- 2008/05/14 12:53イオマンテの酒
- 「これほど位の高いクマ神を酒なしでは送れないので、酒を醸すことにしよう。それも今夜のうちにだ。」 と言い、さらに大急ぎでコタンの中を走り回って、麹のある者は麹を持ってくるように、精白のヒエでもアワでもある者は持って集まるようにと、コタンの上の方へ、また下の方へ使いの若者を走らせました。 それと同時に、老人は大きな鍋を洗って火にかけさせ、コタンの人が持ちよった精白のヒエやアワをきれいに洗い、粥を煮はじ... [続きを読む]
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- 2008/05/13 21:32スーパーゴールデンデラックススペシャルおじや
- お湯が沸くと、そのトランクを囲んでまずはともかく朝のお茶を一杯いただくのである。そのあとすこしグズグズしてなんとなくゆうべのつづきのような話をして、それからジャンケンをひとつやる。ジャンケンで負けたやつが食器を洗うのである。そのあいだ、顔は笑ってるが眼は笑っていない。食器洗いというのはやはり面倒でいやなものであるからだ。 朝めしはたいていインスタントラーメンとパンである。インスタントラーメンのスー... [続きを読む]
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- 2008/05/10 12:00極北の野点
- クレッパー二人艇に乗ったカップルが着いた。ジャーマン・スイス(ドイツ系スイス人)で男は大学の助手、女は高校で地理を教えている。われわれのそばにテントを張った。女性の名がカトリン、気が強くいつも男性のピーターをリードしている。ティー・セレモニーを一番喜んだのもこの女性だ。「へー。グリーン・ティーの粉って本当にグリーンなのね。この味面白いわ」「まず飲む前に、その茶碗をしげしげと眺め、何かほめなきゃいけ... [続きを読む]
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- 2008/05/09 12:00レモンと太陽と海と
- 海の微風は葦の繁みを突き抜けては来ず、暑さはすさまじくなっていた。ジネッタと私は、まぶたから汗が少しずつ流れ出し、かきあげた髪の毛のあいだや、曲げた関節や、上唇の上のあたりにもたまるのを感じ、なめてみるとつめたく塩っぱかった。ジネッタは起き上がって水泳帽の中身をさぐり、二つ切りにしたレモンを取り出し、そのひとつを私に差し出し、もう一度横になり、私達は開けた口の上でレモンをしぼった。「とてもおいしい... [続きを読む]
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- 2008/05/07 13:09つましいもてなしの食卓
- そうしてるあいだに、マグロワールは夕食のしたくをすませた。水と油とパンと塩でつくったスープ、少しばかりの豚の脂身、ひと切れの羊肉、いちじく、新しいチーズ、大きな黒パン。彼女はまた、自分の考えでモーヴ産の古いぶどう酒を一本つけたしていた。 司教の顔は、もてなし好きな人に特有の陽気な表情に変わった。「さあ、どうぞ」と生き生きと言った。レ・ミゼラブル〈上〉 (古典童話シリーズ)あらゆる宿も食事も断られ続けた... [続きを読む]
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- 2008/05/04 18:09プレイボーイのレモネード
- 「なにか飲みに行こう、とマルチンが私に言った。おれ喉が渇いた。」私たちは<カフェ>という文字が書かれている建物を見つけた。なかにはいったが、タイル張りのホールで冷たく、あまりもてなしのよくないセルフサーヴィスの店にすぎなかった。私たちはカウンターのほうに向かい、とっつきにくい婦人から清涼飲料水を買ってテーブルに置きに言ったのだが、そのテーブルはソースで汚れ、一刻もはやくその場を立ち去りたい気にさせ... [続きを読む]
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- 2008/05/03 12:00汽車で食べる日本人
- 日本人は私たちのように食事時間にうるさくないし、長い間何も食べなくても平気です。たった一膳の御飯と二、三切れのたくあんで何時間も働きます。ところが普段は何時に食べても、何も食べなくても平気な日本人が、ひとたび旅に出ると、絶えず何かを口にしています。長距離列車に乗ると、汽車が駅に停まるたびに、見るからに細くてきゃしゃな日本人が何人もホームに降りてきて、駅弁や饅頭などを買う姿が目に入ります。たった三、... [続きを読む]
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- 2008/05/02 12:00うたた寝の食事
- それにしても、何という恰好な隠れ家であろう。入り口のところに黒人のエレベーター・ボーイ一人。誰に送られ、誰に迎えられる煩わしさもないのである。 私はまる二日の間、そのベッドの上に、昏々と眠りこんだままでいた。時折、薄目をひらいてみるが、また閉じる。近くのスーパー・マーケットから買い入れてきていたパンとバターと、コーン・フレークスと牛乳と、ハムと砂糖を、紙袋のまま、窓枠の下に置いて、時々、這い起きて... [続きを読む]
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- 2008/05/01 12:00冒険の食料
- おらはトウモロコシ粉の袋を持って、カヌーをかくした所まではこぶと、ブドウのつるや木の枝を押し分けて、カヌーの中に入れた。わき肉のベーコンも同じようにしてはこんだ。それからウイスキーのびんもだ。コーヒーと砂糖もあるだけ、弾薬も全部いただいた。銃の詰め物も忘れなかった。バケツとひょうたんも入れ、ひしゃくとブリキのコップも、古のこぎりと二枚の毛布も、フライパンとコーヒーポットも入れた。釣り糸やマッチや、... [続きを読む]
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- 2008/04/30 12:00自制するワイン
- 弁護士のアスタン氏はいかつい顔立ちの人で、その顔が明るく微笑することはけっしてなかった。彼の会話は冷たく、そっけなく、とつとつとしていた。感情はほとんどあらわさない。やせて背が高く、無味乾燥で、陰気で、それでいてどこか愛すべきところがあった。友人同士の会合で、ワインがお気に召した場合など、彼の目はいちじるしく人間的な光を帯びた。その人間味は、なるほど言葉になってあらわれることはけっしてなかったけれ... [続きを読む]
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- 2008/04/29 12:00床屋の玉ねぎ
- その床屋のイワン・ヤーコブレヴィッチ、この人がかなり早く目をさましますってえと、焼きたてのパンがプーンと匂ってきた。寝床の上で少し起きあがってみますと、かなりご立派なご婦人で大のコーヒー好きのおかみさんが、たった今焼き上がったばかりのパンをかまどから取りだしているところです。「プラスコーヴィヤ・オーシポヴナ、今日はコーヒーはいらないよ」なんてイワン・ヨーコブレヴィチが申します。「かわりに玉ねぎをそ... [続きを読む]
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- 2008/04/28 12:00辛いピーマン
- 夕食は予期したよりずっとましだった。一尺ほどの高さのテーブルのうえには、米とピーマンをたっぷりぶちこんだ老鶏の煮込み料理が供され、それから油で調理したピーマン、そのあとにはガスパーチョ、つまりピーマンのサラダみたいなものが出た。こんなふうに辛みの効いた料理が三つもつづいたものだから、われわれはモンティーリャ地方のワインの入った革袋にひっきりなしに手を伸ばした。これがまた上物だった。カルメン (The or... [続きを読む]
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- 2008/04/27 12:00サンドイッチのこだわり
- 私の少年時代、急行特急列車の停まるほどの駅には、必ず駅弁売りがゐた。僅かな停車時間中、独特の口調で忙しげに売り歩くのを、人々はあけた客車の窓越しに呼びとめ、買ひ求めた。「べえんと、べんと。お寿司にべんとうさあんどいつち」 此の「さあんどいつち」が、私のサンドイッチの原型であつて、原型に必須な条件を満たしてゐないサンドイッチは困る。まづ、パンがしつとりした柔らかいパンで、耳は切り落としてあること。ハ... [続きを読む]
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- 2008/04/26 08:34耐えられない肉じゃがの重さ2
- 恋をするなら、おいしい手料理をふたりで食べて!と声を大にして言いたいくらい。では、どんな料理が有効なのか。 まあ、ひとそれぞれ、好みというものがあるだろうから、無意味な問いかけのような気もするけれど、ある女の子は言っていた。「グラタンですよ。肉じゃがよりグラタン」 え?それはあなたの好み、もしくは、ボーイフレンドの好みに過ぎないんじゃないの?そう私は思ったけれど、彼女はさらに力を込めて主張した。「肉... [続きを読む]
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- 2008/04/25 12:00ポテトチップスの快楽
- お風呂に入ってパジャマに着替え、既に歯も磨いてしまった後。さあベッドに入ろうかな、と思いつつ、あ。明日の天気予報を見ておこうかな。ほんの五分程度のつもりで、TVのスイッチを入れてしまったら運のつき。カウチにだらしなく寝そべって、天気予報を放映しているチャンネルを探してリモコン操作しているうちに、全然みるつもりもなかった番組にひっかかり、いつのまにやら目が釘付け。そうして、ちょっと小腹が減ったなあ、な... [続きを読む]
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- 2008/04/24 12:00ぬか漬け時差
- うちのオカンが”泥棒に入られて、これ持って行かれるのが一番困る”と言って大切にしていた「ぬか床」があった。--中略--夏は気温でぬかの温度が上がるため漬かりやすい。特に茄子のように更に漬かりやすい野菜を朝の食卓に出すには、目覚まし時計を掛け、夜中に一度起きて、茄子をぬかに漬けてから、また寝る。するとボクが起きる頃には丁度よく漬かった、群青色に輝く茄子のぬか漬けが食卓に並んでいる。 そうやってオカンは朝... [続きを読む]
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- 2008/04/22 20:17耐えられない肉じゃがの重さ1
- 大学時代、片想いしていたサッカー部の先輩には、アプローチに何回かプレゼントを贈ったことがある。そのうちの一つが、手作りの肉じゃがだ。 も~、下心見え見え。「私、手料理得意なの。実は家庭的な女なんです」 というメッセージを発信するためだけの、いかにもなメニュー。そもそも彼は自宅生だったので、家に帰れば料理上手という噂の母親の作った食事が待っている。そんな男にタッパーに詰めた肉じゃがなんか贈るなんて、た... [続きを読む]
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- 2008/04/20 20:48昼食の黒ビール
- 「ミセス・プール」と料理番はグレイスに向かって言った。「わたしどもの食事がもうじきできますよ。下りてきますか?」「ううん、いつものようにあたしの黒ビールとプディングを少しばかりお盆にのせておいてよ、階上(うえ)に持っていって食べるから」「お肉はどうします?」「ほんの一切れ、それからチーズを少し、それだけでいいから」「菓子(サゴ)は?」「いまはいらない。お茶になる前に階下(した)におりていくから。自... [続きを読む]
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- 2008/04/19 14:16貧しいスクランブルエッグ
- アントンは卵を二つとって、なべで割り、からをさかさにしてから、石炭箱にほうりこみました。それから、なべにいくらか水を入れ、紙ぶくろをとって、何か白いものを卵と水の上にふりかけました。そして、小さいあわたて器で、かきまわしました。「どっこい、こいつめ。かたまっちまいやがる。」と、アントンはどなりました。 ピーフケは石炭箱のほうにぶらついていき、卵のからを訪問しました。「なぜお砂糖をふりかけたの?」と... [続きを読む]
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- 2008/04/18 12:00アメリカのレストランにて
- 私どもはまずシーザー・サラダをいただくことにしよう、と彼は言う。それからスープをボウルでもらって、エクストラのパンとバターをいただきたいですな。ラム・チョップなんぞはよろしいな、と彼は言う。それからサワー・クリームをかけたベイクト・ポテト。デザートのことはそのあとで考えましょう。ありがとう、それだけお願いします、と彼は言う。そう言って彼はメニューを返す。(引用は収録作品「でぶ」より)頼むから静かに... [続きを読む]
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- 2008/04/17 13:23門番のカフェ・オ・レ
- 母親と息子は一緒に食事をとったところだった。シェリは彼が呼ぶところの「門番のカフェ・オ・レ」を、愚弄とも賛辞ともつかぬ台詞で歓迎した。それは脂肪分をたっぷり含んだ狐色の甘いカフェ・オ・レで、まずこんがり焼いてバターをぬったパン切れをちぎって中に入れ、それをふたたびとろ火にかけて、じっくり煮えてきそうになったパン皮がコーヒーの表面をおおうようになるまで煮詰めたものだった。シェリ (岩波文庫)巴里の元高... [続きを読む]
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- 2008/04/16 23:48月の味
- 4月10日「おぼろ月」とろけそうなきいろい春の月を見かけたらそれを、ひとくち、なめてみる想像をする。・カスタードクリームみたいに 甘いか。・コーンポタージュみたいに とろとろか。・バナナジュースみたいに いいかおりか。365日のスプーン月の味。向田邦子さんは小説の中で真昼の月を切りそこなった薄い輪切りの大根に喩えていた。たしかに、青空にうかぶ昼の月は生の大根のようなシャキッとした味がすると思う。やたらに赤... [続きを読む]
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- 2008/04/15 16:25オペラ座のボンボン
- 友人は劇場の入り口のほうへ行きます。「おい、そっちじゃないぜ。」「ボンボンを買いに行くんだ。頼まれたんだよ。」 私たちはオペラ座の廊下にある菓子屋に入りました。 私はできるものならその店全部を買い切ってしまいたいと思いました。そして袋に何を詰めさせたものかと思案していると、友人が注文しました。「砂糖漬けの乾葡萄(ほしぶどう)を一斤。」「それがお気に召すのかい。」「ほかのボンボンは決して食べやしない。... [続きを読む]
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- 2008/04/14 12:00枝豆の皮
- まず、ゆでたエダマメのマメを食べる。ここで、ほとんどの人は、エダマメの皮はカスとして捨ててしまう。エダマメの皮の内側には薄い透明な皮がもう一枚あるから、それをはがすわけです。この薄皮をはがすのは、最初は面倒だった。なれてないからね。で、それを二、三回練習すると、するりとむけるようになる。透明の薄皮はセルロイドみたいで、けっこう固い。この部分がついていると、喉にひっかかってしまう。 薄皮をはがした皮... [続きを読む]
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- 2008/04/13 12:55お菓子の味の雲
- 「おなか、すいた。」きゅうにひとりの子がいいました。すると、さっきのおとこの子が、びっくりしたようにいいました。「このくも、なめてごらん、あまいよ。」「ほんと、アイシューモみたい。」モモちゃんも、くもをちぎって、なめながらいいました。「おいしいよ。おいしいよ。」ぼうっと、あんずいろにひかっているくもは、あまくって、すこしつめたくって、アイスクリームとシュークリームの、あいのこみたいです。 みんなは... [続きを読む]
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