冬杜燈霧 さん

冬杜燈霧さん: クイン・ジュノー3 『妖かしの遺剣』
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プロフィール

ハンドル名冬杜燈霧 さん
ブログタイトルクイン・ジュノー3 『妖かしの遺剣』
サイト紹介文1993年出版のSF・ヒロイック・ファンタジー
冬杜燈霧 (ふゆもりとうむ) <aka 冬杜絵巳子>の小説
参加カテゴリー
更新頻度情報提供123回 / 120日(平均7.2回/週) - 参加 2008/03/31 15:38

冬杜燈霧 さんのブログ記事

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  • 2008/07/28 11:0011無常
  • 「せっかく目一杯用意していった投剣と矢を一本も使う間がなかったというのは、どうもしゃくにさわるな。まるで役立たずを絵に描いたようではないか」言葉とは裏腹のくつろいだ笑顔で、ミツァラが言った。「まあ、そういうめぐり合わせの時もあるさ。君の眼にとまらなかったアルケドは北側からカリックスのほうへ逃げたのだろうな…」ティモシィが、ゆったりと壁に背をもたれ、続き部屋の扉を眺めながら言葉を返した。「ア [続きを読む]
  • 2008/07/27 11:0010無常
  • 「急な病だったと聞いたが…。気の毒に思っている…」静かに言葉を返し、ジュノーはソードを鞘へ収めた。「…おまえに、なにがわかる…?志(こころざし)なかばにして、こともあろうに、病に屈するなど…」「かけがえのない友をなくす気持ちは薄々なりとさっしがつく…。つらいことと思う…」「かけがえのない友!? ハッ! そんなものではないわ!この男は…エルディンは、わたしの…王であり、支配者だった…」突然声を荒ら... [続きを読む]
  • 2008/07/26 11:009無常
  • 「二人とも、少し離れてくれ」ジュノーが指示を出し、忍びやかな身ごなしで外れかけた扉へ近づいた。扉の正面より一歩手前に足を止めジュノーは、ソードを一閃(いっせん)させた。歪んだちょうつがいが断ち切られ、扉がゆっくりと内側へ倒れ込んだ。「くっ」と、低いうめき声が上がり蝶つがいと共に左腕を傷つけられたマルテスが右腕一本でジュノーへ剣を突き出した。体勢の崩れたマルテスの突きを難なくかわしジュノー ... [続きを読む]
  • 2008/07/25 11:008無常
  • 「ラナが倒れていたのは、その辺りだ。螢(ほたる)狩りに来た若者達が見つけてくれたのだがね」ティモシィが少し先の一点をさし、そう説明した。「昨夜、あなたが襲われた場所は?」ジュノーが尋ねると、ティモシィは長い足でもつれた枯れ枝の塊(かたまり)をまたぎ越しながら「だいぶ奥だ。くり抜かれた椀(わん)のような奇岩が近くにあったな」と、言葉を返した。「ラナの容体は、今朝は…?」心持ち声を低め、ジュノ ... [続きを読む]
  • 2008/07/24 11:007無常
  • 「そこまで無理なことではないが…」ジュノーは、一瞬で消える短い苦笑を浮かべた。「あなたには、いずれ話すつもりだ…。皆にふれまわるようなことではない」「そんなふうに言われると、おれ達はおしゃべりだから内緒話の仲間には入れてやらぬ、と思われているようだぞ、なぁ、クリスタ」ミツァラが、枝だけになった山葡萄を皿に置き、残念そうに文句をつけた。「おれはそうは思わぬ。ラナの個人的な頼みだとジュノーが言う ... [続きを読む]
  • 2008/07/23 11:006無常
  • 「どうしたんだ!?」ミツァラが驚きの声を発した。ティモシィは片手を上げ、なんでもない、というしぐさをした。ティモシィの灰緑の衣服の数カ所には破れめがあり腹の辺りに血の染みが散っている。ジュノーはうしろ手に境の扉を締め、静かな声音で「ラナは眠っている」と、皆に告げた。「これは返り血だ…。わたしは傷ついてはいない」ティモシィが、そばへ寄って来たミツァラ、クリスタ、ユリアナに向かい、穏やかに言 ... [続きを読む]
  •   関連キーワード
  • 衣服
  • 2008/07/22 11:005無常
  • 「マーシー、新しいお友達ですよ」ユリアナが、ぴくりと頭を上げた狼犬へ、穏やかに呼びかけた。体色はほとんど灰色だが、片耳と鼻の両脇に真っ黒な筋模様のある狼犬はふーと聞こえる吐息を洩らし、あっさりと頭を前脚のあいだヘ戻した。ジュノーとクリスタはラナの枕元へ歩み寄った。ラナは二人のほうへ顔を向け、蒼白いほほえみを浮かべた。藁色(わらいろ)の髪の一部がばっさりと切られ包帯を巻きつけられている頭が痛 ... [続きを読む]
  • 2008/07/21 11:004無常
  • ジュノーの右手を両手で握りしめ大仰な笑顔を向けているミツァラに、クリスタは「おい、ジュノーに会いたがっているというのはラナではなくおまえではないのか?」と、きびしく言った。「いやいや、本当に、ラナがジュノーの名を口にしたのでおれは伝え鳥を飛ばしたのだ。六日ほど前のことで、ラナはそのことは覚えていないようなのだが…」「おれは宿へ帰っている。おぬし達がこの町にいてくれるなら明日にでもちょっと女 ... [続きを読む]
  • 2008/07/20 11:003無常
  • 翌日、焔竜(えんりゅう)の月三日のなま温かい黄昏(たそがれ)どき二人はムールターンの南門をくぐった。ローヴ山脈を越える途中、若い鎧竜(よろいりゅう)の雄と遭遇したが危ういところでやり過ごし、その後は無事順調に道を辿ることができた。花鳥風月(かちょうふうげつ)の浮き彫りをほどこされた石の装飾壁があちらこちらに建つ町、ムールターンは、しっとりとした落ち着きの漂う古都だったが、ジュノーとクリスタに ... [続きを読む]
  • 2008/07/19 11:002無常
  • 離れた町と町を結ぶ伝え鳥屋は文(ふみ)を運ぶ鳥達の眼に止まりやすいよう周囲の家々より屋根が高く鳥が出入りする広い天窓がそなわっているので、旅人にもすぐにわかった。乾いて埃(ほこり)っぽいおもて通りから外れ瓜の蔓(つる)が一面に這っている土手を越えた所の数軒の鄙(ひな)びた店屋のうち、一軒が前庭にまだ受取人が名乗り出ない文の宛て先をかかげている、伝え鳥屋だった。「…これだな、ムールターン発 ... [続きを読む]
  • 2008/07/18 11:001無常
  • 蜜月(みつげつ)とはこのようなものかもしれぬ、と、クリスタは心の中で独語した。ダークナイトらと決別し、なにものにもとらわれずジュノーと二人きりの気ままな日々を重ねて行くにつれクリスタの不安は減少し、生来の自信がよみがえって来るのを感じていた。−ジュノーは、だれよりもこのおれを選んだのだ…。多くの点でおれよりまさった力を持っているだろうオニキスよりまた、戦士としての強さを高めてくれる佳(よ)き ... [続きを読む]
  • 2008/07/17 11:007女囚
  • 翌日の夕刻、四人はフランメウスとともにノームバルの祠(ほこら)の前に佇(たたず)んでいた。(さ)びついて化石のようになった青銅の斧(おの)と黒ずんだ革紐にしか見えぬ毒棘(どくとげ)の笞(むち)それに金糸の飾り布の風化寸前の切れ端…の、三つの品々を改めて祠の石櫃(せきひつ)に納めタウリカの住人の手を借り、祠の入り口を完全に岩でふさいでしまうとミューズが、封印の護符(ごふ)の代わりとなる秘形を、 ... [続きを読む]
  • 2008/07/16 11:006女囚
  • 言葉は芝居がかっていたが、その真摯(しんし)な口調と殺風景な牢部屋にはおよそ似つかわしくない神々(こうごう)しいまでの美しさに、ラウーラだけではなく鉄格子越しに見守っている戦士達までが、思わず惹きつけられた。「…なにを言ってるのよ、ばかばかしい」ラウーラは虚勢(きょせい)を張り、ジュノーへきついまなざしを投げた。「セザリーという名のノームバルの者が昔、この辺りに棲(す)み暮らしていたのだ…」 ... [続きを読む]
  •   関連キーワード
  • 芝居
  • 2008/07/15 11:005女囚
  • 「あなた方の事情はわかりましたがではどうぞと、囚人を解き放すわけには参りませんね」タウリカの執政官(しっせいかん)フランメウスは、事務的な口調で戦士達へ告げた。「当然であろうな。そちらは我々になんの義理も無いのだから…」ダークナイトが、落ち着きはらってうなずいた。ミューズが、「保釈金をお渡しするということではいかがでしょうか?」と、尋ねると、執政官は、「そうですね…」と、考え込むようすになっ ... [続きを読む]
  • 2008/07/14 11:004女囚
  • ノームバルの二人の部屋のほうに集まり寝台と椅子に腰を落ち着けるとさっそくミューズがてんまつを語り始めた。「わたし達がコルベールに案内された所はこの辺りで最もかせぎの多い女賊達の連絡に使われている家でした…」語り辺(かたりべ)にふさわしい柔らかく美しい声音が蝋燭(ろうそく)の火影の揺らめく狭い室内に、豊かに流れて行った。「…コルベールは、そこにいた何人かの女達の一人を、女賊の頭とわたし達に紹 ... [続きを読む]
  • 2008/07/13 11:003女囚
  • 町の女達の注視を浴びながら、一行は昼食を終え腹ごなしにタウリカの北の一角を散策し、製粉所や、競売場、果樹園に執政官(しっせいかん)の屋敷などの位置を心に留めた。東南の外壁のすぐ外側に広がる細長い湖のほとりが木陰、岩陰が多く涼やかで、午睡(ごすい)を取るのに適していた。夕刻、屋台のオレンジと塩パン、鶏の串焼きなどを買い求め十二宮へ戻って闇が降りるのを待った。「まいりましょう」ダークナイトと [続きを読む]
  • 2008/07/12 11:002女囚
  • 「大酒呑みの男嫌いか。信用できるのだろうか?」ダークナイトが苦笑し、口直しの薄荷水(はっかすい)でひと息ついているミューズを眺めた。「いいかげんなことを話しているようではなかった」クイン・ジュノーが穏やかに言った。四人の戦士は、ミューズの強い要望によってコルベールの家からほど近い軽食屋を訪れ壁というものがほとんどない草葺(くさぶ)きのあずまやの一隅に席を占めていた。「どこであるかわからぬ ... [続きを読む]
  • 2008/07/11 11:001女囚
  • 「あなたが、セルダム…?」開口一番、コルベールは言った。「アティスのセルダム、クイン・ジュノー」ジュノーは静かに名を告げ、『男嫌い』の女の顔を見つめた。−印象の薄い顔立ちだ…。中庸の大きさの目鼻に唇、砂色の髪、化粧をしていない薄茶色の肌…。しかし、なんとない風格が漂っているようだ。「そう? 確かに男にしては美しすぎるけど、女にも見えないわね。まあいいわ、すわって話しましょうか」ジュノーを見 ... [続きを読む]
  • 2008/07/10 11:006熱風
  • 陸亀屋までの道筋は商家が多く集会場や産院などの大きな建物もあちらこちらに見受けられた。店の脇には葉が大きく背の高い木々が植えられどの店も例外なくたっぷりと突き出た庇(ひさし)を持ち日陰の幅を競っているようだった。「なまぐさい臭い…」ミューズが眉をひそめた。「亀ではないな…」ダークナイトが呟き、前方の、石垣で囲まれた一画へ歩を進めた。「亀ですわよ」胸程の高さの石垣越しに中を覗き込み、ミュー ... [続きを読む]
  • 2008/07/09 11:005熱風
  • 遠目には、ただ白っぽいだけの切れぎれのものに見えていた石壁は、それぞれが三階家ほどの高さと五十歩余りの横幅を持ち、表面には、なかばかすれて消えかかった幾何学的な紋様が、薄い朱の色で描かれている。クリスタを先頭に一行が、互い違いの弧(こ)に立てられた壁と壁の合間へ歩を進めると、砂漠からの熱風はさえぎられたが、ちょうど真上の太陽の光が白壁に反射し、まばゆさは眼をおおいたくなるほどだった。額に手 ... [続きを読む]
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  • 砂漠
  • 2008/07/08 11:004熱風
  • 「鉄のような神経とはおまえのことだろう…。もうここには用はない。タウリカへ向かおう」ちらりと背後の祠へ眼をやり、ダークナイトも地表へ飛び降りた。続いてミューズが舞の一場面のようなかろやかさを見せ、ほっそりとした肢体を宙へ踊らせると、長い髪が銀糸のたばのように日に煌(きら)めいた。「これからはともに助け合って行かねばなりませんわね、盗人を見つけ出すために…」岩山のあいだを歩き始めながら、ミュ ... [続きを読む]
  • 2008/07/07 11:003熱風
  • しだいに高く昇って行く日に照らされ、時には激しく、時にはじわりとからみつくように吹きつける熱い風を受け、四人の戦士は黙々と広野を進んだ。やがて、南側へなだらかに傾斜している灰緑の岩山が近づき、それを越えると、大小の岩山が無数につらなる、日陰の多い、湿った匂いのする土地へ出た。「こちらのはずです」慎重に岩山の並び具合を見定め、ミューズは三人をいざなった。ひときわ大きくごつごつとした岩山の ... [続きを読む]
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  • 土地
  • 2008/07/06 11:002熱風
  • 「祠(ほこら)の封印が無事であれば、物見遊山も同然ですわ」臆(おく)せず、ミューズは言葉を返した。「おまえはケルディゴ様の不吉な夢見を信じていないのか?」「わたしはなにごとも自分の眼で確かめることが好きというだけ…。セザリーの遺した剣に魔の力が宿っているかどうか、早く真実を見きわめたく思っておりますの」「どのような生涯を送ったのだろう…。ノームバル最後のセルダムは…」        だれにと ... [続きを読む]
  • 2008/07/05 11:001熱風
  • 第三章  熱風「ノームバルとアティスの戦士が同じ目的に向かって協力し合えるとは、実にすばらしいことです。あなた方が寛容とけんそんの精神を忘れず、みのり多き旅ののちに充分な成果を得ることを、心より祈りましょうぞ…」小太りの両腕を大仰に天へ上げ、アン・パシャが、中心の四人と、なにごとかと周囲へ集まって来た戦士達へ告げた。「まったく、快い承諾がすみやかに得られて、実に喜ばしい…。さあ、オニキス、 ... [続きを読む]
  • 2008/07/04 11:007儀式
  • 双方の戦士の中で最も年長の者と、最も年少の者…ノームバルのボーニと、アティスのクイン・ジュノー、が、土の上に置かれた血と塩と水の器(うつわ)を取り上げ、三つの祭壇へ歩み寄った。頭でっかちで梟(ふくろう)顔のボーニと並び、クイン・ジュノーの妖花のような美しさがきわだった。二人は〔火〕〔地〕〔天〕の順に、器を傾け、豊穣の血を祭壇へしたたらせた。すべての儀式が終了すると、長老を含めた全員が、聖 ... [続きを読む]
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  • 祭壇
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