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- 2008/10/06 19:13冬の星座オリオンが待っている 8
- キミちゃんはお茶屋で、実家のおじいちゃんと1年ぶりに再会した。夕方、帰りの電車に間に合うように打ち合わせをし、栗村君を店に残し、おじいちゃんの家に歩いていった。「栗村さん、ちょっと待っててね。さっきの雪で半纏が濡れちゃって、着替えてくるから。」朋ちゃんは店の名前の入った、紫色の綿入れ半纏を持って、奥へ消えた。 朋ちゃんのお母さんが、栗村君の話し相手になってくれた。「この辺は雪が少ないですけどね... [続きを読む]
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- 2008/10/04 22:57冬の星座オリオンが待っている 7
- 待合室に居る人たちが一斉に入り口の方を見た。「キミちゃん、居る?」2回目はちょっと恥ずかしそうに小声で言った。「え? 居るよ。ここ・・・・」人ごみの中から小さな手が上がった。「朋さんじゃないですか?」栗村君が答えた。「あれ、やっぱり栗村さんも一緒だったんだ。なあんだ、心配して損した気分。 ははは、皆さんすいません。」 お茶屋の朋ちゃんが近づいてきた。「ごめんなさいね。びっくりした? あの、キミち... [続きを読む]
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- 2008/10/03 19:04冬の星座オリオンが待っている 6
- 豊名駅のプラットホームに駅長が立っていた。電車は時々ブレーキを小刻みにかけながら止まった。「豊名駅到着でーす。お疲れ様でした。えー、乗り継ぎの泊り浜行きのバスは14時40分です。遅れないようにご乗車ください。」 車掌がドアノブを引いた。「あらら、バスがもう来てるちゃ。早くすねと、席取れねえ。ほんでね。お譲ちゃん、ヤス坊によろしく言ってけろ。その内に行ってみっから。」おばちゃん達はそう言い残すと、... [続きを読む]
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- 2008/10/01 20:18冬の星座オリオンが待っている 5
- キミちゃんはまったく思い出せなかった。「ほうら、部隊長の養鶏場であったべ? はははは。」おばちゃんは頬被りを取った。「?・・・、もしかして、働いていた人?」「んだ。 あの、ヤス坊とかいう若いの、元気か?」「うん、うちで働いてるよ。」「そうか、それは良かった。」「ああ、ヤス坊が亡くなった人とそっくりだって言った・・・・・」「んだ。 田沼駅から乗ったとき、もしかしてと思ってさ。もう一回、会って見たい... [続きを読む]
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- 2008/09/30 19:58冬の星座オリオンが待っている 4
- 「たしかさ、町長の一人娘って、御茶屋に嫁に行ったんだべ?」「うん、そうらしい。奥さんが入院してるから、一人暮らしらしい。」「まあー、孫が何人か居るんだべから、後を見てくれるんだべ。」「なんてたっけ? 名前?」「誰の?」「その、御茶屋のさ・・・・」「えーとさ、山形でなく、福島でなく、ああ、秋田だ。秋田屋って、豊名町では一族で多いんだぞ。ほら、おめえ、夏にさ、麦藁帽子買ったのも秋田屋だ。」 栗村君は... [続きを読む]
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- 2008/09/29 19:19冬の星座オリオンが待っている 3
- 運転手がチラッと後ろを見て、又、前を見た。「勤務中は私語は禁止だろう。」「はい、すいません。」「あのね、終戦の時、ソ連が北海道に進駐してくるって噂が広がって、内地に帰ってきたんだって。 黙っててね。」車掌は栗村君へ小声で話すと後ろのドアへ移動して行った。 田圃の中を過ぎて、山の根廻にある小さな屋根だけの無人駅へ止まった。「はい、お疲れ様です。玉山駅です。有難うございました。」車掌は山高帽を被った... [続きを読む]
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- 2008/09/28 18:56冬の星座オリオンが待っている 2
- 1両だけの電車が止まった。一番前の窓から運転者が顔を出した。「交代です。よろしくお願いします。」と敬礼した。「了解しました。駅舎の業務をお願いします。」窓口で切符を売っていた駅員が電車の前で敬礼した。 車掌が中からドアを開けた。「直ぐ出発するよ。さあ、乗って。」キミちゃんたちを手招きした。 二人が乗り込むと、交代の運転手も後から続いて乗ってきた。横の長いすに乗客は3人しか乗っていなかった。大きな... [続きを読む]
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- 2008/09/25 21:14冬の星座オリオンが待っている
- 12月になった最初の土曜日の午後。キミちゃんは栗村君の自転車の後ろに乗っていた。天気は良かったが、西風が強く寒かった。太陽が照っているのに、時々粉雪が飛んできて二人の横顔に当たった。「キミちゃん、大丈夫かい?寒いだろうけど、もう少しで停車場に着くから。」栗村君は横風を受けながら、力いっぱいペダルを踏んだ。「うん、大丈夫。でも、お尻が痛い。ふふふ。」キミちゃんは栗村君の背中にしっかり掴まっていた。... [続きを読む]
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- 2008/09/21 20:09三本スギの御ピイ 11
- 「結納のとき、仲人が持ってきたのは絹の反物2反だけだった。その家の慣わしで昔からそうだって言ってな。その反物で花嫁衣裳を仕立ててくれって事らしいけど、長持ちも用意しなければならないし、御ピイ夫婦はほんとに困ってしまって、うちに相談に来たそうだ。それで、金貸しても返すのに大変だろうって、うちにあった古い長持ちを修理したり、布団とか身の回りのものをご祝儀って買ってやったりして、何とか嫁にやったんだ。 ... [続きを読む]
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- 2008/09/19 21:55三本スギの御ピイ 10
- 「御ピイの父親が亡くなったら、他の娘に縁談が来たんだ。御ピイは3人姉妹の末だったんだけどな、上の姉に来た話は後妻の話だった。身上の良い家からの縁談だったけどな、嫁入り支度をする金が無くてさ、思案したらしい。 大した田畑が有った訳でないし、困ってたら、家の裏山の杉を売ろうって話がでてな。御ピイの旦那は朝早くから夕方暗くなるまで、杉の木を切って金にしてさ、やっとの思いで長持ちを用意して嫁にやったんだ。... [続きを読む]
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- 2008/09/16 21:05三本スギの御ピイ 9
- 「小包を開けたらさ、黒い羽織と手紙が入っていたんだと。手紙には、婿にもらって貰えて、ありがたいけど、貧乏で何の支度もしてやれないので、せめて黒の羽織だけでも持たせるからって書いてあった。そして、結婚式には行けないのでよろしく頼むって、うち宛の手紙が添えられていたんだと。」「ふーん、黒の羽織ってどうするの?」「うん、結婚式でも葬式でもさ、世間で改まった行事があるときは、礼儀として着ていくんだ。だから... [続きを読む]
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- 2008/09/15 22:42三本スギの御ピイ 8
- 「キミにはわかんねえべ。古い話だもの。昔な、この辺一帯はお蚕さんが盛んで、人手が無い家は出稼ぎ人を使ってたんだ。うちでも本宅の二階でいっぱい飼っててさ、何人か人を使ってらしい。その中の一人が三本スギの御ピイの旦那さんになったらしい。」「おばあちゃんは知らないの?」「オラが嫁に来る前の話だもの、会った事ねえ。おじいちゃんから聞いた話だ。」「ふーん、旦那さんってどこから働きに来たの?」「うーん、この川... [続きを読む]
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- 2008/09/13 20:17三本スギの御ピイ 7
- 「ドブネズミのおしっこの何とかと言うばい菌が原因だって国男先生が言ってた。田圃には秋になると実った穂を食いにスズメだけでなく、ネズミも増える。それが糞をしたりおしっこしていくんだ。ドブ田だからそれが水の中に溶けていて、ばい菌の元になる。裸足や素手でそこに入って仕事をしてる時、傷口があると何時の間にか病気が移るんだそうだ。 そう、ワイル病って言ったな、先生は。」「ワイル病?」「うん、キミも裸足で田圃... [続きを読む]
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- 2008/09/12 22:23三本スギの御ピイ 6
- 「昔は稲刈りが終わると、熱を出して寝込む人が多くてさ。皆、働きすぎだと思って、少し休むんだよ。でも熱は下がらないし寒気が続くし、仕舞いには顔が黄色くなって、動けなくなる。しかも、だんだん喋れなくなる。」 おばあちゃんは御ピイが残していった沢庵漬けの皿と、コップを持って台所へ行った。「ふーん、それでどうなるの?」「ご飯も食べれなくなって、死んでしまうのさ。」「稲刈りすると、今もそうなるの?」 おば... [続きを読む]
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- 2008/09/10 20:53三本スギの御ピイ 5
- 細く裂いた沢庵漬けをまた口に入れた。しきりに口を横に動かすと飲み込んだ。「なあ、タエコ、家さ帰って稲ごき(脱穀)をすっぺ。先に行ってから・・・」そして、空になったコップに両手を合わせて拝むようなしぐさをした。御ピイはテーブルの脇に置いていた杖と袋を持つと、玄関へ歩いた。扉の前に立ち止まると、キミちゃんを見た。開けてくれ、という意味だった。「あ、ごめん、今開けるから。」キミちゃんは急いで扉の取っ手... [続きを読む]
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- 2008/09/09 22:59三本スギの御ピイ 4
- 「おなごはな、縫い針(裁縫)とお勝手の事をまず覚えるもんだ。後はさ、早く嫁ごさ行って、子供いっぱい産んで、かしぎっと(稼ぎ人)にするこった。百姓は手がねえとな。 なあ、タエコ。」「うーーん・・・・・・」キミちゃんは返事に困った。「とうちゃんさえ生きてれば、オラ、子供いっぱい産めたのにさ。」「とうちゃんって誰?」「タエコのとうちゃんだべ。おめえが3つの時だから覚えてねえべ。」(御ピイちゃんのだんなさ... [続きを読む]
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- 2008/09/06 22:26三本スギの御ピイ 3
- おばあちゃんがキミちゃんの側によって来て耳打ちした。「キミ、おばあちゃんな、仕事があるから御ピイの相手しててくれ。」「え?相手って?」「うんとか、はいとかって言ってればいいから。一人で喋って飲み終わると帰るから。な!」「うん。」「ねえ、御ピイ。ちょっとさ、豚のお産があるから付いてないとならんから、ゆっくり飲んでいって。」 御ピイは又こっくりと頭を下げた。 おばあちゃんが外へ出て行って、キミちゃん... [続きを読む]
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- 2008/09/03 23:07三本スギの御ピイ 2
- おばあちゃんは前掛けで手を拭きながら、御ピイの前にやってきた。「どれどれ、今日は何だべな? 」 藍染の色が薄くなって、使い込んだような色合いの手提げの中へ手を入れると中の物を取り出した。「あら、綺麗だ事。この間、やった浴衣生地、上手く縫ったね。たいしたもんだ。」おばあちゃんは手にとって広げて見た。 それは雑巾であった。亀甲模様に刺したのが1枚、渦巻き模様に刺したのが2枚入っていた。少し紫色の褪せ... [続きを読む]
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- 2008/09/01 21:28三本スギの御ピイ
- ある日の午後、学校から帰ったキミちゃんは管理棟のテーブルで宿題をしていた。台所でおばあちゃんが夕飯の準備で野菜を刻んでいた。 玄関の曇りガラスに人影が写った。人影は「く」の字に曲がって、杖を突いてるように見えた。「ごめん! ごめん! いすたが?(居ますか?)」外から声がした。「え? 誰? おばあちゃん、お客さん!」キミちゃんがお勝手へ声をかけた。「ああ?今さ、沢庵切ってて、汚れてるから。キミ、見... [続きを読む]
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- 2008/08/31 20:54晩秋のニワトリたち 13
- ヤマさんは口から木のヘラと一緒に泡を吹き出した。目が開いた。「おお、どうしたんだ。」ゆっくりと起き上がった。「どうしたって、さっき突然倒れてたからさ、びっくりした。気が付いて良かったよ。 それにしても汚いな。ヤマさんの口の泡が顔に飛んでさ、もうー。」高橋さんは手ぬぐいで顔をしきりに拭いた。「はあ、急に分かんなくなってな。いやー、すまん。しばらく発作が起きなくていいなと思ってたんだが・・・・。誰?... [続きを読む]
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- 2008/08/28 21:04晩秋のニワトリたち 12
- キミちゃんはヤマさんの反対側のポケットへ手を入れた。小さな茶色のビンを取り出した。「あった、これこれ。ほら、薬だよ、おとうちゃん。これを飲ませて。」「薬?ああ・・・・、でも、この木のヘラ見たいのはどうするんだ?」「それを口に入れて、舌を咬まないようにするんの。入れたら、鼻でも口でもいいから薬を垂らすの。」「ああ、分かった。高橋さん、あごを押さえてくれ。」「は、はい。こうですか?」 開けられた口に... [続きを読む]
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- 2008/08/21 09:55少しお休み
- いつも拙い文章を読んでいただいて有難うございます。最近、母の認知症が少し進んだようで、昼と無く夜となく、意味不明の言動や行動に悩まされております。今日はやっとデイサービスへ行きましたが、私にとってつかの間の安息です。 そんな訳で、なかなかパソコンの前で文章を組み立てる頭が無くなって来ました。少し時間を置いて、気持ちを落ち着けてから書き始めたいと思います。 長くかかる病気なのでしょう。内臓は丈夫で... [続きを読む]
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- 2008/08/18 19:57晩秋のニワトリたち 11
- 高橋さんがヤマさんを動かすのに苦労していると、キミちゃんとおとうちゃんが走って来た。「どうしたって?」二人は運動場の戸を開けて入ってきた。「いやー、なんだかわからネエんで。まぐれて、このとおり。」高橋さんが帽子を内輪代わりにして、扇いでいた。「息はしてるのかい?」「ええ、心臓も動いてるようだけど、意識が戻らないようで。動かせなくて、どうしましょうか?」 おとうちゃんがヤマさんの瞼を指で開いた。「... [続きを読む]
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- 2008/08/14 19:45晩秋のニワトリたち 10
- 「おい、外で誰か唸ってねえか?」高橋さんが戸の方を見た。「え? 肉屋の親父しかいねえはず・・・・」良ちゃんがニワトリを掴んだまま、戸の方へ歩いていった。 戸を開けると、肉屋のヤマさんが仰向けになって倒れていた。「おおおお、おっさん、どうしたんだ。何があったんだ。高橋さん!来てけろ!」「何だ、肉屋の親父がどうかしたのか?」 肉屋のヤマさんは目を半開きにして、口から泡を出し体を小刻みに震わせていた。「... [続きを読む]
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- 2008/08/11 23:35晩秋のニワトリたち 9
- 「何で普通でねえの?」 良ちゃんはニワトリの目を見て、にらめっこをした。「ああ、種鶏だからさ、最後はヒヨコにならネエとさ。」高橋さんが捕まえてニワトリのお腹を触った。「だってさ、雄鶏も若いのと入れ替えてるし、何もねえべ。」「中止卵だよ。検卵の時見た事あるべ。」「チュウシ卵? 無精卵でなくてか?」「無精卵は孵卵機へ入れて10日目に見る検査だろう。受精してるかどうかってさ。17日目に検査するやつださ。... [続きを読む]
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