かゑるこ さん

かゑるこさん: 持つべきものは、箸と茶碗
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プロフィール

ハンドル名かゑるこ さん
ブログタイトル持つべきものは、箸と茶碗
サイト紹介文3分ほどで読める物語を掲載。暇潰しに、どうぞ。
参加カテゴリー
更新頻度情報提供32回 / 369日(平均0.6回/週) - 参加 2007/08/01 21:45

かゑるこ さんのブログ記事

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  • 2008/07/24 01:05カラスと木瓜の花 (8)
  •  引越しの日がやってきた。 新居に連れて行く家具だけを、引越屋の小型車に積み込んでもらったばかりだ。父と妹のお婿さんが手伝ってくれると言ったけれど遠慮した。平日の引越し、少ない荷物。何度も同じように単身引越プランを利用してきたのだから、その辺は慣れている。 妹夫婦に明け渡す実家三階の部屋はというと、さっぱり整然となった。もともと少ない私物をさらに分別して、いらないものは置いていく。それを廊下の隅に [続きを読む]
  • 2008/07/21 01:10カラスと木瓜の花 (7)
  •  見とれていた――私がよく出くわす危険なかおりを漂わす男に。 ふと、グレーの瞳が私を通り越すのに気づいた。私の背後から足音が聞こえ、それがぴたっと止まった。振り向くと、視界の端に色白の若い女性が入ってきた。「あっ……お邪魔、でした?」 女性が私と男を見据え、ハスキーな声で遠慮がちに言い、肩をすくめた。「いや」と、男が冷ややかに答えた。咄嗟に私も何か言わなくてはと、「来週からお世話になる五反田です」 [続きを読む]
  • 2008/07/18 15:55カラスと木瓜の花 (6)
  •  妹の結婚宣言から二ヵ月が過ぎた。 身重ということもあり、慌ただしく彼女たちの結婚式の準備が進むなか、私も祖父の町へ移り住む準備を整えていた。 今、私は門前仲町へ向かう都バスの中にいる。これから祖父のところへ挨拶に行く。梅雨真っ只中の筈なのに、このところ晴天続きで、外はもやっとする暑さだ。私の苦手な夏がそこまで来ている。 あやふやな記憶をたどっていた。亀戸の実家から祖父の家までは、果てしなく遠いと [続きを読む]
  • 2008/07/16 15:00カラスと木瓜の花 (5)
  •  次はどの町で暮らそうかと頭の中がいっぱいになっていた。 妹は私の反応に戸惑っているようだった。透かさず母がくちを挿んできた。「実はね、仲町のね、部屋が空いてるらしいの。良かったらどうかって、お祖父ちゃんが。家賃は要らないって」 それを聴いて、私は箸を置いた。仲町(門前仲町)の部屋とは、祖父が管理する、赤の他人が共同で生活している貸家のことだ。その中の一部屋が空いていようが、無賃だろうが、それは有難 [続きを読む]
  • 2008/07/13 23:55カラスと木瓜の花 (4)
  •  あっという間に一週間が過ぎていた。 世間は来週から始まる大型連休を前に、多少浮かれているようにも感じる。私は仕事柄、連休とは無縁だ。嵐に備え、今週は準備に追われている。残業こそないものの、すっかり疲れ果て帰宅すると、表面的には独り暮らしをしている妹が久しぶりに実家に帰ってきていた。何かあると予感はした。 父と母、そして妹も夕食はまだのようで、私の帰りを待ちわびていたという感じだ。妹は私の顔を見る [続きを読む]
  • 2008/07/06 22:22カラスと木瓜の花 (3)
  •  どちらかと言えば、ほっとしていた。 見合いを終え、家にたどり着いた私は、無造作に振袖を脱ぎ捨てた。裸に近い姿のままベッドに倒れ込み、これまで自分の抱えていた重圧は何だったのだろうと考えた。それは、結婚はもとより、五反田という名前を継承しなければいけないという立場を指す。今どき、そんな……と思わず唇を歪めてしまいたくなる問題だ。 私には九つ下の妹がいる。私か妹、どちらかが婿養子をとる。それは結局、 [続きを読む]
  • 2008/07/01 17:00カラスと木瓜の花 (2)
  •  そもそも、すべての発端は、あの見合いだった。 二年ほど前、世田谷に住む叔母さんの強烈な勧めで、お見合いというものを経験した。三十過ぎて振袖なんか着せられ、言われるがままに出向いた。喜んで行ったつもりはない。 相手は結婚歴のない四十六歳、某有名大卒の官僚だと事前に聴かされていた。多忙ゆえに未婚という、お決まりの解説つきだった。私のことも型にはまった経歴に、適当な言い訳が添えられたのだろう。残りもの [続きを読む]
  • 2008/06/29 22:50カラスと木瓜の花 (1)
  •  モトさんが死んだ。 老衰、それ以外で天に召される理由などない、と思いたい。けれど、あいにく、そうではなかった。しかも原因が自分にある……時間が経つにつれ、少しずつ頭の中で整理ができてきた。 先程、とつぜん降った雨は止んだようだ。火葬場から帰ってきて、まだ五分にも満たない。私は別宅のテラス越しから、モトさんが遺した風情ただよう庭を眺めた。いつのまにか木瓜の花が満開になっている。そのピンクの可憐な花 [続きを読む]
  • 2008/06/29 19:03カラスと木瓜の花
  • 〜karasu to boke no hana〜※完全なるフィクションです。モトさん邸を探さないでくださいね。(1) モトさんが死んだ。(2) そもそも、すべての発端は、あの見合いだった。(3) どちらかと言えば、ほっとしていた。(4) あっという間に一週間が過ぎていた。(5) 次はどの町で暮らそうかと頭の中がいっぱいになっていた。(6) 妹の結婚宣言から二ヵ月が過ぎた。(7) 見とれていた――私がよく出くわす危険なかおりを漂わす男に。(8) 引越し [続きを読む]
  • 2008/05/12 13:30雨のち粋なはからい
  •  今朝は小雨、すっかり春だというのに雨のしずくが氷のように冷たい。バス停までの短い道のり、いつもの交差点での信号待ち。得意じゃない、憂鬱な雨と信号待ち。 バス停に着くと、程なくして私の乗り込むバスがやってきた。乗っていた半分の人がここで降りて行き、私は慌てることもなく空いたばかりの後部座席を確保した。今朝の車内には重く湿った、私の苦手なにおいが立ち込めている。 通勤に使う早朝の路線バス。このバスは... [続きを読む]
  • 2008/04/03 15:167つの切ないキス 目次
  • ※こどもは読まないほうがいいかもしれません。※おとなは期待せずに読んでください。1話完結の短い話ですが、7つの物語の中に6人の男女が登場し、人物が少しずつリンクします。歳月は、1)→7)へと流れている設定です。とりあえず順番に読んでみてください。1)義理キス2)薄情なキス3)乾いたキス4)約束のキス5)行方知れずのキス6)小悪魔のキス7)キスの音色人気ブログランキングへ... [続きを読む]
  • 2008/04/03 15:16義理キス
  • 二月十四日が終わるギリギリのところで、本命の女性からチョコを貰った――僕は学生兼、売れないモデルの肩書をもつ。愛しの女性はモデル事務所のチーフマネージャー。かなり年上で、彼氏の存在も黙認しているけど、本気で憧れている女性。冬の寒さに耐えたものは、綺麗だったり美味しかったりする。そんな感じの人。なんだよそれ? ま、魅力があるヒトだってこと。バレンタインの今日、急遽、僕にとっては稀にみる大きな仕事が舞... [続きを読む]
  • 2008/04/03 15:16薄情なキス
  • その女は、三十路は過ぎたがまだまだ美貌で勝負ができると、傲慢に自負する。親友に電話をかけた女は、いつもの口ぶりで不確かな宣言をしてみせる。「もう飽きちゃった……まえ話した、あの彼と今日こそ別れてくるわ」この言動は儀式のようなものだ。***「ごめん、やっぱり今日は気分がのらないわ」女は身体を仰け反らせ軽く拒み、男の様子を窺う。意に介さず、男が優しく女を抱擁し、首筋から攻めてきた。「……もう準備できて... [続きを読む]
  • 2008/04/03 15:15乾いたキス
  • 今の職に就いて初めて、予定外の休みをとった。職場では不死身の無敵女と称されている私が。昼過ぎに漸く布団から這い出て食事も摂らずに、もう二時間近く机にうなだれた状態で、プレイヤーから繰り返し流れてくる同じ曲に聴き耳を立ている。歌詞はきちんと理解できているくせに頭の中は真っ白な感じがして何もできない。いっそ涙が枯れるまで泣けたら、楽になるのに。幸せな家庭をもつ親友が幼い長男を示して、こっそり愚痴ってい... [続きを読む]
  • 2008/04/03 15:15約束のキス
  • 成田着の便で三週間ぶりの帰国、その足で次の仕事に向かう。時差ぼけのまま向かう先は、同業の巨匠が年に一度ひらく写真展。そこで行われるトークショーに駆り出された。人知れず、まだ傷心のままの今の俺は、仕事に没頭することで気を紛らわせている。偶然――と思っていたのは俺だけだった。二兎を追い二兎とも失う……よくある話だが、俺もまたその類いで失敗した。一緒に歳を重ねようと決めていた女と、ただソレだけの関係だっ... [続きを読む]
  • 2008/04/03 15:15行方知れずのキス
  • 僕の心にヒビが入った日、しとしとと雨が降っていた。平日の閑散とした昼下がりの喫茶店で、付き合い始めて間もない彼女のくだらない話に、とりあえず耳を傾けていた。彼女の話は普段に増して、つまらない。少し離れた窓際の席で、鳴り続ける携帯の画面を困り顔で見つめる女性に目がとまった。寂しげで、それでいて強がりな、僕がひどく恋した女性を連想させた。そっちに気をとられ、僕の視線はすっかり女性のほうに向いていた。そ... [続きを読む]
  • 2008/04/03 15:15小悪魔のキス
  • たぶん彼は、あたしと2人で食事をして、もう1軒飲みに行ったところまでは、しっかり覚えてる筈。その後の事はまだ判んない。目が覚めてから驚くのかな? あたふたするのかな?あたしはホテルの1室で2日酔いもなく爽やかな朝を迎えた。彼は、まだすやすやと寝息を立てている。年上で普段は疲れた中年の姿をまとった彼だけど、可愛い寝顔。デジタルの時計が、5:17を表示している。まだ物音ひとつしない静かな朝。頭の中で整理す [続きを読む]
  • 2008/04/03 15:15キスの音色
  • 青いんだ――いつかのあいつの台詞が私の胸の奥から聞こえた。低くてやわらかい声。手前の薄い雲が急ぎあしで流れて行く。その奥に真っ白な厚い雲が広がっていて、更にその奥に白くて異様な太陽が存在を照らし出している。それを私は視野に入れながら、ベランダで洗濯物を取り込む。白く染まる空から旅客機の轟音が響く、でも景色は変わらない。ここの空では轟音なんて珍しいことじゃないのに……今日は、やけに耳に障る。青いんだ... [続きを読む]
  • 2007/09/01 13:51もくじ
  • 【カラスと木瓜の花】〈短編〉 *もくじ*【7つの切ないキス】1.義理キス 2.薄情なキス 3.乾いたキス 4.約束のキス5.行方知れずのキス 6.小悪魔のキス 7.キスの音色【今宵の物語】〈掌編〉 最新順  雨のち粋なはからい パパの、かお ラベンダー(3) ラベンダー(2) ラベンダー(1)名前も知らない君へ(3) 名前も知らない君へ(2) 名前も知らない君へ(1)順番 告白日和 花火 夢の3億円 父 今宵は・・・ 快適な老後 [続きを読む]
  • 2007/08/08 01:51「パパの、かお」
  • こんな大事な日に寝坊だなんて……とりあえず身なりを整えた俺は、慌てて家を出た。今日は、春から幼稚園に通い始めた愛娘の日曜参観。それを分かっていながら、昨夜は同期の三浦の「面白い話があるから」という誘い文句にうっかりのって、呑みに出てしまった。独身者とは立場が違うと妻に叱られた、酔っ払って帰宅した俺と寝坊した俺。勿論、娘のことは何よりも大切だ。コンタクト代わりに目の中に入れても痛くない、つもりだ。少... [続きを読む]
  • 2007/08/06 00:53ラベンダー(3)
  •  会社に戻ると、白石さんの机上のペン立てに一束のラベンダーが挿してあることに気がついた。もしかしたら前からあったのかもしれないそれを見て、俺は思った。白石さんにも女性らしい一面があるのだと。そして、その紫色の花の束に不思議な感覚を覚えた。中性的な印象の色と言い、凛と澄ました姿と言い、どことなく白石さんと重なって見える。「白石さん、ラベンダー好きなんですか?」 俺の何げない言葉に白石さんは少し眉間に... [続きを読む]
  • 2007/08/05 18:15ラベンダー(2)
  •  取引先をまわり正午を少し過ぎた頃、白石さんに問われた。「三浦くんはコンビニのお弁当って平気な人?」 まぁ、と俺は返事をした。白石さんは食堂での昼食より、晴れた日には弁当を買い、のんびり外で食べるのが好きらしかった。 コンビニでの白石さんの弁当選びは潔かった。それよりもこれから仕事と女上司に振り回され、コンビニ弁当でとりあえず腹を満たす毎日なのかと想像すると先が思いやられた。咄嗟に俺の中の悪魔が声... [続きを読む]
  • 2007/08/04 02:55ラベンダー(1)
  •  昨夜は気取ろうとしたばかりに大恥を掻いた。俺は行きつけのバーで、勘違い野郎的なナンパを試み失敗したあげく、その相手の女性に「三浦くん、お久しぶり」なんて思いもよらない言葉をかけられ、唖然とした。その女性があのラベンダーだとも全く気づいていなかった。俺の知っているラベンダーとは随分と違う印象だったからかもしれない。しかも俺は、ラベンダーの旦那さんに軽いケチまでつけた。正直、あの瞬間、穴があったら入... [続きを読む]
  • 2007/07/31 00:32名前も知らない君へ(3)
  • 「ここで歌っていた青年を覚えていますか?」 マスターが静かに口を開いた。麻子が小さく頭を縦に動かすと、マスターは笑顔で何度か頷き、そのままカウンターへ戻っていった。ウィンナーコーヒーが甘くほのかに薫る。麻子は戸惑いを隠せないまま、楽譜の古くなって破れかけた折り目を押さえ、一番下に走り書きされた文字を見つめた。『題名と最後に付け加えた歌詞を名前も知らない君に捧げます。そして、ありがとう』そう、記して... [続きを読む]
  • 2007/07/30 00:18名前も知らない君へ(2)
  •  早速、右手でケーキの皿を、左手でコーヒーを手前に引き、真上からじっくり覗き込んだ。脳を刺激するいい薫りだ。フォークを手に取り、生クリームのかかった部分を大きくカットしてケーキを頬ばる。やわらかい食感。控えめな甘さが丁度いい。ホッとして心の中であの歌を演奏しながら、コーヒーを啜った。そして、再び窓の外を眺めた。もうすぐ陽が落ちる。ビルの隙間から覗く狭い空にうっすらと白い月が浮かんでいる。眼下では葉... [続きを読む]
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