- 2008/05/11 09:51空いっぱいの悲しみ(1/9)
- これは、私が高校生だった頃のお話です。 その頃、私には好きな人がいました。 そして私達は、会えない時はメールし、会える時は一緒に映画を観たり、喫茶店でお話ししたり、ファミレスでご飯を食べたりしていました。 二人はずっと一緒だ、と信じていたんです。実は、あまり思い出せないのですが…。 でも、後で聞いたのですが、彼は心臓に病気があったのです。でもそれは、彼のご両親が秘密にしていて、彼自身知らなかったのです [続きを読む]
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- 2008/05/10 09:53空いっぱいの悲しみ(2/9)
- ある春の日の事でした。 お昼休み、私は彼と体育館の裏で会いました。それが最後だったのです。 彼が体育の授業中に心臓麻痺で倒れた、という事を聞いたのは放課後でした。 そして、その時にはもう二度と話す事の出来ない人になっていたのです。 すぐに病院に行きたかったのですが、先生に止められました。 まず先生方が先に行き、ご家族の方に許可を頂くまで、生徒は学校で待機…という事でした。 私は教室にいたたまれず、校庭の [続きを読む]
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- 2008/05/09 05:10空いっぱいの悲しみ(3/9)
- 友達は皆、優しい言葉をかけてくれました。でも私にとって、かえってつらい事だったのです。 私が木の陰にいる事は、友達の誰も気がついていないようでした。 校庭はもう、暗くなり始めていました。 ふと気がつくと、私は空を飛んでいました。眼下では住み慣れた街に明かりが灯り、夜を迎えようとしています。 でも、なぜかその時は、恐いとか不思議とか思いませんでした。 そこで気がついたのですが、頭が妙に重いのです。 髪に手 [続きを読む]
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- 2008/05/08 05:22空いっぱいの悲しみ(4/9)
- 「可哀相に…」 後ろで声がするので振り向くと、手のひらにのるような、小さい女の子がいました。 その子は小さいだけでなく、背中に羽がついていて、手には不釣り合いに大きな袋を持っていました。 でも、やはり私は不思議だとは思わなかったのです。 その子にどこかで会ったことがあるか…または昔から会うのを知っていたような…気がしたのです。「取ってあげるわ」 そう言って私の髪に付いていた小さい粒を、小さい手でひとつ [続きを読む]
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- 2008/05/07 05:22空いっぱいの悲しみ(5/9)
- その子の手の袋は、すぐに小さい粉でいっぱいになりました。「これ…何だかわかる?」 その子は袋を叩きながら言いました。 私が首を振ると、その子は得意気に言いました。「彼の記憶よ。あなたの」 私はびっくりして、彼の事を思い出そうとしました。 彼の目…彼の髪…彼の顔…。全然頭に浮かびません。 私の記憶から、そこだけ抜け落ちてしまったのです。「もう大丈夫…」その子は言います。 私はまだ、彼の事を思い出そうとして [続きを読む]
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- 2008/05/06 06:07空いっぱいの悲しみ(6/9)
- 私は自分の思い出の入った袋にしがみつきました。「返して!私、彼の事、忘れたくない!」「な…なぜ?」その子は驚いたように言いました。「そんな思い出なんて、もう要らないでしょ!」「…」私は答えられません。「さっさと忘れて、新しい恋をするのよ!」「…」「悲しいんでしょ!忘れたくないの?」「…」「つらいんでしょ!なら、やっぱり…」「わかってる。わかってるの」私は顔を上げました。「でも…忘れたくない!」「な [続きを読む]
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- 2008/05/05 05:38空いっぱいの悲しみ(7/9)
- その瞬間、手の中の袋が破けてしまいました。「あ…!」 中に入っていた粒は飛び散りました。 風に巻き上げられ、真っ暗な空に吹き飛ばされながら、ひとつひとつが輝きを増していきます。「何て事!」その子は叫びました。「これじゃ、また彼の事、思い出しちゃうわ!」 その時気がつきました。その子の顔は私とそっくりだったのです。 彼女の小さな姿は、みるみるうちに薄くなっていきます。 彼女が消えてしまう頃…私の思い出は [続きを読む]
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- 2008/05/04 05:27空いっぱいの悲しみ(8/9)
- 私は木の根元で眼を覚ましました。泣きながら眠ってしまったらしいのです。 もう校庭には誰もいません。 夜風に吹かれ、私はぶるっと震えました。 空を見上げると、満天の星空が広がっています。まるで私を包むように。 私は木につかまって立ち上がると、よろよろと病院へと歩き始めました。 失った恋の記憶は、早く忘れてしまった方が良いと言われます。 でも私はそう思いません。 今はつらくても、懐かしく思い出せる日がきっと [続きを読む]
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- 2008/05/03 00:34空いっぱいの悲しみ(E/9)
- あの日、私は病院で泣きませんでした。もう彼の事は、あまり思い出せなくなっていたのです。 友達は、姿が見えなくなった私を怒ったり、突然現れたのを見てほっとしたり、泣かない私を不思議がったり…いろいろでした。 今でも彼の事はよく思い出せません。でも時々、胸がきゅんと痛くなる事があります。 そんな時、私は夜空を見つめます。夜空の星は、みんな私の思い出なのですから。 空いっぱいの悲しみ。 星が流れる度に、彼の [続きを読む]
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- 2008/04/29 09:56初めて咲く花
- " 告白メール有難う。返信してないけど…これがお返事! "私は心の中でつぶやきながら、教室の窓から手を振る。グラウンドの彼は私に気がついた。一瞬、不思議そうな顔をしたけど、すぐに両手を振り回して喜び始めた。私も笑顔になる。彼への返事は、今日咲いた花。くちびるに咲く、初めての紅い花…。 [続きを読む]
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- 2008/04/27 09:47コース上では
- 陸上100mコースは俺の聖地だ。邪念を振り払い、競技に集中する。この緊張感が好きだ。アップする俺に、白いウェアの彼女が声をかけてくれた。「頑張ってね!」俺も返す。「男女ペアで中学新記録だぜ!」邪念が…。最近、俺はおかしいんだ。つい…目がいってしまう。白いウェアの胸に…。 [続きを読む]
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- 2008/04/26 09:53二人だけで
- 小学生の頃はみんなで一緒に遊んでたよね。中学に入って、あなたと二人だけで会う事が多くなってきたね。今日みたいに。また戻らない?小学生の頃みたいに、みんなと一緒に、楽しく遊ばない?もちろん二人だけでいるのも楽しいよ。でも…突然、大人になったみたいで…何となく…すこし、こわいの…。 [続きを読む]
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- 2008/04/20 09:55鬼ごっこ
- 追わなくて…いいのか?彼女の後ろ姿を見ながら、僕は自分に問いかける。小さい頃、よく二人で鬼ごっこをした。彼女が逃げる。僕は追う。でも、決して捕まえない。捕まえたら、鬼ごっこは終わってしまうから…。僕は首を振る。追うのをやめても、終りになるんだ。鬼ごっこは、今、終わったんだ…。 [続きを読む]
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- 2008/04/19 09:58ヘンシン!
- 「あんたサ、もう三年生なんだから仮面ライダーにハマるの、やめなさい!」私はつい八つ当たりしてしまう。「姉ちゃん、キバと他のライダーを一緒にすんな!ヘンシン!」ポーズをとる弟。やれやれ…。私はお腹に手を当てる。…マジ痛ぇ。弟よ。本物の変身とは…不安とか、痛みを伴うものなのだぞ。 [続きを読む]
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- 2008/04/13 09:55父を嫌う
- 俺は親父が嫌いだ。いや、大嫌いだ。早く家を出たい。「何考えてるの…?」優しい声で彼女が聞く。「あ、悪ィ。ちょっとボーっとしてた」彼女は無敵の笑顔を俺に向ける。でも…俺はいつか、彼女に嫌われるだろう。悲しい事だけど。最近俺は、自分の意志に反して、親父にどんどん似てきている…。 [続きを読む]
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- 2008/04/12 10:00離れていても
- あなたは足早に歩く。私に構わず。私はあなたの背中を追いかける。中学の時、会えるのは木曜日…予備校の中だけだった。メールだけが二人をつないでくれた。今は同じ高校だから、こうして毎日会うことができる。昔は離れていても、心はつながっていた。今は近くにいるのに、あなたの顔さえ見えない…。 [続きを読む]
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- 2008/04/06 09:50おぼろ月夜に
- 「ねぇ、何考えてるの」隣を歩く彼女が言う。「…別に」僕は答える。「見て」彼女は夜空を仰ぐ。「月がきれい」「ああ。『おぼろ月夜』だね。月は春から光が柔らかくなるんだ」以前は彼女が誰よりも輝いて見えた。でも今は、もっと輝く娘が僕の前に現れた。この春、僕にとって、彼女はおぼろ月だ…。 [続きを読む]
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- 2008/04/05 10:09花いちもんめ
- 「…駄目よ」私は目をそらす。「唯、俺が嫌いか?」彼は私の両肩を強く掴む。「好きよ。でも私達、中学生だし」そう言いながら、私は幼稚園の頃を思い出していた。私達はよく一緒に遊んでいた。花いちもんめの時、彼はいつも大きな声で言ってくれた。「ゆいちゃんがほしい!」…今と同じ台詞だ。 [続きを読む]
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- 2008/03/30 09:51胸に秘めたまま
- 最後に彼女と会ったのは、僕が東京に旅立つ時だ。新幹線の窓ごしに、彼女は何か叫んでいた。聞こえない…聞こえないよ!僕の声も届かなかった。彼女は叫び続けた。開かない窓から見えなくなるまで。彼女は…僕に何を伝えたかったんだろう?何を胸に秘めたまま…一人ぼっちで永遠の旅に出たんだろう…? [続きを読む]
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- 2008/03/29 09:57ごめんね、そして
- 「ねえ」私は彼に声をかける。彼は本を置き、素敵な笑顔を私に向ける。「ん?なに?」「…何でもない」「変なの」また本に目を落とす。「…ごめんね」「ん。今、大したシーンじゃないから」彼は本から顔を上げずに言う。ごめんね、ごめんね。次の言葉が…言えない。ごめんね。そして…さよなら。... [続きを読む]
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- 2008/03/23 10:31過去の希望
- 卒業式の途中、彼女と目があった。彼女は微笑んでくれたけど、僕は目をそらした。僕達は同じ大学を受験し、彼女だけ合格した。駅から学校まで出題傾向を話しながら歩いた。学習室では隣の机で一日中勉強した。帰りが遅くなると家まで彼女を送った。僕達はあの頃、卒業後どうするつもりだったのだろうか? [続きを読む]
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- 2008/03/22 09:58後悔は
- 喫茶店で、私は自分の名が入った合格通知を破った。彼は唖然とした顔で私の手元を見た後、言った。「じゃ、俺とは…?」「もう会わない。別々の大学に行くんだし」二人がしばらく沈黙した後、彼は口を開いた。「…後悔するぞ」私は黙っていたが、心の中で叫んでいた。後悔は…する。しない筈ないでしょ!... [続きを読む]
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- 2008/03/20 10:35無意識の…
- 「あなた、タダシ君と友達だよね」彼女が言う。隣にはユイさん…彼女の友達がいる。「ん。中坊ン時からね」俺の言葉にユイさんが目を輝かせた。ピンときた俺は、タダシの悪口を並べ立てた。「タァシは…ずっとフリーだよ。女にモテねぇんだ。この間だって、…」喜ぶべきなのに。俺には彼女がいるのに。... [続きを読む]
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- 2008/03/16 09:12夜空を飛んで
- " キャンディありがと "…次の言葉が浮かばない。私は一旦メールを保管した。今年のホワイトデーは微妙…。私は部屋の窓を開ける。夜風が気持ちいい。あなたは寝ているかしら?出来る事なら…夜空を飛んで、あなたの所に行きたい。あなたの夢に忍び込みたい。そして…私以外の誰かを追い出したい。... [続きを読む]
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- 2008/03/15 10:15帰りたい
- 僕が東京に来て1年だ。大学の講義は退屈だけど、ゼミやサークル、バイトは楽しいよ。みんないい奴ばかりだし。でも、時々思うんだ。帰りたい。帰って君に…会いたい。書き終えて彼女にメール送信した。エラーで戻ってくるのは分かってるけど。東京の生活と引き換えに…僕は帰る場所を失ったんだ。 [続きを読む]
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