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- 2008/10/08 15:49第五章 いまさら 2−(一)
- ※※※初めての方は、第一話はこちらから、目次はこちら、からお入りください※※※2−(一) 先週、1日しかシフトが入っていなかったから、花菜がオリエンタルのフロアを歩き回るのを見るのは、1週間ぶりだった。 一昨日、会ったというのに。 そこに、花菜がいるということに、ホッとした。 定例のミーティングが始まる前に、慌てたように駆け込んできた花菜と目が合うと、あちらから、にこっと笑う。 一種の営業スマイ [続きを読む]
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- 2008/10/07 23:20第五章 いまさら 1−(一)
- ※※※初めての方は、第一話はこちらから、目次はこちら、からお入りください※※※1−(一) 暖かい色が溢れる。 凛とした青い色は、徐々に芽吹きの緑に変わり、満開の花咲く紅色の隙間からは、高貴な朱色が顔をのぞかせ、うす桃色が流れていく。 まるで日の出のようなゴールドは、優しいオレンジ色、そして淡い黄色へ変わった途端、飛び散っていくようで。 暖かな色の洪水に、しばらく浸っていた。 もっと、無機質なイメ [続きを読む]
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- 2008/10/04 17:11第四章 ひとりだけ 8−(十)
- ※※※初めての方は、第一話はこちらから、目次はこちら、からお入りください※※※8−(十) ……え? 好き? 花菜を見たまま、止まった。「ははは。あの絵、君が描いたって言わない方がいいよ。ギャップ、あり過ぎ〜。すっごく、いいよ。すごく好き。ホント、マネージャー、やってあげたいよ」 照れたのか、花菜は早口に。シャレのように。 けれど、同じ内容をもう一度、繰り返した。 自分を誉められるより。 数倍、き [続きを読む]
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- 2008/10/02 17:45第四章 ひとりだけ 8−(九)
- ※※※初めての方は、第一話はこちらから、目次はこちら、からお入りください※※※8−(九) 親はいないこと、15で家出したことまでを花菜に話した。その後の生活については、べつに聞かれてないから言っていない。「え〜、じゃあ、大学も自分のお金で行ってるの?」「そうだけど? なんで?」「や、てっきりご両親のスネでも齧ってるのかと……。っていうか、わたし君の年の頃って、働いてたのにお金なかったし」「そりゃ [続きを読む]
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- 2008/10/01 17:35第四章 ひとりだけ 8−(八)
- ※※※初めての方は、第一話はこちらから、目次はこちら、からお入りください※※※8−(八) 俺が風呂からあがると、リビングのソファにちんまりと座り込んでいるオンナがいた。 用意してやったトレーナーと、カーゴパンツ姿。袖と裾をまくり上げていて、子供が大人の服を着ているみたいだ。 花菜が風呂に入る前に、その着替えを手渡してやると、何かに気づいたように、くんくんとその服の匂いを嗅いだ。 それ、ありえなく [続きを読む]
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- 2008/09/30 19:09第四章 ひとりだけ 8−(七)
- ※※※初めての方は、第一話はこちらから、目次はこちら、からお入りください※※※8−(七) 鎌倉の東端。海の近くと言うだけが取り柄のような、小さな平屋の一軒家。潤の言葉じゃないけど、それこそ、崩れそうな築年数を経た昭和の日本家屋。 昔ながらのブロック塀で囲まれた申し訳程度の庭に車を入れて、着いたことを花菜に告げる。「ここかぁ〜。君の家。もっと、気取ったところ、想像してたよ」 花菜は、車を降りながら [続きを読む]
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- 2008/09/29 17:08第四章 ひとりだけ 8−(六)
- ※※※初めての方は、第一話はこちらから、目次はこちら、からお入りください※※※8−(六)「おまえ、バカだろ?」 助手席に、カッパを着て座っているオンナがいる。 フードまで被っている。 しかも、その格好で気取るなってほど、澄ました顔で車窓を流れる景色を見ている。 ジャケットも、ジーンズも絵の具だらけ。環境に優しい絵の具とはいえ、服についたら、簡単には落ちない。っていうか、洗濯してもたぶん、落ちない [続きを読む]
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- 2008/09/28 19:43第四章 ひとりだけ 8−(五)
- ※※※初めての方は、第一話はこちらから、目次はこちら、からお入りください※※※8−(五) 集められたのは、小学生50人。 その小学生たちもボランティアも、参加者は全員、白い雨合羽を着せられて、まるで不揃いなてるてる坊主がずらりと並んでいるような感じだ。 ボランティアひとりにつき、10人の小学生が割り当てられた。「ここから、ここまで」 約10メートルほどの真っ白な布地を指で示しながら、子供たちに描 [続きを読む]
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- 2008/09/27 20:11第四章 ひとりだけ 8−(四)
- ※※※初めての方は、第一話はこちらから、目次はこちら、からお入りください※※※8−(四) アートスクールの会場に到着すると、すでにスタッフらしき人々がその準備に追われていた。 森林公園のようにきれいに区画された樹々の間に、大きな白い布が張り巡らされていて、そこに、B社が開発した環境に優しいという絵の具を使って、絵を描くと言う企画。 白い布が、樹々の木漏れ日をキラキラ反射し、通り抜ける風に揺れていた [続きを読む]
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- 2008/09/26 16:04第四章 ひとりだけ 8−(三)
- ※※※初めての方は、第一話はこちらから、目次はこちら、からお入りください※※※8−(三) 鎌倉駅のロータリー、空を眺めながら、ぼんやりと立っているオンナを発見した。 日曜日。まだ午前10時。 火曜日以来、オリエンタルのシフトが入っていなかったから、今日の待ち合わせまで花菜を見かけていない。 声も聞いていない。 電話するような用件もないし。 っつか、ケータイ替えたし。 コンタクトする手段を、全部自 [続きを読む]
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- 2008/09/25 15:53第四章 ひとりだけ 8−(二)
- ※※※初めての方は、第一話はこちらから、目次はこちら、からお入りください※※※8−(二)「先週の土曜日からだから、6日ぶりだね? 宮沢くん」 樹家の事務所での打ち合わせ以来、真波に会っていなかった。べつに深い意味はない。お互い、忙しかっただけだ。「宮沢くんの作品は、もう見せたの?」 割り箸を器用に割りながら、真波は問いかけてきた。「まだ」「じゃあ、わたしのと一緒ってこと?」「その方が、手間も省け [続きを読む]
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- 2008/09/24 14:57第四章 ひとりだけ 8−(一)
- ※※※初めての方は、第一話はこちらから、目次はこちら、からお入りください※※※8−(一)「持って来たよ」 ファイルブックとキャンバス地の大きなトートバッグを手にした真波が、学食へ現れた。「これくらいでいいかな?」 真波から、ファイルブックを受け取り、中身を確認する。「十分だろ」 俺のその言葉に、ニコッと笑うと真波は、ランチを買ってくると踵を返した。 ゆっくりと歩く後ろ姿を見送りながら、目の前の肉... [続きを読む]
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- 2008/09/23 19:52第四章 ひとりだけ 7−(六)
- ※※※初めての方は、第一話はこちらから、目次はこちら、からお入りください※※※7−(六) 重たい体を引きづりながら、オリエンタルのオープン前になんとか間に合ったことにホッとする。月曜日一日、そして火曜日の今日はオリエンタル開店ギリギリまで営業活動で都内を歩き回った。 成果? ゼロ。 たった2日の営業。そんなすぐに成果がでるはずもない。想定内。 けどねぇ。心身ともに、疲れていますよ。ホント。ははは [続きを読む]
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- 2008/09/22 11:12第四章 ひとりだけ 7−(五)
- ※※※初めての方は、第一話はこちらから、目次はこちら、からお入りください※※※7−(五)『じゃあ、遠藤さんに確認の連絡、お願いしますね』 恩田の事務的な声が、受話器を伝わってくる。それは、どこか遠くから聞こえてくるみたいで、現実味がない。 土曜日の深夜から早朝にかけて、スポンサー候補を挙げ、企画を再度練り直し。日曜日の夕方となった現在、それぞれの自宅で新規開拓営業の準備に励んでいる。 オリエンタ [続きを読む]
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- 2008/09/20 20:31第四章 ひとりだけ 7−(四)
- ※※※初めての方は、第一話はこちらから、目次はこちら、からお入りください※※※7−(四) 親戚? と尋ねる綾の顔には、さきほどまでの意地悪な色も、不機嫌な色もなく。ただ、あごが上がっていて、わたしを見下ろすみたいな生意気な顔で、「はは。ほら。本社と樹家って、グループ企業だし。あのコ、取締役だし。親戚みたいなもんでしょ?」 その苦しい言い訳を見透かされている気分になった。「なに言ってんの?」 小馬 [続きを読む]
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- 2008/09/19 11:04第四章 ひとりだけ 7−(三)
- ※※※初めての方は、第一話はこちらから、目次はこちら、からお入りください※※※7−(三)「それ。持って行かなきゃ」 綾が手にしているトレーを再度指差し、お客さん待ってるし、と告げる。 仕事、優先。……不機嫌大王様と、距離を取りたいのではないという意思を込めて、綾に向かって軽く微笑んでみた。 ところが、「そんなボケた顔で、客の前に出んの?」 片眉を上げて、小馬鹿にしたようにつぶやくと、綾はヒョイと [続きを読む]
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- 2008/09/17 20:45第四章 ひとりだけ 7−(二)
- ※※※初めての方は、第一話はこちらから、目次はこちら、からお入りください※※※7−(二)「話になりませんね」 恩田は、小声でわたしに語りかけながら、打ち合わせ資料を片付け始めた。 正直。同感。 でも、それ。大声で言えないよね。 総支配人の遠藤が期待を込めた視線をこちらに送りながら退室していったばかりだし。人に何かを託されるのって、仕事の醍醐味……のはずだよね。 はぁ、小さくため息を吐いた。 不毛 [続きを読む]
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- 2008/09/16 20:03第四章 ひとりだけ 7−(一)
- ※※※初めての方は、第一話はこちらから、目次はこちら、からお入りください※※※7−(一)「画家の卵たちを支援したいというのが、本当の目的らしいんだけどね。オリエンタルにいるでしょ? 宮沢綾だよ。オーナーは、彼のスポンサー気分なんだ」 言い方は辛辣だが、遠藤はそのこと自体には反対をしているわけではないと言った。「ただね。それと樹家の広報と、どんな関連を持たせるつもりなのかというと何もないというのが [続きを読む]
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- 2008/09/13 12:02第四章 ひとりだけ 6−(五)
- ※※※初めての方は、第一話はこちらから、目次はこちら、からお入りください※※※6−(五)「りょう〜!」 樹家の従業員専用駐車場に車を止めた途端、黄色い声が俺を呼んだ。 振り返らなくてもわかる。 杏だ。 バタバタと足音も高く走り寄って来たと思ったら、ぴたっと足を止める。助手席から降りて来た真波に驚いたようだ。「あ〜。こんにちは〜。池山真波さんでしょ?」 どっから出てるんだと言いたくなるような黄色い [続きを読む]
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- 2008/09/12 18:04第四章 ひとりだけ 6−(四)
- ※※※初めての方は、第一話はこちらから、目次はこちら、からお入りください※※※6−(四) 逃がさない。 なんて、思っていたのに。 結局逃げられた。 オリエンタルの業務時間中は、金曜の夜ということもあって、めちゃくちゃ混み合っていて、休憩を取った後は話をする時間なんてもちろんなかったし。花菜はご立腹だったし。 さらに、オリエンタルが閉まると、恩田というオトコを連れて、さっさと樹家の事務所へ行ってし [続きを読む]
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- 2008/09/11 18:03第四章 ひとりだけ 6−(三)
- ※※※初めての方は、第一話はこちらから、目次はこちら、からお入りください※※※6−(三)「どうしたいの? おまえ」 思わず、そんな呟きが口を吐いてしまった。 けど、花菜はその意味を深く考えることなく、どうしたいって言われてもねぇ、と壁を見ながらため息なんか吐いている。 お気楽なのか、おとぼけなのか。知んねけど。 俺も、ため息を吐きたくなった。「だいたいさ。新入りのくせに、俺をシカトしてるってなん [続きを読む]
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- 2008/09/10 19:08第四章 ひとりだけ 6−(二)
- ※※※初めての方は、第一話はこちらから、目次はこちら、からお入りください※※※6−(二)「離婚して、左遷されてきたってのにさ」 コーヒーが入った簡易カップをもって、ソファに座り直した花菜を見据えて言った。 結婚していようと、離婚していようと、左遷で飛ばされて来ようと。それをどうごまかそうと。 そんなこと、ホントはどうでもいいんだ。 どう転んだって、他のオトコのところへ行ったオンナだし。 もう、関 [続きを読む]
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- 2008/09/09 23:48第四章 ひとりだけ 6−(一)
- ※※※初めての方は、第一話はこちらから、目次はこちら、からお入りください※※※6−(一)「ウソ、吐いてるよな?」 質問を重ねると、花菜は一瞬ビクッと体を固くし、「え……っ」 と呟いた後、なぜか壁の方を向いて、ははは、と笑った。 出た。 得意技。ごまかし笑い。 ってか、この期に及んで、それ、通じないけど? なんて言い訳するつもりなのか。じっくりと聞かせてもらおう。30分は休憩しても大丈夫。時間はたっ [続きを読む]
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- 2008/09/08 18:46第四章 ひとりだけ 5−(四)
- ※※※初めての方は、第一話はこちらから、目次はこちら、からお入りください※※※5−(四) 見せ物パンダ? 自意識過剰かな、そんな気分になっているのは。 遠藤との打ち合わせの後、彼の予言通り、朝までかけて資料に目を通した。おかげで前日よりも遅い電車で広尾へ帰る羽目になった。 とっくにのぼり切った太陽に晒されながら、ぼろぼろに疲れたオンナがひとり、都会へ向かう。誰も、仕事の朝帰りとは思ってくれないよ [続きを読む]
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- 2008/09/07 20:49第四章 ひとりだけ 5−(三)
- ※※※初めての方は、第一話はこちらから、目次はこちら、からお入りください※※※5−(三) 遠藤雅哉という男性は、世界に名だたる五つ星ホテルでマネージャーを勤めていたところを引き抜かれてきたと自分を紹介した。十年以上も前の話だという。「その時は、名誉欲とか、金銭欲とか、そんなものじゃなくてね。本当に、この樹家というホテルを愛している前会長の心意気に引き寄せられたと言う感じだった」 照れることなく、 [続きを読む]
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