|
- 2008/03/20 12:00第八章 3(それとてもひとつの武装)
- 波音が聞こえるものの、足元は砂浜ではなく岩だ。いや、人工的な石畳の広場のようになっている。 潮の香のする夕闇の中でそちこちに白い光の円柱が立ち上がり、光の中から着飾った紳士淑女が現れる。それぞれに挨拶を交わしながら、人びとが向かうのは背後の岸壁だ。門番のように巨大な一対の石像が見下ろしている... [続きを読む]
|
- 2008/03/16 08:43第八章 2(光の遂道)
- キッチンに移りながら、ステファンは気が気でならなかった。この間からのエレインの態度に、オーリは怒っているに違いない。またケンカになりはしないだろうか。「大丈夫ですよ、坊ちゃん。お二人はきっと大丈夫です。オーリ様を信じましょう、ね」 不安顔のステファンをよそに、マーシャは落ち着いた顔でアーニ... [続きを読む]
|
- 2008/03/12 01:05第八章 1(九月は寒く)
- 九月になると、急ぎ足で秋はやってくる。 駅での一件以来、寒々とした日々が続いていた。 エレインは一度砕けた封印石を、自分から望んで再び耳に着けた。日に何度か森を巡り、「守護者」としての務めを果たしているのは、これまでと変わらない。少なくとも、表面上は。けれど以前のように屈託の無い笑顔... [続きを読む]
|
- 2008/03/11 13:25(なんと!オーリのイラストですよ♪)
- お話もだいぶ進みましたので、テンプレート変えたり目次変えたり、いろいろやってます。まだ試行錯誤の途中ですので、ここはこうしたら、とかこの文字じゃ読みにくいとか、ご意見がありましたらどうぞこちらへ→足跡帳さて、いつも楽しいコメントをくれるブログ友達のらんららさんが、オーリたちのイ... [続きを読む]
|
- 2008/03/09 08:41第七章 5(岩の中の竜人)
- 「母さまって、さっきの竜のこと?」「竜? 竜を見たのか?」「だって! さっきカミナリを落としたじゃないか。翼が無くて、エレインの髪みたいに赤くて。あんなに大きな竜を見なかったの?」 ステファンは驚いた。アガーシャの光がそうだったように、自分に見えてオーリに見えないものもあるのだろうか。... [続きを読む]
|
|
|
- 2008/03/05 01:34第七章 4(はるかな高みから)
- 鈍(にび)色の雲が低く垂れ込める下で、昼間とも思えないほど辺りは暗くなってきた。三人の立つ道には人通りもなく、道の脇には丈の長い草に覆われた岩が、あちこちで墓標のように白く顔を覗かせている。 ステファンは震えた。オーリはエレインと目を合わせず、苦い表情をしている。「先生、どういうこと... [続きを読む]
|
- 2008/03/03 08:19第七章 3(奪うもの、奪われるもの)
- 駅を出てしばらく歩いた後、突然エレインはオーリの腕を振り払った。「なんで黙って見てたの、なんであたしに殴らせなかったの! あんな男、首をへし折ってやればよかったんだ!」 両手のこぶしを握り締め、緑色の炎を宿した目を光らせている。「ああ、いいね。奴のだぶついた首をへし折ったら、さぞいい... [続きを読む]
|
- 2008/02/28 16:13第七章 2(竜人の鎖)
- 小さな駅で降りると、乗り継ぎの列車を待つ人が数人いるばかり。 荷物のカートを押す少年が、最後尾の貨物車に向かっている。 煤けたレンガの壁と白い窓枠が可愛らしい駅舎では、大荷物をひっくり返した客が出口を塞いで駅員ともめていた。改札もない駅だし帰りを急ぐこともない。三人はじゃれあうように騒ぎな... [続きを読む]
|
- 2008/02/25 07:08第七章 1(赤毛の眠り姫)
- 帰りの汽車は空いていた。エレインは来る時と違って緊張感がほぐれたのか、六人掛けのコンパートメントの窓際に陣取ると、他の乗客のいないのをいいことに、またしてもあれは何、これは何と質問の雨を降らせた。 十何回目かの「あれは何?」の後、ふいにエレインが黙り込んだ。オーリの手が額に向けられている。ステ... [続きを読む]
|
- 2008/02/22 06:00第六章 10(トーニャ姉さん)
- 一緒に庭を振り返ったトーニャが、突然顔をひきつらせて叫んだ。「アーニャ! だめ!」 庭先では、小さいアーニャがロバの縫いぐるみにまたがってフワフワと飛んでいる。まるで風船のようにたよりなく、それは屋根の高さに届こうとしている。 ユーリアンは庭に飛び出し、豹のように高くジャンプして縫いぐ... [続きを読む]
|
- 2008/02/18 17:20第六章 9(それぞれの事情)
- 「大叔父様か。 来月誕生パーティをするとかいってたな」「ああ。パーティは我慢するとしても苦手だな、あの人は……トーニャも人が悪いよ、こんなペンダントを渡してわざと大叔父に会わせようとしてるんじゃないだろうな」「嫌なら手を引きなさい、駄々っ子」 トーニャはぴしゃ... [続きを読む]
|
- 2008/02/15 12:05第六章 ?(立ち向かうもの)
- 「実家に行ったのか。戦闘開始というわけだ。やるじゃないか、ミレイユ母さん」 オーリもまた手鏡を覗き込んで、ニヤッと笑った。「戦闘って?」「前に言ったろう、ステフ。誰だって辛い事を抱えている、けど自分で解決するしかないって。君のお母さんは八歳の時の記憶に立ち向かいにいったんだよ」 ステ... [続きを読む]
|
- 2008/02/11 14:48君は似ている
- ウルリク……聞きなれない名前にステファンは首をかしげた。「君が知らなくても無理はないよ。屋根から落ちた時、ウルリクはまだ十歳にも満たなかった。六人の伯父さんの中でも――伯父さんというのは可哀想かな、死者は年を取らないから――一番早くに亡くなったし、ミレイユ... [続きを読む]
|
- 2008/02/08 19:58ウルリク
- 部屋の中がしんとしてしまった。聞こえるのは、陽射しの中で遊ぶアーニャの無邪気な声ばかりだ。 沈黙を破って、ステファンがおずおずと訊ねた。「ぼくのお母さんて……不幸なの?」「あ、いや。オスカーがそう言っただけで、実際にそうだとは……... [続きを読む]
|
- 2008/02/04 16:45オスカーの手紙
- 「ふ、まあいいわ。さて、この中から何か手掛かりが見つかるといいけど」 メモ帳を繰るトーニャの表情は、笑いを含んでいる。心を見透かされているようでステファンは不愉快だったが、ここは我慢して力を借りるしかない。「トーニャ、くれぐれも言っとくけど、これは仕事として頼んでるわけじゃないから」 オ... [続きを読む]
|
- 2008/02/01 01:13ステファン、語る
- 「二人とも、帽子を被った方がいいわね。取ってきたげる」 エレインは汗を浮かべた前髪を跳ね上げると、家の中に戻って行った。 八月も終わりとはいえ、日中はやはり暑い。アーニャは追いかけっこに飽きたのか、涼しい生垣の下にしゃがみこんで花びらを拾い始めた。「あん、とぅー、ぴー、ぽぉー」 数... [続きを読む]
|
- 2008/01/29 18:17エレインの問題
- 「それよりオーリ、例の“竜人管理法”のこと。何か対策は考えてるの?」 トーニャが声をひそめた。「ああ、エレインとはいろいろ議論してるよ。けど、わかってもらえなくてね。“野蛮なる竜人は竜に順ずる扱いとす”――希代の悪法だ。要するに竜人を隔離して、... [続きを読む]
|
- 2008/01/27 13:52小さな魔女
- 二棟続きの赤茶けたレンガの家は、左側がユーリアンの家になっており、隣は別の家族が住んでいるようだ。玄関のランプ飾りが魔女の形をしているのが可愛らしかった。きっと夜には、この魔女が灯りを抱いて出迎えてくれるのだろう。「あなたがステファンね? ユーリアンがさんざん誉めてたわよ」 お腹... [続きを読む]
|
- 2008/01/22 15:20三人、街に出る
- 石畳の大きな街には、新旧さまざまな建物がひしめいている。その間を縫って路面電車が走り、車が列をなして走り抜けていく。「そんなにキョロキョロしてると自分で田舎者です、と言ってるようなもんだよ」 オーリが冷やかすように声を掛ける。ローブではなく、涼やかな細身のスーツを着て帽子を被る姿は... [続きを読む]
|
- 2008/01/22 15:19(工事完了〜)
- 過去記事の訂正、ちゅうか修整工事、一応終わりました〜どこを直したかって?ほとんど全部っ!なんてね。投稿サイトの文章をコピペしただけですが。この機会にトップページも修整し、目次の整理やらサブタイトルの変更やら一部済ませました。本当はも少し変えたいけど・・・キリがないっ。... [続きを読む]
|
- 2008/01/20 21:51(訂正のお知らせ)
- え〜何がなんやら・・・の強引な展開になってまいりましたが、ちょっとここらで過去記事を振り返りまして、ちょこちょこ推敲&訂正しております。すでに読んで頂いた方には申し訳ないんですが、フォントがばらばらとか〜、視点がコロコロ変わって読みにくいとか〜、日本語の使い方間違ってまっせ、とか〜。... [続きを読む]
|
- 2008/01/19 09:22焦げ跡を追う
- 「うわ……!」 書庫の中を見たステファンは言葉を失った。本が列をなして飛び交い、書架はアメのようにぐにゃりと曲がり、部屋全体が渦巻きのように歪んでいる。「だから、まだ整理中なんだよ。危ないからステフはそこで待っていなさい」 オーリはそう言うと杖を取り出し、... [続きを読む]
|
- 2008/01/17 10:22忘却の辞書
- 保管庫で見たオスカーの記憶の中で、ミレイユが“決定的”なひと言を告げたのは、あれは確かステファンが八歳の秋だった。暖炉の薪がはじけた音まで覚えている。「あんまり思い出したくないな……でも間違いない。あの時、お母さんは魔法なんて存在しない、って... [続きを読む]
|
- 2008/01/14 01:55母からの手紙
- ステファンが起きて歩き回れるようになった頃、一通の手紙が届いた。「お母さんからだ!」 明るい出窓のそばに陣取り、ステファンは食い入るようにして手紙を読み始めた。ミレイユの文字は相変わらず几帳面で細かい。文面を目で追ううちにステファンの顔つきは真剣になり、けれどやがて笑い出した。「先生、... [続きを読む]
|
- 2008/01/10 17:00回復する思い
- マーシャは魔女ではないというが、不思議な力を持っているとしか思えない。あんなに酷かった頭痛も、彼女の作ったスープやお茶を飲むうちに嘘のように消えてしまった。 翌日にはもう外に出たくてしょうがなかったのに、ステファンはベッドでおとなしくしているよう厳命された。「なんで? ぼくもう平気な... [続きを読む]
|