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- 2008/07/26 08:47♯219 最終章 光 〜想い〜
- 新宿の西口から、地下道を真っ直ぐ進む。高層ビルの一つに入り、エレベーターに乗り込んだ。ちょっとGがかかって、不思議な気分。ドアが開くと高層の階展望フロアに着いた。ジャングルジムに登ってみたいなーと思ってたら、いつも電車から見ている西新宿の高層ビル群の形に似ていていることに気がついた。登るなら、高いほうがいい。ゆっくりと窓に近づく。観覧車から見た景色よりも、もっと遠くまで見える。この広い世界で、一人 [続きを読む]
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- 2008/07/25 10:23♯218 最終章 光 〜想い〜
- 翌日、部屋でゴロゴロしていたけど、太陽が少し西に傾いた頃、何となく家を出た。一人でいると、また悲しくなっちゃうような気がしたから…。それに、今日は風も無くって、温かい日差しを感じる。通ったことのない道を選んで、ゆっくりと歩く。ちょっとした公園を見つけて、ベンチに腰掛けた。子供達が遊んでいるのを眺める。水道でふざけて蛇口に手で蓋をしたから、水が周りに飛び散った。その水しぶきは日差しを受けてキラキラし [続きを読む]
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- 2008/07/24 10:16♯217 最終章 光 〜想い〜
- 西川君の差し出したチェーンを見る。「ありがとう…でも…」「いいんだ、別にどうこうしろって言う事じゃない。ただ言いたかったんだ、向こうに行く前に…それだけ。俺への餞別だと思って、受け取ってくれよ。」西川君の顔をじっと見る。「…わかった…ありがとう。」西川君からチェーンを受け取った。「…餞別って、旅立つ人に見送る人があげるものなんだよ。だから、本当は私が何かあげなきゃいけないんだよ。」「あぁ、もらった [続きを読む]
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- 2008/07/23 08:48♯216 最終章 光 〜想い〜
- 「そいつ、お前の中に、ずっといるんだな…。」西川君は、さっきまで坂井さんの座っていた椅子に腰掛けた。「あれ?そういえば、西川君は今日はバイト入ってたっけ?」「…いや。それ届けに寄ったんだよ…」「ありがとう…。」「お前、痩せただろ?だから指輪が落ちても気がつかなかったんだよ。」「…でも、ずっと身につけていたいから…仕事の時は外さないといけないし、キツイよりはいいかなって思ってたんだけど…」西川君はい [続きを読む]
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- 2008/07/22 08:27♯215 最終章 光 〜想い〜
- 「別れた?なんで?」「もうずっと…笑わなくなったから…。」指輪を両手で握りしめた。「…別れた…よね…死んだの、事故で…」「死んだ?」二人とも、驚きを隠さなかった。「…だから、だったんだ…。」西川君がつぶやいた。バイト先では、ケンちゃんが亡くなったことは誰にも話してない。話そうと思わなかった。この時までは…。「サヨナラも…言えなかったから…」「一人で我慢してたんだな、ユイちゃんは…。」そう言いながら [続きを読む]
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- 2008/07/21 11:29♯214 最終章 光 〜想い〜
- 「え、えぇ…そうですか?…まぁ、そういう時も…。」テーブルの上に置いてあるポットから、お茶をグラスに注いで一口飲む。「…青春なんだねぇ…オレでよかったらいつでも相談乗るよぉ〜。」相変わらず、マンガから目を離さない。「ありがとうございます。でも、大丈夫です!」坂井さんが急に顔を上げたから、とっさにニコッとして見せた。不意にドアが開くと、西川君が顔を出した。「間に合ったぁ…。」つかつか私に近づくと、ポ [続きを読む]
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- 2008/07/20 11:26♯213 最終章 光 〜想い〜
- 翌日、起きて鏡を見たら、まぶたが腫れていた。冷たい水で顔を洗って、部屋の窓の外を見ると、私の気分とは逆にいい天気だ。昨日は、お店の前まで戻ってみたけど、指輪は見つからなかった。少し早めにお店に入って、もう一度指輪を探してみる。やっぱり、みつからなかった。着替えを済ませてホールに行くと、店長がいた。「おはようございます。昨日はすみませんでした。」「おぉ、おはよう。無理しちゃだめだよー。」「はい…あの [続きを読む]
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- 2008/07/19 10:40♯212 第9章 もしかしたら 〜面影〜
- 気がつくと、指輪が無くなっている。「…うそ…。」立っているところを見回した。ない。着替えを済ませた後、指にはめたのは覚えている。指輪が大きくなっていたけど、日に日に消えていきそうなケンちゃんが残してくれた、たった一つの宝物だから、放したくなくてサイズを直さずにそのままつけていた。指輪まで無くしちゃうなんて…。涙が流れてきた。寂しいよ…ケンちゃん…。やっとみつけた、私の居場所だったのに…。この世は地 [続きを読む]
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- 2008/07/18 08:45♯211 第9章 もしかしたら 〜面影〜
- 床の破片を片付けて、裏のゴミ集積所から戻ってくると、店長が待っていた。「上村、大丈夫か?最近顔色が良くないみたいだけど?」「大丈夫です…すみませんでした、忙しいのにあんな事しちゃって…。」「物はいつか壊れるんだから、気にしないでいいよー。ちょっと音がデカかったけどね。」「…はい…」「今日、もうあがる?」「え?」「顔色悪いからさ。明日の早番、上村に休まれると困るんだよ。もう食べ終わって飲んでるお客... [続きを読む]
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- 2008/07/17 08:46♯210 第9章 もしかしたら 〜面影〜
- バイト先のお店は、忘年会シーズンだからか、この頃お客さんが多くて忙しい。一人で時間を過ごすのがイヤだから、バイトのシフトを増やしていた。忙しさで何も考えずに、ただ目の前の事に没頭できて、その間はケンちゃんのことを考えずにいられるから…。食事の終ったテーブルからお皿を提げて、振り向いた時だった。入り口の木のドアが開いた。「いらっしゃいま…」≪ガシャーン!!≫持っていたお皿のバランスを崩してしまって... [続きを読む]
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- 2008/07/16 08:33♯209 第9章 もしかしたら 〜面影〜
- リエと田村君の優しさに甘えているのも、気が引けてきている。二人だって、二人だけの時間がもっと欲しいと思っているはずだし。それに…ちょっとした瞬間に4人でいたことを思い出してしまう。やはり何も買わないまま、外に出る。バイト先に向かうために歩き出した。「あ!?」急に立ち止まって、振り返った。その拍子に後ろを歩いていた人にぶつかった。「痛て…」「す、すみません…」頭を下げる。その人は、ムッとした表情で... [続きを読む]
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- 2008/07/15 09:24♯208 第9章 もしかしたら 〜面影〜
- 「えー、まだまだ先じゃん?」「何言ってんのぉ?あと2週間ちょっとじゃん?」そういえば…学校に向かう道も、イルミネーションの準備が始まっていたっけ。「ごめん、私バイト入れてる。」リエが身を乗り出した。「マジ?24、25って?」「うん…バイト誰も入らないって言うから…。」リエと田村君は、顔を見合わせた。「やっぱ遅かったじゃん!!だから早くって言ったのに!」「そこまで考えなかったんだよ。」二人で考えて... [続きを読む]
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- 2008/07/14 09:08♯207 第9章 もしかしたら 〜面影〜
- 誰か人の気配がして、ハッとして目が覚めた。顔を上げると、田村君だった。「よっ!起こしちゃったな。」「うん…なんだ、田村君かぁ…おはよ。」「おはよって…こんな時間だぜ。上村、クマ出来てっぞー。」「そう?」「ちゃんと寝てんのか?」「…うん、心配してくれてありがとう。大丈夫だよ。」「ふ〜ん、上村は大丈夫病だな。」「へ?」「まぁ、いいよ。もうリエも来るよ。」「授業終ったの?」「ほとんど、な。」静かにドア... [続きを読む]
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- 2008/07/13 08:13♯206 第9章 もしかしたら 〜面影〜
- 授業が終って、だらだらと次の授業に向かう。もうとっくに授業が始まっている時間だ。後から誰かが近づいてくる気配がして、振り向いた。「!?」知らない男子学生が、私がいきなり振り向いたことにビックリして、通り過ぎて行った。廊下の向こう端まで、誰もいない。駆け寄ってきたケンちゃんの姿を思い描いて、しばらくそこに一人立ち尽くした。「はぁ〜。」やっぱり気が進まない。次の授業はサボって、528教室で本でも読も... [続きを読む]
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- 2008/07/12 08:48♯205 第9章 もしかしたら 〜面影〜
- 冬の空は、薄い水色なんだ。授業は相変わらず退屈で、窓から見える小さな空を、ただボンヤリと見つめている。あの日、気がつくと病院のベッドの上だった。誰かが車で、近くの病院まで運んでくれたそうだ。前日から何も食べていなかったし、寝ていなかったのに加え、極度の緊張のせいで貧血を起こしたんだろうと、その病院の医者は診断した。葬儀はとっくに終っていた。あれから、もうすぐ2ヶ月経つ。リエと田村君は心配してくれて [続きを読む]
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- 2008/07/11 09:10♯204 第9章 もしかしたら 〜現実〜
- 程なくして、葬儀が始まった。遺影写真の笑顔のケンちゃん。私が知っている笑顔より、少し子供っぽい。たぶん、知り合う前の写真なんだろうなぁ。ケンちゃんの子供の頃の写真、見たかった。私の知らない、違う空の下にいた頃のケンちゃんを、こんな形でほんの一瞬しか感じることが出来ないんだね。でも、これって現実なの?だって、「またな!」って言ったよね?あの夜、手を振ったケンちゃんの姿が浮かぶ。泣いているのは、たぶ... [続きを読む]
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- 2008/07/10 10:49♯203 第9章 もしかしたら 〜現実〜
- お昼前に、ソウギに出席するために家を出る。喪服なんて持ってなかったから、サチネェが就職活動で使った濃いグレーのスーツを貸してくれた。私には似合ってないけど、誰も気にしないだろうな。初めて行く葬儀が恋人の葬儀だなんて、想像してなかった。品川駅のコンコースのショップの所で、リエと田村君と待ち合わせていた。「おはよう。」「よう・・・」「おはよう。ユイ・・・顔色、良くないね・・・」「あんまり眠れなくって... [続きを読む]
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- 2008/07/09 10:44♯202 第9章 もしかしたら 〜現実〜
- サチネェは、あくびをしながら椅子に座った。「彼氏と喧嘩でもしたの?」「喧嘩?・・・してなかった・・・」「え?」「ケンちゃん、シンダって・・・」「シンダって・・・?」「うん・・・」「えっ!?」「・・・。」「うそ・・・でしょ?」首を横に振る。「わかんない・・・たぶん・・・」「たぶん・・・て・・・どういうこと?」マグカップを手にとって、コーヒーの表面を見つめる。「・・・土曜の夜ね、事故にあったらしいの... [続きを読む]
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- 2008/07/08 11:51♯201 第9章 もしかしたら 〜現実〜
- 棚に置いてある、いびつなシロクマのぬいぐるみ。ヤスコからこの前もらった写真立て・・・入れる写真が無くってそのまんまだ。ただ時間が過ぎていく。ひとりぼっちになって、しゃがみこんだ子供のように丸くなって膝を抱える。ココに一人、取り残されちゃうの?明日の朝、目が覚めたら夢だったってなるかもしれない。のろのろベッドに入って、目を閉じる。灰色の雲が、どんどん流れていくのが見える。あの時には、もうケンちゃんは [続きを読む]
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- 2008/07/07 08:47♯200 第9章 もしかしたら 〜現実〜
- 瞬きをして、リョウ君の言葉を思い出す。「・・・シンダって・・・」「杉山が・・・なの?」「・・・たぶん・・・」「なんで?」「ジコ・・・」「事故?いつ?」「土曜の夜・・・」「土曜って・・・ユイの誕生日で二人で出掛けた日じゃん?・・・ユイを家に送った帰り道ってこと?」「・・・たぶん・・・」「・・・信じられない・・・」リエの声が震えている。しばらく二人とも黙って、ただ視線だけが空中を彷徨った。そのうち、... [続きを読む]
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- 2008/07/06 08:24♯199 第9章 もしかしたら 〜現実〜
- ケンちゃんの笑顔が浮かぶ。≪じゃあ、おやすみ。またな。≫最後の言葉が聞こえる。角で振り返って手を振った、あの姿が、あの月が頭の中に蘇る。「……だったらしい。それで…ユイちゃん?」名前を呼ばれてビクッとする。「は、はい。」「今日が通夜で、明日が葬儀なんだけど、ちょっと待ってて。」リョウ君は受話器から離れた。「・・・ソウギ・・・?」小さくつぶやく。リエが眉間に皺を寄せた。「お待たせ、住所言うから・・... [続きを読む]
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- 2008/07/05 08:31♯198 第9章 もしかしたら 〜現実〜
- 授業が終って、リエと528教室へ向かう。「イッチーから返信あったよ。イッチーも連絡取れないって。」「そっか…」528教室に着くと、誰もいない事を確認してドアを閉めた。調べたら、リョウ君のお店の電話番号は、すぐ見つかった。「じゃあ、かけるね。」一度会っただけだし、覚えていてくれてるか不安だったけど、3回目の呼び出し音で電話に出た。「はい、ありがとうございます。キッチン佐々木です。」「もしもし、上村... [続きを読む]
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- 2008/07/04 08:24♯197 第9章 もしかしたら 〜現実〜
- 「家の番号、知らないの?」「聞いてない・・・」「よし、送信っと。だよね。私もイッチーの家の番号、知らないもん。」病院なのかな?病気?怪我?入院してたらどうしよう・・・。「そうだ、幼馴染みの人なら家の電話、知ってるよね?」リョウ君なら高校まで一緒だったし、近所だから知ってるはずだ。「幼馴染み?その人の電話番号は知ってるの?」「ううん、お店やってるから、調べればすぐ出てくると思う。」先生が教室に入って [続きを読む]
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- 2008/07/03 08:48♯199 第9章 もしかしたら 〜現実〜
- 今日は午後からの授業だったけれど、少し早めに学校に向かう。まだ午前中の授業時間は終っていないから、キャンパスの中は人影がまばらだった。528教室を覗いてみる。ガラーンとした教室には、誰もいない。掲示板の前に行って、しばらく行き交う人を見ていた。生協の中を見る。近くのカフェも覗いた。教室に行くと、リエがいた。「おはよう!」「おはよう・・・」隣に力なくドッサリと座った。「どうしたの?」「うん・・・日... [続きを読む]
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- 2008/07/02 08:02♯198 第8章 願い 〜変らないもの〜
- 「あー、私も行ってみたいのよー沖縄。でも、グアム、サイパンでもいいけど。」「グアムの方が遠いんじゃないの?」「安いし、観光するのに便利なのはグアムなの。」「ふ〜ん、コウスケ君と行ってくれば?」「卒業旅行で友達とヨーロッパに行くからさ、当分は無理だね。」「ヨーロッパにしたんだ。」「まだ話してるだけで、決めたわけじゃないけどね。ユイこそ、ケンちゃんと行ってきたら?」ニヤケてた理由を当てられたような気... [続きを読む]
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