- 2008/05/08 22:369ガッツポーズ 3
- 「向こうもね、こころが病気だから遠慮してるけど、本当はこころのこと抱きたいはずだよ。こころだって、そういう気持ちあるでしょ」サトミにそう迫られると、うなづくしかない。「それは、まあ、ないと言ったら嘘だけどさ。でもヒロキさんはそういう軽いのじゃなくて、もっと大人の感じなんだよ」カオリが聞き返す。「大人の感じって?」「だから、言葉でチャラチャラするんじゃなくて、目で合図してスーて奪 [続きを読む]
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- 2008/04/30 14:549ガッツポーズ 2
- 翌日、夏休みのサトミとカオリが見舞いに来てくれた。「二人とも、いい時に来てくれたよ。もう少し遅いと、クリーンルームに入ってたからガラス越しになるところだよ」サトミが笑った。「私はこころとダブルスのペアなんだから、タイミングはわかってるって」カオリも笑顔で、「こころが元気そうでよかったよ。こころが治るるのは当然だけどね」「ありがと。二人の応援が一番ありがたいよ」私が言うと、 ... [続きを読む]
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- 2008/04/25 10:529ガッツポーズ 1
- 五月の連休直前のピンチを乗り切ったこころは、地固め治療を続けて夏休みの終わる頃、骨髄移植の準備に入った。こころと両親は、診察室に入ると、佐藤先生に向き合った。私も父母も緊張している。いよいよ病気の悪玉に決戦を挑む、そんな感じなのだ。佐藤先生は説明を始めた。「娘さんは、これまで地固め治療を順調にクリアしてきました。いろいろ辛い時もあった筈ですが、娘さんは頑張って成果を上げてきた。こ ... [続きを読む]
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- 2008/04/17 15:528嵐の一夜 10
- 窓の外の空が次第に明るくなって朝になっていた。こころは朦朧とした意識で佐藤先生の声を聞いた。「こころちゃん、よく頑張ったな、もう大丈夫だぞ、サーッだ」こころは微笑んで小さく「サー」と言った。続けて佐藤先生は、面会のガラス越しに見守っていたこころの両親にも報告した。「峠は越えました。娘さんの白血球も増えて闘ってくれてます。もう大丈夫でしょう」両親は口を揃えて「ありがとうござい ... [続きを読む]
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- 2008/04/11 23:178嵐の一夜 9
- 陽が沈むと、また熱が上がり出した。肺の息苦しさと腰や胸の骨の痛みはひどさを増して、こころはナースコールのボタンを押した。「痛いか?」駆けつけた佐藤先生に、こころは無言でうなづくことしかできない。「よし、痛み止めを注射してやるからな。がんばれよ」佐藤先生は点滴のペースを調整して、今までの薬より強い痛み止めを注射した。よくドラマで見かける脈拍と呼吸数のモニターもつなげられた。脈拍 ... [続きを読む]
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- 2008/04/03 11:038嵐の一夜 8
- 翌日になると熱は少しは下がったものの、息苦しさと腰や胸の骨の痛みはさらにひどくなってきた。強い雨が窓ガラスを叩く音も耳障りだ。私はヒロキさんにメールを打つ。《ヒロキさん、弱音をはいてごめんなさいあちこち痛くてつらいですがんぱりたいけど、つらい》短い文だけど、指に力が入らなくて打つのに時間がかかった。ヒロキさんはすぐに返事をくれた。《こころちゃん、大丈夫だよ。弱音をはいてもい ... [続きを読む]
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- 2008/03/31 11:068嵐の一夜 7
- クリーンルームに戻ったこころに、佐藤先生やクリーンルームの看護士さんは深刻な目をして向かった。佐藤先生が言う。「こころちゃんは、外来で細菌やウィルスを拾ってしまった可能性があるんだ。今の免疫の弱い体では、それはとても危険なんだよ」しかし、こころにはピンと来なかった。「白血球は再検査で400を越えるんでしょ、それでも危険なの?」私が聞くと、マスクから眼鏡を見せている佐藤先生が説明する。 ... [続きを読む]
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- 2008/03/26 23:578嵐の一夜 6
- 佐藤先生たちは、最初に売店を覗いたが、こころの姿はなかった。天井のスピーカーからはアナウンスが流れている。《川津辺こころさま、川津辺こころさま。至急、最寄の電話から小児病棟ナースセンターにご連絡ください》連絡が入れば、すぐ報告があるはずだが、携帯は黙り込んでいる。佐藤先生は看護士のリカとアカネに尋ねる。「どこか、こころちゃんが行きそうな場所、心当たりはあるかい?」「心当たりと言わ ... [続きを読む]
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- 2008/03/24 22:068嵐の一夜 5
- 4日後、こころは佐藤先生が帰るよりひと足早く午前中に、望月先生からクリーンルーム卒業の許可をもらった。吐き気はまだつらかったが、クリーンルームから出れるとなれば気分が違う。こころは売店で禁断症状の出ていたアイスクリームを買って食べ、中庭を見渡す廊下に向かった。廊下を見渡して、探す相手は車椅子のウィリー・シドニーさんだが、残念ながらその姿は見当たらない。こころは外来の待合フロアまで遠征して ... [続きを読む]
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- 2008/03/21 23:318嵐の一夜 4
- こころは白血球の数が下がってクリーンルームに入って5日が経っていた。マスクをした佐藤先生がもう一人の若い先生を連れてやってきた。「こころちゃん、僕は関西で学会があるから、3日ほどいないんだ」こころは思わず声を上げた。「先生!」「そうかそうか、そんなに寂しいか、でも仕事だからね」「そうじゃなくて、お土産、忘れないでね」こころのおねだりに佐藤先生、呆れたようだ。「なんだ、お土産 ... [続きを読む]
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- 2008/03/18 22:568嵐の一夜 3
- 病室で点滴されていると、佐藤先生がやってきた。「よお、ご苦労さま。この間のHLA型検査の結果が出たよ」「どうなんですか?」私が聞くと、佐藤先生は握り拳を上げた。「見事、一座違いだよ、親から移植なら心理的な安心感もあるし、よかったな?」「ほんとに、やったあ!早速、お母さんに知らせなきゃ」私は携帯を取り出した。「あ、ちょっと、一座違いだったのはお父さんだよ」「そ、そうか、え ... [続きを読む]
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- 2008/03/14 23:158嵐の一夜 2
- こころは中庭を見渡す廊下のソフアに腰掛けていた。ちょっと探したけど、車椅子の彼、ウィリー・シドニー(?)の姿はない。こころは思い切ってヒロキさんにメールを打っている。《こころです!今日はなんだか曇ってますね。でも、私、決断しました。骨髄移植します。私の病気は薬だけだと治りがあまりよくないので、悪玉が隠れている自分の血を全部壊して、他人から骨髄をもらって入れ替えるんです。ヒロキさ [続きを読む]
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- 2008/03/11 23:388嵐の一夜 1
- 治療が順調に経過していたある晩、お母さんにお父さんも呼んでもらい、親子三人で談話室で話をした。「どうだ、副作用はつらいのか?」お父さんは私の顔を覗き込んだ。「うん、吐き気とかは前より少しね。それでさ、今後の治療についてなんだけど、薬だけじゃ不安だから、骨髄移植、受けてみようかと思うんだけど、いいかな?」そう言うと、お父さんはうなづいた。「ああ、お父さんもお母さんもお前がそう決心し ... [続きを読む]
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- 2008/03/08 14:59ショート アンドロイド
- †††「紗智絵、ちょっと大事な話があるんだ」 名蔵博士は夕食の後片付けに立とうとした娘を椅子に呼び戻した。 名蔵は自分の体調の重大な変調に気付いていた。症状をネットで調べるとどうも悪性腫瘍のようだ。だから、近い将来の万が一に備えて、娘の本当の正体について打ち明けようと考えたのだ。 名蔵はもう一本タバコに火をつけて煙を吸い込んだ。「どうだ、大学は楽しいか?」「うん、勉強の方はあまりサプライズ ... [続きを読む]
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- 2008/03/07 23:307ブルーグレイ 9
- 「あ、こころお姉ちゃん、千羽鶴、もらったんだね」翔子ちゃんは私のベッドに下げてる折鶴の束を見て言った。「これね、クラスの皆と私で完成したんだ。きっと元気になって、後から思い出すんだよ。あの時は大変だったけど、頑張ったなあって」翔子ちゃんはうなづいてから、思い出したように聞いた。「そういえば、退院した時、彼とは会ったの?」私は笑いながら言う。「なんでそんなこと、翔子ちゃんに話さな ... [続きを読む]
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- 2008/03/05 23:45十題話 エメラルドの泪
- ia.さんが出した10題話です。〆切のホワイトデー(言ってない?笑)が近づいたのでアップ。1チョコ、2猫、3携帯、4ガンダム、5鰻、6KGB、7越前クラゲ、8地蔵盆、9外張断熱、10ダーッ。エメラルドの泪 1 マッハ1で海上を飛んでいた袴田一等空尉は、雲の中に一瞬、小さな影を見つけた。「こちらドラゴン5、目標目視」 指揮所に報告すると、F15戦闘機のスロットルを絞り、操縦桿を倒して、影の進行方向に ... [続きを読む]
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- 2008/03/03 23:017ブルーグレイ 8
- 励まされた私は車椅子の彼にお礼を言った。「ありがとうございます。お兄さんもがんばってください」「うん、ありがと……。なんか、ずっと陽にあたってたせいかな、熱っぽいような、感じがしてきたよ。これで帰るね」そう言って彼は車椅子をちょっとバックして外来棟の方に方向転換しようとする。「あ、そこまで押します」私は彼の車椅子を押してあげた。「ありがと、あの庭を眺めてると和むよね」彼は少 [続きを読む]
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- 2008/03/01 22:337ブルーグレイ 7
- しばらく私と車椅子の彼は黙って庭を眺めていた。「詩人なら、こんな暖かな午後のひとときをうまく言葉にできるんだろうね」彼はぽつりとつぶやいて、私を見て微笑んだ。「ええ、ほんとに」私が答えながらどぎまぎした。微笑んだ彼はさらにヒロキさんの写真に似たからだ。私はヒロキさんの親戚じゃないかと聞いてみようとしたぐらい。その瞬間、携帯がブルルとメールの着信を知らせた。開くと、ヒロキさんか [続きを読む]
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- 2008/02/28 23:317ブルーグレイ 6
- 翌日、昼すぎに、ヒロキさんからメールが来た。《おはよう、体調はどんなだい?副作用、ひどいのかな?僕の方は治ったともいえないけど、まあまあかな。てことで、さっき、退院しちゃったよー!ヤッホー!》私はびっくりした。昨日のメールには、そんなそぶりも書いてなかったのに。《えっ、もう退院できたんですか?いいなあ、うらやましいよぉ〜!》《ごめんな、見せつけたりして。でも、僕も、何年も [続きを読む]
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- 2008/02/26 23:35 7ブルーグレイ 5
- 手足がなくたって、乳房や子宮がなくたって、命まで取られるわけじゃないんだよ。乳房や子宮がなくたって、素敵な男性なら差別なくその人のことを気に入るよ。そしたら結婚だってきっとできると思うよ。ただね、乳房や子宮を失くしたその人が、めそめそ泣いてばかりいたらどうだろ?素敵な男性と知り合うチャンスも殆どなくなってしまうかもしれない。仮に会えても、めそめそしてたら、自分の良いところに気付いてもら ... [続きを読む]
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- 2008/02/24 23:27 7ブルーグレイ 4
- こうしてサトミやカオリには相談できたけど、ヒロキさんにはメールできなかった。ヒロキさんのことは大好きだし、初めて愛したと言っていい相手だ。しかし、だからこそ、副作用で自分が女性として不完全になるなんてことは書けない。そこだけ隠して打ち明けるのも後ろめたい。結局、ヒロキさんには、夜になってから、さりげなにく今日の点滴の報告をメールした。「こんにちは、第二段階の本格点滴が今朝から開始。 ... [続きを読む]
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- 2008/02/22 23:40 7ブルーグレイ 3
- こころはその夜、思い切ってサトミとカオリにメールで打ち明けた。「こんなこと相談しても、気分悪くするかもしれないけどさ」「何言ってるの、なんでも相談して」とサトミ。「そんな水臭いなあ」とカオリ。「ありがと、先生にね、今後の方針でどっちか選べって言われたんだ。それがちょっと難しすぎるニ択なの。Aはこれから先、薬だけで頑張る。だけど薬だけだと治る確率が低いんだ。Bはドナーから骨髄を ... [続きを読む]
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- 2008/02/21 01:07 ロスタイムライフ
- これはテレビの「ロス:タイム:ライフ 4看護士編」について、ブログ「舞台の効果音」のhinamiraiさんがなさった楽しい推理に触発されて、放送前に提示されてるあら筋から想像して書きました。ドラマのキャストは看護師松永由紀子(上野樹里)、恋人荻野政一(設楽統)、自殺未遂男尾元勇蔵(温水洋一)。雰囲気はいただきましたが、大きく違う設定もあるのでいわゆる二次小説とはかなり違うものです。「ロスタイムライフ」 ... [続きを読む]
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- 2008/02/19 23:38 7ブルーグレイ 2
- 佐藤先生は、今まで見たこともない険しい顔になって言った。「治療が辛いだけでなく、将来、妊娠できない可能性が非常に高いんです」耳につながる奥が真空になった。頭の中が真っ白だ。それじゃあ、普通の生活には戻れないってことだよ!うそでしょ!「先生、どうしてそんな?」母がやっとのことで問いかけた。「薬や放射線の影響で、どうしても卵巣が傷ついてしまうんです。しかし、幸い、卵子や卵巣のガ ... [続きを読む]
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- 2008/02/18 20:20 短編 見世物小屋のミユ
- 見世物小屋のミユ 序 駅のホームを歩いていた智美は、バッグのポケットを探るうち、友人から紹介されていた美容室のカードを落としてしまった。 拾おうとしたが、常に手袋をしている智美の手では、コンクリート面にぴったりと貼りついた薄いカードは掴めない。 智美は仕方なく、白い手袋を外して、カードを拾いかけた。 その時、コンクリート面に触れた指が、その面に残る少女の記憶にアクセスしてしまい、智美は衝撃 ... [続きを読む]
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