幸田回生 さん プロフィール

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幸田回生さん: ブログ連載小説・幸田回生
ハンドル名幸田回生 さん
ブログタイトルブログ連載小説・幸田回生
ブログURLhttps://ameblo.jp/kodakaisei
サイト紹介文この度、ブログで連載小説をはじめます。 よろしかった、読んでみてください。
参加カテゴリー
更新頻度(1年)情報提供52回 / 365日(平均1.0回/週) - 参加 2005/06/18 13:44

幸田回生 さんのブログ記事

  • 新高山登れ2(台湾)16
  •  16   ツオウ族の集落の中でも一番大きな小屋の前で、 普段着から白い正装に着替えた長老が二人の男を従え、 日本人と台湾人の客人を待っていた。 「こんにちは」はっきりとした日本語で長老の方から声を掛けてくれた。「このような奥深い山の中に日本人の若者と台湾人の夫妻を迎えることが出来きるとは、こんな嬉しいことはありません」 長老がそう言った瞬間、待ちかねたようにどこからともなく紅色の衣装を着けた老若男 [続きを読む]
  • 新高山登れ2(台湾)15
  • 15  阿里山のホテルで一夜が過ぎた。 ユウジ、ツヨシ、ミドリ、キミコの4人がチェックアウトを済ませ、ホテルを出ると、白いランドクルーザーが横付けした。 運転席の窓が降りて、ハンドルを握る王さんが声を掛けた。「さあ、みなさん。お乗りになって下さい」 助手席の奥さんの蔡さんは無言で微笑んだ。 ユウジとツヨシがランドクルーザーのハッチドアを開け、 ミドリとキミコのキャリーバッグを車に積み込んでドアを閉め [続きを読む]
  • 新高山登れ2(台湾)14
  •  14       そのまま、王さんはベッドに腰掛けた。「みなさんが目指すと言われた新高山ですが、 日本人の方はご存じないかもしれません。 外国人の方が新高山を登るには予め国の許可がいります」 「ということは、僕らが新高山に登ることは出来ないということですか?」  興奮気味にユウジが詰問した。 「そう言われれば、そういうことになりますね」 ユウジを宥めるどころか、王さんは他人事のように突き放した。「そ [続きを読む]
  • 新高山登れ2(台湾)13
  •  13 レストランで食事をしながら、4人はこれからの計画を練った。 台北から復りの航空券は念のため期日変更が出来るようにしていたので、帰国日の融通は効いたが、ミドリは社会人のため、 無制限に休みを引き延ばす訳にいかなかった。 とりあえず、明日の朝、ホテルをチェックアウトして、 新高山を目指すことで4人の意見が一致した。 ホテル内のレストランでの会計を済ませ、 4人がエレベーターに向かおうとしていた時 [続きを読む]
  • 新高山登れ2(台湾)12
  •  12 午後3時、4人がホテルから姿を現した。 ツヨシとミドリがグレーのTシャツに黒の半ズボンとキュロット、 ユウジとキミコは白のTシャツに緑の半ズボンとキュロットで、 いつものように申し合わせたかのようなファッションだった。「ねえ、少し冷えるじゃない。 ここは山の中だし、長袖にすればよかったかな」「ミドリさん、わたしもそう思うわ」「そうでしょう、キミコさん。 昨日は高雄でフェリーに乗り、海水浴気分 [続きを読む]
  • 新高山登れ2(台湾)11
  •  11 翌朝、4人は台南駅のプラットフォームで聯明の見送りを受けた。「聯明さん、わざわざ来てくれて、今日はどうもありがとう」「どう致しまして。 こちらこそ、どうもありがとうございます。 キミコさんたちに台南まで来ていただいて、 麗子姉さんも喜んでいると思います」 姉の小学校時代の友人に、聯明が応えた。 「昨夜、ホテルに戻って、4人で相談して決めました。 これから電車で、あなたが教えてくれた嘉義に行き [続きを読む]
  • 新高山登れ2(台湾)10
  •  10 10分もすると、聯明は息を弾ませながらビーチに戻って来た。  白と黒の色違いのキャップを4人の目の前に差し出すと、 Tシャツの色に合わせ、キミコが黒の帽子を、ミドリが白の帽子を被り、次に出された日焼け止めオイルを顔から首筋に丁寧に塗り、 腕と、キュロットの先の足にも塗った。 そんな女性陣を見ながら聯明は言った。 「ユウジさんとツヨシさんにもお土産があるんですよ」 帽子が入っていた袋からお揃いの [続きを読む]
  • 新高山登れ2(台湾)9
  •  9 陳大全の部屋から6人が1階のリビングダイニングに降りると、 テーブルの奥にあるベージュのソファーに座って、  高校生風の女の子が一人でテレビを観ていた。  母親が見ず知らずの若い5人と一緒にいるのを見て、 彼女は透かさず、気配を察知したようで、立ち上がり、「はじめまして」と、日本語で言った。「わたしは陳淑令と申します。 ご免なさい。 わたしはほんの挨拶程度しか日本語が話せません」 化粧気のな [続きを読む]
  • 新高山登れ2(台湾)8
  •  8 5人を乗せた電車が高雄駅に着いた。 待ち合わせ場所の駅前のロータリーのタクシー乗り場に行くと、 素早くミドリを見つけた、庇の広い白い帽子を被った40代半ばの女性が前に進み出て日本語で言った。 「お久しぶりです、中野さんですね」「はい」  ミドリが一言で応えると、「東京ではお世話になりました。 息子の大全の遺体は無事に高雄の自宅に戻って来ることが出来ました。 日本ではバタバタして、事務長さんには碌 [続きを読む]
  • 新高山登れ2(台湾)7
  •  7 翌日の9時前、ブルーのキャップを被り、白のTシャツにブルージーズン姿の周聯明が4人が滞在するホテルに訪ねて来た。  回転ドアを潜り入けた聯明は1階のフロントに座る3人の女性の頭上に備えられた3台の時計に、彼が暮らす台南より1時間早い東京の時計がないのを不満気に眺めていると、 4人がエレベーターから降りて来た。 ユウジとキミコは黒のTシャツに黄色の半ズボンとキュロット。 ツヨシとミドリが白のT [続きを読む]
  • 新高山登れ2(台湾)6
  •  6   家の外に出ると、いつのまにか雨が降っていた。 日本から訪れた4人と息子の聯明が傘も差さず車を待っていると、 周聯人さんの運転するトヨタの白いミニバンがどこからともなく現れた。  聯人さんが運転席の窓を開け、車に乗るように促すと、 助手席にが聯明が座り、真ん中の座席にキミコとミドリ、 後部座席にツヨシとユウジが座って、トヨタのミニバンは走り出した。  キミコは肩に下げたポシェットからピンクに [続きを読む]
  • 新高山登れ2(台湾)5
  •  5  キミコが夢から覚めると、頭痛も治まり気分も落ちついていた。 「おぼろげながら覚えていますが、 ミドリさん、お薬を飲ませてくれたのですね。 ありがとうございます」  キミコはベッドから体を起こすと、 首筋から脇の下にかけて軽い寝汗を掻いていた。 「そこまで記憶があって、 それから眠ってしまったの」 キミコは周麗子の夢はミドリに黙っていた。 「今、何時ですか?」「もうすぐ、4時」 腕時計を見たミド [続きを読む]
  • 新高山登れ2(台湾)4
  • 4  翌朝、4人がエレベーターでホテルの地下1階に降りると、 レストランは基隆の屋台街をそっくり移して来たかのような賑わいだった。  宿泊客の多くは台湾人、もしくは大陸からの中国人のようで、  老若男女が大声を上げ、ああでもないこうでもないと、  何を食べようかと、品定めの最中だった。 白米、おかゆ、トースト、揚げパン、蒸しパン、  ジャム、バター、スクランブルエッグ、ボイルドエッグ、 シリアル [続きを読む]
  • 新高山登れ2(台湾)3
  •  3  基隆駅を発って10分が過ぎた頃、 沈黙を破るかのようにミドリが口を開いた。 「今回の台湾旅行には直接関係はないんだけど。 わたしとキミコさんが知り合うきっかとなった中華会館で亡くなった4人の内、 ただ一人遺体の引き取り手がなかった葉資明という台湾人が台北の出身で、わたしが務める日本語学校の学生の噂によると、 葉資明は新宿の区役所通りの裏にあるホストクラブで女を相手にして食べていた。 常連客は主 [続きを読む]
  • 新高山登れ2(台湾)2  
  •  2  4人は地下鉄に乗って次の台北駅に向かった。 車内は東京と同じようにすし詰め状態で、 降りる手前で誰かの携帯から「涙そうそう」の着メロが鳴った。  日本語の歌詞が聴こえた直後、 大声で電話に出た女性が早足に消えた。 4人は目を合わせて確認した。 エアポートバスも地下鉄も同じで、ここは台湾だと。 地下鉄の改札を抜けると広い地下街になっていた。  新宿のように無数の人々が行き来する。 ツヨシに2度 [続きを読む]
  • 新高山登れ2(台湾)1
  •  1 夏の日射しが強くなり始めた午前9時、 渋谷ツヨシ、丸山ユウジ、中野ミドリ、 上野キミコの4人はJR上野駅で待ち合わせた。 ミドリとキミコは5分前には改札の前で顔を合わせた。  2分前にはツヨシが、9時ちょうどにユウジが姿を見せた。「おはよう。 みんなの元気な顔が見れて安心した。 今日はぎりぎりセーフだな。 やっぱり上野は遠い。 渋谷から山手線に乗ろうか地下鉄にしようか、 散々迷ったあげく、選 [続きを読む]
  • 新高山登れ1(日本)24
  •  24 「御免ください」 見えない相手に向かって、キミコが声を出した。「御免ください」 より大きな声で、若干キーを上げて、キミコが問い掛けた。  それまで自己主張を控えていた彼女の別の一面を見たユウジは、 首を動かし、目を回して、店の中を伺ったが、 待てど暮らせど、猫の子一匹出てこなかった。 「御免ください」  3度目にキミコが叫ぶように言うと、どこからともなく、 80歳過ぎの禿げ頭の老人が二人の目の前 [続きを読む]
  • 新高山登れ1(日本)23
  •  23  二人は中華街を離れ、アベックが集う山下公園から本牧の港へと歩いた。 「汐の香りがしますね?」「キミコさんも気付きましたか?」「はい」「港町の長?で生まれ育った僕は汐の匂いが嗅ぐと、 懐かしいというより、本来あるべき自分に戻った気がします」「羨ましいです」「そうですか?」「ええ」「九州の田舎者ですよ」 「わたしだって、元は九州の人間です。 父方も母方も鹿児島です」「そうなんですか?」「はい」「 [続きを読む]
  • 新高山登れ1(日本)22
  •  22  朝8時、キミコは中野の自宅を出た。 新宿で山手線に乗り換え、渋谷の地下から田園都市線に乗り込んだ。 ユウジが利用する駅で下車すると、 ほどなく、プラットフォームで待ち合わせている彼の姿が視界に入った。 「おはようございます」 ツヨシがキミコに声を掛けた。「美女からデートの誘いとは嬉しい。 ツヨシとミドリさんを袖にして、二人に怒られないかな」 「申し訳ありませんが、わたしにはそのような思いはあ [続きを読む]
  • 新高山登れ1(日本)21
  •  21  朝食後、キミコは思いきって、 周麗子の通夜と葬式に行った際、持ち帰ったハガキの葬儀社に電話を掛けた。 「先日、御社で行われた周麗子さんの通夜葬儀に参列した上野と言います、彼女のお母さんに用事があるのですが」と、 上手い具合に、麗子の母の携帯の番号と住所を聞き出した。  キミコの胸の鼓動が治まらなかった。 大きく2度3度と溜息をつき、なるようになれと開き直って、 携帯電話の番号を押した。 「も [続きを読む]
  • 新高山登れ1(日本)20
  •  20  男女別にメールと電話で連絡を取り合って顔を合わせていたが、  揃って会うのは2度目だった。 季節は巡り、春から初夏を想わせる5月の半ばの爽やかな日の午後6時半、ハチ公前で待ち合わせた4人は渋谷のスクランブル交差点を渡り、初めて出会った、台湾の大衆的な居酒屋に直行した。  ユウジは焦げ茶のポロシャツとブルージーンズ。 ツヨシはチェックのボタンダウンのシャツとベージュの綿パン。 キミコは黒の長 [続きを読む]
  • 新高山登れ1(日本)19
  •  19  渋谷ツヨシとユウジは神戸から横浜に戻って以来、 渋谷で午後6時に待ち合わせた。 時間には几帳面なツヨシはいつものように5分前にはハチ公の前に立っていた。  嫌な予感がした。 3分前、携帯にメールを知らせる電子音が鳴った。 ユウジからのメール。「悪い、今、電車の中だ。15分遅れる」  ツヨシは軽く舌打ちした。 小学生の頃から時間にルーズなユウジは今年二十歳を迎える大学生となっても、その癖は直らな [続きを読む]
  • 新高山登れ1(日本)18
  •  18 中野ミドリがキミコの家を訪れた次の日曜日、 上野キミコがミドリの住むシェアハウスを訪れた。 キミコの記憶が正しければ、東京生まれの彼女は初めて田端駅で下車した。  改札で出迎えてくれたミドリは赤いトレーナーとブルージーンズ、 この日のキミコは普段のカジュアルな姿に戻り、Tシャツの上から春物の淡いピンクのパーカーを羽織り山吹色のデニムのパンツで、 ミドリが住むシェアハウスまでの道程まで並んで歩 [続きを読む]
  • 新高山登れ1(日本)17
  •  17  上野の日本人学校の事務長である吉田美鈴は学生時代のアルバイトで間接的に中国人と関わっていた。 その当時、バブルの最盛期を過ぎていたとはいえ、 今と比べれば、まだ日本の経済力には目を見張るものがあった。  大学3回生だった美鈴は今日の学生のように慌ただしく就職活動に追われることなく、卒業後はどうにかなると高を括り、 これといった自分の将来像を描いてはいなかった。  ある朝、美鈴は友人の紹介で都 [続きを読む]
  • 新高山登れ1(日本)16
  •  16 周麗子の通夜と翌日の葬儀の席で、 彼女の母親と二人きりで過ごした上野キミコによると、 麗子は横浜生まれで小学校4年生の時に両親が離婚して、 母親に連れられ、横浜から中野に引っ越して来た。  キミコが麗子とクラスメートになったのは6年生の時だけで、 彼女の家庭の事情を知るはずもなかった。  日清戦争で勝利した日本が下関条約で清国から台湾を割譲して、 大東亜戦争で降伏すると、50年間占領した台湾か [続きを読む]