Koy さん プロフィール

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Koyさん: atelier koy
ハンドル名Koy さん
ブログタイトルatelier koy
ブログURLhttp://atelierkoy.blog50.fc2.com/
サイト紹介文書家・蘆野公一の日々のつれづれ
参加カテゴリー
更新頻度(1年)情報提供115回 / 365日(平均2.2回/週) - 参加 2008/04/12 12:36

Koy さんのブログ記事

  • 彼の地(6)
  • 最後に訪れた茶屋街は、まるで目に見えぬ何者かのおとないを拒むかのように、ほとんどの店が暖簾を下ろし、戸を閉めていた。行灯だけが、その見えざる者のための道標のように濡れた石畳を照らしていた。見えざる者が自分のすぐうしろにいるような気がした。振り向いてはならない。そう肌で感じた。ギリシャ神話では振り向いてしまったがために妻をふたたび失うことになってしまった男がいたではないか。妻のない私はいったい何を失 [続きを読む]
  • 休題的にこいのぼりなう!
  • 「こいのぼりなう!」「こないりのぼう!」。「粉入りの棒!」。粉の入った棒。すぐに思い浮かぶのは筒状の袋に入った片栗粉です。とろみのある、細かく切った野菜たっぷりのソースを白身魚のムニエルにかけて食べたい。部屋に入っていく純白の鯉。部屋に入ってすぐ生成りを纏い、すこしずつ色づいて黄色、徐々に赤を帯びて緋鯉に、赤から紫を経て、青に、青から緑、そして黒へと向かって、最後は真鯉となって部屋を出て行く。この [続きを読む]
  • 彼の地(5)
  • 美術館は思った以上に混んでいた。ある作家の、ある平面作品を観たくて、ここまでやってきたのだった。その作品の前に立った。ずっと眺めてみるが、思っていたものがそこには見つけられない。写真で見た限り、線と色のそばに潜む昏い底があったような気がする。その底にはざわめきだとか静寂だとかが澱のように積もっていた気がする。部屋を一周して、もう一度対峙するが、やはり見つけられなかった。有名なプールはこじんまりとし [続きを読む]
  • 彼の地(4)<あるいは和装についての挿話的なもの>
  • 十代のころ、仲のよい女の子がいた。その子は、近くの川原で打ち上げられる花火を見に行く時はかならず浴衣を着た。毎年違った浴衣だった。夏が来るたびに新調しているのか、姉妹で着まわしていたりするのか、それとも誰かのおさがりなのか訊きもしなかったが、朝顔だったり、知らない花だったり、花火がモチーフになった浴衣は、夏の夜の闇と出店の明かり、人混み、花火の音、歓声にとても似合っていた。僕は、Tシャツに短パンと [続きを読む]
  • 彼の地(3)
  • 庭園に着くと、わずかな日差しが雲間から零れるようになり、寒さも和らいだ。葉がだいぶ目立ってきた桜の樹の下を歩くと、薄い木漏れ日がからだの上を流れていった。以前、木漏れ日をモチーフにした墨画を描いているときに、「木漏れ日」という状況に対する単語は英語圏にはなく、状況そのものを説明するしかないらしいことを知った。雨季の終わったオレゴンの桜はどうなっているのだろう、とふと思った。周辺のホテルで貸出してい [続きを読む]
  • 彼の地(2)
  • ネットで目星をつけた料理店に電話をかけると、予約がいっぱいとのことだった。駅前とはいえ、歩く人もまばらで、ときおり雨脚も強くなる。暖簾を掲げているのはどこかで目にしたことがあるような店だけだった。これは、と思う店構えのところは、「ぬけがけ週末ランチ不可」という談合があるかのようにことごとく閉まっていたり、準備中だったりした。駅前の道をあっちに行ったりこっちに行ったりしている間に雨も本降りになってき [続きを読む]
  • 彼の地(1)
  • 彼の地は小雨がぱらついていて、横浜よりも気温は15度も低いらしかった。15度の差は大きい。昼夜の温度差が大きいほど作物は美味しくなるというようなことはよく聞くが、人間はただ風邪をひくだけだ。駅ビルのトイレに入り、リュックに忍ばせてきたセーターをシャツの上に着た。それでも寒い。冬用のアウターを持ってくるべきだったと悔やんだ。家を出たのは6時半で、もうすぐ正午になろうとしていた。一睡もせずに新幹線に乗り込 [続きを読む]
  • 地図の細密化
  • この三日間、印鑑が見あたらなくて、ずっと探している。同じところを何度もなんども回遊魚のようにまわりながら当たっているので、どんどん整理整頓されていく。以前、財布が行方不明になったときに見つけた冷蔵庫の中も、その周回箇所に入っていて、野菜室も冷凍室も、冷蔵室の小瓶が並ぶコーナーも隈なくかき分け探索する。冷蔵庫の中でさえそんな具合なので、居室や寝室等のそこかしこにある抽斗の中などは、仕舞われている物の [続きを読む]
  • あのボウロ的なもの
  • あの京都の、あのお菓子はいったいなんだったのだ。ということで。値段を知った時、 「 nh あ ?! 」 と変な声が出た。中世ヨーロッパにおける香辛料のように高価。京都だと思って調子のってんじゃねーぞ。という感想を抱くのがごく自然なほど、高価。  [続きを読む]
  • 千鳥ヶ淵
  • 千鳥ヶ淵に行ったのでした。ほぼ満開の日に。丸の内仕事人で、ここらへんは庭。という人の案内。庭にこんなに人が入ってくるのは厭だなあと思いながらも自分もその人波を構成する。ボート待ちの列が、今日中どころか今年中に乗れるのか、と思えてしまうくらい並んでいる。数列はわりと好きだったが、行列は昔から苦手だ。自分がボートに乗ったら、恥ずかしくてずっと俯いているだろうな、花見どころではないな。と思う。自意識過剰 [続きを読む]
  • キセキのサフラン
  • 銀座でふらっと入ったお店で食べたパエリアに、ルイユソースというものが小皿で付いていた。このソース、ブイヤベースによく供されるらしいのだが、パエリアにもすさまじく合っている。「出汁・ソースの個人的知的探求期」でもあるので、味蕾を総動員して解析にとりかかる。そして、もちろんさっそく家で作る。自画自賛になるが、天才かもしんない。と、この話題が今回のキモではない。ルイユではなく、パエリアの方。それもサフラ [続きを読む]
  • 一片
  • 駅から仕事場まで、ちょっと遠回りをすると大好きな桜並木がある。少し早めに家を出て、満開も過ぎ、花も散り始めたその道をゆっくりと歩く。途中、トイレに入って鏡を見ると、立ち上がった髪の毛の間に一片の花びらが突き刺さっている。すれ違う人の視線で、そのような予感はしていた。並木道も良いが、群れずにすっくと立っている桜の方が好みではある。   [続きを読む]
  • ボウロとの勝負の記憶
  • 袋に商品名もお店の名前も書かれていない、薄いハート形をしたパステルオレンジ色のクッキーを食べた。口溶けの良い、上品な"たまごボウロ"の味だった。"たまごボウロ"を口いっぱいに頬張って、一気に溶かして飲み込んだりした子供のころの記憶が蘇った。唾液の供給量が勝つか、ボウロの吸水量が勝つか、の勝負の記憶。そんな懐かしさを届けてくれた商品名が気になった。わかっているのは色と形と味。簡単に検索できるだろう、と高 [続きを読む]
  • 欲求としての5つの感覚
  • 最近、日常における、欲求としての視覚の占める割合が大きい。少し前までは、聴覚も嗅覚も触覚も味覚も、自分が煩わしさを覚えるほどに貪欲だったのだが、これはいったいどうしたことか。とはいえ、煩わしさを覚えないほどには貪欲であるのだ。「やみつきしみかりせん」というのを一袋いただいて、2日で無くなる算段をしていましたが、なかなか手が止まらず、”やみつき”だから仕方ないよねー、別に太ってもいいしー、と夕食後15 [続きを読む]
  • 声をかけられま酢
  • よく海外からの旅行者の方に道を尋ねられたり、写真を撮ってくれとお願いされたりする。日本人代表として、懇切丁寧に接する。声をかけやすい顔をしているのか。無害安全の雰囲気を漂わせているのか。いずれにせよ悪くない気持ちではある。私がスズキさんであることを知っている方に「べんりで酢」という酢で漬けた山芋とパプリカのピクルス(大量)と、「べんりで酢」そのものを一本いただいた。調べてみると、「カンタンいろいろ [続きを読む]
  • 30年を30分で
  • 大好きな作家の一人である奈良さんの30年の軌跡を観に。最終日の前日になんとか都合をつけられてのぎりぎり滑り込みだった。30分しか時間がなくて、30年を30分で観るのはそれは無理だろうと。消化不良のまま終わる。原美術館の片隅に「奈良さんの部屋」があるのだけれど、ここは独り占め感が生まれるので行くたびにほっとする。   [続きを読む]
  • 微熱山丘
  • "sunny"を「微熱」と訳すセンスがなかなか洒落てるなあ、どこのだろうと思って見ると台湾のお菓子でした。パイナップルケーキは、その昔、叔母(たしかそう)がしょっちゅう台湾旅行に行っていて、子供の頃によくお土産として食べた記憶が強いです。昔のパイナップルケーキは、噛んだときに起こる、生地の崩壊とパイン餡の分裂にギャップがありすぎて、ぼろぼろぼろぼろ生地をこぼしていた気がします。おそらく子供の頃の愛読書の [続きを読む]
  • vodafoneゆく
  • 10年以上使用してきた、バッテリーがぱんぱんに膨らんでいたガラケーが逝ってしまいました。液晶のブラックアウト、アドレス帳、メール、記憶喪失です。踏ん切りがついて良かったと思うことにします。vodafone、すごく気に入っていたんですけどね。これをお読みになってる、vodafoneアドレス、または、08032から始まるSMS、通話でのコンタクトのみだった方(あまりいないような気もしますが)、Gmailか、iPhoneの方へご連絡いただ [続きを読む]
  • 錯覚
  • ベビーリーフを皿に出す時に、袋に付いている葉がなかなかとれないなあと苦労していたら、それは印刷だった。指でふれるまでまったくわからなかった。こういうことはよくある。虫だ!と思ってビクッとしたものの、実は墨や絵具の飛沫だったり。げ!またオリーブの樹に幼虫かよ!と思ってよく見ると、まるまって裏返った葉だったり。ぐあ!なんかの虫!と思って、光に近い速さで顔を遠ざけて見ると、ダウンからこぼれ出た羽毛が漂っ [続きを読む]
  • プラマイゼロ
  • 夢を見た。修学旅行で関西に来ている。クラスに某女優がいて、同じ大部屋に泊まることになる。20人くらいその大部屋にはいるだろうか。寝る場所を決めることになり、私とその女優には押入れが割り当てられる。押入れは狭かったが、まったく苦にならず、女優を涙ぐませたりもしながらずっと話す。起床時間になり、押入れを出ると、なぜか西陽が差している。部屋の隅に私のバッグがあるのが目に入る。ファスナーは開けられ、中の文庫 [続きを読む]
  • 半年後のからだ
  • そういえば、節分に豆を大量に食べたのだった。年齢の数を食べるらしいが、その伝でいくと、私が生まれたのは確実に紀元前になる。その後、数日、あたりまえのように豆づくしの日を送った。来る日も来る日も豆だった。なぜそんなに豆だったのだろう。思い出せない。まあ、豆は大好物のひとつであるからいいのだ。人間のからだは、半年前に食べたものでできているらしい。夏、8月の初め、私のからだはきっと豆なのだろう。というこ [続きを読む]
  • 睡魔
  • 睡魔は、やって来てほしい時に、遠くの方でこちらに背中を向けてしゃがんでいる。そして、やって来てほしくない時に、音もなく忍び寄り、いつのまにか眠る私の肩の上で笑っている。私が人型としてイメージする睡魔がいる。安直すぎるきらいがあるが、「夢魔」(フュースリ<1781年作の方>)という絵の、眠る女性の上にのる夢魔そのもの。電車の中では、これが私の肩の上にいつのまにかのっているし、これからベッドに入ろうとする [続きを読む]
  • 遠い背中
  • 眠ろう、眠ろう、と思えば思うほど目が冴えるのは、お腹が空いているからに違いない。お腹は多少満たされたが、睡魔の背中ははるか遠く。  [続きを読む]