松山巖『乱歩と東京』、鈴木博之『東京の地霊』、陣内秀信『東京の空間人類学』
久しぶりに気が向いて東京論を3冊。たまたま、すべてちくま学芸文庫。松山巖『乱歩と東京』では、1920年代の東京が江戸川乱歩の世界にいかに密接に影響を与えていたかという分析。「家」制度の矛盾がみえてきた時代にあって、独身者こそ都市生活者の特質であり、明智小五郎もまたそうだった。性のありようも無縁ではなく、『D坂の殺人事件』における妻の姦通もSM趣味も20年代乱歩ならではのものだとする。大正期には自己と社会の関係性を問いなおす動きがあった。たとえば武者小路実篤が宮崎に建設した「新しき村」もそのようなもので、これが経済的に失敗してゆくことと、乱歩の『パノラマ島奇談』とを関連付けて論じるくだりはおもしろい。(ところで「新しき村」は昭和に入って埼玉の毛呂山に移転する。何年か前に訪れてみたら十人の住民によるコミュニテ...松山巖『乱歩と東京』、鈴木博之『東京の地霊』、陣内秀信『東京の空間人類学』
2024/05/13 20:26