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- 2008/06/30 12:03ニアイコールヒト 第6章 壊れた少女 (3)
- 安全を確かめてから、忠明は公園に戻った。驚いた事に、少女は忠明の腕の中ですやすや眠っていた。額にはうっすらと汗が滲み、そこにブロンドの前髪が張り付いている。真夏の昼間、炎天下を連れ回されたのだ。暑かったろうと忠明は思った。 ビルの陰でスーツを脱いで、かわいそうだが少女を起こし、公園の駐車場に向った。昼過ぎの真夏の公園に人影は少ない。少女は鳩を見つけると歓声を上げて追いかけた。彼女のクリ ... [続きを読む]
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- 2008/06/30 11:49ニアイコールヒト 第6章 壊れた少女 (2)
- 「行くぞ!」知らせを受け、直ぐにボーリンは飛び出した。慌ててジャンが後を追う。「飛空艇を出すぞ」「わざわざ我々が行かなくても、所轄に頼めば良いじゃあないですか」「いや、駄目だ」 ディジョンのショッピングセンターで、ドールと思われる少女を保護していると知らせが入った時、以前、ショッピングセンターで死なせてしまった母子の事が頭をよぎった。 早く行かなければならない。その思いがボーリンを焦らせた ... [続きを読む]
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- 2008/06/30 11:37ニアイコールヒト 第6章 壊れた少女
- 忠明の学校は夏休みに入った。相変わらずアロンソは忠明の家に勉強しに通っている。エヴァも母親が昼間家に居る時以外は、アロンソに連れられ、やって来る。孔明博士が手術でなければ殆ど博士の研究室に入り浸って、何かを製作しているようだ。 忠明は毎日、ドール特捜課の通信の傍受を続けていた。 その通報は昼頃に有った。ディジョンのショッピングセンターのブティックで、不審な行動をする高校生ぐらいの少女を保護 ... [続きを読む]
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- 2008/06/30 11:29ニアイコールヒト 第5章 愛想のいい隣人 (6)
- 翌日、やはりアロンソが学校から着いてきた。何時もの事である。チューブバスの中で暫く親戚が滞在している故をアロンソに伝えると、やはり気を使っていたが、気にする事は無いと忠明に言われ付いて来た。 忠明達が帰るとブラント氏の二人の子供達が居間から走り出てきた。「おかえり、お兄ちゃん。その人は誰?」「だれ?」小さい方も兄の真似をしてアロンソを見る。アロンソはしゃがみこみ、目線を合わせると「こ ... [続きを読む]
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- 2008/06/25 12:36ニアイコールヒト 第5章 愛想のいい隣人 (5)
- その日ボーリンはジャンと一緒に、ドールではないかと通報のあった住所へ確認に出掛けた。 この手の通報は多い。(近所の誰それが最近おかしい、ドールではないか?)(子供の同級生が最近急に成績がよくなった。ドールではないか) その情報の殆どが通報者の単なる思い込みである事が多い。しかし、通報が有った以上一応市民の手前確かめなければならない。 いつもならジャンだけに確かめに行かせるボーリンだが、こ ... [続きを読む]
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- 2008/06/25 12:30ニアイコールヒト 第5章 愛想のいい隣人 (4)
- 「主人が交通事故で脳を損傷し、植物状態になったのは3ヶ月前。担当のお医者さんに回復はしないと言われていても、もしかしたらと一ヶ月毎日主人に話しかけていました。でも回復の兆しは無く、子供達を抱えどうしようかと途方にくれていると、主人の友人が自分の経営する病院に移せば、ドールの手術をしてくれると……」「手術後のご主人の様子はいかがですか? 以前と変わった所とかトラブルの様なものとか気がつきません [続きを読む]
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- 2008/06/25 12:13ニアイコールヒト 第5章 愛想のいい隣人 (3)
- 無事、チューブ・カーに乗り込んで、道路に出た。ーケットの駐車場に車を乗り入れ、飛空艇の方に進んで行くと、飛空艇の傍にブラント氏らしき男が立っていた。「あー、パパだ!」子供達が嬉しそうに窓に張り付く。荷物を降ろすと、念の為に婦人のチューブ・カーは入り口の近くに止め直す。そこには未だ沢山のチューブ・カーが止まっている。24時間制のマーケットなので、そこに置いておけば発見されにくい。皆を飛空 [続きを読む]
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- 2008/06/25 11:58ニアイコールヒト 第5章 愛想のいい隣人
- その家は他の家と等しく、殆ど夜の闇の中に入ろうとしていた。玄関に向った忠明の足もとに飛空艇の形をした子供用の乗り物が置かれていた。それを玄関の脇まで運んで置くと、インターホンを鳴らした。「はい」と出てきた女性はおそらく妻であろう。「ジャック・ブラントさんのお宅ですか」「はいそうです」「ご在宅でしょうか?」「いえ、未だ戻っては居ませんが、どちら様でしょうか」「突然で驚かれるでしょうが、実は [続きを読む]
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- 2008/06/23 16:53ニアイコールヒト 第5章 愛想のいい隣人
- メアリーが忠明の帰りを待ちかねたように告げた1件の情報。それは、植物状態にあった男が、最近急に退院してきたが、様子が以前と変わっているというもの。 しかし、そういう情報は多い。脳溢血なり、脳の怪我なり、脳を損傷すると、えてして今までとは性格が違ったりするものなのだ。今まで無駄足になった例が多い。 今回もハンターの反応は鈍かった。しかし、一応、明日行って確かめるようだ。忠明も最初はハンター ... [続きを読む]
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- 2008/06/23 11:53ニアイコールヒト 第4章 アシュラ誕生
- テーブルの上に置かれていたのは、シルバー一色に見えるスーツとフルフェイスのマスク。早速、装着してみると、以外に軽い。ブーツを履いて博士が差し出したベルトを締めた。前についているコントロールパネルの裏のジョイントでスーツと接続する。途端に、体が軽くなったような気がした。同時に肩、肘、膝のサポーターが厚みを増し、そして、胸の中心から両肩に向かって筋肉を補助する繊維が硬化、ラインを作る。同じく ... [続きを読む]
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- 2008/06/19 22:17ニアイコールヒト 第3章 ドール (3)
- 忠明は家に帰ると、真っ直ぐ自分の部屋に行き、まず田中一村のポスターを壁に留めた。ポスターを貼った窓の横の壁には、直接外の光は当たらない。その場所からハマユウの花が忠明を見ていた。 メアリーが緑茶を運んできた。「珍しいですね、絵画に興味を持たれるなんて。ハマユウ(浜木綿) ヒガンバナ科 ハマオモト属 熱帯アジア原産で日本、中国、マレーシア、インドに分布する、球根植物のクリナムの一種の多年草です」 ... [続きを読む]
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- 2008/06/19 10:58ニアイコールヒト 第3章 ドール (2)
- 男の一方が子供を懐に庇ってしゃがみ込んでいる母親の前に屈んだ。「娘さんはドールでしょう? 分かっているんです。貴方のお子さんはすでに亡くなったんですよ。それは貴方の子ではありません。こちらに渡しなさい。手荒な事はしたくない」疲れたような、それでいて威圧的な中年の男の声。「違うわ。この子はドールじゃあない。私の子よ。生きているのよ。あなた、お願い。この人達をどこかにやって!」母親が見た方向に [続きを読む]
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- 2008/06/18 13:02ニアイコールヒト 第3章 ドール
- 忠明とアロンソはジュネーブ行きの高速列車に乗っていた。この列車もチューブの中を走る。雨や雪、風にも影響を受けない列車は時速500キロで走る。ディジョン駅からジュネーブまでわずか1時間。 アロンソは嬉しそうに駅にいる時から喋りっぱなしである。 ディジョンの街は歴史を感じさせる街。その落ち着いた空気の中で日々暮らしている若者にとって、新しく世界の中心になった街を訪れるのは心躍ることらしい。お前が [続きを読む]
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- 2008/06/16 11:28ニアイコールヒト 第2章 ドールハンター (2)
- ボーリンは緊急停止した車から降りた。少し先で何かが爆発したようで、まだ薄く煙を上げていた。幸いチューブへの被害は殆ど無いが、危険監視装置が働いて緊急停止した様だ。 ボーリンと仲間のキングストンは注意深く前後を探った。50m程後方に同じように緊急停止した車。乗っているのは初老の男女。びっくりしたようにこちらを見て何か言い合っている。前方には爆発地点の少し前方に一台の車が見える。中はガラスをシールド ... [続きを読む]
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- 2008/06/16 10:27ニアイコールヒト 第2章 ドールハンター (1)
- 身の高さの倍ほども有る重厚な木製の扉が、音も立てずに中から左右に開かれた。廊下で待ち受けていた各要人のSPが、流れ出る各国の代表や事務次官の中から、自分の守るべき対象を求めて群がる。 その中の一人、ダービッド・ボーリンが担当しているのは、アメリカ代表のジャック・ベンサム。近々設立されるであろう、世界連邦政府初代大統領候補である。 ここはスイスのジュネーブ。かつて国際連邦本部が有ったこの場所に ... [続きを読む]
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- 2008/06/14 08:53ニアイコールヒト / 第1章 夢 (3)
- 絵本を読んでいてふと顔を上げると、母が泣いている。傍に寄り添い細い指で涙の跡を辿ると、母は忠明の手を取り、「ごめんね、ごめんね」と謝る。どうして謝るのか忠明には分からない。「どうして、謝るの」と聞くと、いきなり目が釣りあがり、「あなたに言ってるんじゃあないわ!」と忠明の手を放り出した。とまどい、母の顔を見つめていると、母は我に返り、又、ごめんなさいと謝る。 こんな風に母を悲しませているのは、 [続きを読む]
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- 2008/06/13 12:16ニアイコールヒト / 第1章 夢 (2)
- 旧市街地でバスを降りると、ノートルダム教会の横を西に入って二筋目を北に入った所に忠明の家がある。ノートルダム教会の裏では、いつもの様に観光客がふくろうの像を撫でていた。さわると幸運を呼ぶというふくろうを、忠明は一度だけ触った事がある。 しかし、なにも良いことは起こらなかった。 帰宅を知らせるベルを鳴らすと、中からメイドのメアリーがドアを開けてくれる。「ただいま」「お帰りなさい。おやつにしま ... [続きを読む]
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- 2008/06/12 13:21ニアイコール ヒト / 1章 (1) 夢
- 目の前に、頭痛でもするのか、眉頭を抑えてしかめ面をしている男が居る。頭痛の種は目の前に居る仲野忠明。この男が担任をしているディジョン南ハイスクール2年生の男子である。 決して悪さをする訳ではない。登校を拒んでいる訳でもない。 それよりもっと担任を困らせる事、これ程成績優秀では無いか、もしくは高校などに来ず、小学校から真っ直ぐ大学に飛び級していてくれれば、自分が校長や、挙句の果てに市長までに ... [続きを読む]
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- 2008/06/12 11:49ニアイコール ヒト / プロローグ
- ビルの間をうねりながら続くチューブの上から、銀色の光が射す様にボーリンの眼を射抜く。光を通す透明のチューブの上を走り抜ける銀色のアシュラは見えにくい。ともすれば見失いそうになるアシュラを、数機の連邦警察の飛空艇が追う。まるで、アシュラが巻き上げた風に舞い上がる、木の葉のように。 その中の一機を操縦しているボーリンは、アシュラの行動に不自然さを感じている。(おかしい、何故ミメーシス・モードにな [続きを読む]
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