- 2008/03/09 21:55斉藤幸2 (マージナル-24)
- アパートは、幸のものではない。名義人は幸の所属する公的な団体。幸のような能力者は数多く存在するわけではないし、まとめて同じところに居住する必要性は低い。そんな理由で、能力者は個々の都合に合わせて、適当な賃貸物件を「1部屋」単位であてがわれる。契約だ。幸の持ち物の全ては契約という一語に集約できる。 真っ暗な部屋に帰らずにすむために、出かけるときにはいつも小さな常夜灯を玄関先に灯す。LED ... [続きを読む]
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- 2008/03/09 21:55斉藤幸2 (マージナル-24)
- アパートは、幸のものではない。名義人は幸の所属する公的な団体。幸のような能力者は数多く存在するわけではないし、まとめて同じところに居住する必要性は低い。そんな理由で、能力者は個々の都合に合わせて、適当な賃貸物件を「1部屋」単位であてがわれる。契約だ。幸の持ち物の全ては契約という一語に集約できる。 真っ暗な部屋に帰らずにすむために、出かけるときにはいつも小さな常夜灯を玄関先に灯す。LED [続きを読む]
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- 2008/02/22 23:47斉藤幸1 (マージナル-23)
- 「あれ、幸さん?」思わぬところで声をかけられ、幸は驚いて振り向いた。林だ。コンビニの明る過ぎる照明に浮き上がる、色の白いつるりとした顔。「今日は出張だって聞いたのに」「ああ、早く終わったんだ。思ったより手際のいい連中で」「そうなんだ」林はクリニックに居る時と変わらず、機嫌の良さそうな笑みを浮かべている。手にはプリングルスの長い缶。「ジャンクフードなんか食べるのか」「え?これ?食べ ... [続きを読む]
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- 2008/02/13 23:09三田浩次6 (マージナル-22)
- 目が覚めたとき、新幹線は丁度小田原を通過したところだった。思ったより早く開放されたので、念願の日帰りを果たすことが出来たのだ。時刻もまだ8時半。無防備に寝てしまわないよう、幸はiPodに映画やポッドキャストを大量に詰め込んで持ち歩いているのだが、それでも睡眠不足には勝てず、いつの間にか眠り込んでしまったらしい。半分も減っていない緑茶のボトルに手を伸ばす。悪夢、とはいえないが、同じイメージばか ... [続きを読む]
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- 2008/02/11 21:56三田浩次5 (マージナル-21)
- 「結論から言うと、3人ともクロです」「結論、ね」刑事は胡散臭そうに幸を見下ろした。研究所で3人分のスキャンを終わらせた幸を待っていたのは警察だ。その場で浅井の記憶【消去】を命じられ、済むや否や車に詰め込まれ、あっという間に捜査本部である。「・・・と言っても俺の証言に法的な効力はありません。あ、これは【施術記録】です」おそらく理解する気のない刑事は、幸がレコーダーから抜き出したカードを受け ... [続きを読む]
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- 2008/02/10 01:59三田浩次4 (マージナル-20)
- 隣の部屋には次の被疑者がいるはずだ。今と同じ方法で【消去】することができるだろう。しかし、幸は足を止めた。「・・・」ほんの小さな違和感が何故か頭から離れない。さっき、三田の記憶を見ている最中のことだ。高速で流れる記憶の途中、一瞬だけプツリと幸の集中が解けた。その後は何ごともなく、結局記憶の【消去】そのものは滞りなく完遂できたから問題はないのだが。「・・・3回目だ」眉をしかめて唇を噛 ... [続きを読む]
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- 2008/02/03 22:10 三田浩次3 (マージナル-19)
- 「三田さん、入りますよ?」幸はドアをノックする。小さな部屋だが面接用ではない。おそらく元は実験用に作られたスペースだろう。天井が高く、ガス栓やコンセントが必要以上に配されている。少し落ち着かない気分になった。この雰囲気は嫌いだ。「・・・次は何ですか」三田という男は椅子にぐにゃりと沈み込みながら、投げやりに発音した。「お疲れのところすみません。すぐに済みます」「?」三田に近づき、手前 ... [続きを読む]
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- 2008/02/03 17:51INDEX
- マージナルINDEX1 イントロ2 石見佑香 1 2 3 4 5 6 7 8 93 三田浩次 1 2 [続きを読む]
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- 2008/02/02 00:55 三田浩次2 (マージナル18)
- 「その内部告発者は特定できたんですか?」「おおよそは。ただ、その人物以外に一体どれだけの人間が同様の疑念を持っていたかについては全くわからない状態です」「・・・その辺はなんとかなるでしょう。人間の記憶はとても都合よく出来てますから、疑問の対象者が目の前から消えれば忘れてしまうことも大いにありえます」「そんな対応で大丈夫なんですか?」「むしろ根こそぎ対処しようとする方が無理がありますよ。記 ... [続きを読む]
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- 2008/01/31 00:06 三田浩次1 (マージナル-17)
- 急な仕事だ。いくつか入っていた予定を全て後回しにして、幸は関西地区にある、国内大手製薬メーカーの研究所にいた。「該当者は3名。いずれも日本人。博士号取得後、アメリカで数年間ポスドクフェローをした後、当社へ採用されています」担当者はこれ以上は不可能と思われるほど深刻な顔で幸を地下室に連れて行き、何枚かの資料を見せた。「3名の間に関連はあるんですか?」「採用時期も研究部門もバラバラです。も ... [続きを読む]
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- 2008/01/19 00:24 とりあえず1話終了
- こんにちは、ソノシオです。連載中の「マージナル」はいくつかのシリーズにしたいと思っていてタイトルごとにひとまとまりのお話になる予定です。「石見佑香」の話はこれで一区切り、少しおいてまた再開します。まだ出てきただけの人もいるし、出てきてない人もいるし・・・お察しのとおり私は全くの素人ですがこうしてブログで公開しているからにはとにかく途中で連載を放棄するのだけは嫌だと思ってます。読書感想文で ... [続きを読む]
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- 2008/01/16 23:37石見佑香13 (マージナル-16)
- 「原因記憶は【消去】した。発作はすぐに収まったから、警察に事情を話して家まで送ってもらった」「警察?」坂島が振り返る。「言わなかったっけ?患者が店内で発作を起して」「それは聞いた」「・・・俺が何かしたと思われて警察呼ばれた」幸は思い出しながら、不満そうに答えた。あのときは必死だったが、今思い返すと腹立たしい。「それで、ずっと警察がそばにいたの?」坂島は笑うかと思ったが、真剣にそう問 [続きを読む]
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- 2008/01/15 23:46 石見佑香12 (マージナル-15)
- クリニックのガラスのドアには内側からロールスクリーンが引かれていた。時刻は22時すぎ。「・・・そらそうか」幸は立ち尽くしたまま、ぼんやりと呟いた。せめて電話で報告しておこうと、その場で携帯を取り出した。「あれ?」真っ黒な画面。そういえば、石見を片手に抱えたまま坂島と話したその後、通話を切った記憶が無い。会話の途中で思考に迷い込み、そのまま【消して】、その後は脱力感を引きずりながら淡々 ... [続きを読む]
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- 2008/01/14 22:03 石見佑香11 (マージナル-14)
- 少し収まりかけていた石見は、警察に保護されてパトカーに乗せられると再び苦しみだした。「石見さん!」幸は隣に座り、蒼白な石見の顔を覗き込んだ。汗とも涙ともつかない透明なしずくが頬を伝っている。痛々しい。「だ、大丈夫なんですか・・・?」幸のバングルが本物だとわかった警官はすっかり下手になっていたが、パニック状態の女性に腰が引けている様子だ。「・・・わからない」幸はポケットから携帯を取り出す ... [続きを読む]
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- 2008/01/13 22:56 石見佑香10 (マージナル-13)
- マックの表にはパトカーが1台止まっていた。ツイている。幸は警官が口を開くより早く話しかけた。時間が惜しい。「車に乗せてください。後部座席、空いてますよね?」「は!?」35歳くらいに見える眼鏡の警察官は、取り押さえられたまま切り出した幸の言葉に眉をしかめた。「中でパニックになってる女の子を保護して、パトカーに収容してください。今すぐに」「何を・・・」「特殊能力第7種、認定番号5番、斉藤幸 ... [続きを読む]
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- 2008/01/11 22:36 石見佑香9 (マージナル-12)
- 幸が石見の異変に気がついたその瞬間、夕刻のファーストフード店を悲鳴が貫いた。今まで涙を流しながら自らの言葉で語っていた石見の目は、今、限界まで見開かれ、幸ではない何かを見つめている。「石見さん!」発作だ、一体何が・・・幸は石見の視線をたどり、その先で、客のコートとマフラーが椅子から床に落ちているのを発見した。石見の発作が起きる引き金、『地面に置かれた黒っぽい塊』だ。「石見さん、大丈夫 ... [続きを読む]
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- 2008/01/10 22:50石見佑香8 (マージナル-11)
- 自分が不安定なせいで、まわりの人間に気遣いされるのはとても苦しい。「・・・大丈夫です」いくら佑香が大丈夫だと言っても、本気で「あ、そう」と納得する人はまずいない。「余計なことを聞いてすみませんでした・・・」例に漏れず斉藤も佑香に謝った。悪いのはあなたじゃないのにと佑香はそのたびに思い、でも自分が悪いとも決められず、結局行き場所がなくなってとにかくいたたまれなくなる。いつものパターンだ。 [続きを読む]
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- 2008/01/06 17:25 石見佑香7 (マージナル-10)
- 「あなたはどう思いますか」不思議な能力のことに気をとられていた佑香は、突然斉藤にそう尋ねられ、意味を汲み取ることができなかった。「え?」斉藤の顔は、今まで整然と説明していたときとは明らかに違っている。出合ったときに感じた圧倒的な『何か』は姿をひそめ、普通の、少し困っている男の顔だ。顔をそらせて、うつむいて。こうしてみると、彼は鼻筋がとても綺麗で、結構悪くない。そんなことをぼんやりと思っ ... [続きを読む]
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- 2008/01/06 16:12 石見佑香6 (マージナル-9)
- 「・・・つまり、斉藤さんはそうやって私の記憶を【探す】んですね」「そうです。記憶には他に『いつ』とか『どこで』とかいう【タグ】も付いてます。結構間違ってることも多いんですけど」「それは解る気がする!」石見は身を乗り出した。実際、人の記憶というのは驚くほど鮮明である一方、かなりいい加減な部分もある。会った相手の洋服の柄まで覚えているのに、それが何年前のことかすっかり解らなくなるというのも良く ... [続きを読む]
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- 2008/01/05 14:27 石見佑香5 (マージナル-8)
- 石見は丁寧に診断書をたたむと、少し考えてから幸に尋ねた。「・・・あなたは私の頭の中が見えるんですか?」 「よく聞かれます」幸が【消す】相手が一番気にするのがそのことだ。無理もない。見もしないものを【消せる】とは誰も思わないだろう。「僕が見るのは、記憶の【タイトル】とその【タグ】だけです。あなたの脳には沢山の記憶が詰まっている。全部を流し見て【消す】部分を探すとしたら、2倍速でサーチしても ... [続きを読む]
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- 2008/01/02 18:40 石見佑香4 (マージナル-7)
- クリニックで幸に依頼書を兼ねた診断書を見せながら、坂島は少し眉をひそめていた。本人がどう思っているか知らないが、彼女は案外思っていることが表情に出る。クールに見えるのは顔の造りのせいで、中身はそうでもない。「パニック障害?それだけ?」「そうよ」患者は石見佑香という高校生。1年ほど前、石見の住んでいたマンションの屋上から男性が飛び降りた。38歳のその男性は12階分落下した後、石見の目の前 ... [続きを読む]
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- 2008/01/01 21:53 石見佑香3 (マージナル-6)
- 知らない大人に会うのは気が進まなかった。怖い人だったら嫌だし、いい人だと何だか面倒だ。佑香は、知らない人と話した後に残る「ざわざわした感じ」が好きではなかった。妙にハイテンションになってしまった声や、言わなきゃよかった言葉などがぐるぐる頭を巡って、それが薄まってしまうまでずっと憂鬱な気分でいるはめになる。しかもこれから会うのはとても特殊な人だ。そういう能力を持った人がこの世にいると言うこ ... [続きを読む]
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- 2007/12/31 22:03石見佑香2 (マージナル-5)
- 「法定特殊能力第7種、認定番号5番の斉藤幸です。坂島クリニックの坂島みちる医師に宛てられた診断書と紹介状を預かってきています。診断書についてはあなたにも見る権利がある。見ますか?」石見は坂島クリニックの患者ではない。担当医療機関はこの街の公立病院だ。幸の施術する対象はほとんどそうだが、その能力が必要だと判断した医師が坂島に幸の派遣要請を出す。それを受けた幸はどこかその辺―例えばこのファー [続きを読む]
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- 2007/12/29 22:34 石見佑香 1 (マージナル-4)
- 自動ドアの外にまでマック独特の匂いが漏れ出している。幸は大して空腹でもないのにレジの上に並んだメニューの写真につい目をとめ、そのまま流れに乗ってチーズバーガーとコーラを注文していた。メールには「2Fにいます」と書かれていたのでトレイを持ったまま階段を上がる。ビニール製の植物越しに目を走らせると、窓際の4人がけに1人で座っている制服の少女。他にそれらしい人物もいないので、幸は階段の一番上に足 ... [続きを読む]
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- 2007/12/29 00:42 坂島クリニック2 (マージナル-3)
- 「お前は?」「え?」プリンターのインクを交換していた林は、ガチャンガチャンと音を立てながら聞き返した。聞こえなかったのか、意味が解らなかったのか。「お前のメシは?」バチン、と本体カバーを閉めると、幸を見てにっこり笑った。コピー機がガクガク揺れている。やさしげな顔の割に案外乱暴なところなどは坂島と相性がいいのかもしれない。 「食べたよ。幸さん、もう2時だよ」午後の診療は確か2時半からの ... [続きを読む]
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