こえだ さん

こえださん: おはなし
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プロフィール

ハンドル名こえだ さん
ブログタイトルおはなし
サイト紹介文大切に書き綴ってゆきたい、そんな想いで毎日少しずつ筆を進めています。物語は全てフィクションです。
参加カテゴリー
更新頻度(2年)情報提供270回 / 450日(平均4.2回/週) - 参加 2007/07/17 13:01

こえだ さんのブログ記事

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  • 2008/10/02 14:19つながりゆくもの  24
  • その日はいつものように朝から仕事に追われていた。短い電話を切り、キコキコ音を立てて首を回していると、アシスタントの佐橋に声をかけられた。「あのぅ、今日お忙しいですか? ちょっと相談したいことがあるんですけど・・」五つ下の佐橋は、一年前から昭博の隣に机を並べている。仕事もよくでき、真面目な人柄と部内の評判もよかった。その彼女が周りの様子を気遣うように声を潜めたのだった。・・・ [続きを読む]
  • 2008/09/26 14:14つながりゆくもの  23
  • すっかり遅くなった。昭博は時計を見ながら駅の改札を抜けると、少し足を速めた。遅くなったと言ってもいつもとさほど変わらない時間。だが本当はもっと早く家に着いている予定だった。喫茶店でコーヒーを注文したあの時点では。気持ちの底にドロドロしたものがこびりつき、その泥の塊を家に辿り着く前に払い落としたい、そんな気持ちで帰路についた。重い足取りは扉の前まで、気持ちを切り替えて・・・ ... [続きを読む]
  • 2008/09/21 14:41つながりゆくもの  22
  • 泣き疲れて布団にうずくまっていた。時計を見ると、22時を過ぎている。そっと足音を忍ばせて浴室に、髪を洗って温かいお湯に浸かっていると、少しずつ毛羽立っていた何かが滑らかになっていくのを感じた。どうしてあんなこと・・廃墟のようなガランとした心が湯船に浮いているようだった。自分を好きになんてなれっこない。嫌いな自分ばかり。磨くどころか無駄にすり減らしているだけ。何やって・・・ ... [続きを読む]
  • 2008/09/15 14:46つながりゆくもの  21
  • その日私がぐったり疲れて家に帰ると、香ばしい匂いがダイニングから漂ってきた。温かな香りはあこがれていたドラマのような幸せのいっぱい詰まった安らぎの空間で、疲れも吹き飛びそうだった。「おかえり!」エプロンをつけた昭博がフライパンを左手に、ニコニコ笑顔で私を迎えた。癒された心とは裏腹に、何故か胸がチクリと痛んだ。「・・ただいま・・ いい匂い・・」「今日は早く帰れたからつ・・・ ... [続きを読む]
  • 2008/09/11 14:20つながりゆくもの  20
  • 何だってこう無駄な会議が多いんだろう。知美は後片付けをしながら溜息をついた。半日かけて行っていたわりにたいした会議ではなかった。会議のための会議、そんなかんじ。窓の外に目を向けた。東向きの窓は午後を過ぎれば一段と暗くなる。四角く囲まれた長テーブルの上には湯飲み茶碗が無造作に置かれていた。そもそも部内会議になぜお茶が必要なのか。営業部から企画開発管理部に配属になっ・・・ ... [続きを読む]
  • 2008/09/05 14:31つながりゆくもの  19
  • 「ごめん、今日は朝一で仕上げなくちゃいけない仕事があるから先行くね!」慌しく知美は、朝食もそこそこに家を飛び出した。扉が閉まる音とほぼ同時に、タンタンタンタン・・と勢いよく階段を降りる音が聴こえてきた。どうやらエレベーターを待つ時間も惜しいらしい。やれやれ。あんなに急いで事故になど合わなければいいけど。あ、それより知美、朝のチューもしないで出て行った。昨夜の仕返しのつもりだ・・・ ... [続きを読む]
  • 2008/09/01 14:26つながりゆくもの  18
  • 限りなく朱色に近い茶色のレンガは乾いた輝きを放ち、面長のステンドガラスは反射した光にかすかな色を含ませた。青々と茂る敷地を緑のフェンスが取り囲み、さらりとしたそよ風が音もなくなびいて葉を揺らす。絵の具を散りばめたような彩り豊かな花には、優しい陽射しが降り注いでいる。どこまでも続く真っ青な空と、聳え立つ教会とのコントラストが見事だった。重厚な扉がぎぃーーーっと八の字に開き、眩・・・ ... [続きを読む]
  • 2008/08/28 14:39つながりゆくもの  17
  • 不穏な空気の中でわずかな時間が過ぎた。カーテン越しの外はまだ明るかったが、とてもその日は知美と一緒に過ごす気になれず、仏頂面で淡々と服を身につけ、知美が呼びかける声にも答えず無言のまま部屋を出た。大人気ないと自覚していながら、深く沈んだ感情をどうすることもできない。想いは永遠だと信じていた。愛し愛され続けることに、何の疑いも不安も持たなかった。その自信が初めて揺らいだ。・・・ ... [続きを読む]
  • 2008/08/24 16:05つながりゆくもの  16
  • 「え? 籍だけ?」「・・うん」知美はテーブルに両手をついて腰を持ち上げた。空いたカップを流しに運ぶ背中を見やり、昭博は追いかけ訊いた。「籍だけって、つまり式を挙げないってこと?」帰国して以来、週末はたいてい知美の部屋で過ごしていた。一人暮らしを始めてまだ一年にもならない知美の部屋は、彼女の性格がそのまま表れているように、さっぱりすっきりまとめられていた。初め・・・ ... [続きを読む]
  • 2008/08/12 15:37つながりゆくもの  15
  • 「おかみさーん、つくねとネギマと焼き鳥と、あと豪華な刺し盛りね」「豪華な?」「財布のことなら気にするな。帰国祝いにおれが奢ってやる」「お、ラッキー♪」運ばれたジョッキを軽くぶつけた後、ゴクゴクと喉を鳴らせた。帰国後初めて、幼馴染で親友の彰と行きつけの店『手毬』で会っていた。30代も半ばになると責任ある仕事も増え、なかなかゆっくり会う時間を作れない。一年ぶりに会う・・・ ... [続きを読む]
  • 2008/08/07 14:50つながりゆくもの  14
  • <インドネシアに遊びに来ないか?>一度も日本へ帰国せず、遊びに来いとも言わなかった昭博が、初めて手紙に書いてくれた。最後の最後まで甘い言葉はどこにも無かったけれど、手紙の結びにはプロポーズと思しき言葉が添えられていた。7年ぶりに会う昭博は、どこも変わっていなかった。なのに時々違う人が目の前にいるような気もした。それは昭博が変わったのではなくて、私の昭博を見る目が変わった・・・ ... [続きを読む]
  • 2008/08/03 15:31つながりゆくもの  13
  • 4ヶ月前インドネシアへ昭博を訪ねたのを境に、私は変わってしまった。いつのまに私は、これほど昭博を愛してしまっていたのだろう。同僚でいた頃、何故それに気がつかなかったのだろう。思い返せば、昭博はたくさんのシグナルを私に送り続けていた。心のどこかで惹かれてしまうのを怖れていたのかもしれない。昭博の前で私は、いつもありのままの自分でいられた。居心地が良すぎて、揺れていたの・・・ ... [続きを読む]
  • 2008/08/01 13:55つながりゆくもの  12
  • 「遅いよ!」知美は唇を尖らせて言った。北門を出て少し歩いた奥まった場所にこじんまりとした定食屋さんがあり、週の半分は知美とお昼を共にしていた。別にコソコソする必要もないのだが、社の人がいない方がやっぱり落ち着くので、自然この店に足繁く通うことになった。昭博は鐘が鳴る直前に席を立ったのだが、同時に電話が鳴り、その対応に追われて10分遅れて到着したのだった。「ごめんごめん・・・・ ... [続きを読む]
  • 2008/07/28 14:18つながりゆくもの  11
  • ほんのり懐かしい匂いのする敷地内でしばし歩を止め、周りを見渡した。通用門をくぐってすぐ視界に広がったのどかな景観が、昭博の目に眩しく映った。歪な形の池、小さな森の中にある祠、明治を思わせるレンガ造りの建物、何も変わっていない。少なくとも外観は。昭博はインドネシアから帰国してすぐ、体を休める間も無く本社に出向かなくてはならなかった。正式な辞令が出たのは二ヶ月前。念願叶・・・ ... [続きを読む]
  • 2008/07/24 14:29つながりゆくもの  10
  • 目まぐるしい忙しさの中、ひっきりなしに山積みされる仕事を順次こなしていた。ふと壁の時計に目を向けると、あと10分少々で昼の休憩に差し掛かるところだった。今日は知美と一緒に昼飯を食べる約束をしていた。昭博は机に広がる書類の山を見て、あと10分でできる仕事はどれかと頭を巡らせた。だが10分でキリよく終える仕事など皆無で、あきらめて書類をまとめるだけに留めた。今日もまた残業か・・・ ... [続きを読む]
  • 2008/07/19 16:09つながりゆくもの  9
  • 部屋に戻ってネネンからの贈り物をもう一度手にとって見ていたら、静かな部屋でメールの着信音が響いた。<もうそろそろ出る頃?>知美からだった。三ヶ月前に知美が帰国して以来、約束通り毎日メールを送った。遠く海を隔てた知美がとても近くに感じられて、出会った頃の新鮮さを味わった。あたかも業務連絡のようなやり取りの中に、これまでの手紙とは少し色合いの違ったものが混じっていた。決・・・ ... [続きを読む]
  • 2008/07/14 16:30つながりゆくもの  8
  • やがてシモンは、もうひとりにしても大丈夫だと思ったのだろう、「テーブルにママの料理置いてある」と言って立ち上がった。昭博はシモンの背中に追いかけ言った。「・・ありがとう、シモン」その時になって初めて気がついた。部屋の片隅にネネンがいたことを。「ネネン・・ きみもいたの」「うん・・アキが心配で・・」「・・ありがとう、もう大丈夫だから」いつもの笑みを浮かべた。・・・ ... [続きを読む]
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  • 料理
  • 2008/07/10 14:51つながりゆくもの  7
  • 滑走路をゆっくり走る飛行機の後姿がひどく物悲しく見えて、長く押し止めていた感情が不覚にも飛び出してしまいそうだった。ほんの数十分前の知美の肩の感触が、まだ腕に残っていた。始終、無言だった。言いたいことがあるようで無いようで、だけど伝えたいことはこの10日間ですべて言い尽くした。知美はどのあたりの席なのだろう・・、飛行機の横顔を見ながら、見えるはずの無い機窓に忙しなく視線を走・・・ ... [続きを読む]
  • 2008/07/07 14:19つながりゆくもの  6
  • あっという間の9日間だった。長い休暇をもらったものの、三日もするとさすがに気になって社に電話を入れるも、「こっちは問題ない!好きなだけ二人でイチャついてなさい」と冷やかされた。皆の好意に甘え、心置きなく休暇を楽しんだ。新婚夫婦の真似事のような朝から始まって、あちこちに知美を連れまわして片時も離さず、これまでできなかった多くのささやかな夢を、一度に叶えた。夜は夜で底の無い沼に・・・ ... [続きを読む]
  • 2008/07/01 15:53つながりゆくもの  5
  • あの日は前日から興奮冷めやらず、挙句、寝過ごして約束の時間に遅れて空港に辿りついた。到着ロビーで知美の背中を見つけた時、冷たい氷水を浴びたように心臓が凝縮した。人ごみを掻き分けて近づき、言葉を発するよりも先に、腕が知美を抱きしめ唇を塞いでいた。周りのざわめきが戻ってきた時、こんな大胆なことができる自分に驚いた。愛は人を盲目にするというのは本当だった。詩人にはしなかったけ・・・ ... [続きを読む]
  • 2008/06/27 14:20つながりゆくもの  4
  • 背中にタメイの、焼けるほどの視線を受け止めながら、振り返らずに狭い道を横切った。扉を引くと、背後で人の足音が聴こえた。振り向くとシモンの妹ネネンが、すぐ近くまで走り寄ってきていた。刹那、ドキンと心臓が脈打った。「ネネンは、橋本さんのことが好きなのね」三ヶ月前、知美はそう言った。まさかと笑い飛ばした。ひとまわりも歳が離れていたので、昭博にとってネネンは妹のような存・・・ ... [続きを読む]
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  • 心臓
  • 2008/06/23 16:30つながりゆくもの  3
  • 夜の帳が降りて薄い闇が辺りを囲い、霞んだ空が月を隠していた。明日の天気はあまり良くないかもしれないな、そんなことを考えながら空を仰いでいると、友人のシモンが仕事を終えたその足でやってきた。「わざわざ迎えに?」昭博が微笑むと、シモンは屈託の無い笑顔を浮かべて「迷子になったらいけない」と茶化し、もう出られるか?と続けて訊いた。今夜はシモンの家で夕食をよばれることになっていた。・・・ ... [続きを読む]
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  • 夕食
  • 2008/06/19 14:06つながりゆくもの  2
  • 日本にいる恋人(だと自分では思っている)の知美のことは、どんな時も頭の中心にあった。初恋の人であり、そうと知らずに一目惚れした相手であり、奇跡の再々会で三度目の恋をした相手でもある知美とは、遠く離れていても何故か細い糸で繋がっているような、赤い糸というものがもし本当に存在するのなら、まさに自分と知美を結ぶ糸がそれであろうと信じていた。知美には三ヶ月に一度の割合で手紙を書いた。そ・・・ ... [続きを読む]
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  • 初恋
  • 2008/06/17 13:44ご挨拶
  • いろいろ考えました末、ランキングから撤退することにいたしました。これまでいつもボタンを押してくださった方に、心から感謝の気持ちでいっぱいです。どれだけ励まされてきたか知れません。差し支えなければ、非公開でけっこうですのでコメントをいただけませんか?ブログをお持ちなら、そちらへお邪魔して直接お礼を申し上げたいのです。多数の目に触れるチャンスは減ってしまいますが、毎日せっせ・・・ ... [続きを読む]
  • 2008/06/15 15:46つながりゆくもの  1
  • 最後の荷物を積み終えると、疲労とも安堵ともつかない溜息が小さくこぼれ出た。ついにこの日が・・。砂埃を上げて走り去るトラックの荷台を、見えなくなるまで見送った。ふと空を見上げると太陽はすでに傾きかけており、羊雲をうっすらと茜色に染めていた。部屋に戻ってソファに深く腰を沈め、あらためて部屋をぐるりと見廻した。藤テーブル、オリエンタルな柄のカーテン、木彫りの壁時計、飾り棚には・・・ ... [続きを読む]
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