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- 2008/03/01 00:54朝の仕事
- サラは少し遅くなった朝食のマナをほおばりながら外へ出た。中身のない木の実を麻のひもでつないだ首飾りを後ろ手につないで、少量の香油を頭にふりかけた。香油のすがすがしい香りが辺りにただよう。「おはよう、サラ」となりのおばさんが洗濯の手をとめあいさつをした。「おはようございます。今日もいい天気ね。」サラはにこやかに微笑んだものの、あいさつもそこそこに、そのまま足早に父のもとへと急いだ。父や兄たち ... [続きを読む]
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- 2007/07/15 01:01虚空の旅人
- 虚空の旅人上橋 菜穂子、佐竹 美保 他 (2001/07)偕成社 この商品の詳細を見る [続きを読む]
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- 2007/07/14 23:52死をも恐れぬ闇の傭兵
- ユングは窓の外を見た。外は暗く、遠くにオーロラが空に瞬いている。「もう一人、太った男が倒れてなかった?僕の友人なんだ。いっしょにサンに向かうって。」「いなかったわ。でも、あの子のことは知ってる。危険な子よ。」ミロクのことをどうして知っているのか。人違いではないかと思った。彼と出会ったのは、国境の町。2人でサンの正体を確かめるためにいっしょに旅をして来た。ミリアムは続けた。「あの子はサンの周り ... [続きを読む]
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- 2007/07/14 23:01精神を犯す”場の力”
- 長衣からすっと伸びている、女の白くしなやかな腕はその年齢を分からなくさせるほど、ユングには美しく感じた。その腕は、艶のある机の上に置かれた2つのティーカップに暖かいミルクティーを注いでいる。彼女はミリアムと名乗った。ミリアムはこの地に住んで数十年になるという。サンに近づいて倒れた者を救済するのが自分の役目だと言った。初対面ではあったが、その慈悲深い目の奥に深い悲しみを秘めていることがユングには ... [続きを読む]
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- 2007/07/14 00:42第2の故郷
- 竜の尻尾の存在をつかめないまま、とある町に流れ着いた。この国の国境の町で、その交易の要害を生かし発展した新興の町であった。この町は僕が知っている中で最も信心深い地で、身分の高いものから貧しい者まで旅人に対して親切であった。首長も末端のものの後につくような謙虚なもので、僕は理想の首長だと思った。僕にとっては心休まる町であり、第2の故郷となっていた。白い光−サン、の存在を知ったのはこの地だった。光 ... [続きを読む]
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- 2007/07/13 23:48神の警告
- 僕は枯れ木と腐土と化した町を後に、ユナを手がかりに旅に出たんだ。旅の途上、ユナの姿は跡形もなく消え去っていた。マギについてもその存在すら知るものは少なく、放浪のうち瞬く間に2年が過ぎていた。そのとき、とある土地の長老に聞いた。太古の昔より大きな災いの前兆として、マギが出現し悔い改めを叫ぶと。マギこそ神の警告であると。なお、悔い改めを受け入れない町はことごとく滅びたという。マギは古くは占星術の学 ... [続きを読む]
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- 2007/07/13 00:42 28番目のマギ
- 僕は誓ったんだ。ママを、村の人達を一瞬で滅ぼした「竜の尻尾」の正体を暴くって。正体を知ったとき、あの日、あの時に戻れるんじゃないかって。あの夏祭りの夜、僕はママとはぐれて一人で河原へいったんだ。空に花火が上がっていたのが綺麗だった。竜の尻尾の存在は、あの日から1ヶ月程前に知った。最果ての町に、一人の旅人がやってきたんだ。ほどない街角で、旅人は疲れた村人達にこう呼びかけたんだ。悔 ... [続きを読む]
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- 2007/07/12 00:50夢のはずはない
- 遠のいた意識が少しずつユングのもとへ舞い戻ってくる。目を開くと、古びた木の蝶番が天井に見えた。ランプの明かりが風で揺らいでいる。ユングはベッドに横たわっていた。見たことのない部屋のつくりだ。レイアの温もりが懐かしかった。「レイア!どこへ行ったんだい?」ユングは叫んだ。奥から女の声が聞こえた。「あらあら、漸く目覚めたようね。」女が立っている。両目を潤ませているように見 [続きを読む]
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- 2007/07/12 00:05生暖かい赤い液体
- 太陽の光に顔を照らされて、重いまぶたをゆっくり開けた。体を動かそうとしたが、鈍い痛みが全身を走り、思うように行かない。ユングは先の出来事を思い出し、力を振り絞って周りを見た。参拝にきた老若男女が、もの珍しそうに取り囲みこちらを見ている。が、誰もユングに手を貸そうとはしなかった。ユングは飛び起きて、レイアは?共にいた女は知らないか?と一番近くにいた老人に詰め寄ったが、老人は関わりたくない素振りで [続きを読む]
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- 2007/07/11 00:38昨日の腰つき
- ユングとレイアは人目もはばからず抱き合っていた。上空は風が強いのだろう、天井うずたかくとぎれとぎれに雲が流れていた。やがて雲は集まり、神殿の上空の日の光を遮った。ふと気づくと周囲に人がいない。遠くで、女がそそくさと建物内に駆け込むのが見えた。ユングは、はっとして振り返ると、神殿の入り口の方から、数人の男達が入って来るのを見た。男達の上体ははだけ、その歩き方は周りを威圧している。神聖な神 [続きを読む]
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- 2007/07/10 23:47自分と違う自分
- 神殿は朝の光を浴び、その荘厳な姿を聳え立たせていた。朝霧が地面を這い、冷たい風が肌に心地よい。朝の神殿は昨夜と違い妖しさのなかから神聖さを取り戻しつつあった。広場では、女達が大きい塵取りをもって地面を掃いている。その中にユングはひと際輝く娘を見逃さなかった。何も知らないレイアは満面の笑みでユングの方へ駆け寄ってきた。遠かったが、こちらに手を振っているようだ。ユングはほっとした嬉しさ [続きを読む]
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- 2007/07/09 00:31責める資格
- 窓の外近くで小鳥が鳴いている。昨日が嘘のように、窓から日差しがこぼれ見える。心地よい目覚めは、昨日の記憶でかき消された。奴の顔を思い出すだけで、胸に焼ける物が込み上げてきた。昨日の出来事でユングはレイアへの怒りを忘れかけていた。果たしてオレにレイアを責める資格なんてあるのか?ユングは自分は選ばれた人間だなんて思ったことはない。しかし、清い人間だと思っていた。だが、昨日のオレは、 [続きを読む]
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- 2007/07/09 00:12大男ゴーリアス
- 適当な宿を探すため、町へとって返した。町は、人通りこそ半分に減っていたが、通りの明かりは煌々と灯り、店の中からは時に大きな笑い声が響いた。街道を少し過ぎた辺りにユングは人だかりを見つけた。人だかりの先はどうやら道路に面したカフェテリア形式の食堂のようだった。人だかりの中心には仲間と思われる数人の屈強な若者達と、その足元にすがりつくように土下座をしている店主と思われる初老の男がいた。若者 [続きを読む]
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- 2007/07/08 23:28 神殿のある町
- 神殿のある町についたころには日はどっぷりと暮れていた。神殿に近づくにつれ、家々の明かりが道筋を照らした。町に入ると、活気は昼間のように街道を人々で溢れている。店先で酒を飲むもの、水タバコを嗜むもの、人々は昼間の労働を終えつかの間の至福のときを過ごしている様だ。そこは、また、旅人に享楽とつかの間の安らぎを提供する役割も担っていた。高台にあって神殿は二重の長い石壁に囲まれており、その門前を中心にこ ... [続きを読む]
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- 2007/07/08 22:37オレを弄んでいるのか
- 大麦畑をときに早足に、次に駆けて進んでいる。ユングは足を進めるのに集中していたが、溢れる思いが駆け巡っていた。雲の合間から日の光が数条差し込んで、ユングは目を細めた。村ではこの季節の天気は変わりやすい。レイアの歌声が遠くに聞こえた。その透明さ、神聖さ、なにより優しさ。みなを神聖な思いに包んだ夜にその翳りは微塵もないのだ。愛しているといったとき、照れながらも心の底からの笑顔をみせた無邪気なレ [続きを読む]
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- 2007/07/08 01:15 神殿娼婦
- リムカ、ディールから久しぶりに会わないかとの便りがあった。あの祭礼以来、リムカ、ディールとつるむ機会はめっきり減った。ユングにとってレイアが時間のほぼ全てを占めるようになっていたから。久しぶりに3人がそろったとき、合歓の木はエネルギーに満ち溢れた新緑から、紅葉を経てうら寂しい枯れ枝を見せ始めていた。3人は久しぶりの再会を喜びながら近況を語っていた。ひと通り話し終わった後、リムカはレイアに心 ... [続きを読む]
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- 2007/07/08 01:10神殿娼婦
- リムカ、ディールから久しぶりに会わないかとの便りがあった。あの祭礼以来、リムカ、ディールとつるむ機会はめっきり減った。ユングにとってレイアが時間のほぼ全てを占めるようになっていたから。久しぶりに3人がそろったとき、合歓の木はエネルギーに満ち溢れた新緑から、紅葉を経てうら寂しい枯れ枝を見せ始めていた。3人は久しぶりの再会を喜びながら近況を語っていた。ひと通り話し終わった後、リムカはレイアに心 [続きを読む]
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- 2007/07/06 00:27リムカとディール
- ユングとリムカとディールとは年も近いことがあり、村の中でもなにかと仲が良かった。陳腐ではあるが、まさに気心知れた仲で3人は言わずともお互いのことがよく知れていたし、青春時代の悪さも喜びも怖さもいつも一緒だったような気がする。一生の親友だったと今では思うが、それは失ってから気付くもののようだ。リムカはよく軽口をいう気のいい奴で、熱いところもある。ユングとはよく喧嘩もしたが、2人とも勝敗は五分にし [続きを読む]
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- 2007/07/03 00:12会いたくて
- レイアは村の長の家で働いている。使用人達は広大な家の敷地で暮らしており、外部からの賓客以外は外の人間と会うことはない。彼女達にとっても年一度の祭礼の日が、唯一の楽しみであった。あの日以来、ユングは用事もなく屋敷のほうへ出向かうことが多くなった。大麦畑をいくつも越えて、10里程あるであろうだれもいない静かな場所を、レイアの事を思いながら歩くのがいちばんたのしい時だった。しかし、屋敷の近くでレ [続きを読む]
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- 2007/07/01 23:56レイア
- ユングは村へ帰ると、荷物を家の裏手の軒先に放り出し、ラマを小屋に繋ぐと、家の中に駆け込んだ。外は完全に日が暮れ、谷の外気は冷え冷えとユングを包んだ。ママとリリーはもう出かけたらしい。勢い良く外に飛び出したため、ドアがバタンとなった。小さい小川を飛び越え損ねて、水が飛び跳ねた。水を含んで重くなったサンダルを両手に持ち替えて、祭壇のある広場へと走り続けた。レイアに思いを伝えるのは今日しかない。 [続きを読む]
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- 2007/07/01 22:27 神聖な歌
- 少し強い風が吹いて、ユングに我を取り戻させた。(今日は夏祭りだった)立ち上がった際、少し体勢を崩しそうになったが、構わずそそくさと荷物をまとめだした。リムカとティールが今頃、準備に走り回っている頃だろう。娘達は着飾るのに一生懸命だ。祭は古代の神々に供物を捧げる儀式が中心となっており、一年に一度、村が夜中まで賑わう、ユングにとっては心躍る日でもあった。酒を酌み交わせるのも貧しい村人達には ... [続きを読む]
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- 2007/07/01 21:30マギ
- 谷の光景に思いをはせながら、ユングは心地よい風を頬に受け、いつの間にか眠り込んでいた。空は限りなく青い。ユングは小さい頃からこの山深い谷で育った。決して裕福な暮らしではなかったが、母と妹と三人、単調な毎日の暮らしに満ち足りていた。ユングに夢がなかったわけではない。マギ(司祭)になるのが漠然とした夢であった。小さい頃に聞いた噂で、隣の隣の町でマギになった男の話で、その豪奢な暮らしぶりを伝 [続きを読む]
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- 2007/07/01 20:50 山の麓の村
- ユングは額の汗を長袖で拭った。無風で立ち込める熱気が身体をほてらせたが、日が少し傾いてから涼しい風が時折身体を癒した。長旅の友であるラマが、ブルンと鼻をならした。息使いが荒い。「ここいら辺で少し一息つこうか」隣町で買った3ヶ月分の食糧と野菜、それに長い冬を越すための毛皮が少々。ラマから一旦荷物を降ろすと、またブルンと鼻をならした。隣町をまだ薄暗い頃に出発し、峠の頂上の目印をついさっき過 ... [続きを読む]
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- 2007/07/01 18:15 はじまり
- 初めに神が天地を創られた 地は形がなく、そこには何もなかった。闇が大いなる水の上にあった。そのとき、神が「光、あれ」と言われると、光ができた。神は光を見、それを善しとされた。そして、光と闇を区別された。光を昼と名づけ、闇を夜と名づけられた。こうして、夕があり、朝が来た。創造の第1日である。 ... [続きを読む]
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- 2007/06/30 00:36竜の尻尾
- (ドーン)また花火が上空へ舞い上がった。今度は少し間があってパラパラパラと上空で花びらがはじけとんだ。西の空が一瞬光ったように思った。川の辺のほうとは逆方向だ。ユングはその場に立ち尽くした。西の空に一条の光の筋がその丈を少しずつ伸ばしていた。ユングの頬を生暖かい風がなでていった。(パラパラパラ)子供達の笑い声が聞こえたような気がした。一条の光は更にその丈を伸ばしていった。流 [続きを読む]
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