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- 2008/08/12 21:38三十三回忌
- 〜亡き母と姉たちにささぐ〜小さなジグソーパズルをいくら集めても私のジグソーパズルは完成しない完成しない絵の中で顔も定かでない女が血の涙を流す1人の娘の骨壺と1人の幼い幼女を胸に抱きしめてーああ日本に帰りたいーパズルの女が細い声で叫ぶ三十三年間叫び続けてきた白い顔大陸でもらわれた子は内地の土を踏み残った生母と幼い姉たちは黄塵の中に埋もれたたとえ最後の法要が終わっても望郷の涙でぬれた白い灰が乾くことは [続きを読む]
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- 2008/08/06 20:37生母にささげる詩
- お生母さん百日目の赤ん坊を抱いて泣いているあなたの姿が目に浮かびます顔も知らないお生母さん私もあなたの年になりました七月が来るとあなたの事を思い出します三十年前のこの日にあなたは何を思って死んでいったのでしょうかシベリアにとられた夫のこと特攻隊に行った息子のことそして百日目にもらわれていった私の事も思ってくれたでしょうか今でも北朝鮮のどこかにあなたはねむっているのですねお生母さんあなたの悲痛な胸の [続きを読む]
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- 2008/08/06 20:36私のふるさとは
- 背ほどもある雑草の中で夕日がまっ赤に沈んでゆくのを見た雑草の葉のうらは白くて風が吹くたびに夕日に染まった背のびをしてもどこまでも雑草の原父のふくハーモニカの荒城の月が雑草の風にのってゆく万里の長城がその果てにあってくすんだレンガ色の壁が終わりもなくつづいている私はいつもその壁に添って歩くそこから広がる荒野に私は生母の墓を見ていた詣でることのできない生母の墓標をけれどおぼえているのは丈高い雑草と荒城 [続きを読む]
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- 2008/08/06 20:35内蒙古の冬の夜
- ユーザーゴー遠く風に乗って中国人の物売りの声が聞こえるサラサラと 又風花らしい氷点下の寒さに窓は白く凍る凍ったリンゴをストーヴに溶かして手でむきながらたべるおいしさそんな夜母は内地の話をしてくれた「日本には、おばあちゃんがいるのよ」幼い私はおばあちゃんというものにやさしい憧れを抱いてみるユーザーゴー寒い声が犬の遠吠えに重なる父がぽつりと言う「今夜あたり 狼がでなけりゃいいが……」※ユーザーゴー= [続きを読む]
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- 2008/08/06 20:29体形
- 昨年買ったブラウスが又 きつくなった一サイズ ふえたらしい年々 形がくずれてゆく体老いてゆく皮膚そのスピードに反比例して心は形よくなっているのだろうかしわむまいねじれまい と毎日 引きしめていなければゆがんでしまいそうな心ブラウスをしみじみながめ一年前の若さにわかれをつげるー [続きを読む]
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- 2008/08/06 11:59時計
- 夜 本を読むときは時計に目かくしをするーこの本を読み上げるまで 時間を教えないでー本を読み終えたら目かくしのまま寝てしまおうあした起きても何時間寝たかわからないから寝不足なんて思わないだろうでも でも耳もとでチク チク チクはやく寝なさいとちっともあきずにつぶやき続ける律儀な時計ー [続きを読む]
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- 2008/08/06 10:56雨
- 雨が窓に「!」をいっぱい描いていますびっくりすようなことがたくさん あったのね雨はマルをあげるのが大好き水たまりには二重マルお池には三重マルあんまりほめてると水があふれてしまいます [続きを読む]
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- 2008/08/06 10:52木蓮
- 幽やかな春の風に袂をひるがえして舞う木蓮の花かすんでゆく日暮れの庭に浮世絵の室町遊女か古代紫もしっとりと・・・春はめぐって来てもうつろいやすい花ばかりその心もとなさに音もなく舞い続けるいつの日か想いをはせる殿御の為に舞う日が来るのを夢みて・・・・ [続きを読む]
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- 2008/08/01 21:24あさがお
- あさがおのやわらかい ちっちゃな手がそっとしの竹をつかんでいるはにかんでいる かわいい渦巻小さい葉っぱがしの竹のてっぺんを見上げるあそこまで昇れるだろうかと 案じているな [続きを読む]
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- 2008/08/01 20:56さふらん
- 春が黒土の上にこっそりとすわっています細い緑色の剣先に守られている早い春です [続きを読む]
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- 2008/08/01 20:53泰山木
- 暮れてゆく庭に白い花が浮かんでいる幼い木がようやく開かせた一輪の花春からはぐくんだつぼみはつゆの空の重い朝恥じらうように花弁をひろげたぽってりと甘やかな花びらが一日中 存在を主張して強い匂いを放っていた闇に沈んでも なお私は花の姿を求めている朝には もう散ってしまう花だから幼い木がひとしお いとおしいー ... [続きを読む]
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- 2008/07/29 20:44声が
- 受話器を取ると聞き慣れた声あなたの声は水のように耳からしみ透って私を透明にしてしまう何げない会話の中にあふれるような心を感じて私はかぎりなく幼くなる幼くなって透明になって私は受話器の中を通りあなたの中へとけていってしまおうー [続きを読む]
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- 2008/07/29 20:41鏡
- 壁に鏡のはめこんだ角の小さな喫茶店あなたを待つ時の短い時間鏡の私が気になってコーヒー飲む手を休めてはちらちらのぞいて待っていますあなたが来たならどんな顔をしましょうか目には疲れが出てないか眉間のしわは濃くないか鏡の中と押し問答それからーそれから鏡の中からあなたが来るのを待ってます [続きを読む]
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- 2008/07/13 21:45竹下桟橋
- 海が見たくて海に来たコンクリートに囲まれた小さな海 濁った海けれどそこには確かに外洋に続く海があった船が一隻 又一隻桟橋を離れて外海へ出ていくまもなくあの船はくっきりとした水平線を見るだろうけたててゆく波もやがて青く澄んで海は海らしく汐の匂いをさせるだろうオイルの匂いの中に青い海の匂いをかぎわけようと私は鼻をひくつかせるコンクリートの桟橋にゆったりと寄せる波が青く澄む日はないのだろうかー [続きを読む]
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- 2008/07/13 21:42影が
- 二人は離れて歩いているのにふりかえると影がひっそりと寄り添っている人通りの絶えた歩道に街頭の光だけが明るい長い歳月をこうして歩いてきた会わずに過ぎた日の方がはるかに多かったけれど・・・激しい心も 愛の言葉もなかったけれどひっそりと寄りそえる心があれば生きていける光の角度が変わると私の影はあなたの影にすっぽりと包まれて歩いていたー ... [続きを読む]
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- 2008/07/13 21:41花火のあとは
- 花火大会の終わったあとは暗い海にちらちらと旅館のあかり群れていた人々も潮が引くように去って誰もいない防波堤にテトラポットだけがひっそりと海をながめる暗い空に咲いた乱れ菊 千人ぼたん海面に散り急いだ仕掛けの火の滝一瞬の消えた花たちの夜空を彩った姿は花火師たちの命をかけた一年の実り瞬間に消える為に生まれた花でも誰かの心に一生に一度でも思い出されればいいー暗い海面に幻の花たちがちらつき今夜はねむれそうに [続きを読む]
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- 2008/06/29 22:05不安
- 山の頂より湧き出て海におおいかぶさってくる黒い黒い雲の集団入日の輝きは消え去り金粉を浮かべてさざめいていた波は鉛を飲んで不快な顔親しかった岩さえ影をなせば冷たい面もち静かな波のリフレインまでが不安な伴奏をつとめる波に手をぬらせばほのかなぬくもりが残るのにーああ 海よいつも やさしいお前なのに今 この胸につきあげてくる寒い風は何ゆえか明日には黒い雲も通り過ぎるだろうか海よ 私の世界よ穏やかな笑顔に還 [続きを読む]
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- 2008/06/29 22:04朝の海
- 海は眠らない地球に海が出来た日から波よ 何回生まれて消えたそしてこの朝も人々が汚した砂浜を唯ひたすら浄め続けている尽きない汚れを嘆くように夜の海鳴りは哀しげだひと夜さ 浄め続けた海は小さな愛のしるしを浜辺に残していった純白の貝の片割れ朝のひざしのような桜貝手の中に そっとにぎりしめた貝がらはほのかに暖かい・・・・・ ... [続きを読む]
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- 2008/06/29 18:56閉じる
- 三十数年 指に慣れた扇を閉じるパチンと小さな音をたててひとつの世界を閉じる夜更けのけいこ場は灯りだけが白々とひろがるブルーの大鏡に少し着くずれた私が暗く澱んでいるふたたび教える為に扇を開くことはないだろう閉じた扇をかざして鏡の中の私に告げる別れの舞こころ済むまで舞ってみる・・・・ [続きを読む]
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- 2008/06/22 22:18最後の舞台で
- するすると緞帳が下りてくる正面から両脇から私を照らしていたスポットライトが丸くにじんではひとつずつ消える観客の姿が一行ずつ見えなくなる緞帳が下りるのを裏側から 二度と見る日はないだろう自分の意志で去る舞台だからすがすがと別れを告げようことんと緞帳が床につくさようなら とつぶやいていつものように舞台を下りる心の中にもそっと緞帳を下ろしながら・・・・ [続きを読む]
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- 2008/06/22 22:13顔師
- どんな不美人も美人にしてしまうどんな年寄りも若い娘にしてしまう顔師さんの ふしぎなゆび白い刷毛先から冷たい水おしろいがさっさっと顔に塗られると私はまっ白なキャンバス顔師さんは思いのままに美しい女をつくるごつごつ眉は 柳の眉にぶあつい唇は 花びらのようにだんだん心もたおやかになってゆく鏡の中に別の世界の女がひっそりと姿をあらわす・・・・ ... [続きを読む]
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- 2008/06/22 22:10完了
- 「終わったのね」小さな深山りんどうが秋のしずけさをたたえてなぐさめの言葉をかける発表会の準備もおおづめで時間を争ったあの日から机の上でみていたおまえ・・・後かたづけもすんだ夜小さなりんどうと向き合っている虫の声も肌にしみこむ涼しさようやく秋がおとずれて私の仕事も完了したしずかにやすもうりんどうの青むらさきに猛った心をしずませて・・・・ ... [続きを読む]
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- 2008/06/15 18:04鏡獅子
- 幕が上がる細かくきざむきの音にゆるゆると緞帳が上がるかっと舞台にさし込むスポットライト老女の腰元に手を取られて長唄の進行に耳をすます今この瞬間舞台へ出てゆく為に躍り込んで来た1年胸をしめつける矢ノ字帯こめかみをかむかつらの重さ繍の衣裳に女を封じこめて振の手順も忘れた雑念も消えた今は 唯踊って来た年月に身をまかせるばかり目を開けば見上げる後見の門弟の目「ハッ!」気合いの共に開くふすま光の中へ私は踊... [続きを読む]
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- 2008/06/09 22:28名取り式
- 江戸紫の五ツ紋かたばみのながれるすそもようは私が手ほどきの師からいただいた着物その着物を着て流紋の後見帯がまだ体にそぐわぬ幼さ真剣なまなざしで免状をとろうとする娘師の取立てで 今日から一番末の妹弟子になった娘踊ることに ようやく面白さを見いだしたそんな娘にずっと昔の自分の面影を重ねて涙ぐむ [続きを読む]
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- 2008/06/09 22:24舞台裏
- 舞台の裏はマリンブルーの闇しんと下腹が冷えてくる私の出番まで待つひとときホリゾオンドの幕を透かしてスポットライトが踊っているこの闇が好きこの緊張が好き絵具の匂いとかびのまじった奈落の匂いがはやる心を鎮めてくれる舞台へ出てしまえば時は急速に流れ去るいつまでもここにたゆたっていたいとマリンブルーの闇に身をひそませる [続きを読む]
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