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- 2008/06/06 22:59なぜか野球にたとえてしまう
- 久しぶりに小説を書いた。 この前は「何日もかけていい作品を書く」なんてことを言ったけど、『絆創膏』は一日で書いた。しかも、書こうと思ってから書き終わるまで一時間もかかっていない。 これがいい作品だなんて思ってないし、これが書きたかった小説というわけでもない。 ただ書きたくなったから書いただけで、やっぱり、この前急に書けなくなったのは、書きたいっていう気持ちがなくなったから書けなかっただけで、結... [続きを読む]
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- 2008/06/06 22:54絆創膏
- おばあちゃんが彼女の手を見て、泣いた。おばあちゃんがなぜ泣いているのか、彼女にはわからなかった。玄関でガシャンと音がしたから、いつものように夕刊を取ってきてあげただけなのに、それを受け取ろうともしないで、泣いていた。声も出さすに、ただ涙を流していた。「どうしたの?」 おばあちゃんは、自分が涙を流していることに、彼女の声でようやく気がついて、箱から新しいのを取ればいいのに、ポケットの中から小さく... [続きを読む]
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- 2008/05/23 23:17決心
- 「おめぇ、くだらねぇ作品ばっかUPしてんじゃねぇよ。こんなの毎日読まされるこっちの身になれっつーの!」 というメールが、毎日毎日届きます。 差出人は私です。 ずっと考えてました。果たして、このままでいいのかと。 文章を上達させるには毎日書くに限る、掌編なら毎日でも書けるはず。と軽い気持ちで始めたブログでしたが、これが思いのほかきつい。 大体普通の文章すら書き慣れていないド素人が、掌編とはいえ毎日書... [続きを読む]
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- 2008/05/23 00:01山登り
- 彼は新しい彼女が出来ると、必ず一緒に山を登る。地元にある標高五百メートルほどの山なので、頂上までは一時間半程で辿り着く。 一人目の彼女は、登りはじめて約三十分で「私帰る」と一人山を下りた。 二人目の彼女は、頂上まで登ったまではよかったが、帰りは一人ロープウェーで下りていった。 三人目の彼女は、誘った時点で断られた。 四人目の彼女は、一時間登った所ですれ違った男にホイホイとついていった。 五人目... [続きを読む]
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- 2008/05/22 00:01双子
- A子は悩んでいた。付き合って半年になる彼氏にプロポーズされたのだ。生まれて初めての彼氏だ。 双子の妹であるB子には、彼氏がいることすらも秘密にしている。二人は今までずっと一緒に過ごしてきた。生まれた時から十九年間ずっと一緒だった。十九年間同じものを見て、同じものを口にし、同じものを身にまとい、同じ学校に通い、同じ時を過ごしてきた。 今までは何でも二人で分かち合ってきた。 これからも、それがずっ... [続きを読む]
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- 2008/05/21 00:01雨
- 窓ガラスに激しく打ち付ける雨。 海岸の岩に波が打ち寄せる音に似ている。 どうやら暴風雨のようだ。強い風のせいで家自体も揺れているように感じられる。 布団に入ったまま壁にかかった時計を見るが、思いのほか薄暗く針がよく見えない。真っ暗じゃないと眠れない体質なので、カーテンは遮光性の高いものにしていた。それでも昼間には隙間から陽の光が差し込んでくる。先日遊びに来た友人に、カーテンの色をバカにされたの... [続きを読む]
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- 2008/05/20 00:01防止策
- あやこはテーブルに置かれたとんこつラーメンには見向きもせず、ストラップも何もついていない飾り気のないケータイのボタンを目にも止まらぬ早業で黙々と打ち込んでいた。「おい」 テーブルの向かいに座るスーツ姿のパッとしない男は、あやこの彼氏准一だ。「なに?」 あやこは准一の方をちらりとも見ないで答える。「お前がとんこつラーメン食べたいっていうから連れてきたんだろ。なんで食わねぇんだよ」 30分前准一に「... [続きを読む]
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- 2008/05/19 00:01三兄弟誘拐事件
- スーパーのパートから帰宅した清乃は、いつものようにドアの鍵を開けようとした。「あれ?」鍵はかかっていなかった。 ふと腕時計に目をやると、5時20分だった。「ただいまー」 玄関に弟達の靴は見当たらない。「きよしー、せいじー、せいぞうー」 27歳の清乃には歳の離れた弟達がいる。 高校1年生の清志、中学2年生の清治、小学5年生の清造。 もともと母子家庭だった亀田家だが、3年前に母が亡くなってからは、清乃が母親... [続きを読む]
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- 2008/05/18 00:01無言電話
- テレビでナイター観戦していると、突然ケータイがブルブルと震え出した。 誰だよ、今いいとこなのに。 九回裏ツーアウト満塁、一打逆転の絶好のチャンスだった。 画面から目を離さずに手探りでケータイを掴み、顔の前に持ってくる。 折り畳みケータイのサブディスプレイには、名前ではなく090で始まる番号が表示されていた。 誰だ……。 登録してない人からは滅多にかかってくることはない。 少し気味が悪かったが、もし... [続きを読む]
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- 2008/05/17 00:01クロ
- 「待てコラー!」 スーパーを飛び出すと、少年の姿はすでに消えていた。1時間前は薄い灰色だったアスファルトの道路が、ほとんど黒に近い色になっている。空を見上げると道路と同じ色の雨雲が一面を覆っていて、顔にパラパラと冷たい雨が落ちてくる。 万引き犯を取り逃がしたはずなのに、なぜだか俺はホッとしていた。 できることならあんな小さな子供を、万引きなんかで捕まえたくはないのだ。 だから俺は、万引き行為自体を... [続きを読む]
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- 2008/05/16 00:01スーパーの恋
- たまねぎ、にんじん、じゃがいも、先週は豚だったから今日は鶏、いいえやっぱりシーフードにしましょ、エビにイカにホタテと、あら、シーフードにじゃがいもはおかしいわね、にんじんは……、まぁいっか、あとは白ワイン白ワインと。それにしても男って、なんでこんなにカレーが好きなのかしら。えーと、ルーはまだ残ってるはずだからいらないわね、あっ、でもシーフードはシーフード用のルーじゃないとダメかしら、えーとルー... [続きを読む]
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- 2008/05/15 00:01弱虫
- 洗面所の鏡に、ムスッとしたわたしの顔が映っている。 口元の筋肉に力を入れ、口角を上げてみる。 いつも笑顔で元気な明るいわたし。 なにがたのしいの、鏡の中のわたしが問いかけてくる。 たのしくなんかないわ、たのしいわけないじゃない。よく見てみなさいよ、こんなに腫れぼったい目をした女が、なんでたのしそうに見えるのよ。 おまえといると辛いんだ、1年と半年付き合った彼に、昨日突然そう言われた。 なんで、な... [続きを読む]
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- 2008/05/14 00:01テレビ
- 「最近テレビつまんねーなー」 ユウジは右手でリモコンをせわしなくいじくり、テレビのチャンネルを次から次へと変えていく。「お前まだテレビなんか見てんのかよ。動画なんかネットで十分だろ」 左耳に当てたケータイから聞こえる少しハスキーな声の主は、親友のリョウタだ。 リョウタは高校の同級生で、卒業してから3年が経ちお互い遠く離れた場所にいても、ケータイのおかげでその関係は今も崩れることなく続いていた。「俺... [続きを読む]
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- 2008/05/13 00:03小説教室
- 一億三千万人のための小説教室 (岩波新書 新赤版 (786))/高橋 源一郎¥735Amazon.co.jp 高橋源一郎って小説家だったんですね。 競馬好きの面白いおっさんだと思ってました。 本の中で、高橋先生は色んなことを教えてくれました。 中でも気に入ったのは、11番目の鍵『小説と、あそんでやる』と、13番目の鍵『小説は、どちらかというと、マジメにつきあう(「交際させてください」と相手の両親に頼むみたいに)より、遊びでつ... [続きを読む]
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- 2008/05/13 00:01糞
- 腹が痛い、さすると張っているのがよくわかる。 今にも破裂しそうだ。 とても我慢できそうにない。 全身から、気持ち悪い汗が溢れてくる。 限界だ。 トイレに向かう。 ここは二階だった。 目の前に階段がある。 普通に下ると、あっちが下りそうで怖い。 ケツに力を込め、カニ歩きで下る。 何とかトイレまで辿り着いた。 ドアを開ける。 開かない。 ノックする。 ノックが返ってくる。 誰だよ。 父だった。 彼... [続きを読む]
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- 2008/05/12 00:01渦
- 二階の部屋の窓から外を見下ろすと、そこにはちょうどTの字を逆さまにしたような道路がある。 夕焼けに赤く染まった道路を何気なく見ていると、手前の歩道を左の方から、制服の少女が歩いてくる。 近所の中学の制服だろうか。中学生にしては少し大人びてみえる。髪は短めで黒く、サラサラと風に揺れていた。 それにしても、休日にも関わらず制服を着ているのはどういうわけだろう。 半そでのシャツから伸びる腕はとても細く... [続きを読む]
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- 2008/05/11 00:01母の日
- 彼はフラフラと商店街を歩いていた。 普段は客もまばらな花屋に、見たこともない人だかりが出来ている。「今日は母の日か」 思えば、去年も一昨年も、母の日には何もしてやれなかった。 何かしてやろうとあれこれ考えたが、結局行き着く先はカーネーション。 けれど、カーネーションは10年前から姉夫婦が贈り続けている。そして今年もおそらく――。 同じものを贈っても、という気持ちがあった。それでもきっと母は喜んで... [続きを読む]
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- 2008/05/10 00:01時間よ止まれ
- 私は時間を止めることが出来ます。 こんなことを突然言い出しても、あなたはきっと信じてはくれないでしょう。 私の能力を否定することは簡単です。 しかし、それと同じくらい、私の能力を実証することも簡単なのです。 その前に、まずはよく考えてみてください。私のこの能力があれば、あなたの望むモノはなんだって手に入るのです。 想像してください。 あなた以外の全ての動きがピタリと止まるのです。 どんな小さな... [続きを読む]
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- 2008/05/09 18:33上を見ても下を見ても
- 以前紹介した川端康成大先生の掌の小説。掌の小説 (新潮文庫)/川端 康成 ¥740 Amazon.co.jp コツコツ読み進めて、ようやく半分くらいまできました。 いやー、やっぱかわばっつぁん、あんた凄いよ! たったの2ページで終わっちゃう作品とか、そんなのばっかなんですけどね。それでも深いんですよ、深すぎるんですよ。 なんですかねー、この自分との差は。 よく月とすっぽんなんていいますけど、これはそれどころじゃないで [続きを読む]
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- 2008/05/09 00:01魂
- オレンジ色に染まったマイホームを見上げながら、田辺は久しぶりに定時帰宅できた喜びを味わっていた。 門扉に手をかけ、ゆっくり力を込めて押すと、耳障りな金属の擦れる音がする。 築15年。新築とはいかなかったが、夢にまで見たマイホーム。これくらいの音は我慢できた。 門を開け中に入ると、越してきてから妻がせっせと植えてきた花々が、仕事で疲れきった田辺をやさしく出迎えてくれる筈だった。 確かに花々はそ... [続きを読む]
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- 2008/05/08 00:01素振り
- 四月初めのある日、学校から帰った弟は少し元気がなかった。「兄ちゃん、やっぱり……僕一人だけだった」 中学から野球を始める奴など、今時珍しい。 しかも、この近辺は特に少年野球が盛んなのだ。 新入部員全員がリトルリーグの経験者だったらしく、弟はえらく落ち込んでいた。 その晩、弟は遅くまでパソコンをいじっていた。もう野球は諦めたんだと俺は思っていた。 だが、それは間違いだった。「兄ちゃん、俺の素振り見 [続きを読む]
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- 2008/05/07 00:01泡
- ”行きつけのバー”という言葉に憧れていたちょうどその頃、高校時代の同級生が店を持ちたいと言うので、「それはいい、やるならバーにしろ」と、俺はいくらかばかり出してやった。 そうして出来たのが、このfoxriverだ。 俺は念願だったその”行きつけのバー”で、同級生のマスターと、くだらない話をつまみに生ビールを酌み交わしていた。 開店してすぐに馴染みの客ができるわけもなく、たまに知り合いが来るくらいで、店... [続きを読む]
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- 2008/05/06 00:01蛍光灯
- 「ただいま」 鍵を開けて中に入った私は、反射的にその言葉を口にしていた。 いつも後悔してしまうのに……、もう言わない、絶対言わないって、そう心に誓うのに……。 そう思っていても、仕事から帰る度、口が勝手に動いてしまうのだ。 スイッチの場所は、目を閉じていてもわかる。佳奈子は手を伸ばしてスイッチを押した。 部屋の明かりが付くと、闇に潜んでいた家具達が、一斉に光の中へと浮かび上がる。 テレビ、ソファ... [続きを読む]
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- 2008/05/05 00:01鯉のぼり
- 強い春風の中、貴子は帽子が飛ばされぬよう片手で抑えながら、体をくの字にして歩いていた。 帽子のつばに隠れ足元しか見えていなかった貴子は、突然男の子が視界に現れ少し驚いた。 年の頃は大体七、八歳といったところだろうか。男の子は貴子のことなど気にも留めず、人形のように突っ立ったまま、首だけを上に向け何かを見つめているようだった。 姿勢を正し、その視線の先を追ってみると、そこには巨大な鯉が大空を優雅... [続きを読む]
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- 2008/05/04 00:01肩揉み
- 塾から帰った私は、ただいまも言わずに冷蔵庫へと直行した。「こらシズク! ちゃんと手を洗ってからにしなさい」 母の言葉を無視して、お目当てのプリンを探す。 ダイエット中で夕食を抜いていた私にとって、そのプリンは唯一の楽しみだった。 一日中勉強して疲れきった脳に、ご褒美を与えるのだ。 母もそれを知っていて、いつもプリンを切らすことなく補充していてくれる。 しかし、今日に限ってプリンはどこにも見当た... [続きを読む]
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