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- 2008/10/13 08:59『船長との出会い2』
- 寮長は定年まじかの初老の男だ、おだやかな顔の中にキリッとした男らしさが漂う。俺は一目見て好印象をもった。年少の先やんにいい印象を持つなんてめずらしい。寮長が座れと言うので、それから三十分程、二人で話し込んだ。とにかく考査中十日間、めんどうは見てやるので、おだやかな日々をおくれとの事だった。寮長は、若い時、船に乗って世界中の海を渡ったらしい。そのなごりか、今でも刻みたばこを、パイプにつめて吸う、これ... [続きを読む]
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- 2008/10/12 05:45『船長との出会い』
- 次の日『起床』の号令で目が覚める、泊まりの先やんが、泊まりのえらいさんを連れて点呼をとる。布団をあげて、洗面、掃除をすませる。特に掃除は念入りに仕上げる。娑婆では一切しないのに不思議だ。早くも、施設の生活に順応しようとしている。生きる本能のスイッチが入ったみたいだ。問題は、朝飯の味噌汁だ、これがうまいか?まずいかで、一年の生活が大きく変わってくる。毎朝飲むのでこれがまずいと、地獄だ。今までいた鑑別... [続きを読む]
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- 2008/10/11 04:18『特少入院』
- 冷たい海を渡ってまたしても汽車に揺られて着いた小さな駅には特少のバスが待っていた。それから十五分程すると特少の建物が見えてきた。ここを一歩入るともう別世界だ、悲しいやら、情けないやらで、目の前が真っ暗になった。おまけにお決まりの裸献身で、尻を覗かれるは、頭は刈られるは、私服を脱がされるは、さんざんの目にあった。これで特別少年院の院生が一丁上がりで、出来上がった。見かけだけではない。それまで残ってい... [続きを読む]
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- 2008/10/08 00:52『鑑別所6』
- 『四角い窓から空見れば、あの星あたりが、スケのヤサ、今頃スケちゃん、何してる。写真片手に出る涙』寝る前に恵子を思ったせいか、夢の中まで練鑑ブルースが聞こえた。『起床』の号令で目がさめる。昨日までの朝と空気が違っていた。昨日まであきらめていたが、試験観察で釈放という一部の望みがあったが、もうない、確実に特少に行かねばならぬ。その実感が昨日より更に増す。たった一年されど一年だ。俺には気の遠くなるような... [続きを読む]
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- 2008/10/07 06:06『鑑別所5』
- 鑑別所に刑事がやって来た。別件が上がったという、上野の意趣返しだろう。どうせ特少に行くのなら否認せずに、この別件ももって行こうと決めた。もし否認したら、出院の時、門の前で待っているなんて事になりかねない。お上を敵に回すとこれだからめんどくさい。おそろしい奴らだ。それでもこれで終わったとどこかでホッとしていた。後は特少を務めるだけだ。運命の少年審判の日がやって来た予想通り、『君を特別少年院に送致しま... [続きを読む]
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- 2008/10/06 06:04『鑑別所4』
- どんな沙汰が降りるのかとしばらく待ったが、何も言ってこない。どうやら何もなかった事にするらしい。年少と違い鑑別所は収容期間が短い、どうせすぐいなくなるのでほっとけと言うことらしい俺にとってはそれでいいが、審判の時は、不利な報告書が届くだろう。『反省の色がなく、順法精神が著しく欠如している』こんな具合だろう。これで、わずかに残った可能性が消えて、特少行き決定だ。馬鹿のおかげで、えらい迷惑だ。馬鹿はノ... [続きを読む]
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- 2008/10/05 08:41『鑑別所3』
- 何処に行っても、目をつけられてトラブルを起こす、俺の存在こそが、ヤクネタなのかもしれない。トラブルメーカーと言われてもしかたがないだろう。それでも、人の為に生きているのではない。自分の為に生きているのだ。火の粉を被ってジッとなんかしていられない。二、三日して独居房から、雑居房に変わった、これで話相手が出来た。少しはたいくつな毎日がましにまるだろう。そういえば、二年前には、ここで幸雄と会って、あれか... [続きを読む]
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- 2008/10/04 05:20『鑑別所2』
- 久しぶりにぐっすり寝た俺は、ラジオから聞こえる鳥のさえずりで目を覚ました。そのうち『起床』の号令がかかる。悲しいかな、年少を出て一年以上たった今でも、この号令に反応する。一秒もたたぬうちに完全に目が覚める。少々蹴っても目を覚まさぬ奴も、この号令をかけると目を開けぬままでも起き上がる。施設での生活は本人が思う以上に、心の奥深くに刻まれている。三十年たった今でも、時々夢に見て、汗びっしょりになって目を... [続きを読む]
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- 2008/10/03 09:03『鑑別所』
- 二年ぶりに来た鑑別所は、相変わらず色あせて昭和初期の雰囲気をかもし出している。人の希望を吸い込んで落ち込ますにはちょうどいい景色だ。それでも、あの上野刑事の顔を見なくてすむと思うと何だかほっとした。人を裸にするのは前と変わってないが、尻の穴にガラス棒をつっこんでする検便はなくなっていた。少しは改善したらしい。中で働く先生もほとんど知った顔で、不安はないこれから先の展開を考えるには、ちょうどいいかも... [続きを読む]
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- 2008/10/02 10:46『取調べ8』
- 完全黙秘のまま俺は鑑別所に連れて行かれた。もちろん行きの車で上野の奴には思い切り、嫌味を言ってやった。刑務所や年少に行きたくないから刑事に遠慮するけど、鑑別に連れていかれる俺に遠慮はない。『人を冤罪で落とし入れて、出てきたその日に電話するから、一人で出て来いよ』上野が返事しないので、『おっさん、返事せいや』とおらびつけてやった。上野は我慢している。ここで乱闘になったら、新聞沙汰にもなりかねない。『... [続きを読む]
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- 2008/10/01 00:57『取調べ7』
- 検事調べに行ってから、次の日も、その次の日も取調べがない。放置されている。警察がよく使う手だ。口を割らない奴に、口を軽くさす手口だ。人は社会的動物である以上、人との会話は必要不可欠のものだ二、三日留置場に閉じ込めて誰ともしゃべらないと、人恋しくなって、誰かとしゃべりたくなる。たとえそれが、敵であってもだ。その心理を利用する。ここでも上野はまちがいを起こす。そんな心理より、俺にとっては、取調べで吸う... [続きを読む]
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- 2008/09/28 01:31『取調べ6』
- 検察庁に連れて行かれた俺は検事の前で住所と名前以外は、事件の事は全然身に覚えがないと言った。『それより、昨日から知らないと言えば、さんざん暴力を振るわれて、二度も意識を落とされたのですが、検事さんの支持ですか?』俺はしれっと検事に聞いた。『馬鹿なことを言うな、そんな事私が言うはずないだろう。どうなっているんだ君。』一回りも若い検事に上野のおっさんが怒られている。『でたらめをいうな、いい加減にしろ』... [続きを読む]
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- 2008/09/27 02:37『取り調べ5』
- 上野がさっきの若い刑事を連れてきた。目の周りに青たんが出来ている。思わず噴出しそうになったががまんした。『またしても、俺を落としてくれたな、もういっぺん勝負したるから、今度は一対一でこい』と俺が言うと、『さっきのは、お前がいきなり飛び掛って来たんじぁないか。』『やかましい、その前にやられたしかえしじぁ、毎回多勢に無勢で、勝った気になってるお前はアホか?国家権力と己の力を一緒にするな。一対一ならお前... [続きを読む]
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- 2008/09/26 09:31『取調べ4』
- 次の日真っ赤な顔して上野がやってきた。『お前だけは要らぬ事を告げ口しやがっていいかげんにしろ』怒っている。『おっさんにとっては、要らぬ事でも、俺にとっては大事な事や』俺は答えた。『まあ、いい、検事調べにいくぞ』上野がいうので、『お前一人でいけ』と俺は答えた。『お前は何を言っているんや、早く出ろ』上野が言う。『やかましい、五人がかりで俺を落として、いいようにされて何で俺がお前の言う事聞く必要があるん... [続きを読む]
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- 2008/09/25 08:44『取調べ3』
- 刑事達が部屋に入って来るなり、俺を押さえつけて、『どこで大物たれているんじゃ』と言うので、『やかましい』というとボディブローが飛んできた。出頭してきた時に俺の襟首をつかんだ奴だ。俺は渾身の力を込めて蹴りをこいつの腹に入れた。それからは大乱闘だ。俺は締め技で落とされて、その後の記憶がない。今度気がついた時は留置場のなかだった。体のあちこちが痛い。後の残る顔だけは無事だ、どこまでもきたない奴だ。寝る時... [続きを読む]
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- 2008/09/24 09:35『取調べ2』
- 他の刑事を外に出してから、上野と二人で取り調室の机で向かい合う、名前と住所を自分で言った。その後は上野が勝手に作文を書き出した。俺と親父が飲み屋街の道で、歩いている人をじゃまだといって蹴ったというものだ。そのさい親父が俺に『やれ』と命令したらしい。そして調書の最後に指紋を押せと言う。ここでは指紋が判子の変わりだ。『面白い作文だが、あんたが書いた作文に何で俺が判をつかんといかん。自分でついておけ』俺... [続きを読む]
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- 2008/09/23 08:31『取調べ』
- 刑事部屋のドアを開けて声をかけると、十人程の刑事がいた。『おう、やっとお出ましか?』若い刑事が皮肉を言う。どいつもこいつも下品な奴ばかりだ。権力を持つ傲慢さと上からの命令は絶対の縦社会に住む住人の卑屈さの入り混じった。腐ったサバの様な目をした奴ばかりだ。その中から、一番年寄りの刑事が、『こっちにこいや』そう言って部屋の奥の取調べ室に案内してくれた。だいたいどこの警察署も刑事部屋があって、その奥に取... [続きを読む]
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- 2008/09/22 01:01『出頭』
- 組長や幹部に相談して三日後に出頭することになった。兄貴だけが様子がわかるまで地下に潜っていろと言ってくれたが組長に言った後なのでもう出るしかない。『兄貴、どうせ特少ですよ、一年程で帰ってきます。』口ではそう言ったが、前の年少での生活を思い出して、嫌になっていた、そんな俺の心を知ってか、兄貴はいつもより早く酔い潰れてしまった。兄貴を送って家に帰っても眠れない、明日は舎弟連中を集めてお別れ会だ。それは... [続きを読む]
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- 2008/09/21 12:21『小さな事件』
- 久しぶりに組の親父と飲みに出かけた、ネオン街を歩いていると、酔っ払いが親父に絡んできた。俺は酔っ払い二人を軽くけつり飛ばし、そのまま通り過ぎた。五分後にはそんな事は忘れてしまっていた。俺にとってはすぐ忘れてしまう様なほんの小さな事件だった。いつものように遅くまで飲んで帰った。年末が近くなり町も人もざわついている頃、町で刑事に会った。『おう、元気でやりよるか?』『ぼちぼちです。』と返事はしたものの、... [続きを読む]
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- 2008/09/20 09:10『危機管理2』
- 自分の甘さを思い知った俺は、次の日さっそく動いた。金属バットを十本ほど買ってきて自宅、車のトランク、立ち回り先などにくばって回った。小さな飛び出しナイフも三本買ってきて、常に一本は、ズボンのポケットに忍ばせた。元々凶器は嫌いだが、この小さなナイフは、俺の心の油断を切る為の意味が大きかった。映画の話じゃないけれど、拳銃に防弾チョッキ、射撃練習とはいかなかった。そんな金もないし、買い付けるルートも知ら... [続きを読む]
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- 2008/09/19 10:14『危機管理』
- 皆で走りながらも、俺は頭の中で別の事を考えてた。あのまま油断して酒を飲んでいたら、どうなっていただろう。頃合を見て外で待機していた奴が中に入ってきて、俺達に圧力をかけたかもしれない。いきなり喧嘩になる事はないだろうが、喧嘩を売られるかもしれない。いや、その前にこの前の喧嘩の時、『覚えていろよ』と喧嘩を売られているのだ。むこうはきっちり覚えていて、実際次に会った時、人数を集めて待機させている。あんな... [続きを読む]
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- 2008/09/18 01:39『躍進2』
- わずかばかりの金が動き出していつもの様に、浮かれて町に繰り出す。松とサブを連れてスナックで飲んでいた。するとこの間の喧嘩相手が入ってきた。『よう、兄ちゃん、元気なんか?』顔は笑っているけど目は笑っていない。この間の『おぼえていろよ』のセリフを思い出す。『今晩は』一応年長者なので挨拶はしたけれど、腹の中でどす黒い悪意が沸いてくる。いっそうこのまま飛び掛ってやろうかとも思ったが、そこまでする理由も見つ... [続きを読む]
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- 2008/09/17 02:45『躍進』
- 三日もしない内に松が単車が売れたと三十万持ってきた。兄貴に十六万返すと十四万が手元に残った。松に四万サブに二万やっても俺の取り分は八万になった。そんなこんなで、確実に金が回りだした。波に乗っている時の俺は強い。ほとんどの話がうまくいって、道が開けてきた気分だ。その分前にも増してよく飲み、遊ぶようになった。女遊びも激しくなって、家にも着替えるぐらいしか帰らなくなった。その頃俺は祖母の離れに住んでいた... [続きを読む]
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- 2008/09/16 08:28『シノギの壁4』
- この間、単車の話を持ってきた舎弟の松に、『この間の話生きてるか?』と聞くと『多分生きてる』と答えた。『今すぐ電話しろ、ついでに、もう五万ほど負けてくれたら、明日でも金を払うと言ってみろ』松が電話をしている間に、皆に事情を説明する。『それはええ話しじぁ、金に困っている奴なんて山ほどいるし、今金さえあれば、儲かるのにという話もちょくちょくある。面白い事になるかも知れん。』皆がのってきた。根性だけではど... [続きを読む]
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- 2008/09/11 04:55『シノギの壁3』
- 次の日水田の兄貴に呼び出されて焼肉屋に、行った。『おはようございます』と声をかけると『こっちや』と二階の窓から兄貴が顔を出す。『上がって来い』と言われて焼肉屋の横の階段を上がって二階に行く。『青空商事』と書いたドアを開けて、中に入る。兄貴がソファーに腰掛けて『お前も座れ』と言ったので『失礼します。』と言って座った。『兄貴いったい、此処は何ですか?』『ここは俺の家がやっている金融屋や、もっとも俺も給... [続きを読む]
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