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- 2007/12/28 20:37「永久凍土の下の蝉」連載を終えて(2)
- 皆さん今日は、モモです。このブログを続ける上で正直言って一番難しかったのは、「モモの独り言」でした。モモは今まで小説以外の形式――エッセイなど――で自分の思想を表現した経験がほとんどありませんでした。様々なデータや事実をダイレクトに表示し、そこから自分の考えを裸の言葉で述べていく、というのは、簡単なようでいて思ったより難しい。なぜなら、小説では、作家の意図は登場人物の行動や言動、心象風景などに間... [続きを読む]
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- 2007/12/26 17:01「永久凍土の下の蝉」連載を終えて
- 皆さん、お久しぶりです、モモです(^^)半年にわたり、応援してくださって本当にありがとうございます。今も、連載中とほぼ変わらないほどの方が、毎日このブログを訪れてくださっています。本当にうれしく思っています。小説は読み手がいなければ成り立たないものです。小説に限らず、文章はすべて、読んでくれる方がいて初めて文章としての意味があると、モモは思っています。また、医療においても、患者さんあっての医者お... [続きを読む]
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- 2007/12/15 04:35永久凍土の下の蝉〜終焉(3)〜
- 白いベッドの上で、体中にモニターをつけられた清水は、夢を見ていた。 行ったこともない、遠いシベリアの永久凍土(ツンドラ)の下で、自分は蝉の幼虫になって眠っている。 周りにもたくさんの仲間がいて、寒さに凍えながら、七年を指折り数えて、凍土の溶ける日を待っている。 しかし、永久凍土(ツンドラ)は決して溶けず、暖かい日の光の中で大空に羽ばたく夢は、決して叶えられない。 それでも彼らは夢見ずにはいられない... [続きを読む]
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- 2007/12/14 04:34永久凍土の下の蝉〜終焉(2)〜
- 白衣の男は、目を伏せてかぶりを振った。「いえ、ここまで不始末をしでかした以上、医局に戻らせるわけにはいかないでしょう。優秀な人材だったので、惜しくはあるのですが」「余計な情けは禁物だ。いくら臨床力があって研究で成果を挙げていても、チームの一員としての時下自覚にかけるなら、優秀な医師とは言えない」 容赦ない言葉に、白衣の男は直立不動の姿勢を取った。「申し訳ありません」 そして、ふと思い出したように... [続きを読む]
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- 2007/12/13 04:33永久凍土の下の蝉〜終焉(1)〜
- 「やっと、片付いたな」 男は革張りのソファにゆったりと身を沈め、うまそうに葉巻を吸った。横に直立した白衣姿の男が、九十度の礼をした。「ええ、色々ご迷惑をおかけしました。医局の不始末は我々がけじめをつけるべきところを……。先生のお手まで煩わせて、申し訳ありませんでした」「なあに、太陽新聞を動かすくらい造作もないことだよ。大衆は新聞に書いてあることは全て正義と思い込むものさ。ここまでやってくれるとは... [続きを読む]
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- 2007/12/12 04:31永久凍土の下の蝉〜報復、あるいは罠(8)〜
- ぼんやりとした目に映ったのは、鬼のように目を剥き、清水に詰め寄る人々の形相だった。誰一人乱暴を止めようとする人間はいない。「止め…ろ…」 弱々しく口の中でつぶやいても、声にはならない。全身を強く打ち、立つこともできない。「おい、先生にこの町からご退散願え!病院もろともな!」 屈強な男が二人、清水の両手両足をしっかり掴んで持ち上げた。このまま町の外に捨てる気でもいるのだろうか。 それと同時に、人々... [続きを読む]
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- 2007/12/11 04:49永久凍土の下の蝉〜報復、あるいは罠(7)〜
- 「やめろおおおぉぉぉ!」喉を引き裂くような大声とともに、清水は後先考えずに群衆の中に分け入った。「やめろ、あんたたち、何をしているのか分かってるのか!」「何だ貴様は!これは住民としての正当な権利の行使だ!邪魔するな!」 中心にいたメガホン男が、目を剥いて凄んだ。「俺はこの病院の医者だ!あんたたち、病人に向かって何をするんだ!」「ほう、先生ねぇ?じゃああんたが中心人物ってわけだ。あんた、この新聞読... [続きを読む]
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- 2007/12/10 04:47永久凍土の下の蝉〜報復、あるいは罠(6)〜
- その時、反応がない病院にしびれを切らしたのか、群集の間から罵声が飛んだ。「おい、逃げる気か!? さっさと出て来い!」 それを皮切りに、礫のように怒鳴り声が施薬病院に向かって投げつけられ始めた。「出て来ないならここから出て行け!」「周りの迷惑も考えろ!」「俺たちの町を汚すな!」「今すぐここから出て行け!」「出て行け!」「出て行け!」「出て行け!」「これでもくらえ!」 ガシャーン! 群集の間から投げら... [続きを読む]
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- 2007/12/09 04:46永久凍土の下の蝉〜報復、あるいは罠(5)〜
- 中年の男は、新聞記事を読み終えると、ひときわ大きく声を張り上げた。「以上が今朝の太陽新聞の記事である。我々呉服町の住民は、今まで貴院の診療行為に協力、容認してきた。その住民として問う、この記事に書かれていることは事実か否か。もし事実であれば、我々はこれ以上貴院への協力はできないと言わざるを得ない。さらに、住民として、貴院の立ち退きを要求するものである。貴院は、責任を持って我々の問いに答えられた... [続きを読む]
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- 2007/12/08 04:45永久凍土の下の蝉〜報復、あるいは罠(4)〜
- 施薬病院に近づくにつれ、針でも含んでいるかのようにとげとげしくざわついた空気が、寒気と共に肌を刺してくる。 人々の罵る声、地を踏み荒らす音、それらが鼓膜に引き起こす振動が少しずつ大きくなり、胸に火のような不安を掻き立てる。最後の角を曲がった瞬間、清水は目に飛び込んできた異様な光景に立ち尽くした。 三十人、いや四十人を超えるであろう、老若男女を問わず様々な人々が、病院の玄関を威嚇するように取り囲... [続きを読む]
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- 2007/12/07 04:43永久凍土の下の蝉〜報復、あるいは罠(3)〜
- 清水は、身支度もろくに整える暇もなく、家を飛び出した。バス停でバスを待つのがもどかしく、通りがかったタクシーを拾って施薬病院へ大急ぎで向かってくれと頼むと、タクシーの運転手は露骨にいやな顔をした。「お客さん、今朝からの騒ぎ知らないんですか?今日はあのあたりに近づくと怪我しますよ」「何だって?何があったんですか?」 噛み付くように尋ねた清水に、運転手は軽く肩をすくめて見せた。「住民運動とかいうや... [続きを読む]
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- 2007/12/06 04:42永久凍土の下の蝉〜報復、あるいは罠(2)〜
- 清水は、携帯電話を放り出し、掴みかかるように新聞に顔を近づけた。放り出された携帯電話が、フローリングの床にぶつかり、耳障りな音を立てた。「清水、おい、見たか?清水?」 電話の向こうで高橋が叫んでいるのが聞こえたが、その声は、清水の心には届かなかった。 清水は、むさぼるように新聞の小さな文字を目で追った。 そこには、施薬病院が低所得者の健康保険未加入者に対し無料診療を行っていること、無償奉仕のス... [続きを読む]
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- 2007/12/05 04:40永久凍土の下の蝉〜報復、あるいは罠(1)〜
- 翌日の日曜朝十時、清水はけたたましい携帯電話の着信音で起こされた。夕べは帰ってきてからシャワーもそこそこにベッドに倒れこんでいた。睡眠時間は十分なはずなのに、なぜかゆっくり休めた感じがなく、頭が重い。「もしもし……」「寝ぼけてる場合じゃないぜ、全く、さっきから何回も電話してたんだぜ。やっと出たな」「何だ、おまえか」 電話の相手は高橋だった。 清水は大きくあくびをした。「全く朝っぱらから何なんだ... [続きを読む]
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- 2007/12/04 05:00永久凍土の下の蝉〜裏切り(7)〜
- 「外来患者さんのことについては、少しだけ時間をいただけますか?何か良い方法がないか、考えて見ます。清水先生も、何か思いつかれたら連絡を下さい」 清水は頷いた。表面上穏やかではあったが、何としてもこの病院を守りたいという静かで強い意志が、何よりも患者の利益を第一に守ろうとする思いが、芳川の言葉や態度の端々から伝わってきたからである。「では、また来週」 芳川は穏やかな笑みを浮かべて、院長室に消えた。 [続きを読む]
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- 2007/12/03 05:00永久凍土の下の蝉〜裏切り(6)〜
- 「ええ、院長先生、実は……」 清水は、今日起こった出来事をかいつまんで芳川に話した。入院患者の松下が内服薬を服用せずに隠し持っていたこと。外来患者から、ここで処方された薬を他の人間に売って生活の糧にしようとしているものがいると聞いたこと。中村が退院後の生活への不安から、退院を拒否しようとしたことは伏せておいた。それは芳川にもどうすることもできないことだからだ。「そうですか……。それは困りましたね」 [続きを読む]
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- 2007/12/02 05:00永久凍土の下の蝉〜裏切り(5)〜
- 院長室には、灯りが点いていなかった。もう帰ってしまったのだろうか、そう思い、踵を返そうとすると、「清水先生?」 背後から包むように穏やかな声が、清水を呼び止めた。 芳川だった。「お疲れ様です。私に何か用事でしたか?」「院長先生。もう……お帰りになったかと思いました」「ええ、先ほどまで太陽新聞の記者の方が見えてましてね。ここを取材したいというので、お相手していたところですよ」「あんな大手新聞がです [続きを読む]
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- 2007/12/01 05:00永久凍土の下の蝉〜裏切り(4)〜
- 清水は、その夜遅く診療を終えると、院長室に芳川を訪ねた。 いつもは、診療を終えると、体は疲れていても心は安らかな充実感で満たされ、心地よい眠りを心待ちにしているというのに、今夜はまるで違っていた。 一体、自分たちは何のために診療を行っているのか、自分たちのしていることが本当に患者のためになっているのだろうかという疑問が、清水の胸の底に、黒い雲のように広がり始めていたのだった。 今まで、自分たちのや [続きを読む]
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- 2007/11/30 05:00永久凍土の下の蝉〜裏切り(3)〜
- この病院で無償提供された薬を、自分で飲まずに、同じように健康保険を持たない人々に売り、それで生活の糧を得ている人々がいるというのである。「あそこにいけば、薬をただでくれるから、いい商売になる」 そう公言してはばからないものさえいるというのだ。 仮病を使って風邪薬などをほしがる患者は今までもおり、それについてはこちらも半分だまされてやりながら薬を処方していたが、今回のことはそんなものでは済まされ... [続きを読む]
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- 2007/11/29 05:00永久凍土の下の蝉〜裏切り(2)〜
- この病院で処方されている薬の入った、幾つかの薬袋だった。飲むときに間違えないように一回分ずつ小袋に入れられ、一つ一つに「○月×日 朝食後」と印刷されている。松下の胸ポケットに薬袋が入っていること自体は別に不自然なことではなかったが、何か頭の隅に引っかかるものを感じ、清水はもう一度その薬袋を眺めた。 あわただしく動き回る看護師たちの間で、清水はそっとその薬袋を拾い上げて目を走らせ、軽く息を呑んだ。... [続きを読む]
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- 2007/11/28 05:16永久凍土の下の蝉〜裏切り(1)〜
- 松下は、急性心不全で運ばれてきた、中村と同じ年頃の男性だった。今までにも気づかないほどの小さな心筋梗塞を繰り返してきたのだろう、超音波検査をしてみると、心臓の機能は正常人の半分近くにまで落ちていた。点滴を中心とした治療でかなり改善し、一昨日から点滴を中止して内服薬に切り替えたばかりだった。駆け込んできた看護師の言葉によると、今朝から呼吸困難と全身倦怠感を訴え、全身がみるみるうちにむくみ始めたと [続きを読む]
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- 2007/11/27 05:15永久凍土の下の蝉〜見えぬ真実(9)〜
- その時、「清水先生、松下さんが急変です!」 あわただしい足音と共に、若い看護師が、全身に緊張を漲らせて、病室に飛び込んで来る気配がした。「清水先生?こちらではないですか?」 中村のベッドの周囲にカーテンを引いているため、清水の姿が見えないらしい。狼狽した声を聞いて、上月がカーテンを掻き分けて顔を出した。「どうしたの?清水先生は今中村さんとお話中よ。あわてないで何があったか報告しなさい」「先生、俺 [続きを読む]
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- 2007/11/26 05:14永久凍土の下の蝉〜見えぬ真実(8)〜
- しばし、中村の低い嗚咽だけが、白い床を這い、空気に細波を立てた。 清水の言葉に、中村の心を打つだけのものが含まれていたとはとても思えなかった。しかし、中村は、清水に横顔を向けたまま、何かを振り切るような力をこめた声でこう言った。「いいさ先生、あんたの……せいじゃない」「中村さん」「俺は、俺たちは……」 その先は言葉にならなかった。言葉にならぬ思いを代弁するかのように、中村の日に焼けた頬に、透明... [続きを読む]
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- 2007/11/25 05:13永久凍土の下の蝉〜見えぬ真実(7)〜
- あまりにも厳しい現実の前に、心が砕け散っていく痛みに耐えながら、清水は中村の嗚咽に震える肩にそっと手を伸ばした。「中村さん」 中村は、ぴくりと肩を震わせたが、清水の手を振り払うことはしなかった。 こんな時にかけるべき言葉を見つけるには、清水は人間としてあまりにも未熟で、清水の語彙はあまりにも貧しかった。 それでも清水は、粉々に砕け散った花瓶のかけらを一つ一つ拾ってつなぎ合わせていくように、心の底に [続きを読む]
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- 2007/11/24 05:12永久凍土の下の蝉〜見えぬ真実(6)〜
- 中村が叩き割ったのは、清水の、この病院に入院している患者たちを少なからず救っているという慢心であり、生活という醜い泥のような現実の上に張られた、医療という薄氷のような虚構だった。 それが叩き割られた下に見えるのは、飢えた衆生が一粒の米を求めて争い彷徨う、地獄のような現実。 それは決して中村たちのような貧しい経済状況に置かれたものだけではない。名誉を追い地位を求め、常に他人に出し抜かれはしないか... [続きを読む]
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- 2007/11/23 05:11永久凍土の下の蝉〜見えぬ真実(5)〜
- 「ああ、そうだよ、悪かったな!」 泣いているのかと思いきや、中村がいきなり大声で怒鳴ったので、清水は思わず立ち上がりそうになった。同室の患者たちがひそひそ話をやめた。「あんたたちに分かるかよ。ここから出て行ったら、また同じことの繰り返しだ。この年じゃ仕事もろくにねぇ。こう寒くちゃ野垂れ死にするのが関の山だ。それでも俺に出て行けって言うのかよぉ!」 振り返った中村の顔は熱でもあるかのように真っ赤に... [続きを読む]
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