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- 2008/07/25 13:33100年の恋/吸血鬼ハンター美少女彩音
- 32 彩音はバック・パックにジャランというほど楔をもってきていた。 数本左手に握り、右手の楔で吸血鬼の喉元を攻め抜く。 まさに美しい彩音の舞いだ。 まさに、古流鹿沼流の舞だ。 右手に構えた楔で吸血鬼の心臓をねらう。 彩音は朱鞘の脇差しを背中にしのばせていた。 カマキリのように構えて斬りこむ。とても、老婆とはおもえない。「江月照松風吹 永夜清宵何所為」(かうげつてらししようふうふくえいやせいせうなんのししよゐ [続きを読む]
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- 2008/07/25 06:08彩音戦う/吸血鬼ハンター美少女彩音
- 31 ウジ虫がざわざわと波打つっている。 すさまじい悪臭。 吐き気がする。 彩音は吐く。 苦いものがこみあげてきた。 なんども、吐いた。 天井のコウモリがいつしか数をました。 興奮している。 侵入者に気づき。 ときおり羽音をたてる。 このコウモリの大群におそわれたら……。 どう防いだらいいのか。「くるわよ。彩音、あれを準備して」 彩音は構えた。 舞台で学都とむかいあったときのように。 だかこのたびは [続きを読む]
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- 2008/07/24 23:09腐乱/吸血鬼ハンター美少女彩音
- 30 九門ゼミナールから帰りの典子。 カラオケパブからでてきた孝子。 ゲーセンで遊び狂っていた篠子。 首筋におぞましいものがおしつけられた。 唇。 つめたい。 ぐさっと牙がうちこまれた。 三人の娘の断末魔の悲鳴をきいたものはいない。 ズルッずるっとなにかを引き摺る音。 なにか、やわらかなものが舗道を引き摺られている音。 そんな音を聞いたものもいない。 今夜も春の雪になりそうだ。 いやに、冷えこんでい [続きを読む]
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- 2008/07/24 18:24吸われた/吸血鬼ハンター美少女彩音 麻屋与志夫
- 29 孝子は悲鳴をあげた。 お酒を飲み過ぎている。 こんなに、遅くなるつもりではなかった。 久し振りで会った友だちとつい飲みすぎた。 口のなかがねばい。 カラオケパブからの帰りだった。 白い腕がのびてきた。 街灯のなかに男の姿がうかびあがった。 夜が暗く重い。 今夜も春の雪になるかもしれないと思った。「孝子ちゃんはもう雪はみられないの。うふ、うふふふ」 男が不気味に笑った。 口元が赤く爛れているよう [続きを読む]
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- 2008/07/23 19:31闇からの腕/吸血鬼ハンター美少女彩音 麻屋与志夫
- 28 足元にはコウモリのフンがおちている。 床がざらざらするほどたまっている。 乾ききっていないフンはねばつく。 歩くたびにベタっとした感触がひろがる。 飛び立とうとするかのように、羽をひろげた。 パタパタやっている。 いまにも飛びかかってきそうだ。 ギョっとして立ち止まる。「こわかったら、ここで待っているといい。どうする彩音」「ひとりで残るの、イヤ」 背中のバックパックを両手で支える。 [続きを読む]
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- 2008/07/23 06:13抜け穴/吸血鬼ハンター美少女彩音
- 27「婿にきてすぐ病死したのよ。わたしが母のお腹にいる間に亡くなってしまったの。女工さんを吸血鬼の襲撃から守るのに精魂尽き果て……。いまでいう過労死よ」「かわいそう……」「それでも、父は甲源一刀流の一子相伝の秘伝を母に伝授して死んでいったのよ。もともと、女が剣の道に励むことを快く思わなかった時代に、舞いの中にその剣の修行を秘めていた鹿沼流が、さらに剣道の演武を強化して取り入れ、いまの形になったのは、 [続きを読む]
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- 2008/07/22 21:24光る目/吸血鬼ハンター美少女彩音
- 26 明かりの中でなにか動いた。 ゾーっとした。 書架に映った彩音の影だった。(じぶんの影に怯えるようでは、わたしもまだまだ修行がたりないわ) 天井の明かりが点滅をくりかえしている。 ジーっとうなっていた蛍光灯が消えてしまった。 ジーっという音だけが天井でしている。 獣が敵を威嚇するような音。 歯と歯を擦り合わせているような音だ。 妖気が部屋にみちている。 彩音にもわかる。 明りはついているのに、 [続きを読む]
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- 2008/07/21 10:37妖気/吸血鬼ハンター美少女彩音
- 25 澄江の事件があってから百年になるからだろうか。 鹿沼にひっそりと在住していた吸血鬼が活動を開始したのか。 いずれにしても……。 吸血鬼が百年にいちどの活動期に入ったのだろう。 助っ人は頼めない。日光の忍びの助けはない。 麻屋の予感が的中した。 彼らはもう帰還している。 わたしたちの知らないうちに……。 知らない場所で活動を開始していた。 文美。麻屋。彩音。 未公開資料室。 夜間だが図書館はま [続きを読む]
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- 2008/07/20 06:04血/吸血鬼ハンター美少女彩音
- 24 上都賀病院の看護婦長。 慶子の母。 血のしたたる国産のビーフステーキをほおばっている。 娘に話しかける。 高木家のおそい夕食。 食事のとき、そんな話よしてよ。 とは、今夜はいわなかった。 娘のいやがる話題提供が趣味の母。 あら今夜は、どうしたのかしら。 という顔をしたものだ。 母ひとり、娘ひとり。 親子ふたり暮らしだ。「それで?」「さき聞きたい」 慶子がぐっと食卓に体をのりだす。 麻屋の話 [続きを読む]
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- 2008/07/19 10:21帰還/吸血鬼ハンター美少女彩音
- 23 先生が彩音と慶子に話しかけ。 ふたりは、先生の後から教室を横切る。「いよいよだよ、彩音。ヤツラの侵攻がはじまったよ」 黒板の裏の部屋。文美おばあちゃんがいた。 めったに外出しないおばあちゃん。 おおきなソフアにちょこんと、おすわりをしていた。 背筋をピンとのばしている。 足をださず、畳にすわっている姿勢だ。 和服で、だからもちろん足袋をはいている。 カッコイイ。 まだなにがなんだか、彩音にはわ [続きを読む]
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- 2008/07/18 21:44幽霊橋/吸血鬼ハンター美少女彩音 麻屋与志夫
- 22「どうしょう。慶子ちゃん、わたしどうしたらいいの? 学都先生のうしろにもうひとりおなじ型のマボロシみちゃった」「幽霊と闘おうとしてたのね」「あれって吸血鬼だわ」「吸血鬼縛にかかったのよ。吸血鬼はね、処女の血が好きなんだって、ひとにらみされると動けなくなるの。だから恍惚とよろこんで血を吸われているような表情になるのよ。動けなくなるって、ほんとなんだぁ」「コワーイ話しー」「ほんと怖くなってきたね」 [続きを読む]
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- 2008/07/18 09:06鹿沼流の舞/吸血鬼ハンター美少女彩音 麻屋与志夫
- 21彩音に小太刀なんかもたせたくはない。慶子は物騒なことをイメージしている。自分が怖くなった。わたしまでどうかしちゃっている。彩音と慶子だけの秘密だ。彩音は彫刻刀をあまり使わない。彩音は『鬼がおりた』と表現する。興がのるとカッターナイフひとつで版画を制作する。すばやいナイフのうごき。鋭利な線。神業だ。版画板とナイフさえあれば……。またたくまに風景でも静物でも彫り上げてしまう。油絵を描くのも敏速果敢だ [続きを読む]
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- 2008/07/17 15:10舞扇 吸血鬼ハンター美少女彩音 麻屋与志夫
- 20「彩音。彩音。彩音。どうしたの」 慶子は声をかけようとした。 声は、かけなかった。 声をかけられる、雰囲気ではない。「彩音、どうしたの? またなにかヤバイことが起きたの」 心で話しかけた。 5ただじっと彩音を見つめているだけでは、不安でしかたがなかった。舞台で〈板つき〉のままだ。仁王立ちになったまま動かない。幕は上がって、劇は進行している。という仮定での立ちゲイコのはずなのに。彩音は動かない [続きを読む]
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- 2008/07/17 04:52レンフイルド純平 吸血鬼ハンター美少女彩音 麻屋与志夫
- 19 「もういい。でていくの、でていかないの。でていかないのなら、わたしにも、覚悟があるからね」「むだだ」「闘うというの」「しかり」「いくわよ。月にかわって、おしおきよ」「セーラムーンのつもりか」「アニメ見るの?」「まあな」「かわいい。でもゆるさない」 傍らにひかえて、二人の会話に聞き入っていた上野学都に吸血鬼が場所を譲る。 ぶれていた幻影が一つとなる。「純平、おまえにまかせた」 こんどは、純平と... [続きを読む]
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- 2008/07/16 08:17憑依 吸血鬼ハンター美少女彩音 麻屋与志夫
- 18まちがいない。爬虫類の外皮をした影だ。青黒い不気味な肌。学都先生はあの澄江の恋人であった純平らしい。純平の魂が学都に憑依している。なぜかそれがわかってしまう。頭に直接ひびいてくる情報だ。見えないものが、見える。経験していないことでも理解できる。わたし確実に変わりつつある。ご先祖様の能力が芽生えてきたのだ。さらに、純平の背後にだれかいる。吸血鬼だ。いや純平そのものも吸血鬼に見える。彩音は顔から血 [続きを読む]
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- 2008/07/15 08:41change 吸血鬼ハンター美少女彩音 麻屋与志夫
- 17上野学都先生。校門を入ってきたあの着流しの明治の壮士?名前にごまかされてはダメぇ。名前なんか人間につけられた符丁みたいなもの。学都とというひびきから、ガクトを連想した。わたしって古い。やっぱこの先生、CHANGEのキムタクだぁ。総理になる前の、髪もじゃもじゃの先生だ。そして、剣をたずさえていた男? でもある。めまぐるしい変身。こんなことができるのは……。彩音は、学都と目線をかわす。「どうしたの、おふ [続きを読む]
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- 2008/07/14 16:32演劇部 吸血鬼ハンター美少女彩音
- 16また起きた。こういうことって、クセになるのかな。彩音は校庭を悠然と歩いてくる男の息づかいまで感知できる。この世にありえない存在がイメージとなって彩音の意識に立ち上がってくる。「どこいくの、彩音?」 背後から肩をたたかれた。 摩天楼。 空ひっかき女、慶子が彩音を見下ろしている。「あら、わたしどうかしてた」 また白日夢?校庭に、人影はない。 美穂と静も、いない。 さきにいったらしい。「いこう」 ... [続きを読む]
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- 2008/07/13 16:51ゆらぎ 吸血鬼ハンター美少女彩音 麻屋与志夫
- 15彩音はふと窓の外を見た。新築されたばかりの三階から見下ろす。校庭の隅には解体された古材が山積している。キャンパスの雪は日陰ではまだとけていない。鉄製の観音開きの校門に人影が差した。刀を手にした着流し、明治の壮士風の男が入ってくる。校門は殺伐とした事件が全国的に起きているので閉ざされたままだ。閉ざされた校門を男は入ってきた。煙りにでもなって、透けて侵入してきたのかしら。男の壮士風の服装も時代離れ... [続きを読む]
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- 2008/07/13 01:56なぞの転任教師/ 吸血鬼ハンター美少女彩音
- 14下忍のなんにんかは、内閣府の情報局員として世界の各地で任務についている。呼び戻すことは、不可能とのことだった。それも若者はいない。東照宮をふくむ二社一寺と皇族の往還する例弊使街道を守護してきた野州勅忍。「日光の忍びはわしの代で終わるだろう」寂しく玄斎がいった。ひさしぶりできたのだ。泊まっていけ。というのを麻屋は断った。「栃木の机家に倅がいたな。連絡だけはつけておく。あまりあてにはしないでくれ... [続きを読む]
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- 2008/07/12 15:20日光の忍び 吸血鬼ハンター美少女彩音 麻屋与志夫
- 13東照宮の影護衛として、江戸城の御庭番であった祖先が移り住んだ場所だ。なにもかも、古い。そんな民家だ。なにもかも、囲炉裏のススに長年あぶられている。黒ずんでいる。囲炉裏では太いマキが燃え尽きて炭になっている。ここ日光の山には春はまだ遠い。三人はかなり長い時間話しこんでいるようだ。囲炉裏の上の天井には煤竹がつんである。何年も煙を吸いこんで、いい色に仕上がっている。自在鉤を吊るす綱には『弁慶』が括... [続きを読む]
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- 2008/07/12 09:04語り部 吸血鬼ハンター美少女彩音 麻屋与志夫
- 12窓を開ける。庭にコウモリが落ちていた。皐の楔を打ち込まれていた。おばあちゃんだ。コウモリの鳴き声がうるさかった。彩音が怖がるといけないから、楔を打ち込んで退治してくれたのだ。前にもこんなことがあったような気がする。既視感だ。デジャヴだ。いままでもおばあちゃんは、陰ながらわたしを守ってきた。そうなのだ。それにわたしが気づかなかった。夢の中でもおばあちゃんは彩音にいろいろなことを教えてくれる。夢で楔 [続きを読む]
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- 2008/07/11 17:34楔の的 吸血鬼ハンター美少女彩音 麻屋与志夫
- 11彩音の心は母の背にぴったりとはりついている。わたしは母におぶってもらったことがあるのかしら。夢の中でさびしく考えている。前方に、コウモリの姿が現れる。窓にぶち当たってきた。コウモリだ。母にもコウモリは見えている。「闘うんだよ、彩音」母はわたしのことを感じていた。わたしが背中にいることをわかっていた。コウモリの群れに囲まれていた。コウモリに取り囲まれている。母だけではなかった。彩音も……だ。いや... [続きを読む]
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- 2008/07/11 11:04お母さん!! 吸血鬼ハンター美少女彩音 麻屋与志夫
- 10悪意をもったものが、その存在を示したいのだろうね。というのが文美の反応だった。その文美の言葉は、さらに彩音を不安にした。(わたしが、見えていなかったものが、見えるようになったからかしら。険悪な気配を体感できるようになったからだ。なにものかが密やかにわたしたちを見張っている)彩音は寝付かれなかった。「わたしたちが、いままで生きてきた鹿沼ではないみたい」彩音は演劇祭で主演した劇の『黒髪颪の吹く街で』 [続きを読む]
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- 2008/07/10 22:30捕食 吸血鬼ハンター美少女彩音 麻屋与志夫
- 9やさしい。いつもよりやさしくひびく。「そうかい。彩音。その林さんの小説を読んだので、見えないものを意識して見ようという心が培われたのかね。だから舞にも厳しさがでたのだよ」「オバアチャンの声はすごくやさしく聞こえる」「そうかい。そうかい。うれしいことだね。いよいよ彩音に皆伝を授ける日が近いのかもしれないね」そういうと、文美は彩音と並んで仏壇に線香をあげた。リンをリン棒で軽く叩いた。川端家は浄土宗... [続きを読む]
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- 2008/07/10 07:27泣き稽古 吸血鬼ハンター美少女彩音 麻屋与志夫
- 8文美は?たけた艶やかな立ち姿を見せている。年を感じさせない。背筋だってシャンと伸びている。若やいだ姿だ。彩音と似ている。いや、彩音がおばあちゃん似なのだ。白装束だ。木綿の浴衣地だ。まずしいし田舎町でほそぼそとつづけてきた鹿沼流の舞だ。発表会でも……。派手な舞台衣装も、大小の道具もほとんど使わない。ただひたすら舞い続ける。それも演武のような激しい舞だ。日々の練習には冬でも浴衣だ。寒さなど感じない。... [続きを読む]
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