008/05/12 10:34小説「オルタナティブをレイプしろ」22
- 彼女が取材(と言ってもあたしには<カズ>さんの仕事の邪魔をしているようにしか見えなかった)をしている間、あたしはカウンター奥の休憩スペースで、ピアスのカタログをめくったり、『世界の身体改造大研究』という本や『刺青と水人』、『血液交差実験。--全身の血を全て恋人と入れ替えた奇人』、『五快・天国八景』、『粘菌をトランクに詰め込んだ旅人』という本を読んだりして過ごした。本の中の写真の人物は身体の一部を欠損 [続きを読む]
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- 2008/05/12 01:23SUBLIME -FILE4
- FILE3 0011100:00わたしの視界に最初に何が見えたかというと、それは白いちろちろとした細い光で、わたしはその光を、ただ心地よいものだと思った。形を成さない光は、ぶわっと滲んで膨張した玉に [続きを読む]
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- 2008/05/11 03:15SUBLIME -FILE3
- FILE 3 最後の我侭。 991110−23:59 私の名前は「K」という。もうすぐ私は消えてなくなるだろう。だがそう告白されたところで君は特に何とも思わないかもしれない。哀しくも痛くも痒くもないかもしれない。なぜなら君は偶然通りかかっただけのただの通行人に過ぎず、そして大抵の大人というものは、通りすが... [続きを読む]
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- 2008/05/10 09:09小説「オルタナティブをレイプしろ」21
- なるほど、これが、話題の<カズ>さんなのか。笑うと鰐のように鋭く尖った三角歯が見えた。どうなっているのかと気になり口元を見つめていると、<カズ>さんはそれに気がついて、歯をね全部削ったんですよ身体改造の一種なんですよ、と説明してくれた。「今ちょっとインプラントの施術してる最中なんや。しばらくかかるから店の中でも見といてよ。ああ、そうや。カツラちゃん、奥の部屋にマコトさんを案内したげて」そう言って<... [続きを読む]
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- 2008/05/10 09:06SUBLIME−FILE2
- FILE2 手紙の中身。 07・0510−0:01 私の愛する君たちへ。必ず戻る自信はあるけれど、もしかしたら死んでしまうかもしれない。君たちには君たちの人生がある。だから私の帰りを待ってくれなどということはできない。もし私の帰りを信じられなくなったときは、そのときは、遠慮なく私のことを死んだものと思って忘れてください。そしてその後は、一度限りの人生を精一杯... [続きを読む]
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- 2008/05/09 22:42小説「オルタナティブをレイプしろ」20
- ▲▲▲▼▼▼WELCOME TO SUB-RHYME!!!その店は、ナントナククリスタ中田ナガホリ通りの駅前を一寸いったところ、ポルタミクロネシア地下街へと通じる連絡通路の階段を降りて、すぐのところにあった。『Subrhyme』という名前の店だった。全身にボディピアスを埋め込まれた大きな骸骨標本が、店先に立っていた。あたしは、それを見て奇妙な既視感を覚える。「今日もおつとめお疲れさんデス。彼岸大作家先生!」彼女は骸骨... [続きを読む]
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- 2008/05/09 22:42SUBLIME -FILE1
- FILE1 シンボリズム。 08・0509−22:00この作中で作為的に多用しようと思っているシンボル。彼女、あたし、わたし、うち、穴、耳、ロック、ピアス、身体、鏡、Mac、拡張、蛙、嘘、蛇、本当、半分、鍵、記録、痛み、記憶、0、1、2、... [続きを読む]
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- 2008/05/08 09:47小説「オルタナティブをレイプしろ(地獄篇)」
- SUBLIMEどちらが寄り道か分からない死出の紀行へ世界にはどうしても素通りできない不思議な場所があり、私の場合、その場所は小説を描き始めた頃から現実と非現実の狭間に相変わらずの姿で、ずうっと、私のみぞ知る風景とともにひっそりと蹲っているのである。人によってはその場所を、普遍だの、永久だの、永遠だの、染色体だのというのかもしれない。そこに漂う摩訶不思議な空気を想うとき、私は無差別という名の「虚」と... [続きを読む]
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- 2008/05/01 01:43小説「オルタナティブをレイプしろ」18
- 「サワダはん、ひょうふぁ、はひがほうほはいはひは。ひふぉひふぉはんほーひはひはいは」彼女はパンが入ったままの口で、ごにょごにょと呟くように言った。「ひふぁびふぁに、たふぉひかっはへふ。ごひふぉうさまへひふぁ」 ▲ ベッドから起き上がると、頭に重く痺れたような痛みが走った。砂を詰め込んだ土のう袋を両肩に吊り下げられているみたいに、身体がやたらとだるか... [続きを読む]
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- 2008/04/28 00:27小説「オルタナティブをレイプしろ」17
- 影送り黎明記天気のいい日に影をじっと見つめて空を見たら、青い空にくっきりと自分のシルエットが映りこむ遊びは、小学生のときに覚えた。明け方の99で一番鳥が鳴く。完結寸前でぱっと消える。外の世界のほうが広かった。広すぎた。外界が100000万キロ四方あるとしたら、その朝、見てきた世界は一ミクロン。そして気づくと何のことはない。世界中はたった一人ぼっちだった。圧倒的に外界はきらびやかで美しいのだった。そ... [続きを読む]
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- 2008/04/26 10:56小説「オルタナティブをレイプしろ」16
- 擦り切れたずたぼろのジャックパーセル。それはカート・コヴァーンが好きな彼女の16歳からのトレードマークなのだった。彼女はカートが自殺した日、葬式をするのだといって、学校の授業を午前中無断欠席した。担任の先生に呼び出されて現れた彼女の手には、爆弾、…ではなく、特大の手製カスタードプリンがあった。彼女はグラウンドの片隅に坐り、運動部の連中を虚ろな目で眺めながら、ふふんっと不敵に微笑し、ちゅいーっとスト... [続きを読む]
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- 2008/04/24 10:08小説「オルタナティブをレイプしろ」15
- 「消すの?」「うん、新しい物語、思いついてんもん」彼女はタバコの煙りを細く吐き出して、虚ろな目を珍しくきらきらと輝かせながら、キーボードをリズム良く叩いて文字を打ち出した。 ▲ サワダ、サワダ、サワダ……、サワダ、サワダ、サワダ……仕事の打ち合わせをしたり、一緒にクライアント先へ出かけたり、車で送ってもらったり。そんなふうにサワダと二人 [続きを読む]
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- 2008/04/23 09:02KO × KO ♯5
- 箱から流されるスケッチは後姿だけで、いつも少年の顔が見えなかったので。どうしようもなく痛くて冷静になれなくて今日は「小説」が紡げない。ごめんなさいという気持ちでいっぱいだ。からだじゅうがごめんなさいという気持ちでいっぱいで息苦しい。あらゆることに、どうして? と思う気持ちは、人としてあさましくて傲慢なことなら、もうヒトデナシでもいいやと思ってしまう。 [続きを読む]
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- 2008/04/21 08:23小説「オルタナティブをレイプしろ」14
- 「別に見てて構わんっちゅうから、横で見学しに来てさせてもらってたんや。切るねんな、あれ。切られたわいな。ちょっとした手術。麻酔とか使わん。めっちゃ痛いわ。つうか、痛いらしいわ」「?」「カズさんもなんか痛々しそうな顔しとってなあ」「ちょっと待って。<カズ>さんって誰よ?」彼女の話が支離滅裂で、往来がむちゃくちゃで、まったく内容が読めないままどんどん勝手に進んで行くので、あたしは慌てて口を挟んだ。彼女 [続きを読む]
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- 2008/04/19 12:31小説「オルタナティブをレイプしろ」13
- まったく馬鹿馬鹿しい話だけど、そっくり過ぎるということで、幼い頃よく彼女はあたしに一方的に喧嘩をしかけてきた。「ウチの真似せんといて!ウチの陣地に入ってこんといて!」彼女は顔を猿のように真っ赤にさせて、地団駄踏んで怒った。大人達は「まあ可愛らしいことねえ」と、にこにこ顔でそんな彼女を見守っていた。小学生の時、同級生たちはあたしたちのことを狐と狸と呼んで囃し立てた。つり目がちな彼女が狐、垂れ目がちな [続きを読む]
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- 2008/04/16 08:18小説「オルタナティブをレイプしろ」12
- マンションに帰りついて「ただいま」と言うけど、やはり返事はない。その代わりにいつものように、寝室の奥から音楽とキーボードを叩く音がした。ダイニングキッチンに行くと、ラップのかかった皿がテーブルに並んでいる。今日は、鶏の胸肉を使った肉じゃがと、もやしの炒めもの、大根のサラダだった。炊飯器には半月型をした残りごはん。居間に食事を運んで、テレビの深夜番組を見るともなしに見ながら、大して味わいもせず、それ... [続きを読む]
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- 2008/04/15 09:14小説「オルタナティブをレイプしろ」11
- あたしよりも古株のさくちゃんは、そんなサワダをずっと嫌っている。俺な、あいつの過去の尻尾掴んでるねん、だから忠告しとくけどな、マコト、あいつだけはな、マジで曲者やから、気をつけろよ。二人はデザイン部では周知の犬猿の仲なのであった。さくちゃんとサワダの間に何があったか、聞くような野暮ったさは今のところあたしには、ない。「今度、食事どう? 今週末でようやく仕事の目処がつくし」運転席のサワダの声に、あた... [続きを読む]
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- 2008/04/14 08:46小説「オルタナティブをレイプしろ」10
- 仕事を終えて事務所を出ようとしたら、出口のところで、サワダに呼び止められた。「マコト。今から帰るんか。帰るんやったら車で送ってくぞ」サワダはスーツのポケットに手を入れ、中でキーをじゃらじゃらと弄んで鳴らした。「いいよ。駅まで走ったらぎりぎり終電に間に合うから」携帯電話で時間を確かめた。二十三時二十分過ぎ。日付けが変わらないだけ、まだマシだ。本当のことを言えば、駅まで走り続けても到底間に合う時間で... [続きを読む]
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- 2008/04/13 20:59もげる。わたしは海を抱きしめていない。
- 僕に送られる結婚指輪だけは自分の金で買って欲しかったのだけれど、女がかわいそうで言えず、自分の貯金から買った。どこの世界に自分の指輪を買うバカがいる?結婚資金は、半額を自分で用意して、残りは親に土下座をして借金した。結婚して二年たった今でも、月々の仕事と、秘密の内職で返していることを、女は知らない。大好きな煙草もお酒も仕事もやめて女と暮らし始めたのに、女は貯金を下ろして勝手に美味しいものを食べにい [続きを読む]
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- 2008/04/13 03:38肝臓
- 母がケーゾーを憎めと命令したのは何時頃のことであっただろう。母は4歳になったわたしが、ケーゾーの布団に毎晩潜り込むのを嫌がり、痛烈に、執拗に、何度も批難した。あのひとは汚い人やさかい。汚いのがうつってもええの?母はケーゾーを盗られると思って焦っていたのに違いなかった。ケーゾーはええなあ、たまに帰ってきて、ええ顔して、ただ抱きしめるだけで、そうやってこの娘らに、お父さん、お父さん、いうて懐かれるんや... [続きを読む]
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- 2008/04/13 03:36肺臓
- 彼女は太陽を見ては追いかけた。あんた、汚い。6歳になった彼女は、わたしと持ち物がごっちゃになるのが嫌で、あらゆるものに、よーちゃん、よーちゃん、と名前を描き始めた。自我に目覚めた彼女は、毎日毎日、枕に、布団に、鉛筆に、ノートに、人形に、服に、財布に、よーちゃん、よーちゃんと、描ける物には何でもマジックペンで名前を描き始めたのだった。だってあんたの持ち物は、汚いんだもん、汚いだもん、汚いんだもん、汚... [続きを読む]
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- 2008/04/13 03:36腎臓
- 居間の洋服タンスには、物心ついたときから、大きな穴が開いていた。7歳の兄はそこに自販機の周りや公衆電話の周りから必死でかき集めてきた5円玉や10円玉やらを貯めていたのだった。兄はお金をできるだけ早くに貯めて、一番の金持ちになるのだと言った。あいつらは、アテにできへんさかいに。いつか家出するときの資金を貯めるんや。兄はわたしに、タンスの穴の秘密を得意げに教えた。これな、あの鬼婆がおまえに椅子を投げつ... [続きを読む]
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- 2008/04/13 03:36脾臓
- わたしが20歳になった頃、ケーゾーは携帯電話を買い、アパートで鄙びた男やもめの一人暮らしを始めた。飲みにいくぞ、の電話が頻繁によくかかってきた。ケーゾーがスナックの姉さん相手に、俺は偉いんだ、と長々とくだを巻いてたり、ケーゾーが道端で寝ていて警察に保護されて、それを迎えに行ったり、歩けないケーゾーを引き摺ってアパートに送ってかえったりする時、わたしは、迷惑かけ三昧のケーゾーだけが、わたしの一番の心... [続きを読む]
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- 2008/04/13 03:36心臓
- ビョウインに行くことがきまって、これからどうなるのかと、辛くて死にそうになった。あらゆる物理的なものにこだわりや興味がなくなってしまったら、もうこの世にわたしは居る必要が無くなる。ヨーセガ、ミエルノデスッ。イエッ、アタシ、ヨーセーナンデスッ!などと野外全裸で原始人のように叫ぶわたしと、それを内心笑いながら、ボクガオージサマダ! と言ってくれる極悪ニヒリスト。それがただの食わせものじゃなく、ほんとう... [続きを読む]
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