井上智公 さん プロフィール

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井上智公さん: 泣きながら一気に書きました
ハンドル名井上智公 さん
ブログタイトル泣きながら一気に書きました
ブログURLhttp://tmykinoue.hatenablog.com/
サイト紹介文妄言コラムと気儘批評と悪戯短篇小説の巣窟
自由文文筆業。
基本的に嘘泣きです。
よろしくお願いします。
参加カテゴリー
更新頻度(1年)情報提供82回 / 365日(平均1.6回/週) - 参加 2008/12/16 15:32

井上智公 さんのブログ記事

  • 短篇小説「米米商店街」
  •  その商店街にはじめて店を出したのは米屋だった。さすが日本人の主食である。と言いたいところだが、そのはす向かいにオープンした二件目の店もまた、別の経営者が開いた米屋だったことで町内は騒然となった。「おいおい、年貢はもういいぜ」 そう言って揶揄していたある若者が、二件目の米屋の隣に魚屋をオープンした。おかずが必要だと思ったからだ。 しかし魚屋は繁盛しなかった。なぜなら米屋は本当の意味での米屋だったか [続きを読む]
  • 短篇小説「命に別条」
  •  ある朝、男が工事現場の脇を歩いていると頭上から大量の鉄骨が降臨、その頭部を直撃するという事故が起きた。だが幸運なことに、この日初陣を飾った一張羅のカツラこそ飛び立ったものの、男の命に別条はなかった。別条がないというのは良いことである。 クロスした鉄骨の合間からひょっこり顔を出した男はまるで別人の様相であったが、なにしろ命に別条はない。しかし残念なことに、頭部から離脱したカツラが複雑に絡みあう鉄骨 [続きを読む]
  • 短篇小説「河童の一日 其ノ十六」
  • なんだか政治の世界が大変なことになっているらしい。今日は呑気な日曜日、しかも三連休の中日なので昼まで存分に寝ていたかった。しかしこの状況下で寝続ける能力が、残念ながら僕にはなかった。朝イチで茨城から泳いで来た爺ちゃんが、緑の好物を両手に掲げて「キュウリノミクス! キュウリノミクス!」と叫び踊っているものだから。もちろん「ウ・ル・ト・ラ・ソウル!」のリズムで。「ハイだろハイ、ほれ!」爺ちゃんはそう言 [続きを読む]
  • 短篇小説「壊れかけ包囲網」
  • 崩彦の家では何もかもが壊れかけている。朝から洗濯機が妙な音を立てて。それでも槽はぎっこんばったん回り続け、やがてピーピー叫ぶので蓋を開けてみると、中はこんもり泡まみれ。逆に動作がすっかり止んでもまったくピーピーしない際にしびれを切らして蓋を開けてみると、すっかりすすぎは完了しておりしたり顔。となると「ピー音が鳴るときは失敗、ピー音が鳴らないときは成功」という新ルールを人ならばつい打ち立てたくなると [続きを読む]
  • 短篇小説「優しさはチャージのあとで」
  • 本田優夫はすこぶる優しい男だから、ぶん殴った相手には絆創膏を多めに渡してやるのが常だ。リクエストさえあれば、そのうえで相手をひっしと抱きしめてやってもいいとすら思っているが、その場合はもう一発殴ることになる。もちろんその後に渡される絆創膏は、さらなる増量が期待できる。絆創膏を渡すだけでなく、せっかくならば貼ってほしいというご要望があれば、優夫はそれにすら応える用意がある。絆創膏を貼ってあげた場合は [続きを読む]
  • 虚実空転日記「サバといつまでも」
  • 騒音おばさんがじっくり煮込んだサバの味噌煮をご近所の玄関口にぶちまけたころ、著名なジャズマンは中学生ドラマーのドラムスティックを豪快に放擲していた。『ガリガリ君』のあたり棒の次に大切にしていたスティックを取り上げられた中学生は、素手によるドラムソロを続けることによりジャズマンの怒りを増幅させ、ジャズマンの往復ビンタを食らう。ステージ脇にいた同じジャズマンであるところのKワマンは、そんな衝撃的シーン [続きを読む]
  • 書評『場所』/マリオ・レブレーロ
  • カフカを好むがゆえにカフカ・フォロワーと見るや手に取ることが多いが、このマリオ・レブレーロもそのひとり。とはいえ南米ウルグアイの作家であり、カフカとの地理的な距離感がどのように作用しているか、という興味もあって。これは音楽の世界でもよくあることなのだが、フォロワーというのはオリジナルを濾過することで自らの精度を上げようとする傾向がある。たとえばビートルズのファンが、あれだけ幅広い音楽性を誇るビート [続きを読む]
  • 書評『東京モンタナ急行』/リチャード・ブローティガン
  • 東京モンタナ急行作者: リチャード・ブローティガン,藤本和子出版社/メーカー: 晶文社発売日: 1982/10メディア: 単行本 : 2回この商品を含むブログ (6件) を見るこの世にブローティガンほど「当たり外れ」の激しい作家はいない。にもかかわらず、「外れ」に当たってもなぜか損した気分にならないのがブローティガンの凄さである。短編小説は一般に、当たり外れの激しいものとされる。どうしてもワンアイデア勝負になりがち [続きを読む]
  • 短篇小説「河童の一日 其ノ十五」
  • 夕方、雨が降ってきた。ゲリラ豪雨である。でも傘は差さない。僕は河童だから。いや本当は差したい。いくら河童とて、ずぶ濡れは嫌だから。でも河童が傘を差していると笑われるから差せないのである。もう一度言うが本当は差したいのだし、甲羅と背中の間に折りたたみ傘だって入ってる。開いたことは一度もない傘。「おい、全然話が違うじゃないか!」近ごろ雨の日に外を歩いていると、だいたい日に一回はそうやって言いがかりをつ [続きを読む]
  • 短篇小説「戸袋ひろしの誘惑」
  • それがどこの何線であろうと、電車のドア付近できりきり舞いしている男がいたら、それが戸袋ひろしである。あまりにも戸袋に引き込まれるものだから、「戸袋ひろしは戸袋に“挟まれている”のではなく、戸袋の中に“入ろうとしている”のでは?」という説もちらほら囁かれはじめているが、真相は戸袋の中である。一部の動物学者たちは、戸袋ひろしの話題になるとすぐに「母親のポケットに入り込むカンガルーの子供」に喩えてしたり [続きを読む]
  • 短篇小説「河童の一日 其ノ十四」
  • 河童は梅雨が好きだと思われがちだが実は梅雨が苦手だ。科学的に説明はできないが、河童の好む湿気と梅雨の湿気は何かが決定的に違うのである。それ以前に僕ら河童という存在自体がそもそも科学的に説明できないのだから、河童に科学を求めないでほしい。今日は朝起きた時点ですでに体が重かったが、案の定授業中に気分が悪くなり午前中はずっと保健室で寝ていた。ベッドは濡れてしまうので、床にレジャーシートを敷いて。美人と評 [続きを読む]
  • 短篇小説「勇者・二度見村ミム彦の誤解」
  • 勇者・二度見村ミム彦はいわゆる「二度見」の天才であった。彼はあらゆるものを二度見る。そして一度見た段階では確実に見間違えるが、再び同じものが視野に入ればその対象を正確に把握することができる。めでたく二十歳の誕生日を迎えたその日、ミム彦は初めて宮殿に招かれた。この村では、勇者が成人するとその日に王様から重大な任務を言い渡されるのが通例である。身なりを整えつつ窓の外にちらりと目を遣ると、どうやら雨が降 [続きを読む]
  • 似合わせなカット
  • 近ごろ髪切り場の看板黒板そしてネット上でやたらと目撃するようになった謎のメニューがある。「似合わせカット ¥6,480」なんということでしょう。なんだかわからないが、このメニュー名からは「言葉の圧」のようなものが強烈に発散されている。「似合わせる」という使役文体が、その強制力を遺憾なく発揮しているのかもしれない。しかしその「言葉の圧」がどの方向に向けられているかというと、これがよくわからない。「絶対に [続きを読む]
  • カールの乱、ポテチの変
  • 日本はついに、カールとポテチのない未曾有の時代へと突入した。正確にいえば完全にないわけではないが西日本限定になったり品薄だったりで、まあ大雑把にいえば「ない」というか「入手困難な状況が継続、あるいはわりと頻繁に起こり得る」という時代になったというわけだ。しかしこれは大変なことである。大変なことなのだよ諸君。www.huffingtonpost.jpwww.jiji.comはたしてこの先我々は、どのようにして生きていけば良いという [続きを読む]
  • 連載小説「二言武士」/第五言:過言はあれど二言なし
  • 「実はワシ、このジム畳もうと思ってるんだよね」オールドジムの支配人である「過言武士」こと過田減迫が、市中引き回されマシンに絶賛振り回され中の覆之介の耳に遠慮なく相談を投げかける。「なんかほら、毎日マッチョばっかり見てるの耐えらんなくて」いつも言い過ぎる過田にしてはまともな相談であったが、理由が心底しょうもなかった。覆之介はマシンにめくるめくジャイアントスイングを喰らいながらも辛うじてその声を聴き取 [続きを読む]
  • 短篇小説「河童の一日 其ノ十三」
  • 近ごろなんだか調子が出ない。どはいえ調子が出たところでたいしたことはない。それは僕が河童だからなんじゃないか。ついついそんな後ろ向きなことばかり考えてしまうのは、たぶんこの気候のせいだ。寒いようで暑い、暑いようで寒い。河童はそんな思わせぶりな気候が案外苦手で、だから五月病にもなりやすい。ことわざで有名な「河童の川流れ」の約六割が、五月中に起こっているというデータ(日本河童総研調べ)がそれを如実に物 [続きを読む]
  • 現在企画頓挫中の新書タイトル一覧
  • 『さおだけ屋はなぜ潰れないのか?』あたりからだろうか。最近の新書はとにかく「タイトルありき」の羊頭狗肉が横行しているとの評判である。ならばまずタイトルから決めてしまうのが良いのではないか、と思いタイトルから決めたところ、結構思いつくには思いついたが内容的にはすべてが自分の中で頓挫した。原因はタイトルしか考えていないからである。中身はもちろん一文字も書いていない。これは大きな誤算であった。以下にその [続きを読む]
  • 短篇小説「雨のドラゲナイ」
  • 竜治は雨が降るとドラゲナイ気持ちになる。とはいえ竜治は一介の会社員。今朝も満員電車にドラゲナイしなければならない。二度寝が深まりすぎないうちに一大決心をして掛け布団を勢いよくドラゲナイした竜治は、トイレで用を、洗面所で顔をそれぞれドラゲナイしてから、ガスコンロでお湯を沸かしてインスタントコーヒーをドラゲナイするのが毎朝のルーティーンだ。冷蔵庫から卵を取り出し、それをフライパンでドラゲナイするか目玉 [続きを読む]
  • 絶対に出ない国語現代文入試問題
  • 【問1】傍線部(ア)でクワマンが3度目の盗難に遭ったときの気持ちを、20字以内で答えなさい。【問2】傍線部(イ)で指摘されている細川たかしの髪型を表現するのに、最適な四字熟語を以下の選択肢から選びなさい。 A. 猪突猛進 B. 七転八倒 C. 百花繚乱 D. 明鏡止水 E. 臥薪嘗胆 F. 四面楚歌【問3】傍線部(ウ)〜(カ)のカタカナを漢字に直しなさい。(ウ)オオスギレン (エ)ガシュウインタツヤ (オ)コヒナタフミヨ [続きを読む]
  • 短篇小説「死ぬのは面倒」
  • 喪之彦は樹海の中にいた。人生に絶望した男は、ひっそりと自ら首をくくるための死に場所を探し歩いていた。とにかく丈夫な木を探す必要があったが、そんなものは樹海にはいくらでもあった。喪之彦は幹だけでなく枝まで太く頑丈な木を選ぶと、さっそくそこにリュックの中から取りだした「縄丸くん」を取りつけにかかった。首つりに縄が必要なのはもちろん知っていたが、喪之彦は縄できっちり輪っかを作ることができるか不安だったの [続きを読む]
  • 短篇小説「森の覇者アラクレシスの三択」
  • 森の覇者アラクレシスは覇者と呼ばれるくらいだから喧嘩は抜群に強かったが、ジャンケンがすこぶる弱かった。アラクレシスの生涯ジャンケン戦績は「400戦無勝」であったと言われている。そして彼の人生における重大な岐路には、必ずジャンケンが壁となって立ちはだかった。森に住む人々も動物たちも、みなジャンケンが大好きだった。決定事項はすべて、ジャンケンで決めるのがこの森の通例であった。そして人生とはつまり選択の連 [続きを読む]
  • 短篇小説「いい意味で唯々男」
  • 飯田唯々男はいい意味でいい加減な男だった。唯々男はいつもいいスーツをいい具合に着崩していたが、そのラフさが彼をいい意味でいい人に見せていた。そのうえ唯々男は近ごろいい感じに太ってきているため、勢いよく息を吸い込んでスーツのボタンを留めるといい意味ではちきれんばかりになってしまい、そこから下手に息を吐いたが最後、いいように全ボタンがはじけ飛んで、せっかくのいいスーツがいい按配でつんつるてんになってし [続きを読む]
  • 短篇小説「天天天職」
  • どんな仕事にもその職務内で発揮される「才能」というものがあり、逆にいえば人にはその「才能」を生かす「天職」というものがあるらしい。「才能」というのはけっして、スポーツ選手や芸術家にのみ求められるものではない。映画チケットのもぎりにすら「才能」というものはあるのだ。ちなみに私はいま、学生を「天職」へと導くべく就活塾を開いている。そこで生徒に教えているのは、何も複雑なことではない。単に自らの「天職を知 [続きを読む]