前野利貞 さん

前野利貞さん: 小説「ハイエナの城」
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プロフィール

ハンドル名前野利貞 さん
ブログタイトル小説「ハイエナの城」
サイト紹介文不良債権処理は本当に成功したのか。その処理の切り札として登場したサービサーだが、腐敗が始まっていた。
参加カテゴリー
更新頻度情報提供89回 / 310日(平均2.0回/週) - 参加 2007/10/14 15:43

前野利貞 さんのブログ記事

記事削除機能過去の記事 … 1 2 次へ
  • 2008/07/24 16:12嘘部の民(139)
  •  彼は約束通り、月末には五万円を振り込んできた。 しかし、干川義彦の行方は杳としてわからなかった。しばらく経ってから、田中から電話があり、干川の携帯番号を知らせてきたが、それ以上の情報は得られなかった。 高山は、しばらくその番号にかけるべきかどうか迷っていた。番号だけわかっていても、住所や勤務先まで把握していなければ、かえって取り逃がしてしまうことになる。携帯の場合、番号を変えられたり着信拒否され... [続きを読む]
  • 2008/07/18 15:58嘘部の民(138)
  •  しかし、この辺が金森の駆け引き上手なところである。「役員とかけあって安くしてもらう」というのは、彼の常套句である。 一億一八九〇万円の借金が七〜八〇〇万円になるということで田中はいたく感激しているが、実際この債権の買い取り額は一〇万円である。 目の前に置いてある分厚いファイルの個人債権明細表の買い取り額の欄には一〇万円と記されてあったが、今はそこはホワイトで消されている。  以前、買い取り額が債... [続きを読む]
  • 2008/07/15 16:02嘘部の民(137)
  •  今は、一応設計事務所をかまえているが、月々の収入は二〇万円程度で、本格的な活動はまだ始まっていないとのことだった。友人からの借金もあるので、どうがんばっても毎月返済できる額は五万円が限度だと、本人の方から申し出てきた。  自分から連絡して来た点も含めて、田中が語った現況については、かなり信用がおけるものと思われた。また、自ら提示してきた五万円という月々の返済額も、彼が語った生活状況からすれば、ギ... [続きを読む]
  • 2008/07/11 16:37嘘部の民(136)
  •  社に戻ると、デスクにメモが置いてあり、名前と携帯電話番号が記されていた。田中英男という名は、先ほど訪問した債務者のものである。やはり自転車を押してきた男が田中だったのか。  高山は、すぐに携帯に電話を入れてみた。 「もしもし、田中社長でいらっしゃいますか。私、フューチャー債権回収株式会社の高山と申しますが。数日前にお手紙が届いたかと思うのですが、この度、平和銀行から当社へ債権が譲渡されまして、その... [続きを読む]
  • 2008/07/07 19:37嘘部の民 (135)
  •  高山は、下町の迷路に踏み迷っていた。二時間以上ひたすら歩き続け、足の疲労は極みに達していた。 日本の住居表示は、どうしてこんなに複雑で未整理なのだろう。番地を順番に辿って行くと突然異なった数字に出くわしてしまう。また、地図を見ても、数字の配列に明確なルールがあるとは思えない。 大学時代の英語教師が、アメリカの住居表示は整然としており、「迷子になろうと思ってもなれない」と語っていたことを思い出す。... [続きを読む]
  • 2008/07/04 15:15返さない理由(134)
  • 「いい給料もらっているのに、どうしてこんな借金漬けになっちゃったんですか?」 「給料がいい反面、金銭感覚が麻痺しちゃうみたいですね。うちの会社には、僕みたいな人間が結構いるんですよ」 「消費者金融の方は延滞していませんか?」 「はい」 「家賃は?」 「七万五〇〇〇円です」 「うちの債権は住宅ローンですよね。どうして延滞しちゃったんですか?」 「千葉県にいい物件があると知人に紹介されて、将来そっちの方に住も... [続きを読む]
  • 2008/06/30 21:49返さない理由(133)
  • 「今からうかがいたいんですが……」 と言うと、果たして一時間も経たないうちに、本人が現れた。 通常面接は二人で行うが、突然の来訪であり、金森も外出していたので、高山が一人で対応することになった。  福田は三〇代半ばの中肉中背の、端整な顔立ちの男であった。 「さんざん何度もお電話したんですけどね。電話をとっていただけませんでしたよね」  まず一言文句を言った。 「あ、そうでしたか。全然知りませんでした。... [続きを読む]
  • 2008/06/25 15:45返さない理由(132)
  •  調査会社に電話をすると、早速、担当者がやってきた。  中田と名乗るその男は、調査員(つまり、探偵)というよりは、愛想の良いごく普通の営業マン風の男だった。 福田の案件について手短に説明すると、住民票のコピーなどの基本情報を手渡した。 調査方法は企業秘密だが、おそらく内部情報によるものだろう。この会社は、国内のほとんどの金融機関を網羅していると豪語していた。そして、この手の調査が可能と言うことは、... [続きを読む]
  • 2008/06/22 16:57返さない理由(131)
  •  一回目、すなわち支払督促正本を福田の自宅に送った時は、債権譲渡通知書の時と同様、「保管期間経過につき」という理由で戻ってきた。 内容証明郵便の場合、不在で返送されたらお手上げだが、支払督促は裁判所から送られてくる民事訴訟法上の特別送達なので、受取拒否された場合でも、担当官と相談して、別の方法を考えてもらうことができる。 その究極とも言える方法が、付郵便送達であり、本人が不在だろうが受取を拒否され... [続きを読む]
  • 2008/06/16 21:27返さない理由(130)
  • 「それじゃ、仕方ないから、債権譲渡通知書を勤務先の方に送っておきましょうか。ミヤコ運送ですか。良かったですね、会社がわかっていて……。しかも大手なので、恐らく何も問題はないでしょう」  南雲が言った。  勤務先不明のケースなど、ざらにある。もしわからなければ、その時点で、暗礁に乗り上げてしまう。 また、大手宅配便業者なので、受取を拒否されることも、よもやあるまい。小さな会社だと、従業員と示し合わせて... [続きを読む]
  • 2008/06/13 16:16返さない理由(129)
  • 「お話を聞いてたちの悪そうな相手なので、もしやと思いましたが、やっぱりそうでしたか……」  南雲が言った。 前の会社でも、同様のケースがあったということだった。  債権譲渡通知書は内容証明郵便で送るが、これは書留扱いなので、相手が不在だったり受取拒否されたりすると、差出人のところに戻って来てしまう。「保管期間経過のため」というのは、最初配達した時不在のため不在通知を投函し、二週間経って誰も郵便局に受... [続きを読む]
  • 2008/06/09 19:24返さない理由(128)
  •  さらに同じ階の部屋のインターホンを次々に押してみたが、五軒ともみな不在であった。このアパートの住人は単身者が多く、日中は外に出かけているらしい。  土谷からは、本人が居留守を使っているときには、わざと聞こえよがしに、隣人に大声で話しかけるようにと言われていた。しかし、このような迷惑行為は気が進まず、幸い隣人が留守であったのでやらずにすんだ。 また、電気メーターは微かに動いており、居留守かどうかは... [続きを読む]
  • 2008/06/04 16:37返さない理由(127)
  •  福田は、江東区の住吉駅から一五分程歩いたところにある、古ぼけたアパートに住んでいた。住宅街の一角にある三階建ての、コンクリートむきだしの、飾り気のない建物であった。 すぐ近くには神社があり、ときおり烏の鳴き声が耳をついた。 エレベーターなどはもちろんなく、彼の部屋のある三階まで階段を上った。 午前一〇時であったが、チャイムを押しても中から何の反応もない。部屋は三階の一番奥にあり、その扉の脇には彼... [続きを読む]
  • 2008/06/01 19:14返さない理由(126)
  • 「うちは法務省で許可を受けたサービサーでして、債権放棄に応じる用意もございます。この件につきまして、一度ゆっくりお話し合いをしたいのですが。大変申し訳ないのですが、一度当社までご足労頂けないでしょうか」  福田はようやく事態が飲み込めたらしく、急に語調を改め、 「わかりました。今運転中なので、後ほどこちらの方からお電話させていただきます。その時にはちゃんとお話ししますので、よろしくお願いします」 と... [続きを読む]
  • 2008/05/29 16:12返さない理由 (125)
  •  福田貴史は、ミヤコ運送という大手宅配便会社のドライバーをしていた。宅配便ドライバーは、多重債務者に多い職業の一つとされていたが、それは単に、高収入が得られるからであろう。女性債務者に水商売をする者が多いのと同じ理由である。借金地獄から早く逃れるためには、少しでも実入りのいい職につきたいと考えるのは、誰でも同じはずだ。  しかし福田の場合、十年以上勤務してから借金をつくったのであって、借金をつくっ... [続きを読む]
  • 2008/05/26 16:28髪結いの亭主(124)
  •  また、ある種の国家資格が、欠格事由の中に含まれていることを、ことさらに強調するという方法もある。 ある種の国家資格とは、例えば、弁護士、司法書士、行政書士、宅地建物主任者などのことである。また会社経営者も、破産者だとなることはできない。さらに、警備など、許認可を必要とする業務においても、破産者を雇うことが禁じられている場合がある。 欠格事由とは、その資格を取得できない理由ということである。その理... [続きを読む]
  • 2008/05/20 15:24髪結いの亭主(123)
  •  デメリットを挙げるとすれば、銀行・クレジット会社などの個人信用情報機関のブラックリストに登録されることにより、新たな借り入れができなくなったり、クレジットカードが作れなくなることである。 もちろん延滞した時点で、事故情報として登録されるはずだが、破産者の場合、さらに信用が低下する。しかしそれでも、通常は三年〜五年、長くても一〇年経過すれば、ブラックリストへの登録は抹消される。  破産者の名前が唯... [続きを読む]
  • 2008/05/16 16:58髪結いの亭主(122)
  •  それから一週間後、佐山章一の代理人の弁護士から、受任通知が届いた。どうやら自己破産の手続きを取ったようであった。  今後の連絡は一切弁護士の方にするようにと書かれてあり、サービサー法上も貸金業法上も、この通知が届いたら、本人とは直接交渉できないことになっている。たちの悪い弁護士にかかると、受任通知後うっかり本人と直接連絡を取ってしまおうものなら、鬼の首をとったように騒ぎ立てられ、債権放棄の材料に... [続きを読む]
  • 2008/05/13 15:16髪結いの亭主(121)
  •  それから二日後、元夫の佐山章一がやってきた。ちょうど四〇になるはずだが、茶髪で若々しく、どう見ても三〇ちょうどぐらいにしか見えない。それは精神面についても言えるらしく、面接中も、終始里美のことを非難したり、責任をなすりつけたりするような言動が目立った。 また、妻の長期入院が自分が起こした事故によるものだったことや、テレクラにはまったことなどについては一切触れず、自分はあくまで保証人にすぎず、主債... [続きを読む]
  • 2008/05/08 13:42髪結いの亭主(120)
  • ・四菱銀行 二〇,〇〇〇円  残七二四,二三〇円 ・アポール 六,八〇〇円   残三五一,九〇〇円 ・太陽信販 一五,〇〇〇円 ・富士ローン 五,〇〇〇円 ・生命保険 七,四七六円 ・国民健康保険未納分 一〇,〇〇〇円 ・税金未納分 一七,〇〇〇円 ・知人 一〇,〇〇〇円 ・家賃 六四,〇〇〇円                  計 一五五,二七六円  毎月の返済額が、几帳面な文字でぎっしり書き込まれていた。これだけ... [続きを読む]
  • 2008/05/04 18:56髪結いの亭主(119)
  •  鈴木里美は、現在四三歳だが十年前三つ年下の男性、佐山と結婚して埼玉県に美容院をオープンした。里美も佐山も共に美容師であった。その際、銀行から借り入れた額が約二〇〇〇万円。結局、それが返済できなくなってしまい、現在に至っている。 夫の佐山が年下ということもあって、主債務者は里美の方がなり、佐山が連帯保証人になっていた。 美容業界は競争が激しく、カリスマ美容師のように高い技術をうたい文句にする高級店... [続きを読む]
  • 2008/05/02 13:56髪結いの亭主(118)
  •  女は少し固い表情を覗かせながらドアを開けて入ってきた。  高山は、彼女を第一応接に案内した。新規案件のために来社する者の数が急に増え、三つの応接室は常に満室状態になっていた。  高山はいったんオフィスの方に戻ると、分厚いファイルを抱え込み、金森と一緒に再び応接室に戻ってきた。 「どうもわざわざお呼び立て致しまして、すいませんでした」 まず、金森が口を開いた。 女の名は鈴木里美。 ここに来る多くの者... [続きを読む]
  • 2008/04/29 14:11敗北(117)
  • 「ほう、ずいぶん調べたようだな。しかし、あのマンションは好評だったんで、全部売却済みだよ。うちの会社の資産なんて何も残っちゃいないよ」 「しかし、青山のマンションには、御社の持ち分が残っているんじゃないですか」「あれは宮川建設の持ち分だろう。おまえらの債権は宮川不動産に対するものだろうが。お宅らもよく知っているように、別々の法人なんだよ。お前らが宮川不動産に対していくら債権を持っていようが、宮川建... [続きを読む]
  • 2008/04/24 14:49敗 北 (116)
  • 「せっかくわざわざお出で頂いたのだから、お話だけでも伺おうか」  二人は、パーティシションで仕切られた応接室に案内された。 高山が名刺を差し出すと、宮川は、 「先日拙宅に来られた方とは違うようだが」 と言った。 「村井ですか。村井は退社しました」 「そうですか。その方が身のためだよ。あんたらも、こんな仕事から早く足を洗った方がいい。だんだん人相が悪くなってゆくから」  宮川は嫌味たっぷりに言った。 「あれ... [続きを読む]
  • 2008/04/22 16:39企業舎弟(115)
  •  天野不動産を出ると佐賀は、飯田橋から市ヶ谷にかけて外堀沿いの緑道をトボトボと歩いていた。この道は桜並木で、桜の季節になると大勢の花見客たちで賑わう。お堀を横切って外堀通りを渡るとすぐに神楽坂で、手前に行くと靖国神社の広大な敷地にぶつかる。  この辺はオフィス街というよりはどちらかというと学生街で、佐賀の横を大学生やセーラー服の女子高校生たちが通り過ぎて行く。かく言う佐賀も学生時代はこの辺を友人と... [続きを読む]
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