arabianlightcafe さん

arabianlightcafeさん: アラビアの錬金術師
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プロフィール

ハンドル名arabianlightcafe さん
ブログタイトルアラビアの錬金術師
サイト紹介文 砂漠の夜に陶酔させる!
アラビアの神秘と冒険の数々をお楽しみください。
自由文 人間は未来を知ることができるのか。
アラビアの古代科学者たちはかつてその謎を解くため、英知を結集し、大いなる存在に挑んだ。
 人間の永遠のテーマである、精神と物質の所在を明らかにし、未来を解き明かそうとした瞬間。
 
参加カテゴリー
更新頻度情報提供91回 / 114日(平均5.6回/週) - 参加 2008/02/01 19:00

arabianlightcafe さんのブログ記事

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  • 2008/05/11 02:04第1章 ダミエッタ午前0時 13
  •  神のみぞ知る。 その言葉が日常のあらゆる場面で聞かれるのは、アイユーブに生きる人間が全ての結果を「見えざる手」に委ねていたから。 その哲学は、思考や行動が帰結する瞬間、蜃気楼の中へ放り込んでしまう危険性を孕んでいた。 商取引の秤にのる金の一欠片において、戦闘で兵士が構える槍の穂先において。 「あとは神が知っている」という言葉を頭に思い浮かべた瞬間、アイユーブは指先に最後の力を伝えることなく現実... [続きを読む]
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  • 哲学
  • 2008/05/08 21:22第1章 ダミエッタ午前0時 12
  • 「まるで法廷だな。」 兵士のひとりがつぶやく。 法学者や裁判官がとり囲むモスクで裁きを受けるのは、「アイユーブの未来」。若い女占星術師がスルタンの命を受けて100人の男たちを前にその陳述にあたる。「まずは!」 アミーラは目を見開くと持っていた書簡を掲げた。すかさず神学生2人が長い書簡の端を持って横に広げ、描かれた星位図を正面に見せる。 日焼けした紙面には黄道12宮の印が記され、巨大な円の中に太陽... [続きを読む]
  • 2008/05/07 21:58第1章 ダミエッタ午前0時 11
  •  モスクの広大な石床は午後の日差しを受け、素足で歩くには熱すぎるほど焼けている。回廊を覆う屋根の下にはわずかな日陰があるものの、中天に達した太陽は容赦なく円柱の隙間をぬって入り込み、赤絨毯の上に立つ兵士の足を焼いていた。 総勢100名。モスクの回廊に集められたアレキサンドリアの大隊とスーフィーたちは、最高責任者であるカリフの命令を待って炎天下に立ち尽くしていた。 すべては、国家の命を受けた占星術... [続きを読む]
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  • 屋根
  • 2008/05/06 21:23第1章 ダミエッタ午前0時 10
  •  馬体の振動で、書かれた小さな文字が紙面に踊る。 馴染んだ足場に蹄を乗せ、馬は、雑踏のひけた午後障害物のない街路の一直線を駆け抜けていく。 アミーラは重なって見える最初の文字をとらえると、「スルタン?」と声にしたが、瞬間大きな揺れに体勢がくずれ再び撹乱した視界に、慌ててイスマーイールの腰をつかんだ。砂漠で賊に襲われた時の衝撃が体の中に残っているせいか、落馬の恐怖を味わうのを反射的に避けようとする... [続きを読む]
  • 2008/05/06 12:59第1章 ダミエッタ午前0時 9
  • 「ねえ、もうダミエッタで戦いが始まってるの?」 ぐらつき始めた馬上、体をくねらせたイスマーイールが後ろに跨るアミーラに問いかけた。 馬は嫌っていた足場を解放され、埋もれていた蹄を勢いよく砂の中から引き抜いて海岸を離れる。「わからない!でも、すぐに占星術の判断をスルタンに告げる必要があるわ!」 アミーラは後ろから手を伸ばして手綱を握り両脚で馬の腹をしめると、吹き付ける浜風の音の中に消されないように... [続きを読む]
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  • 海岸
  • 2008/05/04 23:08第1章 ダミエッタ午前0時 8
  •  4人は眉をひそめ、再び顔を見合わせた。 可能性は十分というより、十字軍の次の侵攻地点はそこ以外にない。 カイロから北東におよそ200キロ、ナイル川の東端に位置する港町ダミエッタは、十字軍にとってカイロを占領する拠点だった。 ビザンツ帝国の援助を受けたエルサレム艦隊の侵攻で一度は陥落したものの、カイロに進軍しようとした十字軍をスルタン・カーミルが撃退し、条約によって再びアイユーブの手に引き戻した... [続きを読む]
  • 2008/05/03 20:35第1章 ダミエッタ午前0時 7
  • 「当たってるな。」 ファーラビーは嘆息して言った。 驚く4人を前に、カーディーはさらに翻訳の続きを話した。 サラディン以降続くアイユーブと十字軍との攻防の歴史が書かれている。 十字軍は脅威であったサラディンの死後、4回目の侵攻をコンスタンティノープルに仕掛ける。さらに5回目にはダミエッタ、カイロへの遠征を行い、聖地エルサレムをこえてイスラム帝国を占領しようとした。 戦火はその後、アッコン、ガザ、... [続きを読む]
  • 2008/05/01 20:54第1章 ダミエッタ午前0時 6
  •  間もなく地中海の波打ち際に着いたカーディーは手綱を引いて眼下の4人を見た。第一声を発しようとするが、慣れない足場を嫌った馬が砂を蹴りながら体を震わせ主の言葉を遮る。 カーディーは「ちっ」と舌打ちすると、両脚で思い切り馬の腹を締めて興奮を鎮めた。蹄が前足から後ろ足へ、ひとつずつ砂の中に沈んでいく。「昨日一昼夜で翻訳に取り掛かってみたんだが、ここ100年間のアイユーブの歴史が書かれいる!」 言いな... [続きを読む]
  • 2008/04/28 21:44第1章 ダミエッタ午前0時 5
  •  アミーラは波打つ地中海の青に星位図を投影し、もう一度天体の配置を確かめた。 地球を中心に天を巡る天体は太陽から土星までの7つ。今の時期は太陽がふたご座に入り、以降それぞれの星が示す関係から、情勢は不安定だが緩やかな時代は続く。 ファーラビーが言うように星の読みが浅いのかとも思うが、2枚目の星位図はどこにも見当たらない。 アミーラは頭の中で回る天体を払うように、思い切り首を振って街並みに視線を移... [続きを読む]
  • 2008/04/27 19:30第1章 ダミエッタ午前0時 4
  •  波打ち際に立っていたアミーラはベールの裾から伝う海水の冷たさを感じながら足を動かすことができず、老人の言葉を聞いて立ち尽くした。 そんなはずはない。頭の中で、亡霊にまつわる話など迷信に違いないと思うが、同時に昂ぶってくる鼓動が星位図を見ろといわんばかりに心臓を叩く。 状況は常に緊迫しているが、十字軍との交戦の兆しがあらわれているわけではない。カイロは陥落する危機にはなく、不安定な状態のまま時代... [続きを読む]
  • 2008/04/27 14:27第1章 ダミエッタ午前0時 3
  •  戦術は静謐で美しさを帯び、対峙した軍はその姿に一瞬見蕩れてしまう。 教皇に従属する騎士団は、総長、従兵、司祭、修道士からなり、戦闘の中にもキリスト教の戒律がもたらされた。 甲冑に身を包んでいながら、白地に赤十字架が描かれた外套を羽織る美しい姿。潤沢な資金は装備を豪華なものにし、充実した訓練のもとに隊は整備された。 騎馬隊はその中心を担う。イスラム軍に対抗するために考案された戦術は、前後側兵で固... [続きを読む]
  • 2008/04/26 23:21第1章 ダミエッタ午前0時 2
  •  アレキサンドリアモスクでカーディー(裁判官)から、アッシェイフの目撃者に関する情報を得たアミーラは、イスマーイールとファーラビーを連れて海岸沿いの貿易商宿を尋ねた。 亡き錬金術師が著した歴史書、砂漠で会った2人のモナがアッシェイフ家と何らかの関わりをもつのか。 その答えを確かめるべく、宿の主から聞いた言葉を頼りに老人を探し、やがて浜辺を歩いていた「それらしき人物」を見つけて声をかけた。が、老人... [続きを読む]
  • 2008/04/24 22:52第1章 ダミエッタ午前0時 1
  • 「テンプル騎士団だ!」 その言葉に、地中海の波打ち際に立つ4人の動きが一斉に止まる。 アミーラは振り返ると、波の音の隙間をついて老人に問いかけた。「十字軍の?」「ああそうだ。砂漠であんたのお仲間を連れ去ったのはテンプル騎士団だろうよ。だが、現実的にそれは考えられんから、正確に言えば騎士団で訓練を受けた馬に跨った賊というところか。今聞いた話から推測するに、可能性はそれしか考えられんな。あんたらに気... [続きを読む]
  • 2008/04/24 20:54第1章 その宮殿に賛美歌を 13
  •  シャジャルドッルは覚悟を決めたように思い切りハレムの空気を吸い込んだ。 和解に最も近い精神の共通点を戦場にしている限り、およそ和平への道は遠い。しばらく穏やかな時代が続いていたのは、スルタン・サラディンがイスラム軍の強さを知らしめ、両国が臨戦態勢を維持することが和平を保つ手段であると示したから。 双方の軍人たちの顔は鼻の先がつきそうになるほど近づいていて、これ以上軍隊を圧力にするという手は効か... [続きを読む]
  • 2008/04/22 21:12第1章 その宮殿に賛美歌を 12
  •  スルタン・カーミルが十字軍との交戦に備えてシタデルを強化してはいたものの、アイユーブ軍の統率はとれていなかった。 エルサレムやダマスカスの戦線にいたのは奴隷軍人であるマムルークの軍隊で、カイロ以外の要衝は軍事長不在。 王朝にとって最大の不安要素はそれだった。 澄んだ瞳に不安の色が滲んだのは、十字軍の存在のせいばかりではない。 シャジャルドッルは話を聞き終えると、水盤から水を掬って一口飲み、遠景... [続きを読む]
  • 2008/04/21 22:40第1章 その宮殿に賛美歌を 11
  •  老人は頷くと袖を下ろし、香の煙に向かって再び語り始めた。 「最前線で生きていたのは、おそらく私ぐらいのものでしょう。倒れたあと目に映ったのは、砂と鮮血の色でした。 まさか、彼らが軍隊だとは思わなかったのです。それほど美しく、高潔でした。そしてなにより、静かだったのです。 とても人間とは思えない神々しさ。 それが砂嵐のあとに突然現れたのですから、判断の遅れは誰も責めることはできないでしょう。私は... [続きを読む]
  • 2008/04/21 21:12第1章 その宮殿に賛美歌を 10
  •  腰を曲げその矮躯をさらに低くしていた宦官に3人の視線が集まる。 老人は上目づかいにシャジャルドッルを見ると、香台から立ち上る煙の中にしゃがれた声を吹き込んで続けた。 「私が、スルタン・サラディン率いる隊に歩兵として従軍していたときでした。 十字軍の中の一隊と私たちの隊がエルサレムで剣を交えることになり、私は最前線に位置して臨戦態勢をとっていたのですが、その時、折悪く砂嵐が吹き荒れ、軍事長からし... [続きを読む]
  • 2008/04/20 16:47第1章 その宮殿に賛美歌を 9
  •  思いを同じくしていたアシュラムが妃を前に腰を落として片膝をつく。「初めてお目にかかります、シャジャル妃。我々を補佐役に任命していただいたことは身にあまる光栄です。しかしながら、カリフ(法学者)やワジール(大臣)を抜きに我々だけで国事を進めることには些か抵抗を感じますが。」 シャジャルドッルは進言を受けると、眼下のアシュラムに向かって「立ちなさい」と合図を送り、わずかに目線を上げて2人に語りだし... [続きを読む]
  • 2008/04/20 01:09第1章 その宮殿に賛美歌を 8
  •  石柱にもたれかかりぼんやりと棺を眺めていたシャジャルドッルは、香台の煙の合図に気付くと顔を上げ3人に視線を据えてゆっくりと歩き出した。 呼応するようにハーキムとアシュラムが歩み寄り、宦官の老人がそのあとに続く。そして、距離が近づくにつれはっきりしてくるシャジャルドッルの表情に2人は思わず息をのんだ。 頬まで垂れた長い髪のあいだから覗く眼は涼やかな二重だが、浅い窪みに光る黒目からは確かな芯の強さ... [続きを読む]
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  • 宮殿
  • 2008/04/19 13:49第1章 その宮殿に賛美歌を 7
  •  予感は的中。楽園の秘密を知ってしまったアシュラムは思わず叫び、横たわる棺を睨みつけた。 サーリフ大帝がダマスカスから帰還したのち、大衆の前に顔を出さなかった理由、いや出せなかった理由が厳然と目の前にある。 軍の統治者であるスルタンの死はすなわち、アイユーブ王朝の即滅亡を表していた。 誰が陣頭指揮を執る?法学者か、我々軍人か、もしくは。「本当に占星術師に未来を委ねることになるのか?」 ハーキムは... [続きを読む]
  • 2008/04/16 21:46第1章 その宮殿に賛美歌を 6
  •  立ちこめる乳香の煙をかき、大臣のあとを追って先に幕の内に足を踏み入れたハーキムは、突然開けた景色の美しさに思わず立ち尽くした。 広大な敷地に降り注ぐ午前の日差しを受け、一面に敷き詰められた砂が黄金色に輝いている。砂漠の日常にはありえない、黄金と緑の色彩。巨大な水盤からは水が溢れ出し、オアシスのごとく位置する中央から外に向かって鮮やかな緑を従えていた。  周囲には薄い長衣を一枚だけ纏い、白い肌と... [続きを読む]
  • 2008/04/14 21:35第1章 その宮殿に賛美歌を 5
  •  城塞の端に構える宮廷はスルタンの執務室を中心に、大臣や宦官の控え室、妃や侍女のハレムがそれを囲うかたちで建っている。 ムカッタムの丘を背景に高台に位置するハレムからはカイロの街を一望できるため、絶景を楽しめる社交場として宮中の女たちに利用されていた。もちろん、スルタンら軍幹部も執政時以外はハレムにいるのが普通だが、特に穏やかな情勢が続いていた最近は、ハレムの日和に寛いで過ごすことが多くなってい... [続きを読む]
  • 2008/04/13 21:54第1章 その宮殿に賛美歌を 4
  • 「こんなに長いあいだ軍事会議に姿を見せず、報告のとき声も出さないなどどう考えてもおかしいだろう!?俺たちには言ってないだけで、スルタンに何らかの異常があったとしか思えん!」 言葉と同時にハーキムは最後に会ったときのスルタンの表情を思い浮かべた。 思えば、数ヶ月間会っていない。 通常、ダマスカスの宮殿で陣頭指揮を執っているせいかこれまでそのことを特に気に留めなかったが、言われてみればその期間が異常... [続きを読む]
  • 2008/04/13 00:56第1章 その宮殿に賛美歌を 3
  •  城塞内の長い廊下を抜けて一旦外に出、午前の日差しを浴びてから階段を上がって再び回廊を行くと、スルタンのいる宮廷内に入る。 次第に増えていく衛兵や侍女たちの姿を横目に、ハーキムは何度足を踏み入れても慣れることのない領域を目指して歩を進めた。 緊張で顔が強張っている自分とは対照的に、隣で機嫌悪く顔をひきつらせたアシュラムが肩をいからせて歩いている。 軍事長室でのやりとりに納得がいっていないのか、時... [続きを読む]
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  • 軍事
  • 2008/04/11 23:00第1章 その宮殿に賛美歌を 2
  •  瞬間、視界の奥でぼやけていた背景が変化したことに気付く。 重い扉がゆっくりと開き、奥から伝令係の男が入ってきた。「し、失礼します!キプロス島からの伝令文書が届きました!」 入った途端、不機嫌そうなアシュラムと目が合ってしまった男は言葉を詰まらせ、急いで手にしていた紙切れを差し出すと、早々に部屋を出ようと足を引いた。 かち合ってしまった視線からはアシュラムの殺意すら感じられ、下手に言葉を交わして... [続きを読む]
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