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- 2008/03/11 23:388嵐の一夜 1
- 治療が順調に経過していたある晩、お母さんにお父さんも呼んでもらい、親子三人で談話室で話をした。「どうだ、副作用はつらいのか?」お父さんは私の顔を覗き込んだ。「うん、吐き気とかは前より少しね。それでさ、今後の治療についてなんだけど、薬だけじゃ不安だから、骨髄移植、受けてみようかと思うんだけど、いいかな?」そう言うと、お父さんはうなづいた。「ああ、お父さんもお母さんもお前がそう決心し ... [続きを読む]
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- 2008/03/08 14:59ショート アンドロイド
- †††「紗智絵、ちょっと大事な話があるんだ」 名蔵博士は夕食の後片付けに立とうとした娘を椅子に呼び戻した。 名蔵は自分の体調の重大な変調に気付いていた。症状をネットで調べるとどうも悪性腫瘍のようだ。だから、近い将来の万が一に備えて、娘の本当の正体について打ち明けようと考えたのだ。 名蔵はもう一本タバコに火をつけて煙を吸い込んだ。「どうだ、大学は楽しいか?」「うん、勉強の方はあまりサプライズ ... [続きを読む]
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- 2008/03/07 23:307ブルーグレイ 9
- 「あ、こころお姉ちゃん、千羽鶴、もらったんだね」翔子ちゃんは私のベッドに下げてる折鶴の束を見て言った。「これね、クラスの皆と私で完成したんだ。きっと元気になって、後から思い出すんだよ。あの時は大変だったけど、頑張ったなあって」翔子ちゃんはうなづいてから、思い出したように聞いた。「そういえば、退院した時、彼とは会ったの?」私は笑いながら言う。「なんでそんなこと、翔子ちゃんに話さな ... [続きを読む]
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- 2008/03/05 23:45十題話 エメラルドの泪
- ia.さんが出した10題話です。〆切のホワイトデー(言ってない?笑)が近づいたのでアップ。1チョコ、2猫、3携帯、4ガンダム、5鰻、6KGB、7越前クラゲ、8地蔵盆、9外張断熱、10ダーッ。エメラルドの泪 1 マッハ1で海上を飛んでいた袴田一等空尉は、雲の中に一瞬、小さな影を見つけた。「こちらドラゴン5、目標目視」 指揮所に報告すると、F15戦闘機のスロットルを絞り、操縦桿を倒して、影の進行方向に ... [続きを読む]
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- 2008/03/03 23:017ブルーグレイ 8
- 励まされた私は車椅子の彼にお礼を言った。「ありがとうございます。お兄さんもがんばってください」「うん、ありがと……。なんか、ずっと陽にあたってたせいかな、熱っぽいような、感じがしてきたよ。これで帰るね」そう言って彼は車椅子をちょっとバックして外来棟の方に方向転換しようとする。「あ、そこまで押します」私は彼の車椅子を押してあげた。「ありがと、あの庭を眺めてると和むよね」彼は少 [続きを読む]
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- 2008/03/01 22:337ブルーグレイ 7
- しばらく私と車椅子の彼は黙って庭を眺めていた。「詩人なら、こんな暖かな午後のひとときをうまく言葉にできるんだろうね」彼はぽつりとつぶやいて、私を見て微笑んだ。「ええ、ほんとに」私が答えながらどぎまぎした。微笑んだ彼はさらにヒロキさんの写真に似たからだ。私はヒロキさんの親戚じゃないかと聞いてみようとしたぐらい。その瞬間、携帯がブルルとメールの着信を知らせた。開くと、ヒロキさんか [続きを読む]
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- 2008/02/28 23:317ブルーグレイ 6
- 翌日、昼すぎに、ヒロキさんからメールが来た。《おはよう、体調はどんなだい?副作用、ひどいのかな?僕の方は治ったともいえないけど、まあまあかな。てことで、さっき、退院しちゃったよー!ヤッホー!》私はびっくりした。昨日のメールには、そんなそぶりも書いてなかったのに。《えっ、もう退院できたんですか?いいなあ、うらやましいよぉ〜!》《ごめんな、見せつけたりして。でも、僕も、何年も [続きを読む]
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- 2008/02/26 23:35 7ブルーグレイ 5
- 手足がなくたって、乳房や子宮がなくたって、命まで取られるわけじゃないんだよ。乳房や子宮がなくたって、素敵な男性なら差別なくその人のことを気に入るよ。そしたら結婚だってきっとできると思うよ。ただね、乳房や子宮を失くしたその人が、めそめそ泣いてばかりいたらどうだろ?素敵な男性と知り合うチャンスも殆どなくなってしまうかもしれない。仮に会えても、めそめそしてたら、自分の良いところに気付いてもら ... [続きを読む]
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- 2008/02/24 23:27 7ブルーグレイ 4
- こうしてサトミやカオリには相談できたけど、ヒロキさんにはメールできなかった。ヒロキさんのことは大好きだし、初めて愛したと言っていい相手だ。しかし、だからこそ、副作用で自分が女性として不完全になるなんてことは書けない。そこだけ隠して打ち明けるのも後ろめたい。結局、ヒロキさんには、夜になってから、さりげなにく今日の点滴の報告をメールした。「こんにちは、第二段階の本格点滴が今朝から開始。 ... [続きを読む]
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- 2008/02/22 23:40 7ブルーグレイ 3
- こころはその夜、思い切ってサトミとカオリにメールで打ち明けた。「こんなこと相談しても、気分悪くするかもしれないけどさ」「何言ってるの、なんでも相談して」とサトミ。「そんな水臭いなあ」とカオリ。「ありがと、先生にね、今後の方針でどっちか選べって言われたんだ。それがちょっと難しすぎるニ択なの。Aはこれから先、薬だけで頑張る。だけど薬だけだと治る確率が低いんだ。Bはドナーから骨髄を ... [続きを読む]
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- 2008/02/21 01:07 ロスタイムライフ
- これはテレビの「ロス:タイム:ライフ 4看護士編」について、ブログ「舞台の効果音」のhinamiraiさんがなさった楽しい推理に触発されて、放送前に提示されてるあら筋から想像して書きました。ドラマのキャストは看護師松永由紀子(上野樹里)、恋人荻野政一(設楽統)、自殺未遂男尾元勇蔵(温水洋一)。雰囲気はいただきましたが、大きく違う設定もあるのでいわゆる二次小説とはかなり違うものです。「ロスタイムライフ」 ... [続きを読む]
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- 2008/02/19 23:38 7ブルーグレイ 2
- 佐藤先生は、今まで見たこともない険しい顔になって言った。「治療が辛いだけでなく、将来、妊娠できない可能性が非常に高いんです」耳につながる奥が真空になった。頭の中が真っ白だ。それじゃあ、普通の生活には戻れないってことだよ!うそでしょ!「先生、どうしてそんな?」母がやっとのことで問いかけた。「薬や放射線の影響で、どうしても卵巣が傷ついてしまうんです。しかし、幸い、卵子や卵巣のガ ... [続きを読む]
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- 2008/02/18 20:20 短編 見世物小屋のミユ
- 見世物小屋のミユ 序 駅のホームを歩いていた智美は、バッグのポケットを探るうち、友人から紹介されていた美容室のカードを落としてしまった。 拾おうとしたが、常に手袋をしている智美の手では、コンクリート面にぴったりと貼りついた薄いカードは掴めない。 智美は仕方なく、白い手袋を外して、カードを拾いかけた。 その時、コンクリート面に触れた指が、その面に残る少女の記憶にアクセスしてしまい、智美は衝撃 ... [続きを読む]
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- 2008/02/16 21:51 7ブルーグレイ 1
- こころは母と一緒に佐藤先生に向き合った。この形は緊張する。「第二段階の地固め療法に入るにあたり、今後の治療について話しておきます。第一段階の治療で、こころちゃんは寛解(かんかい)という状態になりました」「でもこれから第二段階なんですよね」母が言うと、佐藤先生はうなづいて続ける。「完全寛解と呼ぶ先生もいるんですが、実際にはまだ悪玉が残っています。なので、誤解されないように僕はただの ... [続きを読む]
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- 2008/02/14 23:59 メルコイ 6そよ風 5
- ヒロキさんに千羽鶴のこと、メールしたら羨ましがられた。「いいなあ、そんな素敵なクラスで。俺もこころちゃんのクラスに編入しようかな(笑)」「だめです、うち、女子高だもん(笑)それとも女装してきますか?」「うん、女装していこっかな(笑)可愛いコとかいるの?」一瞬、血が逆流した。冗談てわかってるけど、好きになると、友達ならなんでもないセリフに嫉妬しちゃうんだな。「き、きらいだよ、 ... [続きを読む]
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- 2008/02/13 21:56 メルコイ 6そよ風 4
- 級長の藤崎麻理が立って教壇に上がった。「では、皆さん、私たちの【絆】を提出してください」級長の藤崎がそう言うと、クラスメートたちはそれぞれカバンから机の中から、ひもに通した折鶴を取り出した。そして立ち上がっては、前に進み出て、こころに口々に声をかけて、教壇に折鶴を積み上げてゆく。「こころさん、頑張ってね」「ありがと」「応援してるからね」「ありがと」「またメールしてね」「うん」「早 ... [続きを読む]
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- 2008/02/11 20:16ショート ありふれた危機
- 短編競作企画 参加作品 お題「チョコレート」「猫」「携帯電話」 「ありふれた危機」 夕方のハンバーガーショップは高校生で賑わっていた。バレンタインのせいか、カップルだけでなく、男子だけのグループ、女子だけのグループもやたらハイテンションだ。 航太は、向かいの席の沙耶に話しかける。「先週、冷蔵庫の奥におせちの残りを発見して食べたら、まずかったよ」 航太は高校三年、最近は緊張の極致 [続きを読む]
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- 2008/02/10 23:24 メルコイ 6そよ風 3
- 翌日、かつらをかぶって久しぶりに学校に行った。おかっぱ頭で、なんか変な噂されたらどうしようと、かなりドキドキだった。でもクラスメートは入院のこと知ってるわけだし、みんなに明るく迎えられてひと安心した。もちろんサトミもこころの手をギュッと握って暖かく迎えてくれた。「お帰り、こころがいないと私も調子が出ないから、これからはずっと来てよ」いつになく、サトミがしおらしいことを言うので私は笑っ ... [続きを読む]
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- 2008/02/09 17:34 ショート 残り物には福がある
- 短編競作「裏」企画 参加作品 お題「チョコレート」「鰻」「ガンダム」「売れ残りには福がある」 暗い通りに、明るく照らし出された携帯ショップ。店内の棚には様々な色、デザインの携帯がずらりと並んで、まるで祭りの屋台のように賑やかだ。 俺は気がつくと店内に足を踏み入れていた。 明らかに浮いている緑色のハッピを着た女性店員がさりげなく近づいてくる。「どうぞ、ごゆっくりお選び下さい」 俺は板チ ... [続きを読む]
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- 2008/02/08 00:35 メルコイ 6そよ風 2
- 3週間ぶりぐらいに家に帰ったが、翌日は学校には行かなかった。教室で毛糸の帽子というのも目立つとお母さんに言われ、一緒にデパートにかつらを買いに行ったのだ。でも、おばさん用みたいな感じが多くて、かなり妥協した。デパートから出て、レストランに入った。「お父さんからご馳走してやれって言われたから、好きなの注文しなさい」「じゃあ、ハンバーグカレー!」「え、そんなの?家でも食べられるじゃない、 ... [続きを読む]
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- 2008/02/06 21:20 メルコイ 6そよ風 1
- 水曜日。朝の検査で昨日に続いて白血球が1万キープしている。そこでお昼前に、佐藤先生にマルクされた。うう、やっぱり痛いよ〜。ヒロキさんにメールでぼやいてみる。《またマルクされました。退院のためだと思って耐えましたよ。これで退院できなかったらサー・ガッツに仕返しするのら》五分ぐらいで返事が来る。《えらいね。と思ったら、仕返しって問題ありだよ(笑)》《だってえ、それを目標に耐え ... [続きを読む]
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- 2008/02/05 21:16 ショート ニュータイプ卓郎
- 卓郎が都心の高級ホテルのスイートに入ると、白いミニのスーツを着た楓花がソフアで雑誌を見ていた。「やあ、待ったかな?」「ちょっとね」 卓郎は五十代後半、楓花は十九歳である。「じゃあ早速始めようか」 卓郎がワイシャツからネクタイを引き抜くと、楓花は不機嫌に言う。「卓郎ちゃん、せっかちだなあ」「いいから、早く、早く、もう待ちきれないよ」「たくっ、そういうのヤなのに」 卓郎が急かすと、楓花は ... [続きを読む]
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- 2008/02/04 21:29 メルコイ 5海辺のデート 10
- 昼すぎ、こころは毛糸の帽子をかぶって病院内を散歩した。外来と入院B棟をつなぐ廊下にベンチが点々と置いてあって中庭を眺めるのにちょうどよい。こころはベンチに腰掛けてるおばあちゃんの隣に腰をおろした。おばあちゃんは日向ぼっこしながら眠っていてこころは笑みを浮かべた。廊下の向こうから若い男のひとの乗った電動車椅子が近づいてくるのが見えた。こころはヒロキさんだったらいいなと思ってしまう。する ... [続きを読む]
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- 2008/02/03 23:22 メルコイ 5海辺のデート 9
- 月曜日。昼前に、例によって白い忍者風の姿で佐藤先生がやってきた。「どうだ、土日はおとなしくしてたか?」「そうするしかないでしょ」私の口をまげて言う。「なんだ、そうふてくされるなよ」佐藤先生が嬉しそうな声で言う。「白血球上がったから、クリーンルームは卒業だ、おめでとう!」「えっ?卒業?」「そう、もっと喜べ!」「やったー、サー!」私は笑いながらガッツポーズをして見せた。「お ... [続きを読む]
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- 2008/02/02 23:25 メルコイ 5海辺のデート 8
- 日曜だというのにクリーンルームの中で、退屈な時間がすぎてゆく。この部屋にいる限り、原則として家族しか面会できない。ただし恋人は特別に面会できるらしい。ヒロキさんのことを考えたが、さすがにクリーンルームのガラス越しにインターフォンで初対面はちょっと遠慮だ。昼すぎに、サトミからメールが来た。《おはよー、起きたあ?》あー、私が病気になろうがなるまいが、サトミの日曜は午後から始まるんだな。 ... [続きを読む]
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