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- 2008/07/22 23:17「蝉」
- 引きこもっていた。五年間だ。髪や髭は伸び放題。体重は二十キロ増えた。何度も働こうとしたのだが、電話がかけられない。履歴書が書けない。書けるような職歴もない。ハローワークの前まで行くと汗が噴き出し、心拍数が上がる。いつのまにか、人との接し方が分からなくなっていた。見かねた両親は親戚に相談した。俺はその親戚の紹介で、小さな工場に勤務することになった。ほとんど人と会話をする必要はないそうだ。しかも夜勤の [続きを読む]
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- 2008/06/30 00:59「最期の台詞」
- 男は口を開いた。「ラオウは『我が生涯に一片の悔いなし!』と言って死んだよね。男の死に様、かくあるべし。みたいに美談として語られがちだけどさ。僕はね。死ぬときに、やり残したことはない。悔いはない。なんて言いたくないんだ。だってちっぽけじゃないか。君のやるべきことってそんなに少なかったのかい? って思うよね。僕ならこう叫ぶつもりさ。『ああ! 僕の人生はやり残したことだらけだった!』ってね。あいつは夢と希 [続きを読む]
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- 2008/06/29 01:38【政治】ついに禁煙法成立か!?★2
- 8 :名無しさん@ネタ切れ中:2008/06/28(土) 23:23:07 ID:P2/tindy喫煙厨涙目wwwwww9 :名無しさん@ネタ切れ中:2008/06/28(土) 23:23:53 ID:Homura+y0こないだ1000円になったと思ったら今度は禁煙法かよ・・・orz10 :名無しさん@ネタ切れ中:2008/06/28(土) 23:24:09 ID:Ia+IZYjIO愛煙家をいじめて楽しいですか?11 :名無しさん@ネタ切れ中:2008/06/28(土) 23... [続きを読む]
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- 2008/06/25 23:54「Drive Me Crazy」
- 空は晴。波は腰。海面は陽光を一身に浴び、無数の輝きを浮かべていた。絶好の波乗り日和だ。早朝から海に入っていた俺は、下手くそながらも納得のレイバックを決め、虹色にきらめくスプレイを、青く透明な空に振り撒いた。浜へ上がる。若い頃なら一日入っているところだが、今では満足のゆく一本があれば、早めに上がるようにしている。深追いは良くない。何でも気持ちの良い所で切り上げるのが一番だ。防波堤沿いに停めたランエボ [続きを読む]
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- 2008/06/21 10:58「マイ・コクピット」
- 完璧だ。パソコン。テレビ。音楽プレーヤー。ミニ冷蔵庫。耳かき。爪切り。孫の手。等々。座りながらにして全てのアイテムに手が届く。私は子供の頃から自分の居場所をコクピット状態にしないと気がすまないのだ。新居に越して、やっと念願の書斎を手に入れた。少しずつ手を加えて完成したマイスペース。屋根裏部屋だが文句はない。これで誰にも干渉されずに読書や書き物に没頭することができる。バング&オルフセンのプレーヤーに [続きを読む]
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- 2008/06/19 23:34「じゃんけん」
- 僕が。いいえ、わたしが。ダメだよ。いいわ。じゃあ、じゃんけんで決めましょう。勝ったほうがエミの面倒をみるのよ。君はじゃんけん、弱いじゃないか。僕に勝ったことないだろう。いいの。今日は勝つかもしれないじゃない。そんな――そうでもしないと。キリがないわよ。……分かった。じゃんけんほい!ほら、やっぱり……だから言ったじゃないか。ふふ。やっぱり弱かったわね、わたしったら。じゃ、あとは頼んだわ。エミをよろし [続きを読む]
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- 2008/06/15 01:57「二次元萌え!」
- 『特集です』男性キャスターの声の背景に、聴きなれたアニメソングがかかっている。タカユキはBGMがわりにつけっ放しにしていたテレビの方へ目をやった。『近頃、アニメやゲームのキャラなど二次元の女の子に恋をして、生身の女性と恋愛の出来ない若い男性が増えているそうです』画面が切り替わり、VTRが流れはじめた。パソコンショップの立ち並ぶ街でインタビューを受けている若者たち。どれもこれもモテそうにない顔ばかり。 [続きを読む]
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- 2008/06/03 23:17「父の日のプレゼント」
- 僕が休日前の夜に寛いでいると、いきなりマキが話しかけてきたんだ。「来週。父の日だよね。明日、うちのパパとまぁくんのお父さんのプレゼント買いに行くから付き合ってね」「ええー!? あのさぁ、疲れてるんだよね。俺。だいたいマキのお父さんの分はいいとして、うちのおやじに父の日のプレゼントなんていらないっつうの」「なんでよ?」「うちは男兄弟だったからそういうのナシなんだよ」「何言ってるのよ。男兄弟とか関係な [続きを読む]
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- 2008/05/31 22:50「折りたたみ式」
- 警備員のアルバイトを始めて一週間。やっと仕事にも慣れてきた。だが一日中道路の上で立ちっぱなし。足腰には疲れが相当キテる。そして何よりも最大の敵は――暑さだ。今日もひたすらに暑かった。まったく太陽の容赦のなさときたら!焦げてしまうかと思った。まだ五月なのにこの調子だと、夏場は一体どうなるのだろう。はっきり言って不安です。仕事が終わり、事務所へ向かうハイエースに揺られながら、僕は先輩の宮本さんに相談し [続きを読む]
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- 2008/05/28 23:29「ワンナイラブ」
- なんでこんな男と寝てるんだろう。足を開き、男の引き締まった身体を受け止めながらあたしは我に返る。そして天井に貼り付けられた鏡に向かって問いかける。理由はそう、魔裟斗と須藤元気を足して三で割ったような顔がちょっとかわいかったから。声かけられて、うだうだとした話を聞いてるうちに、いつのまにか安っすいチェーン居酒屋に連れて行かれてて、生グレープフルーツチューハイでカンパーイってな勢いで、でも話が盛り上が [続きを読む]
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- 2008/05/24 02:06「美しきホームラン」
- 私は阪神甲子園球場のバックネット裏で、紙コップに注がれた生ビールを呷っていた。スタンドは今日も超満員の状態で、黄色とピンクが入り混じった下世話な色に染まっている。昔は甲子園の観客席のカラーといえば黄色と白ばかりで、それがグラウンドの芝や土の色と上手く調和していたのに……何故ピンク色のグッズなどを売り出したのだろう。日本人の美的センスはまったく嘆かわしい。私は美しいものが好きなのだ。そう、例えば彼の [続きを読む]
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- 2008/05/18 01:52「冷やし中華はじめました」
- 家へと向かう道のり。竹林の隅っこでは伸びに伸びた筍が長槍のように夕雲を突き、通りがかりの民家の軒先では紫陽花の蕾達が気もそぞろになってアップを始めている。新緑の香る五月の半ばと言えば、爽やかな気候――で、あるはずなのだが、暑い。いわゆる夏日だった。夕方だというのに、爽やかさとは程遠い蒸し暑さだ。通りですれ違うスーツ姿のサラリーマン達はみな上着を担ぎ、Yシャツの袖をまくり上げて、額に汗を滲ませている [続きを読む]
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- 2008/05/08 00:04「不思議な美容室」
- 山奥のこじんまりとした美容室に、男女のお客が訪れた。「これはこれは。ようこそいらっしゃいました」口ひげをたくわえた店主が両手を広げて出迎える。この美容室は店主が一人で切り回しているようだ。とは言っても、そうそう客が訪れるようにも見えないが。「ささ、どうぞお掛けくださいませ」男女は二つしかない椅子に静かに腰掛けた。「さて、今日はどのようにいたしましょう?」「全体的に真っ白にブリーチしてくれたまえ」男 [続きを読む]
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- 2008/05/07 00:14「パトロール」
- さぁ今日はパトロールの日だ。会社からの帰りに、ターミナル駅の改札を抜けると、切符販売機近くの大きな柱に寄りかかるカップルが目に入った。女は腰穿きのワイドなデニムパンツにタイトなラグランスリーブのロンTを着ている。メリハリの利いた着こなしによってウエストのくびれが強調されていた。目深に被ったベースボールキャップで顔が見えないのが惜しい。コットンフランネルのチェックシャツを着た相手の男は腕組みをし、油 [続きを読む]
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- 2008/05/03 02:18「危険な熱帯夜」
- 何もかもがじっとりと湿った空気に包まれる熱帯夜。なまあたたかい風に乗ってふわりと漂う女の香り。オレの嗅覚はそいつを逃がさない。二階の角部屋。やはり。窓が開いている。物騒な世の中だというのに、窓を開けっぱなしで寝る神経を疑う。レディースマンションだから安心?たとえオートロックであろうと、二階や三階であろうと、窓さえ開いていれば進入はたやすいものなのに。まったく愚かな女だ。オレは窓の隙間から音も立てず [続きを読む]
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- 2008/04/30 00:10「初夏の夜の出来事」
- お先に失礼しまーす。客席でまたーりと雑談している同僚達にそう言い残し、オレはタンタンタンと渇いた音を立て、リズムよく階段を駆け降りる。電源を落とした自動ドアをググっと開き、夜の街へと飛び出した。左右に色とりどりのネオンが並ぶ通りを駆け抜けると速攻で駅前広場に出る。初夏の生ぬるい風に乗っかっているのは、ストリートミュージシャンの掻き鳴らす平板なアコギの音と、下手ではないが高音域で掠れる彼らの青い歌声... [続きを読む]
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- 2008/04/19 00:22「ロティとわたし2」
- ある晩、私がパソコンに向かい、執筆をしていると、ディスプレイの端からチロチロと顔を出すものがいる。ブログペットのロティだ。だが今は遊んでやらないぞ。丁度乗ってきたところなのだから。そのまま無視し続けていると、彼はマウスポインタに頬をすり寄せてきた。くく。思わず笑みがこぼれそうになる。「レイバックー」 「なに? 今お仕事中だよ」「レイバックー」「今はダーメ」「レイバックー」「うるさいなー、... [続きを読む]
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- 2008/04/16 00:11「林檎とナイフ」
- ベッドの隣で座りこむわたし。カーテンの隙間から西日。どんよりと跳ね返る。さくり。皮と果肉のあいだに刃先がすべりこむ音が病室に響きわたしはその音の余韻を味わいながらいったい今日何個目の林檎を剥いているのだろうかとみずからにたずね答えを聞かぬまま親指の腹で林檎の皮をたぐりよせつつ果物ナイフをすすすと前へ押し進めてゆくのだが、その切れ味の鈍った刃先が強情なまでに赤い林檎の皮とひどくみずみずしい果肉のあい... [続きを読む]
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- 2008/04/15 01:09「執事カフェ」
- お帰りなさいませ。お嬢様。上着をお預かりしましょう。では、こちらへどうぞ。今日も素敵なお召し物でございますね。ご注文はお決まりですか?いつものロイヤルミルクティですね。はい。かしこまりました。はい?ああ表参道でですか?ええ、あの日は愛車で出かけておりました。よくご存知で、ええ、あれは日産GT-Rというクルマでございます。なかなかよいクルマですよ。よく私だとお気づきになられましたね。ははは。滅相もご... [続きを読む]
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- 2008/04/13 00:39「タコ焼きエレジー」
- 「なぁ、タコ焼き食べる?」「今食べたら、あんた晩ごはん食べられへんよ」「せやかて、このソースの匂い嗅いでたら……」「もう、しゃあないなぁ。一舟にしときいよ」「よっしゃ、オレ買うてくるわ」「熱っぅぅぅう」「ふぅぅぅ、なんか久しぶりやね、三角公園でたこ焼き食べるのん」「そういえばそやなぁ」「学生の頃はよう来てたけど、最近はこの辺りも変わってしもたし」「昔は良かったなぁ。かっこええ古着屋も多かったし」「... [続きを読む]
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- 2008/04/11 01:13「ソルト&シュガー」
- 「本も読まないようなヤツじゃ、私の男は務まらないんだからねっ!」教室の隅で両手を腰に当て、勇ましい声を上げているのは、同じクラスの坂上美月だ。本好きの坂上美月は、いつも女友達と小説の話で盛り上がっている。俺は彼女のツンと澄ました横顔と気の強そうな物腰にとても惹かれていた。これは母ちゃんと姉ちゃんにかわいがられて、甘口に育てられた反動なのかもしれない。普段ほとんど読書をしない俺は、なんとか彼女と話を... [続きを読む]
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- 2008/04/10 00:58「箱の中身は」
- 昨夜の夕食時の光景が、切れかけた蛍光灯のようにちかちかと点滅しながら、隆志の脳裏に蘇る。だが、彼の頭の中に、その後の記憶は無かった。――あの後、俺は一体……朝起きた時、すでにあいつの姿は消えていた。隆志は白い箱を目の前にして座り込み、躊躇していた。結局はこいつを開けなければならないのだ。それは分かっている。だが、この箱の中から漏れ出てくる有機的な匂いを嗅ぐと、決心が揺らぐのだった。隆志の背中を一筋... [続きを読む]
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- 2008/04/09 01:48「レディファースト」
- 窓の外では明るい日差しがアスファルトに照りつけている。さつきはホテルの近くのカフェでひとり、背の高いスツールに腰かけていた。街行く人々の姿を目で追い、東京の景色との違いを楽しみながら。ふと、店内へ目を向けると、小さいカップを手にした女性が辺りを見回している。定規で引いた直線のようにしゃんと伸びた背筋には見覚えがあった。大きなフレームのサングラスをかけていて、表情は窺えないが、あれはきっと姉に違いな... [続きを読む]
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- 2008/04/05 13:06「あの頃、寮で、友達と」
- この写真、なんで大樹君だけジャージ着てるの? ☆ ☆ ☆夕食後、大樹が学生寮のロビーでひとり、テレビを観ていると、薄手のダウンジャケットを羽織った央人が2階から下りてきた。大樹と央人は部屋がとなりどうしの同級生である。「あれ?央人、出かけるのか?」「ああ、ちょっとな」「今日は20時からサッカー中継だぞ」大樹はジャージ姿でソファーに寝転びながら、首だけ央人の方に向けて言った。「どうせ今の代表の試... [続きを読む]
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- 2008/04/03 00:51「……」
- 妻と二人で夕食を食べた。「物を噛む時にクチャクチャ音を立てないで」「……」夕食後、友人にメールを打っていた。「携帯のボタン音は消してよ」「……」コーヒーを飲みながら趣味の音楽鑑賞だ。「ヘッドフォンから音が漏れてるわよ」「……」夕刊と朝刊をゆっくりと読もう。「新聞をバサバサと派手に読むのやめてくれない?」「……」うちの妻はうるさい。わたしは音を消した。とても静かになった。わたしの立てる音以外は。人気... [続きを読む]
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