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- 2008/04/21 11:35女郎蜘蛛(24)〜大江戸艶妖伝
- 瞬く間に朦朧とし始めた十蔵は、左手以外の手足を絡め取られてその場に引き倒された。 ずるずると十蔵の身体が、女の方へ、川の方へと引きこまれていく。 気が遠くなりながらも、引きずりこまれまいと、十蔵は左手に持ち替えた脇差で縄を切ろうとしたが切れない。見ていた女があざ笑った。「その縄が、人の作った刃物{なまくら}なんぞで切れるものか」 女は手にしていた縄をさらに引いた。 十蔵の首に幾重にも巻き付いた縄... [続きを読む]
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- 2008/04/20 11:33女郎蜘蛛(23)〜大江戸艶妖伝
- それまで気付かなかったが、男の前方、柳原稲荷の傍に女のような人影が見えている。不意に男は担っていた竹竿を川の中に投げ込み、一本を小脇に抱えて、するすると女の方に近づいていく。「いかん、槍突きだ」 十蔵は走った。 「さなえ」 と槍男が叫んだ。女は一瞬立ち止まり振り向こうとしている。 「待て」 十蔵の怒号にひるむことなく槍男は、女を突いた。ところが、女は器用に体をひねって、易々とこれを交わし... [続きを読む]
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- 2008/04/19 11:32女郎蜘蛛(22)〜大江戸艶妖伝
- ひとりふたりと人が去り、誰もいなくなった和泉橋の袂で、十蔵はしばらく考え込んでいた。 あわよくば甚五郎に会えはせぬか。とも思ったからだが、その当ては外れている。 水死人を川から引き上げたのは甚五郎で、おそらく事の顛末を知っているに違いなかった。少なくとも、酔っぱらいが足を踏み外して溺れ死んだのでないことだけは確かだった。『手前共よりも物騒な輩が御府内に入り込んでおります。どうか、お気をつけて下さ [続きを読む]
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- 2008/04/18 17:31女郎蜘蛛(21)〜大江戸艶妖伝
- 十蔵が着いたときには、既に引き上げられた水死体の回りを遠巻きに人垣ができていた。 水死体は、年の頃は三十過ぎ、猟師か樵のような風体をしている。懐には、大小三両ほどが入っていて、手足首には縄で縛ったような擦り傷があった。「今出来の土左衛門のようだが、どこにも傷らしい傷も無し。これだけ酒の匂いがしてるんじゃあ、自業自得ってもんでしょうね」 顔役の九平という者の話を聞きながら、それとなく人垣の中に甚... [続きを読む]
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- 2008/04/17 11:30女郎蜘蛛(20)〜大江戸艶妖伝
- 結局四つ時分には、銚子の五本も空けた銕蔵の景気がますます上がっていた。「その、なんだ。もうちぃっとばかし色気と言うのがだな、出たらだ。オレのところの読売に載せてやるよ」「ほんとうですか」「おうさ。ま、いいから、注ぎな」 諦めて長いため息をついた十蔵を、いつの間に来たのか縁にいた静が手招きをした。見れば伊作も縁下に来ている。「十蔵様、先ほどお屋敷内に、このようなものが投げ込まれましたので」 差し出 [続きを読む]
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- 2008/04/15 13:29当選しちまった……「アルファポリス旅行大賞」
- 「アルファポリス旅行記大賞」が発表になった。 大賞作品は、予想通りというところ。 さて、問題は、 エントリー作品に投票すると、抽選で「1万円」が当たる……こと。 当たってしまった……^^; http://www.alphapolis.co.jp/citi_cont_prize/prize_kekka2008_4.php 「三章企画」です……。 これが、「ホラー小説大賞」に向けて、吉となるか、凶となるか……。 微妙だ。--> ということで、 あたるかもしれないので [続きを読む]
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- 2008/04/15 10:35女郎蜘蛛(19)〜大江戸艶妖伝
- 「溺死の一件はどう思います?」 事情を話した十蔵に、「まるで女郎蜘蛛だな。水の中にいる蜘蛛が、水辺にいる男に糸を巻き付けてがんじがらめにして、水の中に引きずり込む。血でも吸われた跡はなかったかい。あ、十の字、そんな顔するない、冗談だ。まず、連中の言うとおりさ。考えようによっちゃ、幸せな死に様よな。まるで、旧室の親父のようだ。酒飲み・俳諧師の誉れさ。オレなんざ、まだ欲がありすぎら。ち、もう空か。あ... [続きを読む]
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- 2008/04/14 22:362位……アルファポリス「ホラー小説大賞」(途中経過)
- アルファポリスの「ホラー小説大賞」 開催から2週間。 おかげさまで、 現在得票数は、「2位」 順調に推移しています……。 アルファポリス「ホラー大賞」投票ページ http://www.alphapolis.co.jp/citi_cont_prize_kaisai.php [続きを読む]
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- 2008/04/14 10:34女郎蜘蛛(18)〜大江戸艶妖伝
- 夕刻、飯時になって銕蔵が訪ねてきた。常々、「オレぁ、酒の方がいいんで夕飯時は避ける。出された飯を食うのがめんどくせえ」 そう公言する男だ。銕蔵の膳を運んできたみとが、からかった。その手はすでに膳の銚子にかかっている。「おや、銕蔵様。お珍しい。今夜はお体のお加減でも」「おうさ、みと坊。恋煩いと言うやつだな」 銚子をつまみ上げていたみとの手が止まり、そのまま膳へ下りた。「みとさん。あとで声をかけま... [続きを読む]
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- 2008/04/13 10:32女郎蜘蛛(17)〜大江戸艶妖伝
- 「この傷はなんでしょうか」 十蔵が尋ねると、嘉蔵が死体の袖をまくった。手首にも同じような傷があった。「このあたりの悪所では、こう言う遊びをするところがあるんでさぁ」「こう言う遊びとは?」「さて、どう説明したものだか。体をあちこち縛って、ことに及ぶんだそうで……。胡乱だが不審の筋合いではない。そう言うことです、旦那。まったく、そのまま見逃して流しちまえばいいものを、余計な手間取らせやがって。ねえ、旦 [続きを読む]
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- 2008/04/12 10:31女郎蜘蛛(16)〜大江戸艶妖伝
- 翌早朝、山本左吉が使いの者を寄越してきた。 山本の屋敷にほど近い市ヶ谷宗参寺門前で、武家の女が刺されたと言うのである。 夜五つ過ぎ、御先手組川原主膳の妻が宗参寺門前を歩いていたところ、暗がりから飛び出してきた男が後ろからいきなり尻を刺した。幸い軽傷だったし、いかに女とは言え、武家の者が襲われて抵抗もせず怪我をしたのでは、外聞が悪い。今のところ表沙汰にはしない。 そのような内容だった。 左吉はさ... [続きを読む]
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- 2008/04/11 11:30女郎蜘蛛(15) 〜大江戸艶妖伝
- 七つ前に山本家を辞した十蔵が、尾州家中屋敷前の通りに入ると、薄暗い早朝にも関わらず人だかりがし騒然としている。 尾州家中屋敷の北、月桂寺の西には”帯取の池”という名所があるが、人だかりはその池の周囲に集まっていた。 十蔵が人混みを押し分けて前に進むと、池の縁に男の死体が寝かせてあった。 居合わせた小者に聞けば、どうやら水死のようだと言う。「飲み過ぎて足を踏み外しそのまま溺れたんでしょう。池に浮か [続きを読む]
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- 2008/04/10 10:02女郎蜘蛛(14)〜大江戸艶妖伝
- 御先手組の山本左吉は、部類の酒好きである。 人に勧められて庭に藤の花を植え、藤の世話には酒が良いと聞いて、いざやろうとして惜しくなり安酒に変えた。その酒もやろうとして惜しくなり、ついには酒粕でごまかした。 酒粕でも酒の匂いはする。量を過ごせば酔いもする。酒でなくても、藤には効くだろう。 そんな男ではあるが、決してけちではない。 振舞酒は滅法好きなのである。 『人が飲めるものを、藤なんぞにはもった [続きを読む]
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- 2008/04/09 10:00女郎蜘蛛(13)〜大江戸艶妖伝
- 確かにこの辺り、四谷南寺町辺りは名代の夜鷹の巣である。今ひとつ理解できない十蔵の心持ちを察したか、「髷切りのせいだ、十の字。あれが、ずいぶんな数の夜鷹の髷を落としやがった。夜鷹と言えども、髷なしじゃあ仕事もしづれえ。髷を落とされる心配もしなくちゃなんねえ。ところが町方は、夜鷹なんぞ、捕まえたって守っちゃくれねえしな」 十蔵にことばはない。「頭巾を被った比丘尼姿なら髷には関係ない。それで一人が始... [続きを読む]
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- 2008/04/08 16:01「ホラー大賞」途中経過
- アルファポリスの「ホラー大賞」にエントリーしてから一週間。 ご協力下さった方、ありがとうございます。 おかげさまで、順調に推移しているようです。 4月8日16:00現在で 1358P 97作品中5位です。 1位の得票が、9016Pなので、 読者賞は諦めて、特別賞狙いです(笑 短編集なので、全体のオチをどう付けるか考えながら、 新たな短編を書き起こしているのですが、 どうやら、うまくまとめ上げられる序章・終章のプ... [続きを読む]
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- 2008/04/08 10:00女郎蜘蛛(12)〜大江戸艶妖伝
- 銕蔵の腰には真新しい、おそらく竹光を入れた鞘が差してある。「銕さん、まだ物騒なことばかり続きそうですが、竹光なんぞで……」「物騒だから八丁堀がいるんだろう。それに今は一緒だ。ま、重い真剣なんぞ振り回すより、軽い竹光で突く方が速くて確かというもんさ。存外深く入るもんだぜ。ものの本に因れば、井伊藩の余呉源七郎という侍なんざ、家来に竹槍の束を担がせて相手を突き差して抜かずにそのまま。また別な槍で突いち [続きを読む]
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- 2008/04/07 10:00女郎蜘蛛(11)〜大江戸艶妖伝
- 「みとの馬鹿女、笑い詰めてその場に倒れ込んじまった。皿なんぞ巻き添えにするから、ご母堂にお小言くっちまった……。あーあ、なっちゃあねえな」 なっちゃあねえな、の一言が出ると銕蔵の喋りはしばし途切れるのが常だ。十蔵はゆっくりと切り出した。「それで銕さん、用件は?」 銕蔵は、得たりと笑った。「それよ。今日は十の字に朔日の柴を持ってきたのよ。今日のはオレの口から聞くより、見たが早かろう。今夜出られるか? [続きを読む]
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- 2008/04/06 09:56女郎蜘蛛(10)〜大江戸艶妖伝
- 網剪の甚五郎との邂逅からほどなく、甚五郎のことば通り「髷切り」は止んだが、十蔵はと言えば、奉行に手出せねばならぬ「耳書き」が進まず、苦慮していたのである。 聞き慣れた鈴木銕蔵の甲高い声が、勝手口で案内を乞うのが聞こえると、すぐに台所は騒然となった。 まだ十五になったばかりの下女のみとの笑い声が響きだし、たしなめる静の笑いを押し殺した声と、下男伊作の嗄れたぼそぼそ声とが渦をなしている。 やがて、... [続きを読む]
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- 2008/04/05 12:13【メルマガ】今日で200話
- ぼつぼつと毎週発行してきたメルマガ【大江戸不思議草紙】が、 やっと今週で200話目。 長かったような短かったような……・。 [続きを読む]
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- 2008/04/05 09:35女郎蜘蛛(9)
- 「受け売りです。絵師河田亮斎先生のお内儀から、ほんの今し方聞いたばかりで……」 「小日向水道端のゆき様でございますか」「ええ。存知おりか?」 十蔵の問いに答えず、網剪は口の中で呟いていた。『出会うていくのがこの世の縁……』「名を知れば、それだけ縁は近くなりましょう。縁が近くなれば、重荷もまた軽くなっていくものでしょう」 続けた十蔵のことばに、網剪の頬に一瞬笑みのようなものが浮かんで消えた。 十蔵が... [続きを読む]
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- 2008/04/04 09:34女郎蜘蛛(8)
- 「手前には垣品様に危害を加える気持ちは、これっぽっちもありませんので」「では、何故追跡{つけ}るのです?」 十蔵の問いに男は口ごもった。「はて。それがなんとも、わかりかねますので……」「それで最初の日、私に手を掛けられたにもかかわらず、掛けなかったのですね」「ふむ。そうかもしれませぬな」 と呟いた男の気配が変わった。それに合わせて、十蔵は脇差しを納めた。「よいので?」「はい。もうあなたは手向かいも... [続きを読む]
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- 2008/04/03 19:3310万円は10人で……
- アルファポリスの「ホラー大賞」 投票者には、全部で「10万円」を10人に……。 一桁間違っていた……^^; ちなみに、 「重複はあり」だそうで、運が良ければ、3万円も……。 ただ、 できれば、それだけの強運は、ロト6やtotoBIGに取っておきたい気もする(笑 アルファポリスの投票ページ http://www.alphapolis.co.jp/citi_cont_prize_kaisai.php 「志怪片言」 http://ayakashioyadi.blog96.fc2.com/ [続きを読む]
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- 2008/04/03 09:33女郎蜘蛛(7)
- 『ならば死ぬか。刺し違えれば道連れにはできよう』 振り返った十蔵は、握りしめていた大刀から手を離すと脇差しを抜き放った。剣尖を肩高に構え、見えぬ相手の喉元めがけ、十蔵はすたすたと真っ直ぐに近づいていく。 もはや十蔵に何の迷いもない。 十蔵を追いかけてきた気配が止まり、しばらくの間後ろに下がり続け、やがて、その場に留まった。「あいすみませぬ」 声が聞こえた暗闇から、四十絡みの男の姿が浮かび上がって... [続きを読む]
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- 2008/04/02 16:02ランキング
- 少し前、ブログのジャンルを「本・書評・文学」から「小説」に変えた。 ランキングがいきなり最下位になった……。 ジャンルのランキングが下がるのは、まあ、わからないでもない。 しかし、継続しているはずの総合ランキングまで一挙に最下位……。 文字通り、「一から出直しや……」 それから十日あまり……。 なんとか、右肩上がりのままで推移している。 ... [続きを読む]
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- 2008/04/02 10:31女郎蜘蛛(6)
- 時枝道場を退出した十蔵は、ほどなく何者が追跡{つけ}てくる気配を感じ取った。 相手は気取られているのを承知の上で、この数日十蔵を追跡{つけ}ている。 だが十蔵は、いつもの歩いているのかいないのか、わからない足取りで道を進んでいる。 普段の十蔵なら、神田八名川町の道場を出て左門川岸を下り、浅草御門から馬喰町・大伝馬町と賑やかな通りを抜けていく。 だが、今夜は違った。 十蔵は、浅草御門から川沿いの物寂し [続きを読む]
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