- 2008/05/10 04:32「恋姿koisugata」23
- 23「りゅう寝ちまったか?」「あ いや 久しぶりの東京で気が昂(たか)ぶってしまって・・・」「ひとつ 聞いてもいいか?」「はい」「この間 酔っ払って泊まった時の事だけど 何かあったか?」「何かって?」「その どう言ったらいいんだ あれだ 裸だったろう りゅう」「なんだ そんなこと ほら」りゅうは布団をめくって胸から下半身まで素っ裸の体を見せた。「ば・ばか しまえ」「僕は寝る時 ... [続きを読む]
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- 2008/05/06 17:05「恋姿koisugata」21
- 21丸顔で額から頭頂部にかけて禿げ上がり両側に白髪が残った人の良さそうな老人がニコニコ微笑みながら言った。そのお茶を手にしてテレビを眺めながら言った顔はあの時りゅうの裸の胸を弄んでいた老人佐原だった。りゅうの所在を疑わなかった祐輔は、ここまで導かれて来た怒(いか)りの矛先をどこへ向けていいのか分らずぶっきら棒に言った。「りゅう君 おられますか?」「りゅうですか? 今 私の用で使いに ... [続きを読む]
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- 2008/04/30 12:02「恋姿koisugata」19
- 19自分の名が記された便箋を見て、祐輔は鍵穴の悪戯(いたずら)の件も、明確な意思のもと行われたことに気づかされた。誰かが自分に対するストーカー行為をしていることに驚きうろたえた。名前を知っているのはアパートの住人、離婚した手前あえて広くは知らせてない親類、会社関係、幼馴染、アパートの人間にも会社の人間にもましてや親兄弟にも《忘れたとは言わせない》と言われるようなトラブルを抱えた覚え ... [続きを読む]
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- 2008/04/28 14:32「恋姿koisugata」18
- 18栄子が祐輔の部屋へ来たあとで、祐輔の身の回りに不可解なことが起き始めた。祐輔が帰宅してドアに鍵を差そうとしたが、なかなか鍵が鍵穴に挿入されて行かない。不思議に思って鍵穴を覗いて見ると透明な接着剤のようなもので塞がれていた。単なるいたずらなのか理由も解らずに管理人に言うのも何か憚(はばか)られ、その晩は営業車のヒーターをかけて車で眠った。翌日の夕方 鍵屋と待ち合わせ錠を一式取り替える ... [続きを読む]
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- 2008/04/25 22:55「恋姿koisugata」17
- 17あの晩はいたたまれなくなって食事もそこそこに栄子の家を後にしたのだった。その後 心が幾分落ち着ちついた頃栄子が祐輔の部屋を訪ねて来た。「あまり外でお話をするような内容でもないので お伺いしました。」祐輔のあの時の訝(いぶか)しい態度を単刀直入に聞いてきた。「何か嫌われるような・・・その・・・えーと・・ からだとか・・ヘンでした?わたし」「それは違うよ、僕には勿体ないほどだった。 ... [続きを読む]
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- 2008/04/22 05:46「恋姿koisugata」16
- 祐輔は手頃な値段のワインを買い、約束の時間より遅い1時間ほど経ってから、栄子の部屋のインターホンのブザーを押した。営業車で自宅へ帰り出張帰りでくたびれていた体の汚れを、急ぎシャワーで洗い落とし下着を替えてやって来たのだ。「遅かったですね」「ごめん 電話もしないで」栄子はベージュの薄手のクルーネックセーターとスカートに着替えており、草模様のエプロンを着けて出迎えてくれた。「遅れて来てく ... [続きを読む]
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- 2008/04/18 12:37「恋姿koisugata」15
- 15栄子と付き合い始めて祐輔は出張から営業所へ帰って来るのが楽しみになり始めた。栄子は帰って来た祐輔の車が見えるとお茶を入れ始め祐輔がデスクに座ると「おつかれさま」と笑顔とともにお茶を出してくれる。それを見ている所長の怪訝(けげん)そうな顔さえなければ、素直に喜びを表すところだが、そうもいかず祐輔は「どうも・・」と素っ気無く振舞っていた。出張から帰った日の夜は必ずカフェで待ち合わせ一 ... [続きを読む]
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- 2008/04/13 18:35「恋姿koisugata」14
- 14祐輔は離婚したばかりで元嫁への未練があり、女性と付き合うことなど露ほども考えていなかった。むしろ、元嫁との再生活を夢見ていたほどだ。だが、りゅうの一件を忘れてしまいたい祐輔は、松嶋へと云うより女性への積極的なアプローチを意識的に隠すことをしなかった。誰かを自分の私的空間に置くことに警告アラームが今回は鳴らなかった。親しくなれば裏切られるという怖れの気持ちがどこかへ追いやられたようだ ... [続きを読む]
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- 2008/04/12 14:45「恋姿koisugata」13
- 13祐輔はりゅうと最後に会ってからは、りゅうの町への出張の際に使っていた旅館を町外れにある宿に替え、極力コンビニやガソリンスタンドにも立ち寄らないようにしていた。だが、二人一緒の布団で眠り、真裸(マッパ)のりゅうの素肌に触れた夜のことは、日を増すごとに祐輔の心の中を大きく支配するようになっていた。りゅうのことを振り払うように、祐輔は仕事に身を入れた。祐輔の勤務先は、本社の支店ではなく ... [続きを読む]
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- 2008/04/10 12:37公開版「恋姿koisugata」12
- 12「あなた朝ですよ、起きて下さい 外はいいお天気よ」「うーん もう少しだけ」妻からの呼びかけに、夢うつつに寝返りを打つと素肌に触れた。目を閉じたまま、背を向けた裸の嫁に足をからませ抱いた。ホコホコと熱い体温が祐輔の胸に伝わって来た、久しぶりの肌の感触は心地良くて幸福感に包まれた。「ん? そんな筈はない」祐輔は目を開けて見た。背を向け眠っているりゅうの背中から腕ごとすっぽりと祐 ... [続きを読む]
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- 2008/04/07 18:31公開版「恋姿」10
- 10祐輔はりゅうの差し出した。水割りのグラスを見詰め続けていた。祐輔がカウンターの席座って十分以上の時が流れていたが、りゅうの客あしらいのお愛想言葉にも無言のままだった。正直な思い祐輔は「演」来たことを後悔していた。コンビニ前で「演」に来ようと決意させたものが何だったのか。厄介な場所に巻かれ絡んで行ってしまっていることへのじんわりとした恐れが湧いて来る。祐輔は自分の気弱さを振り払うよ ... [続きを読む]
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- 2008/04/06 18:20公開版「恋姿」9
- 9慌てて「演」から走り出てしまった祐輔は、覗き見をしていたという何よりの証である手土産を、りゅうのバーカウンターの上に置いて来てしまったことを、後でひどく後悔した。土産を置いてきたという確かな記憶のせいで、あの光景を目の錯覚だと自分を騙(だま)したり、気のせいにすることも適(かな)わないのが苛だたしかった。理解の範疇を超えた映画のような場面が脳裏に浮かび祐輔に苦く熱い怒りのような感覚が ... [続きを読む]
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- 2008/04/05 18:42公開版「恋姿」8
- 8祐輔は瞬間、意味を解せずに立ち尽くし見入った。布団の端(はし)を踏んで立っていたりゅうの足元から白髪頭がせり上がり膝立ちでりゅうの胸に顔を密着させた。男だ。しかも老人だ。薄茶の厚い下着を着(つ)けている。老人はりゅうの手足のフリの間合いを心得ているらしく、器用に動きに合わせて胸を舐めたり揉みしだいたりしながら、素肌の胸を弄(まさぐ)っている。「〜悟る身の丈(たけ)はぁ〜 俺の ... [続きを読む]
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- 2008/04/04 23:07公開版「恋姿」7
- 7次の日の朝、旅館を二日酔い気味の体で出て車に乗り込むと、りゅうへの手土産の地元名産の佃煮セットの箱が助手席に所在無さ気に残っている。祐輔はそれを渡そうかどうか迷った。昨夜、祐輔が和真の歌を唄った以後のりゅうは急に無口になり、最後まで笑顔を見せなかった居心地が悪いまま店を後にしたのだった。落ちぶれても元歌手の前で、不躾な質問と、止せばいいのにヘタな歌まで唄い、気分を害させたかも知れ ... [続きを読む]
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- 2008/04/04 05:37公開版「恋姿」6-2
- 6-2「どうやら、聞いちゃいけないことを聞いたようだ。 オレだって、ここ数年は色々とあったから 結局 マケ組になっちまったけどさ」「祐さんが? そうは見えないですけど」「前にも言わなかったっけ? バツイチ・リストラの話 心の中は演歌の風 がピューピュー吹いてるっとこかな」「バツイチは聞いたような気がし ましたけど・・・」「君がりゅうでも和真でもどっちでもいいんだ。 ただ、色々と嵌( ... [続きを読む]
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- 2008/04/02 21:52公開版「恋姿」5
- 5当時の彼は、童顔の面差しで何かに挑むような目ヂカラが魅力で、花やかなオーラを振りまき唄っていた・・・その面影は薄れている。今のりゅうには、人を射抜く程の情熱を感じさせていた瞳は消え失せている。デビュー当時の額(ひたい)を出した髪型こそしてはいなかったが、彼は本道路和真だ。声質は、以前と少しも変わってはいない。苦い歳月を苦闘しながら過ごして来た自分と重なり、和真もそれと同じような境遇を ... [続きを読む]
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- 2008/04/01 20:23公開版「恋姿」4
- 4足早に秋も過ぎ、祐輔はスナック「演」のことを忘れかけていた。多分この後(のち)誕生日を迎える時にこそ、いい想い出の一コマとして甦って来る事もあるだろうが、それ以上でも以下でもなく格段の思い入れなどなかった。家族や知人などという温かみのある存在を避けようとする心理が働いていた。ふたたび裏切られることが怖かった。所詮は遠い町の出来事だと気持ちを入れ込まないように、心の中で自分に言い聞かして ... [続きを読む]
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- 2008/03/31 18:58公開版「恋姿」3
- 3その時、若い男がドアを開け帰って来た。「遅くなっちゃって・・・すみません」祐輔は我に返り咳払いをし、喉の辺りを片手で押さえて頷(うなず)いた。若い男は、カウンターの中に入りポリ袋の買い物らしきものをガシャガシャ言わせている。 「お口に合うかどうかは解りませんが、 良かったらこれを・・」皿にこんもり乗った湯気が出ている焼き鳥を差し出した。「買いに!?・・・わざわざ?」「夜になる ... [続きを読む]
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- 2008/03/30 23:15公開版「恋姿」1
- 1祐輔は今日46歳になった。今更 誕生日に格別な感慨はないのだが、46回も誕生日という日を繰り返し迎えていると、元家族達にささやかながら祝って貰ったシーンがフラッシュバックのように想起される。それは、一種PTSD(心的ストレス症候群)のように気持ちを暗くさせ、幸福から置き去りにされたような不安が心に小さな衝撃を与える。特に今日のように、泊まりの営業先で注文の入りがめっきり少ない日に見知らぬ空の ... [続きを読む]
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