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- 2008/07/31 16:09第十四話「海の詩」 第五曲「航海」 後編
- 燈沙陽は気づいた。いつものように宗の家に行った。しかし留守のよう。特に予定もないし、しばらく家の前で待っていることにした。数十分の後に、宗だけが帰ってきた。確かに、その日の宗が普段と違うことなど、普通はわからないだろう。そう、彼はある一点を除いては、まぎれもなく普段の彼だった。だが、燈沙陽は気づいた。宗は、今日一度も笑えていない。長い付き合い。親しい仲。だからわかる。これは異常だった。宗は問題を内... [続きを読む]
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- 2008/07/31 16:08第十四話「海の詩」 第五曲「航海」 前編
- 殴られてくれると思っていた。だけど。その平手打ちは、いともたやすく、恐ろしいほどの力で受け止められた。―本気・・・なの・・?彼が、自分に対してこんな態度を見せたのは初めてだった。まだ寒さが残る春の夜。どこからか桜の花びらが飛んできた。坂井から電話があった。どうしても話したいことがあるから、家族には内密に会いたいと。―妙だな・・・?宗は思った。坂井は父のNo.1の部下。その彼が、宗の家族ではなく、宗自身... [続きを読む]
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- 2008/07/24 14:07第十四話「海の詩」 第四曲「海の匂い」
- あの春の あの朝鈍行列車を待った 無人駅おれたちは 都会へ向った父の能力が東京の本社に買われたらしく、おれたちはふるさとを離れることになった。俺の中でだいぶ古い記憶。ふるさとから発つ電車の中。当時四歳だったおれに、引っ越しの理由などわかるはずもなく、ただ、ふるさとを離れる不安だけを感じていた。そして、その街で俺は親友・宗を得た。あの冬の 雨の夜コンクリートの冷たい 谷間にただひとり背を向けて歩くお... [続きを読む]
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- 2008/07/23 05:02第十四話「海の詩」 第三曲「海の子守歌」
- 「お前だって結局金目当てなんだろう!?」やめて・・・「ひどいこと言わないで!どうして疑うの?」「馬鹿な男・・まんまと騙されて」「あいつさえいなければ・・・」やめて・・・「俺の代で、あの家との付き合いはお終いだ。」「将来あんたのためなんだから。叔母さんに逆らっちゃダメ!」「なんであいつが先に生まれたんだ・・・」「もうあなたとはやっていけない。」やめて・・・・・「お荷物な娘。こんなガキのくせに・・・邪... [続きを読む]
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- 2008/06/27 03:01第十四話「海の詩」 第一曲「海はなかった」
- 私は忘れないだろう。それを知った時の彼の顔を。彼はただ、驚き、悲しみ、罪悪感にさいなまれて、そのすべての事実を信じられないかのように呆然としていた。ずっと、嘘をついていた。私の存在を、父の存在を。私は彼の本当の母親じゃない。彼の父は、素晴らしい人だった。私は彼の父と昔から面識があった。憧れてもいた。だから結婚の申し込みをされた時は、正直うれしかった。結婚―彼の父にとっては、再婚だが。彼の実母―彼の... [続きを読む]
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- 2008/06/24 02:48第十三話「序曲」
- 先日の騒動もひと段落し、宗も平穏な日常を楽しんでいた。学校に行き、部活に行き、バイトはなく、帰ったら寝る。しかし平穏な状態というのはいつまでも続かないもので、それは唐突に壊されるのだ。宗の場合、それは一件のメールから始まった。ある日、いつものように宗と二宮は一緒に下校していた。二宮は宗の様子が少し変なことに気づいた。先ほどから携帯電話を取り出しては、開いたり閉じたりしている。前述したが、光生高には... [続きを読む]
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- 2008/06/15 15:24第十二話「夢を」5/5
- 宗はいつもと違う道で登校していた。即ち、二宮の家の前を通る道。帰りは通っても、行きは通らないのが普通だった。だけど、今なぜかその道を選んでいる。―二宮に会うと?馬鹿な・・・そんなことして何になる。しかし・・・宗も自分自身の行動を無意味だと思っていた。でも、やはり二宮に会っておきたかった。昨日の様子だと今どうなっているのだろう・・・。二宮の家の前を通り過ぎた。―ま、会うこともなかったか・・・。宗はし... [続きを読む]
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- 2008/06/09 15:07第十二話「夢を」4/5 p2
- 「しかし君から動こうとするなんてね!」走りながら百合丘が叫ぶ。「あんな顔見せられて黙っていられるわけないよ!」それほど二宮の笑顔は必死で、それでいて決然としていた。「・・っ・・!」突如、宗は立ち止ると激しくせき込んだ。「大丈夫かい?」遅れて百合丘が立ち止まり、こちらを見る。「いつもならこんなのどうってことないんだけどな・・・何分この体調だ・・。でも時間は限られている。」宗は再び走り出した。全力でい... [続きを読む]
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- 2008/06/09 15:05第十二話「夢を」4/5 p1
- 授業が終わり、帰りの支度をする者もいれば、部活の用意をする者もいる、「宗ー・・・大丈夫ー?」二宮が案じる宗は、机に伏せていた。「あんま・・・大丈夫じゃない・・。」どうやら昨日の雨で本当に風邪をひいてしまったらしい。部活を休む理由にはなったが果たしてよかったものか・・・。「悪い・・今日部活休んで帰る・・・。」「そう、じゃ先生に言っといてね〜。」二宮は教室を出ようとした。しかし、ドアのところでふいに立... [続きを読む]
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- 2008/05/16 02:47第十二話「夢を」3/5
- 宗と太多々田はレユニオンに戻り、太多々田の部屋にいた。「使ってください。」「どうも。」宗は太多々田が差し出したタオルで体をふいた。「・・・で、協力してくれるというのは?」体をふき終わり、宗は尋ねた。「私は一応心理学を学んだ身です。」太多々田はそれだけ言った。「やはり、誰かにこのことを言った方がいいと思うんですが・・・。」宗が提案した。「いけません。」「なぜ?」「彼女は・・・二宮さんは、暴力を受けな... [続きを読む]
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- 2008/05/16 02:41第十一話「夢を」3/5
- 宗と太多々田はレユニオンに戻り、太多々田の部屋にいた。「使ってください。」「どうも。」宗は太多々田が差し出したタオルで体をふいた。「・・・で、協力してくれるというのは?」体をふき終わり、宗は尋ねた。「私は一応心理学を学んだ身です。」太多々田はそれだけ言った。「やはり、誰かに言った方がいいと思うんですが・・・。」宗が提案した。「いけません。」「なぜ?」「彼女は・・・二宮さんは、暴力を受けながらも父親 [続きを読む]
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- 2008/05/15 00:57第十二話「夢を」2/5
- 街の中では一番大きな公園。しかしこの雨ではグラウンドに人の姿はない。二人は簡素な屋根の下に設けられたベンチに座っていた。二人とも大分ぬれていた。宗は一瞬、エナメルバッグの中に入っている青いハンカチを使おうかと思ったが、思いとどまった。銭湯用のタオルもあるが、明日使う予定だ。今使ったら乾かなくて明日使えない。二宮はカーディガンを脱いでしぼっている。「さてと・・・」喋り方は普段の二宮だった。あの、明る... [続きを読む]
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- 2008/05/14 03:05はじめに
- ご訪問ありがとうございます。このブログは「DAY BY DAY」というタイトルの小説を書いたブログです。色々かぶってそうなタイトルですが気にしないでください。このブログ自体が、「DAY BY DAY」のお話を文章化して誰かに読んでもらうために始めたので、他の小説を書く可能性はないと思ってくださって結構です。単一作品でやっていきます。この話は、高校二年生で何でもできる優秀な宗(そう)くんという男の子が、一人暮らしで... [続きを読む]
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- 2008/05/13 17:52第十二話「夢を」1/5
- 「それより今日部活・・・」宗が言いかけたが、すぐさま「話をそらさないで。」と二宮が遮った。その声にはいつものような軽い感じはない。この朝の時間が終わり、次の授業が始まるまで十分間ある。宗が身動きができず、話す時間があるときに言ってきた。真剣なようだ。しかし笑顔だけは保っている。―人間は「不幸」と呼ばれる状態に陥った時、自分より不幸なものを探す。その白羽の矢が僕に立ったってわけか。だがあいにく僕は不... [続きを読む]
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- 2008/05/11 15:11第十一話「過去」2/2
- 「そゆことで、わしは明日からブラジルにいる弟のところに行くから、一週間の休みね。」三時間のバイトの後、鷹井老人は言った。「え?」―一週間は七日で、毎日バイトがあるとして、一日少なく見積もって2000円として、それが七日だから・・・14000円!?宗にとってかなりの痛手だった。それに部費を払ったばかりだ。「あ、でもお孫さんはどうするんですか?」「美由のことかね?あの子はしっかりしているから一週間くらい平気平... [続きを読む]
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- 2008/05/10 17:22第十一話「過去」1/2
- 部活が終わり、下校。二宮とも別れて一人で帰っている宗は考え事をしていた。―確かに、二宮に不審な点はいくつかある・・・。しかし確証もないのに探るのは下手したらストーカー扱いされてもおかしくないからな・・・。あくまで僕は何もしない。百合丘に言われて二宮の行動に注意して一日を過ごした。言われたようなことを思わせる行動はいくつかあった。―まあ・・・ただひとつ確証が持てることは、二宮があの性格を演じているっ... [続きを読む]
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- 2008/05/08 02:44第十話「百合丘」2/2
- 次の日も部活はない。宗たちはいつも通り下校している。しかし誰もが異変に気づいていた。「ねぇ・・・」鷹井が二宮に目くばせをする。二宮は無言でうなずいて答える。宗は大杉と話している。「だから、俺は一人でもお笑い部を続けているわけよ。俺がこの学校に入ってきたときにすでにお笑い部はあった。三年生一人だったがな。彼はすごい人だったよ・・・。彼、前部長が言うには、昔は栄えていた部活だったんだ。文化祭なんかでも... [続きを読む]
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- 2008/04/30 23:27第十話「百合丘」1/2
- 五月。気温も上がってきて半そでで学校に来る人も多くなった。しかし宗は相変わらず上着を着用している。その日、宗は部活がない日のいつものメンバーと下校していた。なんとなく宗は、そのとき皆の会話から外れていた。宗はたまに、何気なく会話から外れて一人でものを考えるときがある。―百合丘・・・。たしか前のテスト学年五位だった。普通とか言っていた割には大した成績だ。あと二宮も八位。・・・結構すごいよな。大杉と鷹... [続きを読む]
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- 2008/04/30 01:28第九話「シャコンヌの頂」
- 俺は佐々山徹(とおる)。四歳のときにこの町に来た。当時の俺に分かるはずもないが、引っ越しの理由は父の会社での実績が認められ、本社に転勤になったからだとか。この町でできた初めての友達は宗といった。俺たちは毎日のように遊んだ。ある日、保護者同伴で俺たちが道を歩いていた時、音楽がきこえた。小さな一軒家からだった。俺は子ども心ながら、その音楽に深い感動を受けたのをよく覚えている。すごい音だった。「きれいだ... [続きを読む]
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- 2008/04/29 01:12第八話「マンション行事」2/2
- 宗と佐々山、アサは椅子を並べてテーブルの上の料理に手を出していた。「しかし、こんな料理どこから来るんだ?」佐々山が宗にたずねる。「費用は僕らの家賃の一部から出ているらしいね。」宗が答える。「他にも色々あるんですよー。定期音楽会とか、このマンションの住人総動員で合奏やったりしますから。外からのお客さんも結構来るんです。ちなみにソプラノ・ソロで一番目立つのは私・・・へへ」とアサ。最後のセリフは自慢のよ... [続きを読む]
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- 2008/04/27 23:25第八話「マンション行事」1/2
- 宗は急いでいた。携帯電話を取り出して、液晶画面の時刻を見る。―19:13。いける。宗は50m走5秒台の俊足で走った。「レユニオン」が見えてくる。「レユニオン」は小高い丘に建っているので、遠くからでも見える。すると同じく「レユニオン」を目指しているであろう人影が見えた。視力が2.0をゆうに超えているこれまた素晴らしい能力の持ち主である宗には、それが誰なのかすぐにわかった。アサだ。宗はアサの方へ走った。「や、」宗... [続きを読む]
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- 2008/04/21 02:30第七話「パターン、始まり」3/3 p2
- 下校中、アサの心配事は、国語のテストで漢字を書く回答欄を間違えたことではなくなっていた。佐々山に意外な過去があった。―彼になら、打ち明けてもいいかもしれない。アサは佐々山に自分の秘密を打ち明けることを考えていた。初めて会ったとき以来、佐々山は何度か「レユニオン」に遊びにきたが、その「秘密」には触れてこなかった。即ち、なぜ自分がエレベーターに住んでいるか。一人でどうやって生活し得るのか。そして―両親 [続きを読む]
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- 2008/04/19 05:36第七話「パターン、始まり」3/3 p1宗の回想
- 確かあれは公園の砂場だったね。幼稚園くらいかな。よくある出会いだ。同じ時間帯に遊びに来る日が多かったもので、いつしか一緒に遊ぶようになっていた。その街に住んでいたは僕の方が長くて、佐々山は引っ越してきたんだ。佐々山はここからは遠く離れた田舎町から来たらしい。父親は大手企業の社員で、実績を認められ、本社の方に転勤になった。そして彼はこっちに来た。僕たちは小学校が公立だったんだよ。母曰く「最終的にはい [続きを読む]
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- 2008/04/18 01:26第七話「パターン、始まり」2/3
- テストが終わり、宗と佐々山は廊下で話していた。「どうだった、宗?」「まあ・・少なくとも全部百点は取れただろうな。」その発言にさすがの佐々山も少し引いた。佐々山がいくら優秀といっても、頭脳だけはいくらばかりか宗に及ばないところがあった。そして宗は、その性格からは想像もできないほど自信の強い人間なのである。ときには平気で佐々山を馬鹿扱いしたりする。しかし本人はその自覚はないようだった。「"少なくと [続きを読む]
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