老人がかつて経験した長い旅について話していた。 「昔、私は買ったばかりの潜水服を着て意気揚々と海の中に入っていった。海底を適当に歩いていけば別の大陸に行…
老人がかつて経験した長い旅について話していた。 「昔、私は買ったばかりの潜水服を着て意気揚々と海の中に入っていった。海底を適当に歩いていけば別の大陸に行…
馬の背に乗って仲間達と旅をしていて海岸に辿り着いた。海に出る予定などなかったので進行方向を間違えていたらしいと仲間達と話し合ったのだが、せっかく初めて海に来…
馬の背に乗って仲間達と旅をしていて海岸に辿り着いた。海に出る予定などなかったので進行方向を間違えていたらしいと仲間達と話し合ったのだが、せっかく始めて海に来…
男と女が喫茶店でコーヒーを飲みながら話し合っていた。 「時々、疑問に思うのだけど、どうして君はよく旅行に行きたくなるの?僕はどこか遠くに行きたいという欲求を…
旅先のホテルで壁に設置されている鏡の中を覗き込んでいる夫に妻が問い掛けた。「どうしたの?自分の姿が気になるの?」 「ああ。この辺りの道を歩いていたら通行人か…
夫婦が居間でソファに座っていた。テレビでニュースが放送されていた。 「これからの世界はどうなっていくのだろう?」と夫がテレビ画面を見ながら呟いた。 「あなた…
夫婦が居間でソファに座っていた。テレビでニュースが放送されていた。 「本当にこんな馬鹿みたいな投資詐欺に騙される間抜けな人間達が世界中にたくさんいるのかと思…
夫婦が居間でソファに座っていた。テレビでニュースが放送されていた。 「この犯罪者に課せられた刑期は短過ぎるね。たった五年の懲役刑は罰として甘いよ」と夫がテレ…
休日に妻と一緒に家具販売店でずらりと陳列されているソファを見物していると店員が話し掛けてきた。「どのような商品をお求めでしょうか?」 「重そうなソファばかり…
休日に妻と一緒に家具販売店でずらりと陳列されている椅子を見物していると店員が話し掛けてきた。「どのような商品をお求めでしょうか?」 「どの椅子も不安定そうね…
「そもそも、あなたはどうして椅子に座っていたのですか?」と警察官が質問してきた。 「長時間に渡って歩いていたので足がかなり疲れていたのですよ。それで、路上に…
「そもそも、あなたはなぜ浜辺を歩いていた生き物を蟹であると判断したのですか?」と警察官が質問してきた。 「脚の数が多かったのですよ。だから、蟹だろうと思った…
明け方に夢を見た。 私は学校の廊下を歩いていた。休み時間のようで周りにはたくさんの生徒達が行き交っていた。私は廊下の先に人集りが出来ていると気付き、そちらに…
明け方に夢を見た。 私は学校の廊下を歩いていた。こちらに話し掛けてきた同級生の発言の内容をまったく理解できなかったので私は当惑して現実世界ではないようだと察…
今日は翻訳機の調子が悪いようである。一時的な異常に過ぎないのだろうか?それとも、修理が必要な状態になっているのだろうか?しかし、今はその問題について考えるべ…
「先方が使用している言語には敬語が存在しません。ですから、この手紙を翻訳すると敬語をすべて省略した文章になりますが、構いませんか?」と翻訳機械が尋ねてきた。…
「先方が使用している言語には星という単語が存在しません。ですから、この手紙の文章は内容を完全には翻訳できません」と翻訳機械が言ってきた。 まさか星という単語…
「この手紙の文章に登場する鳥の種類は何ですか?」と翻訳機械が尋ねてきた。 「遠くから見ただけだから種類まではわからないよ。そのつもりで翻訳してくれ」と私は指…
この群島の公用語は土着の古語、外来語、鳥語という三つの要素から成り立っている。この群島は大海原の真ん中にあり、昔から他の言語圏との交流が少なかった為に個性的…
前世でトラックに撥ねられ、記憶を保持したまま異世界に赤ん坊として転生してから数十年が経っている。こちらの世界での生活にはそれなりに慣れてきたつもりなのだが、…
前世でトラックに撥ねられ、記憶を保持したまま異世界に赤ん坊として転生してから数十年が経っている。こちらの生活にはそれなりに慣れてきたつもりなのだが、今でも私…
前世でトラックに撥ねられ、記憶を保持したまま異世界に赤ん坊として転生してから数十年が経っている。前世の記憶があるせいか、今でも私は自分の声に違和感を覚えてい…
前世でトラックにはねられ、記憶を保持したまま異世界に転生してから数十年が経っている。前世の記憶があるせいか、今でも私が発する言葉には多少の訛りがあると周りの人…
前世でトラックにはねられ、記憶を保持したまま異世界に転生してから十年程が経っている。この世界の人類は鼻が目よりも高い位置にある。この世界の人類は類人猿から進化…
二人の少年が肩を並べて同じ宇宙人図鑑を見ていた。 「この宇宙人は人間に似ているね」 「他の宇宙人達と比べると人間に似ているけど、目と鼻の位置が逆になっている…
二人の少年が肩を並べて同じ海洋生物図鑑を見ていた。 「この蛸には心臓が二つあると書いてあるよ。普通の蛸は心臓が三つあるらしいけどね」 「本当だね。でも、心臓…
二人の少年が肩を並べて同じ哺乳類図鑑を見ていた。 「この猿は口を丸く開けているね」 「『ぽ』と鳴きそうだね」 「『ぽ猿』という名前らしいよ」 「やっぱり『ぽ…
夢の中で公園のベンチに座っていた。私は自分が夢を見ていると気付いていた。周りの景色に見覚えがあると感じていたが、どこの公園で見掛けた光景が再現されているのか…
夢の中で公園のベンチに座っていた。私は自分が夢を見ていると気付いていた。周りの景色に既視感を覚えていたが、どこの公園で見掛けた光景が再現されているのかわから…
新学期が始まったばかりの教室で二人の生徒達が休憩時間中に話し合っていた。 「そういえば、君は夏期休暇中はどこかに旅行に出掛けていたの?」 「ああ。親の実家に…
「ねえ。君は既に蝉を体験したかね?僕は動物意識体験機械を利用して色々な動物の意識を体験したが、蝉になると大きな声を発するだけで心地良い達成感を得られるよ」 …
「ねえ。君は鼠を体験したかね?僕はこの間、動物意識体験機械で鼠を試してみたのだけれど、とても充実した気持ちになれたよ。寿命が短い生き物だから一秒たりとも無駄…
屋根の上に立っている二羽の鴉達が庭に落ちている鴉の死体を見下ろしながら話し合っていた。 「どうする?」 「どうもこうもないよ。あれは確実に死んでいるよ。どう…
朝、二羽の鴉達が民家の屋根の上に立ち、停留所でバスの到着を待っている人間達の姿を見下ろしながら話し合っていた。 「また今朝も人間達があの場所に立っているよ」…
朝、二羽の鴉達が民家の屋根の上に立ち、停留所でバスの到着を待っている人間達の姿を見下ろしながら話し合っていた。 「ほら。あそこに立っている人間は随分と大きく…
夜、枕元で会話をしている二人組の声が聞こえてきたので私は意識が覚醒した。かなりの早口だったが、発音が明瞭なので言葉の内容は聞き取れていた。 「ほら。この死体…
二人の少年達が巨大な老人を見ながら話し合っていた。 「この老人は足に刺青が彫ってあるね。これはこの老人の氏名なのかな?だとすると、随分と珍しい名字だよね。こ…
二人の少年達が巨大な老人を見上げながら話し合っていた。 「老人が吠えているね」 「何を言いたいのだろう?」 「ただ、吠えたくなったから吠えたのだろう。意味な…
二人の少年達が巨大な老人を見上げながら話し合っていた。 「僕はこの老人よりももっと大きな老人になりたいよ」 「それは随分と欲深い発言だね。この老人よりも巨大…
同窓会で二人の老人達が話し合っていた。 「僕達の同級生にとても背が高い男がいただろう?」 「ああ。いたね。名前は思い出せないけど、あの男は本当にずば抜けて背…
同窓会で二人の老人達が話し合っていた。 「君はもう神様に話し掛けられたか?」 「いいや。君はどうなの?」 「僕もまだだよ」 「そもそも本当に神様は僕に話し掛…
同窓会で二人の老人達が話し合っていた。 「君は雨が好きか?」 「ああ。好きだよ。この雨ばかり降っている土地で産まれたら雨を好きになれないと人生が不幸になるば…
「止まない雨はありません。人間は同じ刺激を受け続けると慣れて感覚が麻痺するのです。ですから、永遠に美しいと感じられる美術品は存在しません」と美術商は断言した…
君はなぜ美術品が高額で売買されるのかという疑問について考えた経験があるか?答えは簡単だ。世の中の金持ち達が美術品を高く評価しているからだ。 金持ち達にも馬鹿…
博物館を訪れた男がガラスケースの中に置かれている粘土板を見ながら外付け式拡張意識内で人工知能に問い掛けた。 「この象形文字の意味は何だろうか?」 「これは金…
博物館を訪れた男がガラスケースの中に置かれている粘土板を見ながら外付け式拡張意識内で人工知能に問い掛けた。 「この象形文字の意味は何だろうか?」 「これは蛇…
博物館を訪れた男がガラスケースの中に置かれている粘土板を見ながら外付け式拡張意識内で人工知能に問い掛けた。 「この象形文字の意味は何だろうか?」 「これは花…
夢の中で私は道端に置かれた椅子に座っていた。周りは住宅街のようだった。すぐ近くに一人の子供が立っていてマジックペンで私の腕に花の絵を描いていた。見知らぬ子供…
夢の中で私は病院の通路を歩いていた。誰かを見舞いに来たつもりだったが、その病室の場所がわからないので病棟内を彷徨していた。所々に半開きになっている扉があり、…
入院患者が見舞客に言った。「薬の影響で睡眠時間がかなり長くなっているよ。それで、夢ばかり見ている。さっきは頭頂部のドリルで土の中を掘り進んでいる夢を見ていた…
二人の少年達がマンションの通路に立って話し合っていた。 「ほら。このスイッチのすぐ下に『スイッチ』と書いてあるよ」 「そうだね」 「でも、何のスイッチなのか…
二人の少年達がマンションの通路に立って話し合っていた。 「ほら。ここの壁に『ボタン』と書いてあるよ」 「そうだね」 「でも、どこにもボタンなんか見当たらない…
独房の壁には一つのボタンがあり、それを押すと天井から楽しそうな笑い声が聞こえてくる仕組みになっている。囚人の孤独を癒す為に備えられた装置であるらしいのだが、…
「世の中には食べると笑いが止まらなくなる茸があるらしいね」 「ああ。しかし、それは毒茸なのだろう?食べたら死ぬかもしれないよ」 「笑い過ぎるから死ぬのかな?…
「世の中には食べると自分の身体が大きくなったと勘違いする茸があるらしいね」 「ああ。僕の知り合いがその茸を食べて悲鳴を発しながら家の外に走り出ていったよ。家…
「世の中には食べるとライオンになったと思える茸があるらしいね」 「そうなのか」 「大抵の動物達はその茸を食べてライオンになったと錯覚すると自分が強くなったと…
草原で鹿を捕獲したライオンを遠くから見ながら二匹の象の子供達が話し合っていた。 「ライオンが鹿の首を噛んでいるね」 「ライオンはいつも獲物の首を狙うようだね…
獲物を追って草原を走っている一匹のチーターを遠くから見ながら二匹の象の子供達が話し合っていた。 「あんなに速く走れたら楽しいだろうね」 「そうだろうね。きっ…
夜、一匹の鼠が草原地帯を走っていて大きな物体に衝突した。その拍子に聞き覚えがある大きな声が辺りに響いたので鼠は当たった相手が象だと気付いた。 「やあ。ごめん…
夜、一匹の鼠が草原地帯を走っていて大きな柔らかな物体に衝突した。その拍子に聞き覚えがある声が辺りに響いたので鼠は当たった相手が暗闇の中で座っていた駝鳥だと気…
森の中でたまたま出会った二人の不死者達が岩の上に座って話し合っていた。 「その籠の中には何が入っているの?」 「鼠を飼っている。今は五匹しか籠の中に入ってい…
森の中でたまたま出会った二人の不死者達が岩の上に座って話し合っていた。 「それにしても自分以外の人間には二度と出会えないかもしれない思っていたよ」 「ああ。…
森の中でたまたま出会った二人の不死者達が岩の上に座って話し合っていた。 「それは何だ?」 「これは百科事典だよ。かなり昔から持ち歩いているのだけど、僕達の身…
森の中でたまたま出会った二人の不死者達が岩の上に座って話し合っていた。 「君は口がたくさんあるね。そんなにたくさんの口が必要になるの?食べる口と話す口と空気…
森の中でたまたま出会った二人の不死者達が岩の上に座って話し合っていた。 「君は随分と脚が多いね。しかも、生えている場所がおかしいよ。どうして背中とか脇腹から…
二体の生き物が喫茶店でコーヒーを飲みながら話し合っていた。 「それは新しい脚かね?随分と珍しい場所から生えてきたね」 「ええ。私もまさか身体の天辺から脚が生…
二体の生き物が喫茶店でコーヒーを飲みながら話し合っていた。 「君はしばらく会っていなかった間に太ったようだね。新しい臓器が増えたのかね?」 「さあ。どうです…
二体の生き物が喫茶店でコーヒーを飲みながら話し合っていた。 「その肩の穴は何だね?」 「肩とはどこですか?」 「君は自分の身体に肩がないと思っているのかね?…
二体の生き物が喫茶店でコーヒーを飲みながら話し合っていた。 「今、コーヒーを飲む為に俯いたから気付いたのだけど、君は頭頂部に小さな穴が開いているのだね。昔は…
二体の生き物が喫茶店でコーヒーを飲みながら話し合っていた。 「その手の先端にに穴が開いているようだけど、どうしたのかね?」 「ああ。この穴ですか。この穴が新…
夢の中で私は洗面所に立っていた。手の平に穴が開いていると気付いたので私は動揺した。その傷を負った経緯は思い出せないのだが、穴が手の平を完全に貫通している様子…
朝、洗面所で鏡を覗き込むと額に『幸運を』という文字が書かれていた。それは私の渾名だった。その言葉の発音が私の本名とよく似ているので昔から友人達から『幸運を』…
夏に今の学校に転校してきてから私の渾名は『腕』になった。本名に発音が似ているから一人の同級生が誤って『腕』と呼んできたのだが、それから他の同級生達も私を『腕…
夕暮れ時、侍と一緒に広い田畑に挟まれた畦道を歩いていた。遠くにある山々の方から冬の冷たい風が吹き付けてきていた。辺りに人気はなく、私達はしばらく会話を交わし…
「頂上に着くまでは腕を食べてはいけませんよ」と遠足で山を登っている最中に教師が言ってきた。 突拍子もない内容の指示なので聞き間違いだろうと思ったが、私は疲れ…
「日の出を見に行こう」と飲み会の最中に友人の一人が言い出した。 その提案に皆が挙って賛同したので私達は居酒屋から出て東に向けて歩き出した。とりあえず外にいれ…
なかなか夜が明けないので私は東の空を見ながら不安になっていた。先程まで丘の上には私以外の人間達がたくさん集っていたのだったが、待ち草臥れたようで明らかに数が…
夜明け前に私は丘の上に立ち、空に向けて「雪になれ」と叫んでいた。雪を願う丘の上には真夏には誰も来ないはずなので私は好きなだけ大きな声を出せていた。高揚感に身…
夜明け前に私は丘の上に立ち、空に向けて「晴れになれ」と叫んでいた。私の周りに立っている人々も口々に大声で同じ言葉を空に向けて放っていた。高揚感に身を任せて何…
真夏の夜明け前、私は兄と一緒に海へと続く道路を歩いていた。早く海で泳ぎたいという気持ちを抑えられずに真夜中に家から出発したのだった。辺りはまだ暗くて街灯の光…
友人と一緒にプラットホームのベンチに座って列車の到着を待っていた。私達は日陰にいるのだが、真夏の日差しが辺り一帯を照らしているせいで蒸し暑くて仕方がなかった…
プラットホームのベンチに座って本を読んでいると男が隣に座ってきた。その男がこちらを見てきているようだったが、私は話し相手を必要としているわけではないので視線…
二人の生徒達が下校途中に歩きながら話し合っていた。 「このところ、僕は昔の人が書いた小説を読んでいるのだけど、その作品の中に『電球が切れた』という見慣れない…
二人の生徒達が下校途中に歩きながら話し合っていた。 「あの学校の教育について考えてみたのだけどね」 「どうしたの?学校が気に入らないの?」 「あの学校は立派…
二人の生徒達が下校途中に歩きながら話し合っていた。 「また満点を取れなかったよ」 「満点なんて簡単に取れるわけがないから落ち込む必要はないよ。そもそも、生徒…
二人の生徒達が下校途中に歩きながら話し合っていた。 「星占いって知っている?」 「知っているよ。星を見て運命を占うのだろう?君はそんな大昔の迷信を信じている…
二人の生徒達が下校途中に歩きながら話し合っていた。 「このところ、様々な古代文明について解説している本を読んでいるよ。その本によると昔は鹿を王に見立てて敬う…
夢の中で水に浸かった街路を歩いていた。足首の高さまで浸水しているのだが、水の感触が鮮明なので私は夢を見ているとはまったく気付いていなかった。一頭の鹿と並んで…
「こんにちは」と森の中の獣道で一頭の鹿が話し掛けてきた。 久しく人間の言葉での通信を受けていなかったので私は驚いた。喉の奥にある発信器が正常に機能するだろう…
「こんにちは」と一匹の魚が話し掛けてきた。 久しく人間の言葉での通信を受けていなかったので私は驚いた。喉の奥にある発信器が正常に機能するだろうかと心配しなが…
「これは『海の箱』ですよ」と館の主人は言った。テーブルの上には一個の木製の箱が置いてあった。 客は箱の表面に彫刻されている魚や蛸などを見ながら感心したように…
「これは『足音の箱』ですよ」と館の主人は言った。テーブルの上には一個の木製の箱が置いてあった。 「『足音の箱』ですか。そのような名が付けられている理由がある…
「これは『犬達の箱』ですよ」と館の主人は言った。テーブルの上には一個の木製の箱が置いてあった。 「『犬達の箱』ですか。表面に犬達の姿が彫られているわけでもな…
夜、私は息子と一緒に線路沿いの道路を歩いていた。時々、列車が通り掛かると辺りに大きな騒音が響き渡るのだが、それ以外の時でも息子がずっと犬の声真似をしているの…
今日、犬のように吠える集団の会合に初めて出席した。皆で犬の声真似をしたのだが、私は他の参加者達の声と比較すると自分の声があまりにも犬と似ていないような気がし…
今日、逆さ言葉を言い合う集団に初めて参加した。単語の発音の順序を逆様にしながら参加者同士で話し合ったのだが、私はまだ頭が慣れていないせいで会話になかなか参加…
今日、石を持ち寄る集団の会合に初めて出席した。皆で持ってきた石を披露し合い、それぞれの石について紹介した。私は会合の趣旨をよくわかっていないまま参加したので…
旅先の土産物屋で美しい青色の石を見つけた。まるで青空のようだと思い、気に入ったので購入した。 それから私はその青色のような石を肌身離さずに持ち歩いている。雨…
旅先の土産物屋で美しい漆黒の石を見つけた。まるで宇宙のようだと思い、気に入ったので購入した。 それから私は暇があると漆黒の石を手に取って観察している。虫眼鏡…
宇宙船の休憩室で二人の船員達が話し合っていた。 「誰が丸窓の映像の設定を勝手に変更した?」 「知らないよ。丸窓の映像がどうかしたのか?」 「宇宙船と並んで泳…
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老人がかつて経験した長い旅について話していた。 「昔、私は買ったばかりの潜水服を着て意気揚々と海の中に入っていった。海底を適当に歩いていけば別の大陸に行…
馬の背に乗って仲間達と旅をしていて海岸に辿り着いた。海に出る予定などなかったので進行方向を間違えていたらしいと仲間達と話し合ったのだが、せっかく初めて海に来…
馬の背に乗って仲間達と旅をしていて海岸に辿り着いた。海に出る予定などなかったので進行方向を間違えていたらしいと仲間達と話し合ったのだが、せっかく始めて海に来…
男と女が喫茶店でコーヒーを飲みながら話し合っていた。 「時々、疑問に思うのだけど、どうして君はよく旅行に行きたくなるの?僕はどこか遠くに行きたいという欲求を…
旅先のホテルで壁に設置されている鏡の中を覗き込んでいる夫に妻が問い掛けた。「どうしたの?自分の姿が気になるの?」 「ああ。この辺りの道を歩いていたら通行人か…
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夫婦が居間でソファに座っていた。テレビでニュースが放送されていた。 「本当にこんな馬鹿みたいな投資詐欺に騙される間抜けな人間達が世界中にたくさんいるのかと思…
夫婦が居間でソファに座っていた。テレビでニュースが放送されていた。 「この犯罪者に課せられた刑期は短過ぎるね。たった五年の懲役刑は罰として甘いよ」と夫がテレ…
休日に妻と一緒に家具販売店でずらりと陳列されているソファを見物していると店員が話し掛けてきた。「どのような商品をお求めでしょうか?」 「重そうなソファばかり…
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「そもそも、あなたはどうして椅子に座っていたのですか?」と警察官が質問してきた。 「長時間に渡って歩いていたので足がかなり疲れていたのですよ。それで、路上に…
「そもそも、あなたはなぜ浜辺を歩いていた生き物を蟹であると判断したのですか?」と警察官が質問してきた。 「脚の数が多かったのですよ。だから、蟹だろうと思った…
明け方に夢を見た。 私は学校の廊下を歩いていた。休み時間のようで周りにはたくさんの生徒達が行き交っていた。私は廊下の先に人集りが出来ていると気付き、そちらに…
明け方に夢を見た。 私は学校の廊下を歩いていた。こちらに話し掛けてきた同級生の発言の内容をまったく理解できなかったので私は当惑して現実世界ではないようだと察…
今日は翻訳機の調子が悪いようである。一時的な異常に過ぎないのだろうか?それとも、修理が必要な状態になっているのだろうか?しかし、今はその問題について考えるべ…
「先方が使用している言語には敬語が存在しません。ですから、この手紙を翻訳すると敬語をすべて省略した文章になりますが、構いませんか?」と翻訳機械が尋ねてきた。…
「先方が使用している言語には星という単語が存在しません。ですから、この手紙の文章は内容を完全には翻訳できません」と翻訳機械が言ってきた。 まさか星という単語…
「この手紙の文章に登場する鳥の種類は何ですか?」と翻訳機械が尋ねてきた。 「遠くから見ただけだから種類まではわからないよ。そのつもりで翻訳してくれ」と私は指…
この群島の公用語は土着の古語、外来語、鳥語という三つの要素から成り立っている。この群島は大海原の真ん中にあり、昔から他の言語圏との交流が少なかった為に個性的…
前世でトラックに撥ねられ、記憶を保持したまま異世界に赤ん坊として転生してから数十年が経っている。こちらの世界での生活にはそれなりに慣れてきたつもりなのだが、…
独房の壁には一つのボタンがあり、それを押すと天井から楽しそうな笑い声が聞こえてくる仕組みになっている。囚人の孤独を癒す為に備えられた装置であるらしいのだが、…
「世の中には食べると笑いが止まらなくなる茸があるらしいね」 「ああ。しかし、それは毒茸なのだろう?食べたら死ぬかもしれないよ」 「笑い過ぎるから死ぬのかな?…
「世の中には食べると自分の身体が大きくなったと勘違いする茸があるらしいね」 「ああ。僕の知り合いがその茸を食べて悲鳴を発しながら家の外に走り出ていったよ。家…
「世の中には食べるとライオンになったと思える茸があるらしいね」 「そうなのか」 「大抵の動物達はその茸を食べてライオンになったと錯覚すると自分が強くなったと…
草原で鹿を捕獲したライオンを遠くから見ながら二匹の象の子供達が話し合っていた。 「ライオンが鹿の首を噛んでいるね」 「ライオンはいつも獲物の首を狙うようだね…
獲物を追って草原を走っている一匹のチーターを遠くから見ながら二匹の象の子供達が話し合っていた。 「あんなに速く走れたら楽しいだろうね」 「そうだろうね。きっ…
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夜、一匹の鼠が草原地帯を走っていて大きな柔らかな物体に衝突した。その拍子に聞き覚えがある声が辺りに響いたので鼠は当たった相手が暗闇の中で座っていた駝鳥だと気…
森の中でたまたま出会った二人の不死者達が岩の上に座って話し合っていた。 「その籠の中には何が入っているの?」 「鼠を飼っている。今は五匹しか籠の中に入ってい…
森の中でたまたま出会った二人の不死者達が岩の上に座って話し合っていた。 「それにしても自分以外の人間には二度と出会えないかもしれない思っていたよ」 「ああ。…
森の中でたまたま出会った二人の不死者達が岩の上に座って話し合っていた。 「それは何だ?」 「これは百科事典だよ。かなり昔から持ち歩いているのだけど、僕達の身…
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森の中でたまたま出会った二人の不死者達が岩の上に座って話し合っていた。 「君は随分と脚が多いね。しかも、生えている場所がおかしいよ。どうして背中とか脇腹から…
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二体の生き物が喫茶店でコーヒーを飲みながら話し合っていた。 「その肩の穴は何だね?」 「肩とはどこですか?」 「君は自分の身体に肩がないと思っているのかね?…
二体の生き物が喫茶店でコーヒーを飲みながら話し合っていた。 「今、コーヒーを飲む為に俯いたから気付いたのだけど、君は頭頂部に小さな穴が開いているのだね。昔は…
二体の生き物が喫茶店でコーヒーを飲みながら話し合っていた。 「その手の先端にに穴が開いているようだけど、どうしたのかね?」 「ああ。この穴ですか。この穴が新…
夢の中で私は洗面所に立っていた。手の平に穴が開いていると気付いたので私は動揺した。その傷を負った経緯は思い出せないのだが、穴が手の平を完全に貫通している様子…
朝、洗面所で鏡を覗き込むと額に『幸運を』という文字が書かれていた。それは私の渾名だった。その言葉の発音が私の本名とよく似ているので昔から友人達から『幸運を』…