- 2008/05/13 13:47第九章 5(時の試練)
- 眠りに付いたイーゴリ大叔父を見やって、ユーリアンが老師匠を気遣った。「師匠も少しお休みになったほうが……」「そうだな。では今日最後の講義だ。座りなさい、弟子たちよ」 ソロフの言葉に全員が居ずまいを正してソファに座った。「オーレグ、お前が指摘したように彼は... [続きを読む]
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- 2008/05/07 10:06ムーンチャイルド参加作品
- 皆さん、ゴールデンウィークはいかがでしたか。松果は実家でのほほんと過ごしてきました。で、お休み明けの第一弾。先日お知らせした「ムーンチャイルド」企画の参加作品を投稿しました。 ↓ ↓ ↓ 「カゴを持っておつかいに」小学生姉妹の短... [続きを読む]
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- 2008/05/01 13:45第九章 4(再会)
- 光の中の人物は次第にはっきりとした像を結びだした。少し癖のある黒髪、彫りの深い顔立ち。ステファンに似た鳶色の目が、驚いたように見開いた。「ステファン……ステファンか?」「お父さんっ!」 駆け寄ろうとしたステファンをオーリが捕らえた。「だめだ、ステフ。オス... [続きを読む]
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- 2008/04/29 14:10ムチャもしますよ!
- 「ムーンチャイルド」略してムチャ。トップページでもお知らせしていますが、別ストーリーでお世話になっている投稿サイト「小説家になろう」で開催される、こどもの日にちなんだ企画のことです。何人かの参加者さんのブログ見せてもらってたら、すっかり「ムチャ」って呼び方が定着してるみたいです。なんか可愛いでし... [続きを読む]
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- 2008/04/28 12:35第九章 3(レクチャー)
- 「大叔父様、あなたはいつもそうだ。謎かけのような言葉に逃げて断言することをしない。古(いにしえ)の賢者の口ぶりでも真似てご自分を権威づけてるつもりか? 不愉快だ!」「オーリ、言いすぎ。失礼よ」 トーニャにたしなめられてオーリは一度言葉を切ったが、ステファンの顔を見て再び口を開いた。「ある... [続きを読む]
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- 2008/04/24 22:22(ちょっと一休み)
- ここまで読んでいただいてありがとうございます。思わせぶりなセリフで引っ張っておいてなんですが、次話分で大きなミスを見つけてしまったので修整にちょっとお時間をいただきます(ペコリ)その代わり、と言っちゃあなんですが、休眠中の別ブログでも使った古写真をどうぞ。オーリやステフが生きた時代の... [続きを読む]
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- 2008/04/21 15:19第九章 2(糸口)
- 「ユーリアン、ご苦労であった。“野犬退治”は終わったのか?」 笑いを含んだ表情で、ソロフが眉を上げた。この部屋から一歩も出ていない、と言いながら、カニスの件を知っているような口ぶりだ。「ええ、大人しいもんですよ。正気に戻ったら、シッポを巻いて帰ることでしょう――パセリ... [続きを読む]
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- 2008/04/17 14:52第九章 1(ヒヨッコと先生)
- 天井の照明に頭をぶつけそうになりながら、ステファンは訊いた。「ぼくのこと知ってるの? それにお父さんのことも」「おお知っているとも。ははは、ここで会えるとは!」 低く響く弦楽器のような声だ。高々と差し上げる腕の力強さに圧倒される。 オーリや父の印象が青空ならば、この人物はさらにもっ... [続きを読む]
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- 2008/04/14 09:13第八章 10(ガーゴイル)
- なんでこんなことになってしまったのだろう。 醜悪な石のガーゴイルにしがみつきながら、ステファンは必死に足をばたつかせた。利き腕とはいえ、左腕だけでぶら下がるのにも限界がある。幸い靴の脱げたほうの足が、壁の凹凸に引っかかった。なんとかそれを足掛かりにして体勢を立て直す。が、さっきの少年が示し... [続きを読む]
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- 2008/04/10 16:48第八章 9(ステファン、飛ぶ)
- オーリから託された辞書をしっかりと抱きかかえ、ステファンは庭伝いに四番目の窓に向かった。 磨きこまれたガラスの向こうは、賑やかな広間とは対象的な、しんとした吹き抜けの階段ホールだ。黒いアイアンレースの手すりが美しい螺旋階段が目に入る。上り口では乙女の姿をした彫刻が天を指差していた。 中に入... [続きを読む]
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- 2008/04/07 07:35第八章 8(契約の意味するもの)
- カニスはフン、と口髭を揺らし、テーブルに近づいて再びグラスを手にした。オーリもそ知らぬ顔でグラスを取り、隣に立つ。「オーリローリ・ガルバイヤン、思い出したぞ。この一族には確かそんな別名を持った絵描きが居るらしいな」「これは光栄です、カニス卿。わたしのほうはご高名をちっとも存じ上げなかったと... [続きを読む]
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- 2008/04/03 15:12第八章 7(サー・カニス)
- タキシードや燕尾服の紳士たちの中、大声でわめいている男が居る。口髭をたくわえた赤ら顔には見覚えがあった。「あ、あいつ! 駅で竜人を苛めてたやつだよ」 オーリにもそれは判ったようだ。無言でうなずき、厳しい目を髭男に向ける。 が、男と対峙している相手を見てさらに顔を曇らせた。「悪いがス... [続きを読む]
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- 2008/03/31 11:12第八章 6(比べるまでもなく)
- 「味を感じないんでしょう、オーリ」 トーニャは笑いをこらえるような顔をしている。「砂を噛む思い、とはまさにこれだな。どういう料理人を雇ったんだ?」「そうか? シャンパンもラム肉も極上だと思うが」 ユーリアンは自分のチョップを骨だけにしてしまうと、満足げにナプキンで口を拭った。「あ... [続きを読む]
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- 2008/03/28 20:00第八章 5(魂の代償)
- ステファンは驚きで声も出なかった。 まさか、ここでオスカーの名を聞くとは思わなかった。大叔父様と父がどこでつながりがあるのか、いやその前に、この不思議な干からびた物体がなぜ“大叔父様”なのか、頭の中が疑問符だらけで目まいがしそうだ。なにか言葉を紡ごうと焦ったが、その間に... [続きを読む]
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- 2008/03/24 11:36第八章 4(エレインのために)
- 「ステファン、君もなかなかだ。魔女たちが騒ぐだろうなあ。覚悟しておけよ」 ユーリアンはにやにやしながら言った。冗談はやめて欲しい。ステファンは冷や汗を浮かべた。それでなくても、見たことも無いオーリの一族が集まるパーティに自分みたいな子どもが来てよかったのか、戸惑っているというのに。「エレイン... [続きを読む]
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- 2008/03/20 12:00第八章 3(それとてもひとつの武装)
- 波音が聞こえるものの、足元は砂浜ではなく岩だ。いや、人工的な石畳の広場のようになっている。 潮の香のする夕闇の中でそちこちに白い光の円柱が立ち上がり、光の中から着飾った紳士淑女が現れる。それぞれに挨拶を交わしながら、人びとが向かうのは背後の岸壁だ。門番のように巨大な一対の石像が見下ろしている... [続きを読む]
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- 2008/03/16 08:43第八章 2(光の遂道)
- キッチンに移りながら、ステファンは気が気でならなかった。この間からのエレインの態度に、オーリは怒っているに違いない。またケンカになりはしないだろうか。「大丈夫ですよ、坊ちゃん。お二人はきっと大丈夫です。オーリ様を信じましょう、ね」 不安顔のステファンをよそに、マーシャは落ち着いた顔でアーニ... [続きを読む]
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- 2008/03/12 01:05第八章 1(九月は寒く)
- 九月になると、急ぎ足で秋はやってくる。 駅での一件以来、寒々とした日々が続いていた。 エレインは一度砕けた封印石を、自分から望んで再び耳に着けた。日に何度か森を巡り、「守護者」としての務めを果たしているのは、これまでと変わらない。少なくとも、表面上は。けれど以前のように屈託の無い笑顔... [続きを読む]
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- 2008/03/11 13:25(なんと!オーリのイラストですよ♪)
- お話もだいぶ進みましたので、テンプレート変えたり目次変えたり、いろいろやってます。まだ試行錯誤の途中ですので、ここはこうしたら、とかこの文字じゃ読みにくいとか、ご意見がありましたらどうぞこちらへ→足跡帳さて、いつも楽しいコメントをくれるブログ友達のらんららさんが、オーリたちのイ... [続きを読む]
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- 2008/03/09 08:41第七章 5(岩の中の竜人)
- 「母さまって、さっきの竜のこと?」「竜? 竜を見たのか?」「だって! さっきカミナリを落としたじゃないか。翼が無くて、エレインの髪みたいに赤くて。あんなに大きな竜を見なかったの?」 ステファンは驚いた。アガーシャの光がそうだったように、自分に見えてオーリに見えないものもあるのだろうか。... [続きを読む]
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- 2008/03/05 01:34第七章 4(はるかな高みから)
- 鈍(にび)色の雲が低く垂れ込める下で、昼間とも思えないほど辺りは暗くなってきた。三人の立つ道には人通りもなく、道の脇には丈の長い草に覆われた岩が、あちこちで墓標のように白く顔を覗かせている。 ステファンは震えた。オーリはエレインと目を合わせず、苦い表情をしている。「先生、どういうこと... [続きを読む]
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- 2008/03/03 08:19第七章 3(奪うもの、奪われるもの)
- 駅を出てしばらく歩いた後、突然エレインはオーリの腕を振り払った。「なんで黙って見てたの、なんであたしに殴らせなかったの! あんな男、首をへし折ってやればよかったんだ!」 両手のこぶしを握り締め、緑色の炎を宿した目を光らせている。「ああ、いいね。奴のだぶついた首をへし折ったら、さぞいい... [続きを読む]
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- 2008/02/28 16:13第七章 2(竜人の鎖)
- 小さな駅で降りると、乗り継ぎの列車を待つ人が数人いるばかり。 荷物のカートを押す少年が、最後尾の貨物車に向かっている。 煤けたレンガの壁と白い窓枠が可愛らしい駅舎では、大荷物をひっくり返した客が出口を塞いで駅員ともめていた。改札もない駅だし帰りを急ぐこともない。三人はじゃれあうように騒ぎな... [続きを読む]
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- 2008/02/25 07:08第七章 1(赤毛の眠り姫)
- 帰りの汽車は空いていた。エレインは来る時と違って緊張感がほぐれたのか、六人掛けのコンパートメントの窓際に陣取ると、他の乗客のいないのをいいことに、またしてもあれは何、これは何と質問の雨を降らせた。 十何回目かの「あれは何?」の後、ふいにエレインが黙り込んだ。オーリの手が額に向けられている。ステ... [続きを読む]
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- 2008/02/22 06:00第六章 10(トーニャ姉さん)
- 一緒に庭を振り返ったトーニャが、突然顔をひきつらせて叫んだ。「アーニャ! だめ!」 庭先では、小さいアーニャがロバの縫いぐるみにまたがってフワフワと飛んでいる。まるで風船のようにたよりなく、それは屋根の高さに届こうとしている。 ユーリアンは庭に飛び出し、豹のように高くジャンプして縫いぐ... [続きを読む]
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